
Red Hat OpenShift上で仮想化環境が使える
Virtualization Engineでインフラの可能性を広げる
VMwareがライセンス体系を変更することに伴って、現行のVMware環境を、他の異なる環境に移行したいと考えるユーザーも数多い。その選択肢の一つがレッドハットだ。モダナイゼーションを実現する同社製品「Red Hat OpenShift Virtualization Engine」について紹介していこう。
市場ニーズに応えた
新たなサブスクリプション
VMwareを買収したBroadcomが、そのライセンス体系を大幅に変更すると発表したのは2023年12月のこと。この変更に伴って、多くのユーザー企業ではライセンスコストが増加する見込みだ。レッドハット テクニカルセールス本部 シニアクラウドソリューションアーキテクト 宇都宮卓也氏は当時を振り返り「ずいぶん思い切ったことをするな、というのが個人的な感想としてありました。このライセンス体系の変更によって、これまでと比較して10〜20倍ほど高くなるという話も聞いています」と語る。
レッドハットはもともと、ハイブリッドクラウド・アプリケーション・プラットフォーム「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)を提供していた。これにはもともと、コンテナ運用のためのサブスクリプション「Red Hat OpenShift Kubernetes Engine」や「Red Hat OpenShift Container Platform」「Red Hat OpenShift Platform Plus」といったライセンスをラインアップしており、コンテナを利用してインフラのモダナイゼーションを目指す企業がこれらを活用していた。
このサブスクリプションライセンスに、レッドハットは今年から新しいサブスクリプションを追加している。それがOpenShiftの仮想化環境を利用して、仮想マシンをデプロイ、管理、スケーリングする機能を有した「Red Hat OpenShift Virtualization Engine」だ。
仮想環境からコンテナへ
インフラの可能性を広げる
もともと同社ではOpenShift上で仮想化の機能を使えるようになる「Red Hat OpenShift Virtualization」機能を2020年から一般提供していた。VNwareのライセンス体系の変更に伴い、この機能の需要が非常に高まったことから、Red Hat OpenShift Virtualization Engineという新しいサブスクリプションとして提供をスタートしたのだ。
「OpenShiftはコンテナがメインですが、企業の環境に仮想化が残ります。その環境も含めて管理できるよう提供し始めた機能でしたが、今回のVMwareのライセンス体系の問題で、仮想マシンを主体として使っているユーザーさまからのニーズが一気に増加しました」と語るのは、レッドハット テクニカルセールス本部 クラウドソリューションアーキテクト部 部長 内藤 聡氏。Red Hat OpenShift Virtualization Engineは仮想化中心のサブスクリプションモデルで提供されるため、ユーザー企業は余計なコストを支払うことなく仮想化環境の運用が可能になる。
Red Hat OpenShift Virtualization Engine(以下、Virtualization Engine)は、カーネルベースの仮想マシン(KVM)とKubeVirt オープンソースプロジェクトをベースとしており、仮想マシンのデプロイ、管理、スケーリングに求められるOpenShiftの実績ある仮想化機能を提供する。
ユーザー企業がVMware環境から、Virtualization Engineに移行するメリットはどのようなものだろうか。
「一番のメリットはコストです。VMwareのフル機能を使えるようなライセンスよりも圧倒的に安くなるように料金設計をしています。加えて、将来性の高さもあるでしょう。仮想マシンをベースにしたインフラストラクチャには、どうしても限界があり、将来性が頭打ちです。コンテナ化やサーバーレス、クラウドネイティブな環境に、インフラを変えていきたいというお客さまも数多くいる中で、OpenShiftはそうした環境の構築が最初からできる状態になっています。さまざまなサブスリプションモデルがありますが、OpenShiftは全て同じソフトウェアで提供しています。ライセンス体系によって使える機能、使えない機能があるだけですので、例えばVirtualization Engineで仮想マシンを動かしてから、コンテナ化も進めてみたいと考えたときに、OpenShiftの環境を変えることなくサブスクリプションだけを追加してコンテナを動かすことが可能になります」と宇都宮氏。VMware環境からの移行からスタートしながら、将来的なインフラの可能性を広げられるのだ。

