※1 マイクロソフト調べ

 長年にわたって慣れ親しんできたWindows 10のサポートが2025年10月14日に終了する。2025年10月14日以降はWindows 10上で生じる、いかなる問題にもマイクロソフトからのサポートを受けることはできなくなる。
 またこれまで定期的に提供されてきたセキュリティを強化するための修正プログラムおよび追加プログラムも、ESU(Extend Security update)を有償契約していない限り、提供されなくなる。

 サポート終了後であってもWindows 10を引き続き利用することは、もちろん可能だ。しかしサポート終了以降もWindows 10を使い続けるならば、そのPCはサイバー攻撃に対して無防備となり、攻撃者の格好の餌食となってしまう。
 本稿の公開時点で期限まであと10カ月。個人ユーザーならばWindows 11へのアップグレードやWindows 11搭載PCの買い替えによって、すぐにWindows 10のサポート終了に対処できるだろう。しかしたくさんのPCを日々の業務で使用している企業ではそうはいかない。ビジネスで使用しているWindows 10環境をWindows 11環境へ移行するには、「420日」(※2)もかかることを覚えておきたい。

 「まだ10カ月もある」ではなく「出遅れた」という認識で、Windows 10からWindows 11への移行を進めてほしい。このコーナーでは残されたわずかな期間で、Windows 10からWindows 11へスムーズに移行する方策を3回にわたってアドバイスする。
 教えてくれるのは日本マイクロソフトで法人向けWindowsビジネスに携わるデバイスパートナー ソリューション事業本部 マーケティング本部 Commercial Windows 戦略部 部長の仲西和彦さんだ。本業の傍ら長野県の自宅の庭で家庭菜園に勤しむ仲西さんは、旬の野菜に愛情を注いで立派に育てている。
 そんな仲西さんだから「今さら恥ずかしくて聞けない」ような相談にも、野菜を愛でるように優しく応じてくれるはずだ。それではWindows 11に乗り遅れて、どうしていいのかわからず困り果てている企業のIT担当者を代表して、宮本さんの相談を聞いていきましょう。

※2 Windows 7からWindows 10への移行にかかった期間の世界の企業の平均期間・マイクロソフト調べ

日本の企業の多くが
Windows 11への移行を進めているのに
あなたの会社はどうして出遅れているの?

聞く人:Windows 11への移行が遅れている企業でITを担当する宮本さん

仲西さん●間もなく年が明けて2025年を迎えるけど、宮本さんの会社では2025年を迎える準備は済んでいるのかな?

宮本さん●2025年を迎える準備って、今年の抱負とかですか? とりあえず毎年の年初めは気合いだけは入れていますが・・・

仲西さん●でも気合だけではどうにもならないことがたくさんあるからね~。その一つがWindows 10のサポート終了への対応。2025年10月14日までにWindows 11へ移行しないと、仕事で使っているPCのセキュリティリスクがヤバくなっちゃうよ。

宮本さん●うわっ、それは怖すぎる。でもあと10カ月もあるし、ほとんどの会社はこれから対応に着手するんでしょ?

答える人:「家庭菜園マイスター」の異名を持つ
日本マイクロソフト
デバイスパートナー ソリューション事業本部
マーケティング本部
Commercial Windows 戦略部
部長
仲西 和彦 さん

仲西さん●いやいや、今回のWindowsのアップグレードのペースは意外と速くて、MM総研さんの2024年9月の調査では国内企業で稼働するOSの割合が、2024年下期にWindows 11が60%近くを占めると予測されているんだよ。この調査結果にはWindows以外のOSも含まれているけど、その割合の中でWindows 10は30%を下回っているから、Windows 11への移行がかなり進んでいることがわかるよね。

宮本さん●え~、そんなに進んでいるんですね。うちの会社は完全に出遅れ組だ。でも仕事で使うPCだから、今使っているWindows 10環境をWindows 11環境に変えると動かなくなるアプリが出てきそうで不安なんですよね。

仲西さん●宮本さんの会社では、どうしてもっと早くからWindows 11への移行に着手しなかったのかな。というか、まだ着手すらしていないけどね。

宮本さん●痛いところを突きますね・・・うちの会社は中小企業なので、社内のWindows 10搭載PCを一気に入れ替えるためのまとまった予算を確保するのが難しいんですよね。あとはやっぱりアプリが動かなくなる不安ですね。仕事ができなくなってしまいますからね。

宮本さん、どうしてWindows 11への移行に着手していないの?

