ダイワボウ情報システム(DIS)が主催する総合展示会「DIS ICT EXPO」の2024年度は大阪を皮切りに岡山、札幌、福井、仙台と全国を回り、2月14日に締めくくりとなるイベントが名古屋駅前にあるウインクあいちで開催された。ビジネスでの活用が拡大する生成AI関連をはじめ、新しいPCのカテゴリーであるAI PCと、そのクラスの一つであるCopilot+ PCなど、これからのビジネスチャンスが期待できる製品やソリューションが数多く出展された。ここではDIS ICT EXPO in 名古屋の会場から注目のセミナーと製品を紹介する。

Seminar Report
生成AIの実践的活用術

営業の1日をスマートに変える!
Microsoft 365 Copilotの実践活用法

 ChatGPTが公開されてから2年以上、マイクロソフトのCopilotがリリースされてから1年以上が経過し、生成AIを活用して成果を得ている企業が増えている。その一方で生成AIの活用は必要と分かりつつ、どのような業務でどのように活用すべきかが分からず、具体的な取り組みが進んでいない企業も少なくない。

 こうした悩みを持つ企業に対してDISの販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部 部長 塚本小都氏と、DISの販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部 ライセンスセンター 係長 坂本 旬氏の二人が登壇し、営業職の1日の業務でのMicrosoft 365 Copilot(以下、Copilot)の具体的な活用方法を示しながら顧客への提案をアドバイスした。

 まず塚本氏は生成AIの基礎知識として進化の過程と現状について解説した。ChatGPTが公開された当初は入力したテキストから、質問の回答やプログラムのコードをテキストで生成したり、絵や写真などを生成したりしていたが、その後は絵や写真、音声などが入力できるようになり、さらに現在は映像や画面をユーザーとAIが一緒に見ながら、対話できるまでに進化していると説明した。例えばゲームの画面を見てリアルタイムでAIが攻略法を教えてくれたり、AIが会議に参加して意見やアドバイス、分析などをリアルタイムで提示してくれたりする。

 こうした進化は生成AIサービスに反映され、Copilotにおいても追加料金を支払うことなく進化したAIを利用できるメリットがある。そして塚本氏は「オンプレミスのパッケージアプリケーションでは業務がどのくらい効率化できてコストがどのくらい削減できるなどの効果が予測可能です。それに対して生成AIは導入後に活用すればするほど効果を伸ばすことができます。導入して終わりではなく、導入後の活用を増やすことが重要です」とアドバイスした。

使えば使うほど成果が伸び続ける
投資額は1週間で30分の残業減で回収

 日々の業務で生成AIをどのように活用すれば効果を引き出せるのかについて、DISの坂本氏が同社の営業職の1日の業務を例に挙げて解説した。

・チャット
出社したらまずその日に行う業務をCopilotに入力し覚えさせていく。メールの確認、キャンペーンのメルマガ作成、案件対応、顧客に提出する提案資料の作成、上司との打ち合わせ、議事録の作成など、その優先度すらも相談する。
CopilotはOutlookやWord、ExcelなどのMicrosoft 365アプリケーションと連携しているため、ユーザーの予定表を参照して業務計画を提案してくれる。

・チャット & Outlook
確認すべきメールもCopilotが日々読み込んでいるため、未読のメールから重要な項目をリストアップさせたり、やりとりが多いメールを要約させたりして効率化と漏れの防止を図る。

・Word & Outlook
返信が必要な場合はCopilotにひな形となる文章を作成させ、メルマガの作成は対象となる製品やキャンペーンの情報をPDFなどのファイルを直接読み込ませるなどして作らせる。

・PowerPoint
顧客への提案に必要なプレゼン資料も、提案する顧客の課題や、提案する製品の情報などをCopilotに読み込ませて自社テンプレートを適用して作らせる。

 坂本氏は「とにかくなんでもCopilotと話すことが大切です。またCopilotが作ったものに対して、さらに要望を伝えてブラッシュアップする対話も重要です。Copilotは使えば使うほど効果が上がります」と説明した。

・チャット & Excel
Excelファイルの数値に対して難しい関数を使うことなく、Copilotに分類、分析をテキストや音声で指示することで代行してくれることや、3年分の決算書をCopilotに読み込ませて傾向や分析を短時間で把握できることなどを、実際のデモを見せながら説明した。

・Word
ホワイトボードに手書きされた文字や図を撮影し、その画像から文字とその位置関係を認識して意味を導き出すデモも興味深かった。しかも手書きの難解な文字も認識していた。

・Teams
若手が対応したリアルでの商談も同行できなかった上司がTeamsのCopilotと会話し内容を短時間で把握、その後、再度Copilotとやりとりし若手との打ち合わせをセットさせる流れなど、育成活用アイデアもあった。人員やリソース問題に対する多くのアプローチが垣間見えた。

