Industry
IDC Japanは、産業分野別/従業員規模別の国内IT市場予測を発表した。2025年の国内IT市場規模は、前年比8.2%増の26兆6,412億円と予測されている。2023〜2028年の年平均成長率は6.3%、2028年の同市場規模は30兆2,176億円の予測となる見込みだ。
2024年は、急激な円安、原材料価格高騰、人件費高騰によって一部の産業分野の企業で収益が悪化したが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束し、観光、インバウンド需要も回復傾向にあることから、関連する産業分野の企業では業績が回復した。2025年も引き続き国内外の経済は堅調に推移するとみている。しかし、今後の国内経済を見た場合、人材不足や少子高齢化による需要減速の進展が懸念される。このような状況の中でも着実に企業成長を図るために生産性向上、新たなビジネスモデル構築が求められており、多くの企業でデジタル化/デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目的としたIT支出が拡大していると分析している。
DX推進と併せて既存システムの見直しを
産業分野別市場では、2024年および2025年は各産業分野でプラス成長となった。特に情報サービス業においてデータセンター投資が増加していることから2024年は11.7%、2025年も6.1%と高い成長率で拡大する見込みだ。流通/サービス業では、前段で述べたインバウンド本格化による業績改善がみられる。また、人材不足解消のためにデジタル活用のほか、リアル/オンラインを問わず、顧客エクスペリエンスの提供を目的としたIT支出が堅調に拡大している。製造業では大企業を中心に製造オペレーションやサプライチェーン強靭化、生産性向上、顧客エンゲージメント、研究開発の高度化などを目的としたデジタル化/DXの推進のためのIT支出が継続している。これらの施策を円滑に推進させるために、まず既存システムの抜本的見直し/モダナイゼーションを目的としたIT支出を拡大させる企業が増加している。また、生成AIなど最新テクノロジーの活用も多くの企業で進んでいると分析している。
デジタル化/DX推進の本格展開に際しては、既存のレガシーシステムの存在が障壁となるケースが多い。こうした状況を踏まえ、IDC Japan Verticals&Cross Technologiesのシニアリサーチマネージャーの市村 仁氏は、こう分析する。「ITサプライヤーはユーザー企業のモダナイゼーションニーズに対して、単純にオープンシステムへのマイグレーションを提案するのではなく、まずは各ユーザー企業の抱える既存システムの状況、ニーズの把握を行うことでシステム刷新に最適なインフラストラクチャの提案に加えて、システム移行、運用まで包括的なサポートを行うことが求められます」

守りのIT提案には直感的なメリットを
Security
ノークリサーチは、中堅・中小企業のセキュリティ対策の実施手段、ベンダー選択、支出額の変化に関する調査を実施した。
本調査では、守りのIT対策の実施箇所をエンドポイント(社内)とした場合の実施内容を経年変化で尋ねた。その要旨をまとめると、2023年と比べて2024年では「パッケージ」が大きく減少しているものの、代わりに「サービス」や「アウトソース」が伸びているわけではない点に注意が必要だ。こうした結果を受けて、守りのIT対策ではツールの在り方も変わりつつあり、「パッケージ」や「サービス」といった従来の区分が適さなくなっている側面もあるとみている。
上記の点が表れているのが、守りのIT対策の経年変化を中堅・中小企業全体で集計し、その中から「パッケージ」の割合を年商別に集計した以下のグラフだ。年商5〜50億円(中小企業層)、年商50〜100億円(中堅下位企業層)、年商100〜300億円(中堅中位企業層)では、パッケージの割合が減少しており、社内に管理サーバーを設置してPC内のパッケージのソフトウェアなどを管理する形態から、管理機能をクラウドに移したサービスあるいは管理/運用の作業を外部に委託するアウトソースへと移行している。一方、年商300〜500億円(中堅上位企業層)の経年変化ではパッケージの割合が高くなっている。これはオフライン利用にも対応した「クラウドサービス+軽量エージェント」の先進的な形態をパッケージと捉えるケースがあるためだ。こうしたクラウドとパッケージ双方の利点を兼ね備えたツールを訴求する際には、「クラウケージ」など、ユーザー企業がメリットを直感的に把握できる表現に工夫することも重要と指摘した。

店舗集客・MEO対策支援システム市場は好調
Retail・Map Engine Optimization
アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、国内の店舗集客・MEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)対策支援システム市場規模推移および予測を発表した。
2023年度の店舗集客・MEO対策支援システム市場の売上金額は42億円、前年度比35.5%増となった。2024年度は同33.3%増を予想している。新型コロナウイルス感染症の5類移行による人流の回復と、主要ベンダーの積極的なマーケティング活動を背景に市場が成長した。実店舗を持つ事業者において集客力および売り上げをアップさせる有効な手段の一つとして、店舗集客・MEO対策支援システムの認知度が高まっている状況だ。また、地図情報サービスに営業時間など常時正しい情報を掲載し機会損失を防ぐニーズや、インバウンド対策でのニーズも拡大した。
ITRのシニア・アナリストである水野慎也氏は次のようにコメントしている。「コロナ禍後、消費者の行動はリアルな店舗利用へと回帰し、特定の地理的エリアに関連する情報の検索(ローカル検索)の需要が増大しています。このため、サーチエンジンやSNSを通じた店舗情報の提供は、店舗集客にとって重要な戦略となっています。また若者、シニア、インバウンド観光客など、多様な層がそれぞれ異なる検索ニーズを持つ中、MEO対策ツールは、一元的な情報管理と自動化を通じて、効率的な店舗集客を支援します。運用負担の軽減と、地図と連動した店舗検索での露出向上を図る企業が今後も増加すると見込まれることから、さらなる市場の成長が期待されます」
