DIS EOS Caravan イベントレポート

定期的に迎えるOSのサポート終了はPCリプレースを促進するなどの大きなビジネスチャンスをもたらしてくれる。しかし一方で期限間際にPCリプレースが集中し、デバイスの調達やエンジニアの確保が間に合わず、受注を逃してしまうケースも生じていた。またリプレースが一巡すると、その反動で需要がしばらく落ち込むという課題もあった。そうした課題を解決してパートナーのビジネスを伸ばすためのイベント「DIS EOS Caravan 2025 in 大阪」がインテルと日本マイクロソフト、そしてダイワボウ情報システム(DIS)の3社の共催で、2月18日にウェスティンホテル大阪で開催された。会場で紹介されたWindows 10サポート終了に伴って生じるビジネスチャンスと、Windows 11へのスムーズな移行を促進する方策、そしてAIの利活用が生み出す次のビジネスについて各社の講演をレポートする。

Windows 10サポート終了が生み出すビジネスチャンスを逃さず捕らえAIの利活用を次のビジネスにつなげる

期限まで8カ月を切っているが
法人市場に大きな需要が残る

 Windows 10のサポートは今年10月14日に終了する。DIS EOS Caravan 2025 in 大阪が開催された2月18日時点で、残された期限は8カ月となる。開会の挨拶に登壇したDIS西日本営業本部 関西営業部 部長 難波祐介氏はまず、Windows 10のサポート終了の期限までわずかな期間となった現在も、大きなビジネスチャンスが市場に残っていることを指摘した。

 そしてWindows 11への移行に向けてマイクロソフトとインテルが提供する製品やサービスを紹介するとともに、パートナーのビジネスを支援するDISの電子商取引(BtoB)システム「iDATEN(韋駄天)」や取引先向けライセンス契約管理ポータル「iKAZUCHI(雷)」、そしてWindows 11への移行作業およびWindows 11搭載デバイスの管理をリモートによるゼロタッチで、効率良くスピーディーに実施できるマイクロソフトのWindows Autopilotを活用するための認定取得支援プログラムなどを紹介した。

 続いて日本マイクロソフトが法人市場での販売戦略、Windows 10 EOS(サポート終了)に向けた2025年の取り組みと、Windows 10 EOS後を見据えた取り組みについて同社の業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 副事業本部長 大日方宏樹氏と、デバイスパートナーセールス事業本部 マーケティング戦略本部 Commercial Windows 戦略部長 仲西和彦氏が登壇した。

 EOSに向けた取り組みについて大日方氏は「法人市場のOS移行状況」と「Windows 11 Proの利点」「販促ツール・プログラムの紹介」の三つのテーマで説明した。

 まずIPA(情報処理推進機構)のWebサイトを示しながら「Windows 10のサポート終了後はセキュリティ更新プログラムが提供されなくなるためセキュリティリスクが高まることや、Windows 10だけではなくその上で動いているアプリケーションもサポートが順次終了していくため対策が必要だと訴えるなど、業界全体でWindows 10のサポート終了に向けてWindows 11への移行を促進しています。それほどビジネスチャンスが大きいのです」と強調した。

 そして2025年1月時点で法人市場に1,700万台※1のデバイスでWindows 10 Proが稼働しており、そのうち700万台※1のデバイスがWindows 11 Proへのアップグレードに非対応だと指摘した。またその700万台のうち270万台※1が大企業で、420万台※1が中小企業で稼働していると説明し、Windows 10 EOSに伴うWindows 11への移行で生じるビジネスチャンスの規模感を示した。

ダイワボウ情報システム
西日本営業本部
関西営業部 部長
難波祐介
日本マイクロソフト
業務執行役員
デバイスパートナーセールス事業本部
副事業本部長
大日方宏樹
日本マイクロソフト
デバイスパートナーセールス事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows 戦略部長
仲西和彦

Windows 11 Proがもたらすメリットと
+デバイス、+サービスで移行を促進

 ビジネスユースにおいてWindows 11 Proへの移行が必要な理由はWindows 10 EOSへの対応だけではない。Windows 11 Proを使うことで得られるメリットが大きいことも挙げられる。具体的にはセキュリティリスクの軽減と競争力の維持、効果的なコスト管理などだ。

 大日方氏は「Windows 11 ProではWindows 10 Proに対してセキュリティインシデントの発生数が62%削減※2されます。またWindows 11 Pro搭載デバイスは最新のAI機能を提供し、ビジネスでの分析力や効率の向上に役立ちます。その結果、3年間のWindows 11 Pro搭載PCの導入および運用の費用対効果はROI 250%※3に達します。また古いデバイスは維持に時間がかかり、セキュリティリスクへの対策、対応にはコストがかかる可能性があるなど、従業員の生産性と満足度を低下させる要因となります」と説明した。

