Digital Experience

デジタルエクスペリエンスを高める新製品を発表
シスコシステムズは、ラスベガスで実施された年次イベント「Cisco Live 2024」を受け、国内向けにそれらの内容を解説したラウンドテーブルを実施した。本記事では、ネットワーキング事業、クラウドインフラストラクチャ&ソフトウェア事業、セキュリティ事業それぞれで発表された新製品や既存製品の機能拡張などについて紹介していく。

3分野の製品アップデートで
ユーザーのデジタルエクスペリエンスを向上

米国のCisco Systemsは6月2〜6日にかけて、年次イベント「Cisco Live 2024」をラスベガスで実施した。同イベントの開催を受け、Cisco Systemsの日本法人であるシスコシステムズ(以下、シスコ)は7月16日に報道関係者向けラウンドテーブルを実施し、ネットワーキング、クラウドインフラストラクチャ&ソフトウェア、セキュリティの各事業についてCisco Live 2024で発表されたサービスや製品の解説を行った。今回はそのアップデートの内容を詳しく紹介していこう。

3要素をシームレスに統合し
IT環境をシンプルに管理可能に

 まずはネットワーキングエクスペリエンス事業のアップデートから見ていこう。

 シスコは、デジタルエクスペリエンスを最重視している。それは、ユーザーの顧客満足度向上、従業員の定着率改善、そして競合との差別化に直結するからだ。デジタルエクスペリエンスを向上させるために、安心・安全・快適なネットワークを提供していく。シスコ 執行役員 ネットワーキングエクスペリエンス事業担当 高橋 敦氏は「安心・安全・快適なネットワークを完全な形で実現できるのは当社だけです」と強調する。

 そのためにシスコが提供するのが、オンプレミス・クラウド運用モデルの統合プラットフォーム「Cisco Networking Cloud」だ。Cisco Networking Cloudは、接続性・セキュリティ・可視性を統合することで、企業が直面する複雑なIT環境をシンプルに管理できることを目指し、段階的に機能を拡充している。具体的には、Cisco CatalystスイッチとWi-Fi製品のクラウド管理が可能になり、ネットワーク可視化サービス「Cisco ThousandEyes」やアクセス管理ソリューション「Cisco Secure Access」との統合が行われた。

 特に国内市場では「Cisco ThousandEyes Digital Experience Assurance」と「Cisco Secure Networking」に注力することが発表された。Cisco ThousandEyes Digital Experience Assuranceは、ユーザーの所有環境と非所有環境を問わず、パブリッククラウドやインターネットのエンドポイントなどデジタルエコシステム全体からテレメトリーデータを収集する。収集されたデータはAIによって分析、可視化されることによって、IT部門は障害を即座に特定し、修正できるようになるのだ。またCisco Secure Networkingとは、ネットワークとセキュリティを連携させることで、シンプルな運用とセキュアなインフラを実現する考え方だ。この考え方に沿ってCisco Networking Cloudに、SASE(Secure Access Service Edge)ソリューション「Cisco Secure Connect」をSASEエンジンとして組み込むことに加え、レポーティングとトラブルシューティングを簡素化するAIアシスタント機能を導入することが発表された。

NVIDIAとの協業によって
AI活用の成功をサポートする

 続いてクラウド&サービスプロバイダーアーキテクチャ事業のアップデートを見ていこう。

 当事業におけるアップデートとして紹介されたのが、「Cisco Nexus HyperFabric AI Cluster with NVIDIA」だ。Cisco Nexus HyperFabric AI Cluster with NVIDIAは、AIのフルスタックをクラウド管理型で提供し、AI基盤をよりシンプルに構築・運用可能にするソリューションだ。AI基盤を構築する際の雛型の構成をプリコンフィグで備え、ユーザーの要望に応じてカスタム構成も行える。

 シスコ クラウド&サービスプロバイダーアーキテクチャ事業 クラウドアーキテクチャ事業部長 鈴木康太氏は、Cisco Nexus HyperFabric AI Cluster with NVIDIAの開発背景を以下のように語る。「企業がAIを活用するとき、そのアプリケーションを動かすためのインフラが必要です。しかしすでに現状の環境が複雑であるのに加え、AIを構築するためには今までになかったスキルセットや、ネットワーク、コンピューティング、ストレージ、アプリケーション、ソフトウェアを全て組み合わせて動作させる必要があります。こうした課題を抱えるAI活用において、当社だけではお客さまのAI活用の成功をサポートできません。お客さまのAI活用の成功をサポートするため、NVIDIAさまと戦略的なパートナーシップを結びました。このパートナーシップは両社のエンジニアリングが共同で一つのソリューションを作り上げるためのものであり、その成果がCisco Nexus HyperFabric AI Cluster with NVIDIAとなります」