宇都宮卓也 氏

山川達也 氏

内藤 聡 氏
既存環境からの移行も
ツールやアセスメントで支援
レッドハットでは、既存環境からの移行がスムーズに行えるよう、さまざまなツールも準備している。レッドハット ソリューション営業本部 セールススペシャリスト 山川達也氏は「OpenShiftのサブスクリプションを契約いただいたお客さまに対しては、無償で利用できる移行ツールを用意しています。この移行ツールは、当社が提供する自動化のためのプラットフォーム『Red Hat Ansible Automation Platform』と組み合わせて使えるため、連携することで大規模な移行も自動で実行できるようになります。もちろん手動での移行を目指したいお客さまもいますので、既存の仮想マシンのイメージをVMwareからエクスポートし、OpenShiftにインポートするという方法も採れます」と語る。
また有償の仮想化移行アセスメントも提供している。約2週間ほどの期間で、企業が移行しようとしているVMware環境の仮想マシンを棚卸しし、要件などを調べてレッドハットのコンサルタントがアドバイスを行いつつ、移行のプランをユーザー企業と共に立てていくのだという。
海外では、すでにVMware環境から同社のVirtualizationに移行した事例も出てきているという。中には1万台を超える仮想マシンをVMware環境からVirtualization上に移行した事例もあり、大規模な仮想化環境を構築している企業にとっての移行先としても向いているといえるだろう。
「Virtualizationで使うハイパーバイザーは、オープンソースで知られるKVMを使います。金融などミッションクリティカルな業種含めて利用されてきたテクノロジーでもありますし、当社の『Red Hat OpenStack Platform』でもずっと使ってきたテクノロジーです。レッドハットには、ずっとKVMを開発している企業であるという信頼性もありますので、まずは仮想環境を移行し、それをきっかけにほかのOpenShiftを使っていくことを推進したいと思っています。仮想化からOpenShiftに入ってもらい、コンテナを今後使っていただくお客さまが少しでも増えてくれるとうれしいですね」と山川氏は締めくくった。


HPEが提案する仮想化基盤の第三の選択肢
KVMベースの「HPE VM Essentials」とは?
VMwareの仮想化環境からの移行を検討する場合、多くはマイクロソフトが提供する「Hyper-V」か、ニュータニックスが提供する「Nutanix AHV」といったハイパーバイザーを選択するだろう。日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、そうしたVMwareからの乗り換え先の新たな選択肢として仮想化ハイパーバイザー「HPE VM Essentials」の提供を2025年2月からスタートしている。本製品の開発背景について、詳しく話を伺った。
市場にニーズに応えて生まれた
新しいハイパーバイザー製品
「『HPE VM Essentials』は、市場のニーズありきで開発された製品です。もともと昨年4月に、VMware問題の流れの中で、パートナーさまから『HPEではこの問題に対して、何か手を打たないのでしょうか?』といった意見をいただいていました。こうした要望を受けて2024年6月、ラスべガスで行われた『HPE Discover 2024』において、このようなハイパーバイザー製品を出しますという宣言を行いました」と振り返るのは、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 統括本部長 データサービス事業統括本部 北元智史氏。
製品化に向けた開発を進める中で、HPEは同年8月にMorpheus Dataの買収を完了した。Morpheus Dataは仮想化環境やマルチクラウドの管理を行えるプラットフォームを提供している企業であり、この技術がHPE VM Essentialsの骨格ともなっている。
市場のニーズに応えて開発されたHPE VM Essentials。本製品は、ハイパーバイザー「KVM」、マルチクラウド管理プラットフォーム「Morpheus」、そしてHPEによる保守で構成されている。
「全世界で長年の実績があるLinuxベースのKVMがハイパーバイザーとして採用されています。長年の実績があり、高速な動作が実現できますし、オープンソースのハイパーバイザーなので低コストで利用可能です。VMwareの管理システムである『vCenter』にあたる部分はMorpheusが担い、仮想マシンの管理を円滑に行えます。例えば仮想マシンを止めずに異なる物理サーバー上に移動させる『vMotion』機能や、物理サーバーが障害で停止した場合、自動でVMが他の物理サーバー上に移って起動する『HA』機能など、これまでVMware環境で利用していた機能を使うことが可能になります。また既存VMwareのシステムからのマイグレーション機能もありますので、移行も非常にスムーズに行えるでしょう。KVMの場合、最大の問題としてサポートがありますが、そのサポートをHPEが担うことで、お客さまが安心して使える製品になっています」と北元氏。