 さらにWindows 11 ProではWindows 10 Proで動作しているアプリケーションの99.7%※1が動作する高い互換性が確認できているとアピールした。そして日本マイクロソフトが販売店向けに提供している、Windows 11 Proへの移行作業とデバイスの管理を効率化するWindows Autopilotを活用するための認定プログラムを紹介した。

 Windows 10 EOSに伴うビジネスの収益拡大に向けて大日方氏は「Windows 11 Proへの移行だけを提案するのではなく、Copilot+ PCの導入やWindows Serverのリプレースなどハードウェアの提案を組み合わせたり、Microsoft 365およびMicrosoft 365 Copilotによる業務効率化の提案や、Windows Autopilotによるデバイスの管理の効率化といったクラウドサービスの提案を組み合わせたりするなど、+デバイス、+サービスのバンドル販売を推進してください」とアドバイスした。

需要ピーク後の大きな需要後退
AIの利活用促進で需要を喚起

 続けてWindows 10 EOS後を見据えた取り組みについて仲西氏が「PCの販売」「PCの展開」「PCの管理」の三つのテーマで説明した。まずPCの販売について過去のデータを示しながら「サポート終了に伴うOS更新後にはこれまで大きな需要後退が生じました。Windows XPとWindows 7のEOSではそれぞれPCの出荷台数が約36%減少しました。今回のWindows 10 EOSでは今年をピークに来年はPCの出荷台数が約40%減少すると予測されています」と、Windows 10 EOSに伴って大きなビジネスチャンスが生じる一方で、その反動による課題も大きいことを指摘する。

 その対策として「Copilot+ PCの拡販」を提案した。Copilot+ PCはAI処理に特化した省電力なプロセッサーである「NPU」を搭載しており、Copilot+ PCでは40TOPS(Tera Operations Per Secondの略。40TOPSでは1秒間に40兆回の演算が実行できる)以上の性能を備えるNPUが搭載されている。

 仲西氏は「Copilot+ PCはWindows PC史上で最も高性能なPCであり、Copilot+ PCのみで利用できるAI機能が提供され、ユーザーは生産性と創造性を高められます。またセキュリティプロセッサーを実装するなど、ハードウェアとソフトウェアの両面でセキュリティ対策が講じられています」と説明する。

再イメージング権の変更とWSUS廃止に
Windows AutopilotとIntuneで対策

 さらにWindows 10 EOS後の課題として「再イメージング権の変更」と「WSUS廃止」の二つを挙げた。再イメージング権の変更とは、CSPライセンスに再イメージング権が昨年1月より付与されなくなったことだ。ただし再販(インダイレクトプロバイダー)商流に限って2026年6月末までCSPライセンスでの再イメージングが継続されている状況となっている。

 2026年7月からは再イメージング(カスタムイメージ作成)とクローニングおよびキッティングで用いるMAK(Multiple Activation Key)キーの申請にはボリュームライセンスが必要となる。

 その対策として仲西氏はWindows AutopilotとIntuneを組み合わせたWindows PCのゼロタッチ展開・管理の導入を紹介した。仲西氏は「ゼロタッチはWindows 10 EOSに伴うWindows 11 Pro搭載PCの導入・展開に伴う作業やコストを大幅に削減するだけではなく、導入後のPCの管理や追加導入も効率化でき、顧客を囲い込むことにも寄与します」とメリットを強調した。

 またWindowsの更新プログラムを集中管理して社内のPCに効率的に配布するツールであるWSUS(Windows Server Update Services)については、昨年9月にマイクロソフトはWSUSの新機能の開発を終了し、既存の機能のみを維持することを発表した。この発表によりいずれはWSUSが廃止されるとみられ、またWSUSが今後のWindows OSとその上で動作するアプリケーションとの互換性が徐々に低下し、利用できなくなる可能性もある。

 仲西氏は「Intuneを使えばWSUSが不要でWindows Updateが管理できます。さらにデバイスの一括設定やアプリの自動配信、デバイスのアクセス制御など、デバイスのライフサイクル全体を管理できる環境がIntuneを中心に実現できます。WSUS廃止を知らないユーザーも多く、今後はIntuneへの移行提案というビジネスチャンスも期待できます。+デバイスや+サービスのバンドル提案と、CSP再イメージング権の変更とWSUS廃止への対策としてのWindows AutopilotとIntuneの提案など、Windows 10 EOSに付随するビジネスチャンスも逃さず獲得してください」とアドバイスした。