重点領域であるセキュリティ事業
三つの軸でユーザーを保護

 最後にセキュリティ事業のアップデートを見ていこう。

 シスコはセキュリティ事業に注力しており、セキュリティ関連企業の買収を積極的に行っている。そうした中でシスコが提供しているのが、安全・快適・シンプルなセキュリティプラットフォーム「Cisco Security Cloud」だ。Cisco Security Cloudは、ユーザープロテクション、ブリーチプロテクション、クラウドプロテクションの三つの軸で展開されている。

 ユーザープロテクションでは、多要素認証・デバイス認証「Cisco Duo Advantage」に関する新機能を発表した。アイデンティティ管理ソリューション「Cisco Identity Intelligence」における「ISPM」(Identity Security Posture Management)と「ITDR」(Identity Threat Detection and Response)機能を、Cisco Duo Advantageに搭載し、リリースを予定している。ISPMとは休眠アカウントや過剰特権アカウントなど全てのユーザーとデバイスを一元管理する機能であり、ITDRとは、IDの悪用による不正アクセスや不正行為を検知し、それの対処を行う機能だ。

 ブリーチプロテクションでは、Cisco MerakiにXDR(Extended Detection and Response)機能を搭載することを発表した。Merakiが生成したネットワークテレメトリーを分析し、外部からの攻撃や内部不正などの兆候を可視化・検知する。そして今回XDR機能を追加したことで、サイバー攻撃の事後対応まで行えるようになり、一気通貫でサイバー攻撃への対応が可能となった。

 クラウドプロテクションでは、マルチクラウド環境に対応した新ソリューションとして「Cisco Hypershield」を発表した。ワークロードが分散している昨今、セグメンテーションや脆弱性対応、インフラのアップデートが課題となっている。そうした課題を解決するのが、Cisco Hypershieldだ。Cisco Hypershieldは、クラウド・オンプレ・仮想・物理・コンテナを問わず、分散配置されたワークロードの依存関係を可視化し、容易なセグメンテーションを実現する。また搭載されたAIが脆弱性対応の優先度付けを支援し、脆弱性対応の課題を解決する。そして、データを送受信するための伝送経路「データプレーン」を二つ用意し、プライマリー側が本番プロセスを実行している裏で、シャドープレーンにて新ポリシーや新バージョンの検証と精査を行うことで、ポリシー適用とバージョンアップの工数を改善するのだ。

 最後にシスコ 執行役員 セキュリティ事業担当 石原洋平氏は「新しいソリューションの提供を行いながらも、ハードウェアやAIアシスタント機能といったサービスの日本語対応を進めていくことで、日本におけるセキュリティ事業の強化を進めます」と抱負を語った。

Generative AI

AWSジャパンの中堅中小企業向け事業戦略
AWSジャパンが実施した記者会見では、2024年におけるAWSジャパンの中堅中小企業向けの事業戦略や、AWSの生成AIサービスを活用した介護サービス・オンライン英会話での事例が語られた。

生成AIとパートナー企業との連携を軸とした
AWSジャパンの中堅中小企業向け事業戦略

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は7月18日に、中堅中小企業向け事業の戦略説明会を実施した。AWSジャパンは、日本企業の99.7%を占める中堅中小企業が日本の成長の源であり、日本の未来・経済を背負っているとして、中堅中小企業向けの支援を強化していくという。本記者会見で発表された中堅中小企業向けの支援内容と、AWSの生成AIサービスを活用したやさしい手とネイティブキャンプの事例を見ていこう。