仲西さん●予算の確保はどこも苦しいから仕方ないけど、サポート終了後もWindows 10を使い続けてサイバー攻撃を受けて被害が出たら、PCを入れ替える予算よりもはるかに大きな損失が生じる恐れがあるからね。

宮本さん●それはわかります。新聞やネットニュースでよく報じられてますからね。でもアプリが動かなくなる不安は大きいです。5年ほど前にWindows 7のサポートが終了してWindows 10に移行したとき、たくさんのアプリが動かなくなって大混乱しました。そのトラウマが今も癒えず、Windowsのアップグレードには不安しかないんですよね。

仲西さん●その節は本当にご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。でもね、その経験から学んで今回のWindowsのアップグレードは万全の準備で臨んでいるので、アプリの互換性に関して安心してWindows 11へお進みください。

Windows 10で動くアプリの99.7%が
Windows 11でそのまま動いている事実

宮本さん●安心して、と言われても証拠がないと納得できないですね~。

仲西さん●そうですよね、ではこれでどうでしょう。Windows 10で動いているアプリ(企業や組織が独自開発したアプリは除く)の99.7%がWindows 11で何の修正もせずに、そのまま動作するという検証結果がワールドワイドで公開されています。

宮本さん●99.7%ですか! ほんとに!? 99.7%という数字には安心感がありますが、その数字の根拠がわからないので、なんか言ったもの勝ちみたいな感じもしないでもないですね。

仲西さん●もちろんきちんと検証したので根拠はありますよ。まずマイクロソフトでは世界中でWindows 10搭載PCが何台稼働しているのか、さまざまな調査から把握しています。これで分母が確定しますね。そしてWindows 10からWindows 11へ移行した際にアプリの動作に問題が生じた場合、解決策の助言を得られるApp Assureというサービスを提供しています。これはWindowsユーザーならば誰でも無償で利用できますので、仮に問題が生じた場合、窓口に連絡が入ることになります。その件数を集計して分子として算出した結果が、99.7%というアプリの互換性の根拠です。

宮本さん●数字では確かに互換性にほぼ問題はないように見えますが、実際はどうなんですか?

仲西さん●先ほども申し上げた通り日本でもWindows 11への移行が進んでおり、特に大企業ではほとんどのユーザーでWindows 11への移行が完了、あるいは進行中です。大規模な移行プロジェクトが多数進められている中で、これまで動かないアプリがあったと聞いたことは一度もありません。
 99.7%という数字は1,000種類のアプリのうち、たった3本のアプリの動作に問題が生じるかもしれないということであり、全てのアプリが問題なく動くとは言いませんが、動かないアプリに当たる確率は非常に低いのです。
 もしも万が一、アプリの互換性に問題が生じたら、その時に対処すればいいじゃないですか。何もしていない状況でアプリの互換性が不安と思い込んで、やらなければならない課題を先送りする方が危険です。何しろ2025年10月14日を過ぎたら、誰も助けてくれなくなるかもしれないですからね。

アプリの互換性で問題が生じることはない!と言いたいくらい安心してください。
まずはWindows 11への移行に向けて行動を始めてください。

宮本さん●なんだか、何もしていない今の状況が怖くなってきました。まずは行動を始めることが第一歩ですね。でも行動したとして、まだまだ不安や疑問があります。

仲西さん●納得がいくまで何でも答えますよ。さあ、次のご相談に進みましょう。

(第2回記事につづく)