AIはクラウドとPCのハイブリッド化
PC市場でAI PCが占める割合が伸びる

インテル
アカウント・パートナー事業本部
副本部長
栗原和久

 Windows 10 EOSに向けて、そしてEOS後を見据えたビジネス展開に向けて、インテルのアカウント・パートナー事業本部 副本部長 栗原和久氏が同社のNPU搭載プロセッサーである「インテル Core Ultra プロセッサー」および「同シリーズ2」を搭載するAI PCがもたらすメリットを解説した。

 インテルではAIの普及に向けて「AI Everywhere」という戦略を推進している。これはAIをあらゆる場所で活用することを目指した取り組みで、その実現に向けてインテルはクラウドからデータセンター、エッジコンピューティング、そしてPCまでの幅広い領域でAI向けプロセッサーを提供するとともに、AIワークロードの開発を支援するソフトウェアも提供している。

 栗原氏は「AI PCはAIを使うためだけのPCではありません。PCとしても高性能であることがインテルの定義するAI PCの要件です。PCで使われている多数のアプリケーションにAIが組み込まれており、AIとML(言語モデル)はすでにPCに普及しています。今後AIワークロードはクラウドとPCで分散して処理することが一般的になり、AI処理性能の高いPCの需要が伸びるとみています」とAI PC市場の展望を語った。

 最後にビジネスでPCに求められる生産性、セキュリティ、管理性、安定性を提供するインテル vPro プラットフォームを紹介し、昨年7月に世界中で発生したブルースクリーン問題の際に、インテル vPro プラットフォーム搭載PCはリモートで速やかに修復されて業務への損害を最小限に抑えた事例を交えてアピールした。

WSUS廃止への対策:Intuneによるライフサイクル管理

※1 マイクロソフト調べ
※2 Techaisle Client PC report 2024年9月
※3 Forrester Research TEI report 2024

三つのテーマで分科会も開催
AI PCとCopilot+ PCのメリットを体感

「DIS EOS Caravan 2025 in 大阪」ではセミナー終了後に会場を三つのコーナーに区切り、「Copilot+ PC最新デモ」「業務を変えるMicrosoft 365 Copilot」「最新のAI PC、Copilot+ PC体験」の三つのテーマで分科会も開催され、来場者全員が全てのコーナーを受講した。

Copilot+ PC最新デモ

日本マイクロソフト
デバイスパートナーセールス事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows 戦略部長
仲西和彦

日本マイクロソフトの仲西氏が講師を務め、Copilot+ PCで利用できる新しいAI機能を実際に操作しながら説明した。自分のPCで操作した画面が全て記録される「リコール」を使って過去の情報を素早く探し出して、効率良く作業を進める使い方や、手書きのイラストや図からプレゼンテーションの資料に使える画像を生成するペイントアプリに搭載されたAI画像生成機能「コクリエーター」の使い方、会議やビデオ通話中の音声をリアルタイムで字幕として表示する「ライブキャプション」の使い方などが紹介され、Copilot+ PCでのAIのローカル処理のスムーズさを体験した。

業務を変えるMicrosoft 365 Copilot

日本マイクロソフト
パートナー事業本部
コーポレートソリューション統括本部
パートナーソリューション本部
パートナーソリューションマネージャー 関西/中部エリア
図司享三

日本マイクロソフトの図司享三氏が講師を務め、日本マイクロソフトで実際に行われているMicrosoft 365 Copilot(以下、Copilot)の業務での活用方法を紹介した。会議中に出た知らない言葉をCopilotにその場で聞いて素早く対処する事例や、会議や商談をリアルタイムでのテキストで記録して、その内容からCopilotに議事録やToDoリスト、顧客への提案書などのドラフト作成をさせる事例、上司や先輩に言いづらい改善案を自分に成り代わってCopilotに指摘させて改善を促進する事例など、とにかくなんでもCopilotにやらせる「コパる」ことが使いこなしのコツであることを体感した。

最新のAI PC、Copilot+ PC体験

最新のAI PC、Copilot+ PC体験コーナーにはPCメーカー各社のAI PCとCopilot+ PCの実機が展示され、来場者が実際に操作してMicrosoft 365 CopilotやCopilot+ PCのAI機能を体験した。
最新のAI PC、Copilot+ PC体験コーナーにはインテル vPro プラットフォーム搭載AI PCの実機も用意され、ブルースクリーン状態となった2台のPCをリモートで復旧するデモが行われた。