日立製作所の生成AIエージェントの取り組み

生成AI

 日立製作所(以下、日立)は1月21日に生成AIの取り組みについて記者会見を実施し、自社のAIエージェントの取り組みを解説した。

 日立の生成AIエージェントは、設計図や帳票などのドキュメント化された形式知と共に、ベテランのノウハウといったドキュメント化されていない暗黙知も学習させている。さらに、AIエージェントのマルチエージェント化を進めている。こうした取り組みを一つのサイクルとして回していくことで、AIエージェントが人間の作業の一部を代行することが可能になり、現場作業員の生産性向上につなげていくという。

 その一方で「AIの適用には利用者の気持ちに寄り添うことが重要です」と、同社 Generative AIセンター センター長 デジタルシステム&サービスセクター Chief AI Transformation Officer 吉田 順氏は指摘する。コンタクトセンター内での生成AI活用のPoC実施後、オペレーターに生成AIの有用性についてインタビューをしたところ、全く使えないという回答が多かったという。その背景にあったのが、生成AIが有用であると答えると人員削減されてしまうのではないかという危機感だ。またオペレーターにとって、電話対応後の問い合わせ内容を入力する時間は気持ちを落ち着かせたり、一息を付いたりするタイミングであった。しかし生成AIの導入によって、そうした時間が短縮され、忙しさが増してしまい、離職率の増加につながりかねない状態になっていた。

 AIが引き起こす新たな課題への対応について、吉田氏はこう語る。「AIを利用してスマートに仕事をするだけでなく、AIと人の関係を基にした適切な使い方が求められています。当社ではそうした使い方を提示しながら、今後もAIの取り組みを進めていきます」

生成AIの活用例を発信

 本記者会見にて、日立は新たなポジションとして「GenAIアンバサダー」の新設を発表した。GenAIアンバサダーは、生成AIによる業務変革をリードし、複雑な課題解決やイノベーション創出に取り組むロールモデルだ。

 初期メンバーには、経営や営業、システム開発など幅広い業務に精通した多様なメンバーが16名任命された。今後は、日立の生成AI事業を顧客やパートナーと共有することで議論を活性化し、それぞれの課題にあったベストプラクティスへの落とし込みを支援する。

 GenAIアンバサダーに就任した同社 デジタルエンジニアリングビジネスユニット Lumada共通技術開発本部 LSH事業推進センタ長 斎藤 岳氏は「システム開発の現場での生成AIの活用を、ボトムアップで推進することを支援していきたいです。日立の中でユースケースやナレッジを共有しながら、お客さまに生成AIの価値を届けます」と語った。

業界の垣根を越えた物流効率化を目指すシステム

共同輸配送

 ヤマトホールディングスと富士通、Sustainable Shared Transport(以下、SST)は1月27日、共同記者会見を実施した。本記者会見では、荷主企業・物流事業者向けの共同輸配送システムの稼働開始が発表された。

 共同輸配送システムでは、富士通のオファリング「Fujitsu Unined Logistics」によるデータ基盤を活用し、荷主企業の出荷計画や梱包の状態、荷物量などの情報と物流事業者の運行計画に基づいて、輪配送計画を作成する。システムを利用する荷主企業は予約画面で、日付や出発地、到着地、荷物情報など運びたいニーズを入力すると、輸配送可能な便が表示され、その中から便を選択して予約できるのだ。予約状況はリアルタイムで管理され、便の予約や手配の様子が確認可能なため、安定した輸送を支援する。同システムを活用することで、荷主企業は共同輸配送のパートナーを探すことなく共同輸配送に取り組めるのだ。さらに、同一区間でも複数の時間帯や輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択できる。また物流事業者は、復路の空車走行の減少による積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減を図れる。

 富士通 代表取締役社長 時田隆仁氏は、同システムの今後の展望についてこう語る。「AIやAIエージェントをどう活用するかを考えるとともに、量子技術を活用した配送ルートの最適化にも取り組んでいきたいですね」

 また同日、共同輸配送システム上で荷主企業と物流事業者をマッチングするオープンプラットフォームを活用したSSTの共同輸配送サービス「SST便」の提供開始も発表された。SST便は現在、宮城県から福岡県間において1日16便のトラックが運航している。SST 代表取締役社長 髙野茂幸氏は、今後のSST便のサービス拡張について以下のように語る。「対象地域やダイヤの拡充に加えて、トラック輸送だけでなく鉄道や船舶なども含めたマルチモーダルを推進します。これにより2026年3月末を目途に80線便まで路線を拡大し、共同輸配送を加速させます」

共同輸配送システムの配車予約管理画面。