成長続くESGアプリケーション市場
Environmental Social Governance
IDC Japanは、国内ESGアプリケーション市場予測を発表した。2024年の国内ESGアプリケーション市場規模は460億円だ。2028年には658億円となり、2023〜2028年の年平均成長率は7.4%が見込まれる。
市場成長の背景には、地球温暖化や組織の人的資本経営や社会コミュニティの社会的公正への取り組みなどで重要視されている概念「DE&I」(Diversity, Equity and Inclusion)の浸透といった市場環境の変化がある。こうした流れを受けて、各国政府がサステナビリティに関する法規制を施行し、投資家をはじめとするステークホルダーが長期的な視点での経営を組織に求めるようになった。結果としてサステナビリティに関わる非財務情報の開示が定着した。この潮流は、企業のサステナビリティへの取り組みを定量的に表現するサステナビリティデータが、企業価値を左右する市場経済に変革していることを意味する。併せて、サステナビリティデータを財務情報と同様に正確に情報開示する需要が高まったことにより、同市場は拡大していると分析している。
環境省の政策支援がESGを推進
2024年の同市場では、環境省が環境基本法に基づいて定めた「第六次環境基本計画」が閣議決定された。本計画では、環境保全を通じた現在および将来の国民一人ひとりの「ウェルビーイング/高い生活の質」を最上位の目的に掲げ、環境収容力を守り環境の質を上げることで経済社会が成長・発展できる「循環共生型社会」(「環境・生命文明社会」)の構築を目指すこととしている。環境価値の見える化/情報提供の施策の一環としては、「カーボンフットプリントガイドラインを踏まえたCFP(Carbon Footprint)の取り組み促進」「GX価値の算定/表示ルールの形成(国際的に調和されたルール形成を追求)」が推奨された。また、日本政府はGX(Green Transformation)投資促進策として「GX経済移行債」を2024年総額で約3兆円発行している。こうした国家としての方針の決定と経済活動を刺激する政策支援が同市場を拡大させた結果となった。
IDC Japanのリサーチマネージャーである遊亀源太郎氏は、次のように述べている。「ESGアプリケーション市場は、GHG(温室効果ガス)情報を可視化する単一機能アプリケーションから、環境、社会、ガバナンスまでの非財務情報を包括的に管理し、財務情報と連携し総合的に企業活動を定量的に把握することによって、企業価値をデータドリブン(データ駆動型)で向上させるプラットフォームへ進化しています」
IoT/OT機器の監視の必要性高まる
Internet of Things/Operational Technology
アイ・ティ・アールは(以下、ITR)、国内のIoT/OT機器運用監視サービス市場予測を発表した。
2023年度のIoT/OT機器運用監視サービス市場の売上金額は7億5,000万円、前年度比70.5%増となった。近年、工場におけるDX推進を背景に、IoT機器の増加とOT機器のオープンシステム化が進んでいる。同市場では、これらを狙ったサイバー攻撃によるデータ改ざん、乗っ取りなどのインシデントが発生し、セキュリティ対策の必要性・重要性が高まっている。このため、IoT/OT機器を監視対象に追加し、新たにメニュー化するベンダーが増加しており、本格的に市場形成が進む見込みだ。2023〜2028年度の同市場の年平均成長率は37.6%、2028年度には37億円に達すると予測している。
ITRのコンサルティング・フェローである藤 俊満氏は、次のようにコメントしている。「これまで工場や研究所、物流センターなどのシステムは独立して構築されており、社内ネットワークやインターネットに接続されていませんでしたが、現場の生のデータを早く入手して次の意思決定に生かしたいというニーズが増加し、外部接続が進んできています。しかし、これらのシステムは情報セキュリティを考慮した設計ではないため、単純に外部接続するとサイバー攻撃を受ける可能性が高まることから、接続するIoT/OT機器を監視するとともにセキュリティ対策を行う必要があります。外部接続のニーズは非常に高く、IoT/OT機器運用監視サービス市場は今後大きく成長するとみています」
文書管理は運用形態に合った提案を
Document Management System
ノークリサーチは、文書管理・オンラインストレージサービス市場を調査した。本調査によると、富士フイルムビジネスイノベーションの「Docuworks」、リコーの「Ridocシリーズ」といった複合機系ベンダーの製品や、OSK(大塚商会)の「eValue/SMILEシリーズ」などの文書管理モジュールがシェア上位に位置している。導入済みと導入予定を比べた時の今後の伸びも大きい状況だ。一方、「Box」「OneDrive for Business」「Dropbox Business」などの企業向けオンラインストレージサービスは、部門または企業全体で管理/共有する重要な文書の置き場所としてはまだ成長の余地がある。
同市場では、今後のニーズについても調査している。例えば、(1)「会計や販売と連携して帳票データを自動保存できる」、(2)「社内外の他システムも対象とした全文検索を行える」、(3)「蓄積した文書を他システムからも検索/参照できる」 のいずれも「未導入:新規予定」での値が高い。さらに、「未導入:新規予定」における(1)と(2)の値は全体平均と比べても5ポイント高い。つまり、製品の新規導入を促進するためには会計/販売との連携や他システムも含めた全文検索などの機能が求められてくる。これを踏まえ、既存システムの運用形態がオンプレミス主体ならオンプレミスの文書管理パッケージを、クラウド主体ならオンラインストレージを訴求するなど、企業の運用形態に応じた訴求を進めていくことが重要だ。