 最後にCopilotの導入コストについて顧客への説明の仕方をアドバイスした。Microsoft 365 CopilotはMicrosoft 365に追加導入となるため、Microsoft 365の利用料金に1ユーザー当たり年間5万4,000円の追加負担が必要となる。

 塚本氏は「追加負担は1日約230円となり、1週間で残業が30分減れば投資額を回収できます(残業代の時給を2,000〜3,000円とした場合)」と説明した。

 そして「現在、会社にスマートフォンを導入する際に、その投資効果を問う人はいません。なぜなら必須だからです。生成AIもすぐにそのようになります」と強調した。

ダイワボウ情報システム
販売推進本部
クラウド・アプリケーション販売推進部
部長
塚本小都
ダイワボウ情報システム
販売推進本部
クラウド・アプリケーション販売推進部
ライセンスセンター 係長
坂本 旬

Seminar Report
AI活用時代のサイバーセキュリティ対策

サイバーセキュリティの最前線
〜ホワイトハッカーの視点で見た脅威と防御策〜

東京大学先端科学技術研究センター
客員研究員
多摩大学ルール形成戦略研究所
客員教授
西尾素己

 登壇した西尾素己氏は小学生より独学でホワイトハッカーの活動を開始し、14歳でドイツベルリンを拠点とするハッカー集団の老舗「Chaos Computer Club e.V.」に加入して年間200件ほどの脆弱性を発見、19歳で情報セキュリティ国際会議に最年少で登壇するなどサイバーセキュリティにおいて幼少の頃よりグローバルで活躍している。

 そして2016年、20歳でデロイトトーマツコンサルティングにシニアコンサルタントとして入社し、現在は東京大学先端科学技術研究センターで客員研究員を、多摩大学ルール形成戦略研究所で客員教授を務めている。

 講演の冒頭に西尾氏は「最近はAIが注目されていますが、そのAIとサイバーセキュリティを組み合わせて、例えば会社名を入力してクリックするだけでAIが自動的にサイバー攻撃を実行する、このような話を聞いて皆さんはどう思いますか。実は5年から7年前に、すでに技術的に可能でした」と話した。

 しかしAIを利用したサイバー攻撃の脅威はこの程度ではないと指摘する。そしてサイバー攻撃の一連の過程を指す概念であるキルチェーンを示し、AIを利用して攻撃を高度化していることを説明した。

 例えば攻撃者は攻撃対象がどのようなアプリケーションを使っているのかを調べ、そのアプリケーションの脆弱性を探して攻撃ツールを作る武器化にAIが利用されているそうだ。アプリケーションのプログラムのコードは難読化するなど解析されないように工夫されているため、それを解析して脆弱性を探し出すのは高度なスキルと労力、時間が必要となる。しかしAIを利用すると短時間で脆弱性を特定できる。

 さらに脆弱性が発見されると開発者はパッチプログラムを公開して対処するが、攻撃者は公開されたパッチプログラムをAI で解析して脆弱性を短時間で把握し、攻撃に利用するという。西尾氏は「パッチプログラムが公開されてからどのくらいの期間で適用していますか。ユーザーが適用するまでの間を狙って攻撃してきますので、緊急性の高いパッチプログラムはできる限り早く適用すべきです」とアドバイスする。

攻撃のAI利用でゼロデイ対策が必須に
セキュアなPCを選ぶことも重要な対策

 前述の武器化にAIを利用することでプログラムの脆弱性を探す作業が非常に低コストでできるようになった。その結果、脆弱性の情報の価値が暴落しているという。脆弱性の情報をメーカーが買い取るグレーマーケットがあり、例えば年間10件から15件の脆弱性を見つけて15億円で販売するケースが以前はあった。しかし現在、その価値は数分の一と大幅に下がっている。その原因について西尾氏は次のように解説した。

「これは需要と供給のバランスが崩れた結果であり、需要が減るわけはなく、AIを利用したことで脆弱性が容易に見つけられるようになり、供給が過多になっているのです。これまでは規模の大きな企業や組織が狙われがちでしたが、これからはゼロデイをばらまいて収益を得るビジネスモデルに変わっていきます。ですから中小企業もゼロデイ対策が必須なのです」

 続けてパッチマネジメントの世界も大きく変わると指摘する。パッチプログラムが公開されると攻撃者はAIを利用して解析し、数時間から数日で攻撃用のコードを作成して攻撃する。西尾氏は「公開されたパッチプログラムを迅速に適用するだけではなく、ゼロデイ対策を講じていなければ太刀打ちできない状況になっています」と警告する。

 続いてユーザーが利用しているAIへの攻撃について説明した。ある企業から脆弱性の調査を依頼され、西尾氏はRPAツールを通じて生成AIにプロンプトを入力することで、その企業の経営データ 140GBほどをSaaSのストレージにコピーできたという。しかも経営データが外部ストレージに不正にコピーされたことを、その企業は気付かなかった。