注目が集まる生成AIに対する支援と
全国の企業をサポート可能な支援体制

パートナー企業との連携強化について語ったAWSジャパン 執行役員 広域事業統括本部 統括本部長を務める原田洋次氏。

 AWSジャパンが2024年に注力する分野として、生成AIによる経営課題の解決と、AWSパートナーと顧客との連携がある。

 まずは生成AIの活用から見ていこう。現在、企業では生成AIを業務に取り入れる動きが加速している。6月に実施されたAWSジャパンのイベント「AWS Summit Japan」では、生成AIに特化したセッションを多数行い、5万人以上が参加した。このように生成AIへの注目度が高まる一方、AI人材やAIに関する知識・経験が不足しがちだ。こうした課題に対してAWSジャパンでは、AIやクラウドの学習プラットフォーム「AWS Skill Builder」において、入門編から上級者向けまでのAI関連のトレーニングを50個以上追加した。さらに、最新情報や事例を学べるイベントの開催や、生成AIの利活用に取り組む人向けの情報ポータル「週刊生成AI with AWS」、AWS利用者向けのユーザーコミュニティ「JAWS」を提供している。

 またパートナー企業との連携強化について、AWSジャパン 執行役員 広域事業統括本部 統括本部長 原田洋次氏は「当社だけでは手が届かない全国の中堅中小企業さまをサポートするために、パートナー企業との連携を強めていきます」と連携強化の理由を語る。AWSジャパンでは47都道府県全てをカバーしているパートナー企業と共に、全ての都道府県をカバーできる体制を整えている。さらに2024年1月からAWSは、「中堅中小企業向けコンピテンシーパートナー」を開始した。中堅中小企業向けコンピテンシーパートナーとは、中堅・中小企業の顧客のニーズに対して、定められた水準以上のレベルでソリューションとサービスを提供する能力と実績を持つことを認定するパートナー制度だ。

三つのレイヤーで提供する
AWSジャパンの生成AI

 生成AIに関する具体的な取り組みとして、AWSジャパンでは三つのレイヤーで生成AIテクノロジーを提供している。一つ目のレイヤーが、大規模言語モデル(LLM)・基盤モデルを活用した構築済みアプリケーションだ。生成AIアシスタントサービス「Amazon Q Business」といった、学習済みの生成AIをユーザーがそのまま利用できるサービスを提供する。

 二つ目のレイヤーが、LLM・基盤モデルを組み込んだアプリ開発のためのツールだ。生成AIアプリを作成できるサービス「Amazon Bedrock」を提供することで、ユーザーは自社の社内ツールやソリューションに生成AIを容易に組み込める。

 三つ目のレイヤーが、基盤モデルのトレーニングと推論のためのインフラストラクチャだ。公開されている基盤モデルをそのまま使うのではなく、独自のモデルを作成したいユーザーに向け、GPUを搭載したコンピューティングリソースや、AWSが独自に設計したAIのトレーニングおよび推論向けの専用のアクセラレーターを搭載したインスタンスを提供する。

 さらに、さまざまな生成AIのサービスや基盤モデルが各社より提供されている中、導入予定のサービス・基盤モデルが自社に合ったものかどうか試用したいという要望がユーザーの間で高まっている。そうした背景の下、AWSジャパンは生成AIの動作検証を行える「Generative AI Use Cases JP」を提供する。Generative AI Use Cases JPは、GitHubにて公開されており、AWSのアカウントがあればサービスの利用料のみで誰でも利用可能だ。

 AWSジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長 小林正人氏は「自身で生成AIサービスの開発を行いたいお客さまに加え、AWSジャパンと共に議論しながら生成AIサービスの開発を行いたいお客さまの両面を支援していきたいですね」と展望を語った。

AWSジャパンのサービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長を務める小林正人氏は同社の生成AIサービスについて紹介した。
やさしい手の代表取締役社長 香取 幹氏はAWSの生成AIサービスを活用した事例を語った。
ネイティブキャンプ 執行役員CTO 大西さくら氏はAWSの生成AIサービスを活用した事例を語った。

生成AIサービスを活用する
二つの国内事例を紹介

 本記者会見では、AWSの生成AIサービスを活用する国内事例として、やさしい手やネイティブキャンプの事例も紹介された。

 やさしい手は在宅介護を中心にサービスを展開する企業だ。同社では情報開示システム「ひつじ」を開発。ひつじに介護記録をはじめとした利用者にまつわる情報を蓄積していくことで、利用者と従業員を情報レベルでつなぎ、アカウンタビリティを担保しながら、高度な利用者個別の支援を目指している。今後はひつじに蓄積されたデータから、利用者の変化・潜在ニーズを捉え、より個別化されたサービスを提供する方針だ。そのためには情報の可視化・精緻化の仕組みが必要となる。そこでやさしい手が活用しているのが、Amazon Bedrockだ。

