報道やスポーツ取材で使われるカメラレンズの性能は高く、遠い距離の被写体をスマートフォンのカメラレンズよりも奇麗に写せる。しかしその分価格も高いので、マスコミやカメラマンなど業務で頻繁に撮影を行う職種以外は、高価なカメラやカメラレンズを手軽に持ち運べないだろう。そうした常識を覆して、手軽に持ち歩けるスマートフォンのカメラレンズ性能を強化してくれるガジェットが、エレコムが提供するスマートフォン用の望遠8倍カメラレンズ「P-SLZ8XBK」だ。
text by 森村恵一
エレコム
P-SLZ8XBK
スマホで奇麗に8倍ズーム撮影
望遠8倍のスマートフォン用カメラレンズ「P-SLZ8XBK」は、付属の専用クリップを使ってスマートフォンのレンズ部分に装着する。専用クリップにはネジが付いていて、スマートフォンに挟んだ後はしっかり締めて固定が可能だ。固定したら、レンズを回しながら取り付けるだけで良い。クリップの挟み幅は、奥行き方向が最大約15mm、縦方向が最大約35mmになっている。
P-SLZ8XBKは手動でピントを合わせる構造になっている。専用クリップは、スマートフォンの保護カバーを外した方がよりしっかりと固定可能だ。エレコムでは、カバーを取り付けていない状態のiPhoneであれば全機種で専用クリップの装着ができることを確認しているそうだ。
高性能なスマートフォンが高価な理由の一つに、光学ズームレンズが搭載されていることがある。しかし頻繁にズームの撮影を行わない場合、光学ズームレンズを理由に社内スマートフォンを高性能なものにするのは、予算的に難しいケースもあるだろう。そうしたときに7,656円(税込)で8倍ズーム撮影が行える本製品は、良い選択肢の一つだといえる。


SNSで注目を集める望遠レンズ
エレコムによれば、スマートフォンのカメラ性能を向上させるレンズの需要はSNSにあったという。コロナ禍以前のライブでは、楽曲の著作権やアーティストの肖像権を守るために、撮影禁止のイベントが多かった。それに対して海外のアーティストは、ライブでスマートフォン撮影が可能な時間を設けるケースがあった。そうした文化に影響を受け、近年は日本のアーティストでもライブで撮影OKの時間を設けるケースが増えてきている。そうしたムーブメントに対して、スマートフォンの標準カメラでは臨場感のある写真が撮影できない。P-SLZ8XBKは、こういったニーズに効果を発揮するのだ。
実際のところエレコムのスマートフォン用カメラレンズが注目されたきっかけは、望遠16倍レンズの「P-SLZ16XBK」にある。同社が2024年9月にX(旧Twitter)へ投稿した写真が、多くの注目を集めたのだ。それは、同社社員が野球観戦でP-SLZ16XBKを使用し、選手を撮影した写真だ。外野のかなり端の席で撮影したにもかかわらず、背番号までくっきり分かるほど鮮明な拡大写真になっている。このポストが公開された後、P-SLZ16XBKが品切れになったという。


※OPPO Reno3 Aの標準カメラで撮影。
警務や工事現場での活用を想定
P-SLZ16XBKも魅力的だが、今回レビューした8倍ズームのP-SLZ8XBKがあれば、取材や広報活動で困ることはない。記者会見をはじめ、自社のイベントで登壇者を撮影するなど、スマートフォンの標準カメラでは鮮明に写せない遠くの被写体をしっかり捉えられる。
そうした性能に注目して、広報のほかに警務での現場写真の撮影といった用途で提案が検討されている。ほかにも、工事現場での高所の確認作業における活用も想定している。ちなみにP-SLZ8XBKは、付属の望遠鏡用カバーをレンズの溝に装着すると、望遠鏡としても利用可能だ。つまり、事前に望遠鏡の状態で観察対象を捉えておき、その写真を記録して他者に送りたいと思ったら、P-SLZ8XBKをスマートフォンに装着して撮影すれば良い。もし一眼レフカメラで同様のことをしようとすれば、撮影後に写真データをPCやスマートフォンに保存しなければならない。この手間を考えると、コンパクトなレンズ一本で、撮影から送信までをスマートフォンで完結可能なメリットは大きい。
P-SLZ8XBKのF値は2.0で、今回試用した印象としては、かなり鮮明に遠くの被写体を写し出しているように感じた。最近のスマートフォンは手ぶれ補正の機能も充実しシャッタースピードも速いので、8倍ズームレンズを用いた撮影でも手ぶれの心配は少ない。それでもより確実に撮影したいのであれば、エレコムから販売されているスマートフォン用三脚を使うと良いだろう。P-SLZ8XBKを利用すれば、手軽に高性能なカメラを持ち歩く体験ができるのだ。