 西尾氏は「このケースでは大量かつ大容量のファイルが外部にコピーされているにもかかわらず、それを検出できなかったことも問題です。これはEDRやXDRが導入されていなかったことが原因です。また利用中の生成AIを乗っ取ることも可能ですので、生成AIの導入、活用の際にはセキュリティの見直し、強化は必須だと認識してください」と強調した。

 最後に西尾氏はセキュリティ対策の投資に関して「安全なエンドポイントデバイスから安全なSaaSを利用する環境を実現すべきです。FedRAMPなどを取得したクラウドサービスであればインフラへの攻撃は基本的にサービス提供者の責任となります。そして重要なプロセスを仮想化することでサイバー攻撃から保護して感染拡大を防げます。さらにPCのファームウェアも攻撃対象となっており、セキュアなデバイスも不可欠です」と説明し、SaaSやネットワーク、認証などに対して「5」、OSやローカルアプリケーションに対して「2」、そしてPCに対して「3」の割合でセキュリティ投資をすべきだとアドバイスした。

展示会レポート
Exhibition Report

さまざまな利用シーンに対応できる
顔認証ソリューション「ピッとFace+」

豊田通商システムズ
ITビジネス&エンジニアリング本部 プロダクト推進部 事業企画グループ 宮沢美穂

「ピッとFace+」は顔認証の登録・認証を行えるシステムと顔認証に用いるデバイスの選定・設置、登録者管理機能をセットにしたオールインワンタイプのクラウドソリューションです。「一度顔を登録したらどこでもさまざまなサービスが受けられる」ことをコンセプトとしており、認証用の顔を1度登録するだけで、さまざまなシーンで活用できる柔軟性も魅力となっています。例えばオフィスでは入退室や勤怠、アプリログインといったシーンで、店舗などでは複数施設の入退場や本人確認、決済などのシーンで利用可能です。当社はマルチベンダーでソリューションを提供しており、お客さまのご要望や用途に応じてシステムやデバイスを選べるメリットもあります。
生成AIのビジネス活用に必要な高セキュリティ、
高精度RAGを実現「exaBase 生成AI」

Exa Enterprise AI
(左)exaBase生成AI事業開発部 ガバメント・アライアンス推進グループ セールス 片山寛康
(右)exaBase生成AI事業開発部 ガバメント・アライアンス推進グループ グループリーダー 田中耕太郎

Exa Enterprise AIは年間350件以上のAI案件を、大企業を中心が手掛けているエクサウィザーズの100%子会社で、エクサウィザーズが開発した「exaBase 生成AI powered by GPT-4(法人向けChatGPTサービス)」と「exaBase IR アシスタント powered by ChatGPT(IR業務向け生成AIサービス)」、「exaBase FAQ(企業向けFAQサービス)」などを提供しています。exaBase 生成AIはISMSクラウドセキュリティ認証を取得している高度なセキュリティと、独自データを生成AIに読み込ませる高精度なRAG、GPT-4だけでなく、GeminiやClaudeなど複数の大規模言語モデルが利用可能なマルチLLM対応などが特長です。法人向けChatGPTで国内シェアNo.1を獲得しています。
AIによる設計自動化も可能な
3D CADソリューション「Creo」

PTCジャパン
ビジネスアライアンス事業部 エンタープライズパートナー営業部 部長 倉橋健治

「Creo」は設計、解析、製造の各プロセスをシームレスに結びつけるモデルベースのアプローチを採用した3D CADソリューションです。リアルタイムのシミュレーション機能やAIを活用した設計の自動化、そしてSaaS版では設計部門と製造部門、サプライヤー間での連携を強化するコラボレーションツールを提供するなどの特長があります。日本でのビジネスについては自動車関連のメーカーさまをはじめ、地方の有力な製造業のお客さまにダイワボウ情報システム(DIS)さまのパートナーさまを通じてアプローチしたいと考えています。お客さまへのアプローチの際はPTCジャパンの営業メンバーの同行や、ソリューションの教育など支援させていただきます。
ドラッグ&ドロップでリアルなAR体験を提供する
コンテンツが作成できる「MyWebAR」

DEVAR Entertainment
(左)ダイワボウ情報システム 技術戦略本部 情報戦略部 情報戦略課 主任 前田奈緒子
(右)ディーアイエス サービス&ソリューション テクニカル本部 コアテクノロジー部 アプリケーショングループ 松下知央

MyWebARはDEVARが開発したWebベースのAR(拡張現実)プラットフォームです。プログラミングスキルが不要で画像、動画、3Dモデル、音楽などをドラッグ&ドロップするだけでARコンテンツが作成でき、ビジネス、マーケティング、教育などのさまざまな用途に対応したテンプレートが用意されており、スピーディーにリアルなAR体験を提供できます。作成したARコンテンツはiOS、Android、Windows、MacOSなどさまざまなデバイスで利用できます。日本市場では小売業での商品のARプレビューの提供や、オンラインショッピングでの体験の向上をはじめ、教育機関では生徒が複雑な概念を視覚的に理解しやすくするための教育ツールとして活用できます。