 Amazon Bedrockを活用することで、1カ月当たり6万字の介護記録を、利用者の家族、医師、ケアマネージャーに報告する業務の自動化を実現。報告書の内容は、読み手に応じて表現を変更している。ケアマネージャーなどの専門職向けの報告では、疾患、薬剤、バイタルデータなどの専門用語で端的に、利用者の家族向けには専門用語を使用せず分かりやすい言葉で要約されている。さらに、個別の作業手順を基幹システムの介護記録や音声データから自動更新する取り組みや、利用者別のケアプラン案の自動生成といった取り組みも進めているという。

 同社 代表取締役社長 香取 幹氏は、Amazon Bedrockを採用した理由についてこう語る。「生成AIを業務利用するためのPoCを容易に実現できることや、これまで利用されていなかったデータを生成AIによって価値ある経営資源として再活用可能なことがあります。さらに、経営課題に寄り添った支援体制が整っていることも採用した理由ですね」

 続いて登壇したネイティブキャンプ 執行役員CTO 大西さくら氏は「当社ではオンライン英会話サービスを提供しており、レッスン中にメモを取るのが困難な受講者側の課題と、各受講者と話した内容を忘れてしまう講師側の課題を解決するために、AWSさまの生成AIサービスを利用し、『AIレッスンサマリー』の開発を進めています」と語る。

 AIレッスンサマリーとは、レッスン全体の音声データをLLMで処理を行い、会話内容の要約や改善点などの提案を行う機能だ。さらにレッスン時のトークテーマを講師に提案する「AIトピックサジェスト」の開発も行っている。AIトピックサジェストでは、受講者のプロフィールをベースにAIがトークテーマを生成する。

 最後に大西氏は「生成AIを活用することによって、業務改善や講師の質を高めていく機能の開発を行っていきます。さらに、講師の採用やトレーニングにおいて人間が行っている作業をAIが代わり、採用や教育活動を自動化して講師全体のレッスンスキル向上に活用していきます」と展望を語った。

Business Strategy

AI活用を推進するレノボグループの戦略
レノボグループの2024年度事業戦略説明会では、AIの利用と導入が活発化する「AI元年」の2024年度において、レノボグループはどのような戦略を取るのか、生成AIによってどのように顧客の課題を解決するのかが語られた。

製品ポートフォリオとハイブリッドAIの充実で
顧客の課題解決を実現

7月16日、レノボ・ジャパン、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、モトローラ・モビリティ・ジャパンの3社は、2024年度の事業戦略を説明する記者会見を開催した。本記者会見では、レノボグループの多様な製品ポートフォリオを生かし、どのように顧客の課題解決とAI活用の推進を行うのかについて語られた。AI活用が活発化する時代の中で、レノボグループはどのような戦略を取るのか。その内容をレポートしていこう。

AI元年となる時代の中
多様な製品で課題解決を目指す

 レノボグループは、2024年度の事業戦略に「Hybrid AIをポケットからクラウドまで」という大きな方針を掲げている。スマートフォンやタブレットといったポケットに入るデバイスから、PC/サーバーのようなクラウド活用に役立つデバイスまで、レノボグループは幅広い製品ポートフォリオを持つ。レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏は、そうした幅広い製品を持つレノボグループの特長を説明した上で「レノボグループの製品がAIの活用が進む時代でどういうふうに活躍できるのか、また活躍させることでどうやって社会に貢献できるのかを常に考えています。今年はAI元年として、全ての製品やデバイスにAIが入る社会が実現するでしょう」と将来予測を語る。

 そうした予測を踏まえ、檜山氏は2024年度の注力領域にPCをはじめとしたデバイスを挙げる。そして注力領域に対する取り組みについて、檜山氏は次のように話す。「デバイスの領域でリーダーシップのポジションを維持するために、レノボグループはデバイスメーカーからITソリューションプロバイダーへの転身を図ります。製品技術を顧客に届けるだけでなく、しっかりと顧客の課題を理解し、我々が持つ製品ポートフォリオでどのように課題を解決できるかに取り組んでいきます」