(右)日本ヒューレット・パッカード 山中伸吾 氏
ベンダーロックインから解放され
他社プラットフォームでも使える
HPE VM Essentialsの最大のポイントとして日本ヒューレット・パッカード パートナー・アライアンス営業統括本部 ストレージ営業部 部長の山中伸吾氏は「他社プラットフォームでも稼働する」点を挙げる。HPE VM Essentialsの発売当初はHPEの「HPE ProLiant」「HPE Alletra Storage MP」をHPE VM Essentialsのプラットフォームとして認定しているが、順次他社のプラットフォームも認定していく予定だという。
ハイパーバイザーとしてKVMを採用するメリットについて北元氏は「KVMは全てのLinuxディストリビューションのLinuxカーネルに含まれているハイパーバイザーですので、信頼性があります。そして何より、ベンダーロックインからも解放されるメリットが大きいでしょう。今回のVMware問題でユーザーの皆さまがなぜ困ったか、というとベンダーロックインされてしまっていたからです。ほかのソリューションを使えない状態になっていたからこそ、値上げに対しての対応に苦慮していたといえるでしょう。しかしKVMは他社のソリューションも数多くありますので、例えば可能性は低いですが、将来、当社が突然値上げを発表したとしても他社への移行が容易です」と語る。
HPE VM Essentialsには、KVM環境とVMware環境のみを管理ができる機能限定版のMorpheusが添付されており、仮想マシンの管理を行う。前述した通り、vCenterに当たる機能を提供する。その他の仮想化ソリューションやクラウドもまとめて管理が可能なフル機能の「Morpheus Platform Ops」へのアップグレードパスの提供も予定している。

日本独自のパートナープログラムで
技術検証や導入支援サービスも行う
HPE VM Essentialsは2025年2月末からスタンドアロン版の提供をスタートしている。山中氏は「まずは仮想化ソフトウェアのスタンダードレンジをターゲットにしたスタンドアロン版からスタートしています。2025年春には、『HPE VM Essentialsセットモデル』として『HPE Private Cloud Business Edition』の提供を予定しています。これは必要なサーバーとストレージの容量を決めていただければ、それにあったハードウェアを当社が選び、HPE VM Essentialsがインストールされた状態で出荷するものです。2025年夏ごろにはHPE VM Essentialsセットモデルとして『HPE Private Cloud Enterprise』の提供も予定しています。こちらはフルマネージドサービスなどが付帯しており、中規模から大規模企業に適した製品です」と語る。
HPEは、日本独自のプログラムとして「HPE VM Essentials共同検証パートナープログラム」もスタートさせている。これはHPEの提供する仮想化ソリューション、HPE VM Essentialsを日本国内のユーザーがスムーズに導入・利用できる環境を整えるために、国内のパートナーと協力し、技術検証や導入支援サービスの準備を行うプログラムだ。本プログラムではエンジニアコミュニティとして「HPE VM Essentials Partner Technical Family」も用意されており、すでに23社が参加して意見交換が行われているという。

「仮想化環境導入時にキーになるのがストレージの存在です。HPE VM Essentialsでは当社の『HPE Alletra Storage MP』(以下、Alletra)を認定しており、SDSソフトウェアと組み合わせてさまざまなストレージ機能を提供します。全世界のAlletraがHPEの管理クラウドに接続しており、どこか1台で問題が発生したらそれが共有され、同じ問題が発生する可能性のあるお客さまに対策を事前に提示するなどしています。これにより、リーズナブルな価格ながら年間停止0秒をSLAとして提供することを実現しています」と山中氏。また、このAlletraでは最長で8年間の保守提供を可能とするプログラム(HPE Timeless Program)が提供され、長期にわたって安定した環境で運用が行える。
今後の展望について山中氏は「2024年、販売パートナーさまは大変な年だったと思います。そこに少しでも助けになればという気持ちで、HPE VM Essentialsをリリースしました。リリースしたばかりの製品で、不安に思う人もいるかもしれませんが、当社としても全力でサポートしていきますし、共同検証パートナープログラムを通じて日本のパートナーの皆さまと力を合わせて仮想化市場に取り組んでいきたいですね」と語る。
北元氏は「エンタープライズレベルのサポートを含め、日本では我々の部隊がしっかりとお客さまに寄り添い伴走して、何か問題があったらしっかり解決をしていく覚悟でこのソリューションを提供しています。VMwareの次の選択肢として、是非HPE VM Essentialsを選んでいただければうれしいですね」と語った。

