今月のテーマは……
Gemini アプリをカスタマイズ
「 Gems 」で実現する業務効率化

「 Gemini for Google Workspace 」に含まれる Gemini アプリ は、大規模言語モデル(LLM)である「 Gemini 1.5 Pro 」の強力なパワーを生かし、一度に多くの情報を取り込むことで洞察を得られると前号までで伝えてきました。そして、このたび Gemini アプリ をユーザー個人のニーズにカスタマイズできる、「 Gems 」が2024年8月末に提供開始となりました。今号では、この Gems を取り上げます。

庄司大助(Dandy)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。

Gems で日々の業務を効率化

 Gemini アプリ はインターネット上の情報や、社内の「 Google ドライブ 」「 Gmail 」などの膨大な情報を基に、ユーザーが入力したプロンプトに対して回答をくれます。一方、今回登場した「 Gems 」は特定の用途、ジャンルに特化した生成AIエージェントとして機能します。ユーザーは「 Gem 」と呼ばれる独自のチャットボットを作成し、特定のタスクの自動化や情報を効率的に取得できます。

 例えば、「広報担当者 Gem 」を作成して、プレスリリースで発表する文書の文法チェックや特定のスタイルに合わせた文書の調整の支援を受けるといったことが可能です。また、冗談のような本当の話ですが、ある会社さまでは、とある製品のQ&Aに特化したさまざまな問いに対し、元プロテニス選手の松岡修造氏のように熱いトークで答えてくれる「困りごと相談 Gem 」を開発したというケースもあります。問題を解決してくれるだけではなく、キャラクターを組み込むことで、親近感も得られますよね。これらの Gems を活用することで、日々の業務におけるさまざまなシーンで効率化を実現できます。

Google が事前に用意している4種類のプリメイド Gem 。

Gems の可能性は無限大

 Gem の作り方は2種類あります。一つ目は Google があらかじめ作り込んだ“プリメイド Gem ”です。これには2024年9月執筆時点で、「アイデア出しのプロ」「キャリアアドバイザー」「家庭教師」などがあります。自分の使いたい用途に合わせてそれぞれの Gem を呼び出して、これまで使い慣れた Gemini アプリと同様の操作でプロンプトを入力し、答えを得ます。

 二つ目は、独自に作り込んだ“カスタム Gem ”です。作り込むといっても、特別なプログラムは必要ありません。同僚に仕事の依頼をするときのように、自然言語で Gem の仕様を設定できます。

 今回は、社内規定に関しての問い合わせ対応 Gem を作成します。Gem を作成するには、「 Gem を作成」ボタンをクリックし、「 Gem の作成ウィザード」を呼び出します。そこに名前と対応してほしいミッションを書きます。上図は、Gem にどんな働きをしてほしいか指示を記載したものです。

 Gems の魅力は、そのカスタマイズ性にあります。ユーザーは、Gemini の高度な生成AI機能を組み合わせて、独自の Gem を作成できます。今回は社内規定に特化したQ&Aチャットボットを作りましたが、特定の業界用語や社内独自のルールを理解する Gem や特定の業務プロセスに特化した Gem なども作成できます。Gem を期待通りに作成するためには、コツがあります。

 一つ目はペルソナです。Gem が担う役割と回答方法を伝えます。二つ目はタスクです。Gem にやってほしいこと、作成してほしいことを定義します。三つ目はコンテキストです。できるだけ多くの背景や参考情報となる情報を与えます。

 最後が出力形式です。必要な形式、構成がある場合は具体的に伝えます。生成AIに限らず、同僚に業務を依頼する際には、きっと依頼内容に適切な役割の人に仕事を依頼しますし、依頼をする内容だけではなく、その理由や背景となることをお伝えするかと思います。また、納期を伝え、出力形式としてスライドにまとめてほしいのか、それともメールにテキスト形式で書いてほしいのかといったように作業依頼を細かくするかと思います。これをまさに生成AIサービスの Gemini アプリの Gems 機能に吹き込んであげることで、自分の期待値に近い答えを返してもらう仕様に設定できます。

カスタム Gem を活用して社内規定に関する問い合わせ対応 Gem を作成した。まずは名前の入力とGem にしてほしいことを指示する。
Gem のプレビュー画面。作成途中でもプレビューで中身を確認できる。

未来の働き方を変えるAIツール

 Gemini アプリの Gems 機能は、AIを活用した業務効率化をさらに加速させる可能性を秘めています。しかし、あらゆる組織が生成AIの活用に期待をしている一方、セキュリティの不安、開発運用の負担を懸念されているお客さまもいらっしゃいます。Gemini for Google Workspace で提供しているサービスは、全てお客さまの環境内に情報が閉じています。ほかの組織に共有されたり、Google が製品の品質向上のために、ユーザーの利用状況をのぞき見たりすることはありません。また、開発運用の懸念に関しては、専門の AI 知識やスキルも必要としないため、先程紹介した通り、同僚に仕事の依頼をするように Gem を簡単に作成し、社内ですぐに利用できます。さらに、現場のユーザー自身で、特定の業務に特化した作業を支援する Gem を作成し、部門内での新しい業務スタイルに活用いただけます。

 なかなか進まない日本の現場のデジタル化は、Gems 機能が推進してくれる起爆剤となるかもしれません。ぜひ、Gems 機能を業務やコミュニティ活動などで、幅広くご活用ください。


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