 檜山氏は、今後AIがさらに活用されていく中で、レノボグループはAI技術が本質的な価値の創造にどのようにつながっていくかを考えなければならないと語る。そしてAIによる価値創造を実現するために、AIへ10億米ドルの投資を行っていくという。さらに投資に当たって、あらゆるシーンでデータ活用を実現できるAIによる包括的なアプローチ「ハイブリッドAI」の戦略も併せて進めていく。檜山氏はハイブリッドAIの戦略について「ハイブリッドAIのために、個人使用のAIと組織使用のAIを分けて管理することは、個人所有のデータをきちんと保護しながら活用していくことにつながります。我々はハードウェアのメーカーとしてできることに注力し、ハイブリッドAIを充実させていきます」と意気込む。

ハードウェアだけでなく
アプリの提供でもAI活用を支援

 顧客がAIをもっと身近に活用できるように、レノボではAI PCの提供を開始している。2024年度は現在リリースしている製品に加え、マイクロソフトが提唱する新PC「Copilot+PC」のラインアップを強化する。

 レノボはすでに、2024年6月18日にCopilot+PCの「Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9」を発表している。今後は法人向けのCopilot+PCとして「Lenovo ThinkPad T14s Gen 6」を提供予定だ。檜山氏はAI PCに関するレノボの今後の取り組みについて、以下のように説明する。「2024年から2025年までに、画像/映像編集といったクリエイティブな作業が可能なアプリケーションを充実させます。また、AIの活用が広がっていくとエンドポイントのセキュリティがより重要になるため、セキュリティに関するソリューションも充実させていきます」

 レノボグループのAI関連ソリューションの提供について、檜山氏は次のように語る。「Copilot+PCをはじめとした、顧客がAIを活用可能なデバイス/ソリューションの展開を推進することで、よりスマートなAIを日本の顧客に提供できると考えています。我々が指す顧客はユーザー一人ひとりだけでなく、企業や学校、地域のコミュニティーといった団体も含みます。各顧客のさまざまなシチュエーションを想定し、その多様なシチュエーションに対応できるように、製品ポートフォリオを充実させていきます」

 さらに檜山氏は、企業の働き方改革の進展について「日本でも場所や時間、共に業務を行う人員を問わず働ける環境が整ってきました。今後はそうした環境でもAIが活用されることで、データ量が増加していくことが予測できます。データ量が増加すると、消費電力も増加してしまう課題が発生します」と懸念を話す。その懸念を踏まえ、続けて「我々はメーカーとして、この課題にどうやって対応し、顧客をサポートするかを考え続けます。全てのユーザー、全ての企業をサポートするために、我々はナンバーワンのITソリューションプロバイダーになります。充実したAI PC、スマートフォンを中心としたモバイル製品、サーバーをはじめとしたインフラに関わる製品の提供はもちろん、それらの土台となり各製品をつなげるサービスも提供していくことが、我々が進めたいソリューションの戦略です。2024年度はこの戦略をしっかり推進していきます」と強調する。

サステナビリティ目標の達成と
生産性向上をAIでサポート

 顧客に現在抱えている課題を尋ねると、環境への貢献について問い合わせを受けることが多いと檜山氏は語る。その課題を解決するために、レノボはAI搭載のサステナビリティエンジン「Lenovo Intelligence Sustainability Solutions Advisor Advisor」(以下、LISSA)を発表した。

 LISSAは、生成AIを通じて企業のCO2排出量を可視化するサービスだ。顧客の現状を分析してCO2の削減機会を明確化したり、顧客のサステナビリティ戦略に基づいたITソリューションを提案したりといったサポートを行う。顧客は潜在的なCO2の削減機会に気付けるので、自社の脱炭素目標の達成に近づけるのだ。ほかにも、AIが顧客用にカスタマイズした脱炭素目標の達成シナリオを作成したり、CO2削減に関する行動によって得られる効果を可視化したりすることで、顧客のサステナビリティ目標の達成を支援する。

 サステナビリティだけでなく、顧客の従業員体験や生産性の向上をAIでサポートするサービス「Lenovo Care of One」も提供する。Lenovo Care of Oneでは、個人に最適化されたデジタルワークプレイスの提供を行う。顧客の仕事の様子や企業での活動状況といったデータを収集し、AIがそのデータを分析した結果を基に、顧客の仕事効率の向上に役立つ提案をするのだ。生成AIによって顧客一人ひとりのケアを行い、生産性アップに貢献する。

 レノボグループは、2024年度の事業戦略の方針「Hybrid AIをポケットからクラウドまで」を実現するために、さまざまなハードウェアやサービスをそろえる多様な製品ポートフォリオを生かして、顧客の課題を解決していく。