VMware仮想環境からのHCIへの移行を契機に
インフラ運用をシンプル化しよう
オンプレミスの仮想化環境を移行する際に、選択肢に上がるのがHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)だ。既存のインフラのモダナイズとシンプル化を実現できるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズのHCI製品は、VMware環境からの移行先としてどのように適しているのか。同社に話を伺った。
HCIへの移行で実現する
インフラのモダナイズ
「VMwareのライセンス体系変更に伴うエンドユーザーさまからの要望は二つに分かれています。一つ目はVMwareに代わる仮想化環境を提案してほしいというもの。二つ目は現在のVMware環境をそのまま新しいライセンスに移行する場合は、どれくらいの費用感になるかという見積りを要望されるものです。まずはその費用を見て、次の行動を検討してるようです」と語るのは、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ソリューションアーキテクト本部 本部長 早川哲郎氏。割合としては前者の仮想化環境のリプレースを要望するユーザー企業が多いと話す早川氏は、そういった企業に対してHCIへの移行を提案しているという。
HCIは、サーバーのみで構成される仮想化インフラだ。共有ストレージ機能は外付けの専用ハードウェアではなく、認定されたサーバー上で稼働するHCIソフトウェアで実装するため、運用管理が容易になったり、コスト削減が実現できるメリットがある。また各種構成要素の互換性や、接続性の確認、ストレージ設計などが不要になり、拡張も容易になるため、俊敏性も向上できる。
「仮想化環境をオンプレミスで残したい、というお客さまに対しては、HCIによるインフラのモダナイズを提案しています。仮想化のシステムに必要なコンポーネントが大幅に減らせるため、まずハードウェアとして運用が簡単になりますし、サーバーを段階的に増やすこともできます。このサーバーを増やす際も無停止で行えるため、これまでのように定期的なサーバーの入れ替えで、移行期間を取って入れ替えるような、大がかりなリプレースが必要なくなります。当社としてはそういったHCIの選択肢として、ニュータニックスやマイクロソフト、VMwareのハイパーバイザーを提案可能です。これはお客さまの規模感や予算に応じて提案が変わってくるかと思います」と早川氏。
例えばマイクロソフトの「Hyper-V」をサポートした「ThinkAgile MX」は小規模ユーザーに適している。一方でニュータニックスの「Nutanix AHV」をサポートした「ThinkAgile HX」は仮想マシンがある程度の台数稼働していたり、将来的には別の環境もマイグレーション移行をして増えたりする可能性があるような中規模から大規模ユーザーに適しているという。

医療現場でも使われる
信頼性とセキュリティ性

早川哲郎 氏
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズではVMware環境のHCIも継続的に提案している。早川氏は「継続してVMwareの利用を要望されるお客さまもいます。当社としても販売できる準備はできておりますが、いままで中堅中小のお客さまが使われていたライセンスはなくなっており、当社からは『VMware vSphere Foundation(VVF)』『VMware Cloud Foundation(VCF)』『vSphere Enterprise Plus』の3種類が、ハードウェアと一緒に提供できるライセンスになっています」と語る。
これらのHCIの中でも、ニュータニクスをベースにしたThinkAgile HXは非常に好調に推移しているという。医療現場にも導入が進むThinkAgile HXは、信頼性とセキュリティ性に優れたレノボ・エンタープライズ・ソリューションズのサーバーに、ニュータニックスの仮想化ソフトウェアが統合されていることで、迅速に展開でき、ハードウェアやアプリケーションの必要性に合わせた拡張も行える。コンテナ管理やエンタープライズAIにも対応し、導入後の拡張性も高い製品だ。小規模・エッジ環境には新ライセンス「NCI-Edge」がお薦めだという。
また、価格と手頃さを重視するのであれば、「Azure Stack HCI(S2D)」もお薦めだという。「Azure Stackそのもののライセンスで販売するよりも、Windows ServerのStorage Spaces Direct(S2D)機能を利用したAzure Stack HCI(S2D)として販売するケースの方が楽だったり、お客さまの手間もなかったりするため、これらの販売数が伸びていくのではないかと予想しています」と早川氏はThinkAgile MXのニーズを語る。

