経費精算のデジタル化で非効率な紙ベースから脱却
企業における会計管理システムは、古くから日本特有の慣習に合わせたソフトが開発されており、ほとんどの企業で導入されているはずだ。ただ、それに付随する経費精算については、まだまだ紙やエクセルベースが多く、経理の負担は非常に大きいのが現状だろう。
こうした状況に対して、近年の法改正により、電子帳簿保存法が施行され、国税関係書類の電子化が求められるようになった。経費精算も領収書・請求書などを電子化する必要があり、それを人手で作業するとなると、さらなる経理の負担増となる。
そこで、会計管理システムと同様、経費処理をデジタル化する経費精算システムが各社から登場している。今回紹介する「PCA Hub 経費精算」は、“手に届く価格”で“手が届かなかった業務効率最適化”を提供することをコンセプトとしている「PCA Hubサービス」の新サービスとして、この春から提供開始される予定だ。経費精算システムとしては後発になるが、どのような特徴があるのか、PCAの事業本部 事業戦略部 プロダクトマーケティングセンターの佐久間崇史課長にお話を伺った。
中小企業に導入しやすいライセンス形態で提供

「経費精算業務は、社内の申請者・承認者も含めて、紙ベースでやっていると承認に時間がかかります。また承認された結果を会計システムに、再度一から手入力するため、以前から経理にとって業務課題となっていました」と語る佐久間氏。電子帳簿保存法の施行に関わらず、以前から経理の負担は大きく、近年のDX推進により改善を目指してきた課題の1つである。
PCAでは、「PCAクラウド」、「PCAサブスク」として会計システムを長年手掛けてきており、販売管理や人事・給与、税務計算など経理や人事の業務サービスを幅広く提供してきた。また、DX推進に合わせてペーパーレスやデジタル化を支援するサービスとして「PCA Hub」シリーズを展開。電帳法保存要件対応の証憑電子保管サービス「PCA Hub eDOC」やPCA給与シリーズと連携した人事労務電子化支援サービス「PCA Hub HR Suite」など、あると便利なサービスを提供。「PCA Hub 経費精算」は「PCA財務会計シリーズとのダイレクト連携を特徴としていますが、他社の会計システム向けに仕訳データを出力できるため、経費精算システムとして単体導入も可能です」と佐久間氏は語った。
今回紹介する「PCA Hub 経費精算」は、このシリーズの1つとしてサービスを提供。「PCA Hub経費精算」は、経費申請から精算・管理までを一元化し、バックオフィス業務の効率化と正確な管理を実現する。PCA財務会計シリーズとの連携だけでなく他社の会計システムに向けた仕訳データを出力可能なので、「PCA Hub 経費精算」を単体で導入しても、経理業務の負担軽減につながるとしている。

具体的には紙ベースと同様、従業員が申請すると、設定された承認フローに合わせて承認者へ通知が行き、処理されていく。差し戻された場合もメールで通知が届くので、スムーズに処理できる。これが紙ベースだと、経理担当が申請書を回収し承認者へ渡しにいかなければならないため、かなり時間と手間がかかり効率が悪い。承認フローはカスタマイズでき、金額によって承認者が変わることにも対応。これまでのフローと変わらずに運用が可能だ。
「PCA Hub 経費精算」の主な特徴としては、
①PCA財務会計シリーズとのダイレクト連携
②中小企業での導入を考慮したライセンス体系
③部門ごとに経費予算管理が簡単にできる
④クロノス社の勤怠管理(クロッシオン)システムとの連携が可能
が挙げられる。
①は、PCA財務会計シリーズとダイレクトに連携できるので、マスターや仕訳の連携が可能。業務の効率が大きく上がる。佐久間氏は「先述の通りPCA Hub 経費精算で出力したCSVデータを他の会計システムへ取り込めますが、ある程度の企業規模だと内部統制要件が、データを取り込むというプロセスの課題になるので、ダイレクトで連携することで、そういった要件もクリアできると考えています」とメリットを語った。
②については、初期導入時に最低ID数がどんなサービスにもあるが、PCA Hub 経費精算では10ユーザーから始められ、追加も10ユーザーごとなので、中小企業にはありがたいライセンス形態を採っている。しかも別途の初期費用は不要だ。「当社の会計システムを導入しているお客さまは、小規模な企業が多いので、そうした企業のDX推進に役立ちたいという思いで、少ないユーザー数から導入できるようにしています」と佐久間氏は語った。
③に関しては「予算をあらかじめ設定することで、部署ごとに経費予算を一括管理し、予算超過の申請を未然に防ぐことができます」と佐久間氏。④についても「グループ会社クロノスの勤怠管理システム(クロッシオン)と連携することで、たとえば出張申請をした際に経費精算の事前申請も同時に行えるため、申請作業が一度に完了します」と連携するメリットを語った。経費精算と勤怠管理の連携は他社でもあまり見られないため、「PCA Hub 経費精算」の売りの1つと言えよう。
誰でも簡単に使える操作性を意識して開発