ONTPストレージで
膨大なデータにも対応
HCIは、仮想化環境における3Tier構成をシンプル化できるというメリットがあるが、その一方で既存の仮想環境で使用していた共有ストレージのデータ容量が膨大であるケースも存在する。その場合、HCI環境はサーバーの中にストレージが含まれるため、サーバーの台数を増やして対応することになる。「仮想マシンの台数が少なくても、ストレージの容量は必要というケースもあります。そういったお客さまに対しては、ONTPストレージとHCIを組み合わせた提案も行っています」と早川氏は語った。
こうしたHCI製品について、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズではキャンペーン価格を打ち出すとともに、販売パートナーへの支援も行っている。早川氏は「ダイワボウ情報システム(DIS)さまの地方の支店などと一緒に、セミナーなどを定期的に開催しています。全国各地で当社のソリューションを販売パートナーさまにお伝えする機会を増やしているところでです。また利用者となるユーザー企業さまにもダイレクトに当社のソリューションをお伝えするような活動も行っています。ニュータニックスはレノボが強い、と業界でも認知されており、幅広いお客さまにご提案できる体制を整えています。もっと小規模なお客さまに向けては、マイクロソフトの製品の拡販などに力を入れていく方針です」と語る。

HCIダイバーシティーで
顧客ニーズに合った選択肢を用意
BroadcomによるVMwareの買収によって、企業は今、さまざまな選択を迫られている。移行するのか、それとも継続して既存の環境を使い続けるのか。デル・テクノロジーズでは、「HCIダイバーシティー」をキーワードに、企業の多種多様な要件にマッチするソリューションを用意している。一体どのような選択肢で企業をサポートしていくのか。デル・テクノロジーズに詳細を伺った。
多様な製品ラインアップを展開
どんな変化にも対応
BroadcomによるVMwareの買収に伴って、企業を取り巻くITインフラ環境はどのような変化が生じているのだろうか。「VMwareの買収は多くのお客さまにとって、大きな混乱が生じる出来事となりました。自社のITインフラ環境を今後どうしていくのか、『移行を検討するケース』『現状の環境をそのまま使い続けるケース』など対応はお客さまによって大きく異なっているのが現状です」と話すのはデル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括部本部 マイクロソフト ソリューション部 システムエンジニア 南部憲夫氏だ。
そうした企業ごとに異なるニーズに応えるのが、デル・テクノロジーズである。「当社では『HCIダイバーシティー』というコンセプトを掲げています。これはお客さまの環境と要件に応じて、最適なHCIソリューションを提案できるポートフォリオです。『Nutanix AHV』『VMware ESXi』『Microsoft Hyper-V』といった環境を、お客さまの用途に合わせて提案できるように多様な製品ラインアップを用意しています」とデル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 マイクロソフトソリューション部 ビジネス開発マネージャー津村賢哉氏は話す。
同社では、HCIダイバーシティーを実現するため、ニュータニックス、VMware、マイクロソフトをはじめ、顧客の多岐にわたるニーズに応えるソリューションを展開している。「主要なハイパーバイザーをカバーしていることも当社の強みです」(南部氏)