機能面を見ていくと、経費申請の際はスマホアプリを使って領収書をカメラで撮影してスムーズにアップロードでき、申請できるようになっている。「操作性については、極力シンプルで直感的に使えるよう、社内で実際に使用し、フィードバックを取り入れながら開発しました」と佐久間氏。
たとえば、アップロードされた領収書の画像は、承認画面にサムネイルとして表示される。クリックして画像を表示するタイプだと、そのひと手間が面倒だ。「PCA Hub 経費精算」では、よりクリック数を減らすことで、さらなる作業効率のアップが図られている。

ほかにも交通費精算でもルート検索で駅名を入力するだけで結果が表示され、マウス操作を極力減らしたり、同じ内容を日付だけ変えて入力したいときもワンボタンでコピーできたりなど、少しでも手数が減るよう工夫が凝らされている。

情シスのいない中小企業でも簡単に管理・運用面できるよう、ユーザーサポートサイトで各種動画コンテンツを提供している。それでも解決しない場合は、同サイトからメール問合せによるサポート対応をしている。有償のオプション契約になるがフリーダイヤルによる電話での問い合わせをすると、サポートセンターの担当から回答が得られるなど、サポート体制も充実している。
「スムーズに導入できるよう導入支援サービスを用意しておりますので、負担なく導入できると思います。申請する従業員も、直感的に操作できるよう入力項目も必要最小限に留めています。また、アップロードした領収書や請求書はAI-OCR機能で自動的に取引日、取引先、金額、インボイス登録番号を認識し入力されるため、紙ベースの申請作業に比べて大幅に負担が軽減されます」と佐久間氏は語った。

PCA Hubシリーズをすでに導入している企業は、ポータルサイトに「PCA Hub 経費精算」も表示されるため、一元管理できるのもメリット。佐久間氏は「PCA Hubシリーズは、手の届く価格で手の届かなかった業務効率最適化を提供するというコンセプトのもと、開発しています。高機能化してコストがかかるのではなく、お客さまが使いやすくシンプルに導入できるよう配慮しています」と語った。
PCA Hubシリーズは、いま「PCA ID」という新たな認証基盤の導入を進めている。基幹業務のPCAクラウド、PCAサブスクシリーズとも統合される予定で、一元管理できるだけでなく、PCA IDでパスキー認証ができるようになり、よりセキュアな運用ができるとしている。

佐久間氏は「PCA Hub 経費精算では、リリース後にSuicaなどの交通系ICカードの履歴をスマホで読み取れるようになる予定です。また、PCA Hubシリーズとしては、お客さまのニーズが高い、より業務領域をカバーできるサービスを順次リリースしていく予定で、生成AIを活用したサポート機能も考えています」と今後の予定を語っている。
最後に佐久間氏は「令和7年の税制改正大綱では証憑の改ざんができないようにすることや電子帳簿との相互関連性を確保できるシステムであることを理由に重加算税の10%加重対象から除外されるなどの要件も上がっており、会計システムとの経費精算のシームレスな連携が重要視されつつあります。