安心かつ迅速な導入を実現
多種多様なニーズに応える

南部憲夫 氏
それでは、デル・テクノロジーズが提案する製品を見ていこう。まず、ニュータニックス環境に最適化したアプライアンスが、「Dell XC Core」と「Dell XC Plus」である。Dell XC Coreは、ニュータニックスソフトウェアとの検証実施済のコンポーネントで構成されたデル・テクノロジーズの「Dell PowerEdge」サーバーと、ニュータニックスのソフトウェアライセンスを分けて提供する。一方、Dell XC Plusは、Dell PowerEdgeサーバーに「Nutanix Cloud Platform」などで利用されるニュータニックスのソフトウェアライセンスを統合して提供するアプライアンスだ。「コンピューティング、ストレージ、ネットワークを統合したハイパーコンバージドシステムで、スケールアウトや拡張性に優れています。クラウド間でアプリケーションやデータを運用するための単一プラットフォームを提供しているため、管理しやすいことも特長です」(南部氏)
VMware環境を使い続ける企業に対しては、VMwareに最適化したアプライアンスである「Dell VxRail」の提供を継続して行っていく。「Dell VxRailはVMwareとの共同開発によって誕生した業界唯一のHCI製品です。サーバー、ハイパーバイザー、管理ツールといった仮想基盤に必要なコンポーネントを全てパッケージ化しています。また、当社は『Broadcom Value-Add OEM(VAO)』というOEM契約を結んでいます。従来と同様、今後も変わらず保守サポートを提供していきます。ハードウェアとソフトウェアの保守サポート窓口が1本化されているため、お客さま側で一次切り分けをする手間もなく、トラブル発生時も安心です」(南部氏)
マイクロソフト環境に最適化した製品として提供するのが、「Dell Integrated System for Microsoft Azure Local」だ。この製品では、2種類のHCIモデルを選択できる。「Microsoft Azure」とのハイブリッドクラウドを実現するための専用OSである「Azure Local」とMicrosoft Azureとの接続を必要としない「Windows Server Datacenter」を利用するオンプレミスモデルの「Windows Server HCI」だ。「マイクロソフトと当社で動作検証済みのモデルを用意し、構成や注文を簡素化したことで、安心かつ迅速な導入を実現します。Microsoft Azureとの連携が可能な最先端のハイブリッドクラウド基盤です」(津村氏)
そしてデル・テクノロジーズでは、ハイパーバイザーに依存しないソフトウェアディファインド型のブロックストレージ「Dell PowerFlex」を展開する。「VMware、Microsoft Hyper-V、Linux KVMなどさまざまなハイパーバイザー環境をサポートしており、構成もHCIのようなシングルレイヤー(ストレージ・コンピュートを一体化)だけでなく、2レイヤー(ストレージとコンピュートを分離)にも対応しています。柔軟性、拡張性、そして非常に優れたパフォーマンスを発揮できる当社、一推しのSDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)製品です」(南部氏)

プラットフォーム全体を管理
一貫性のある運用を提供

津村賢哉 氏
クラウドのみで運用するのではなく、オンプレミスとの併用を図りたいと考える企業も多いだろう。それを実現するのがマルチクラウド、ハイブリッドクラウド環境をシンプルに管理し、運用を効率化することを目的とした「Dell APEX Cloud Platform」だ。この製品ではAzure Localと「Red Hat OpenShift」の二つのモデルに対応しており、同社のハードウェアインフラ、ソフトウェア、クラウドオペレーティングスタックを統合した形で提供する。導入、運用管理に工数や時間をかけることなく、クラウドで使い慣れた環境をそのままオンプレミスやエッジへスムーズに延長し、ハイブリッドクラウドを容易に実現できるという。「ハードウェアが標準化され、一つのツールでプラットフォーム全体を自動化できるため、運用管理を効率化できます。昨今、お客さまからの問い合わせも増えています」と南部氏は話す。
デル・テクノロジーズでは、顧客に寄り添ったサービス展開のみならず、販売パートナーに向けた支援も行っている。「パートナー各社に向けて、我々の製品を深く知ってもらうため、YouTubeの公式チャンネルで『HEROES徹底攻略塾』を公開しています。デル・テクノロジーズの製品の良さをさらに知っていただき、販売パートナーさまと共にビジネスを加速させていきたいと考えています」と津村氏は意気込みを語る。
デル・テクノロジーズでは、HCIダイバーシティーをキーワードに、今後も企業の多種多様な要件にマッチする製品を展開していく予定だ。