スマホを存分に使い倒せる20GBプランの使い道を本気で計算すると……
結局、動画鑑賞とテザリングの有無ですべて決まる!
文/正田拓也
※この記事は2016年当時の状況について書かれたものです。最新の2021年版はこちら>>に掲載しております
2016年9月、新型のiPhone 7とほぼ同時にソフトバンク、au、ドコモの順に登場したリーズナブルな月間20GBのパケット料金パック。これまでも20GBを使う方法はあったが、今回はベースが20GBで、しかも大幅にお得であることが特徴となる。
すでに20GBプランを謳歌している人もいるとは思うが、では、実際に20GBを駆使した場合、どんな使い方ができるかを考えてみたい。想定したのは仕事でも私用スマホを使っているBYODユーザー。自宅はWi-Fi経由でインターネットと接続し、今でもある程度、容量管理のできている人だ。
動画は見放題になるか?
まず、最大のメリットは動画鑑賞に余裕が出ること。読者も体感しているとは思うが、通常、動画を見なければ月間3~5GBで済む。スマホで動画を長時間見る/見ないが大容量プランを選ぶ動機に直結すると言ってもいい。
想定している動画コンテンツはYouTubeのような動画共有サービス、SNSの埋め込み動画、そしてHuluやNetflix、Amazonなど映画やドラマの配信サービスだ。もっとも、動画配信サービスの有料ユーザーならWi-Fiの利用など容量対策は完璧という人が大半のはずだ。
一方、無料で使えてテレビドラマやバラエティの見逃し補完に使えるTVerなど、どちらかというと継続的に使うのではなく、たまに使うと非常に便利な動画配信サービスも存在する。スマホ(LTE)で動画を観るなら、こちらの使い方のほうが自然だろう。
そこで今回はTVerで試してみた。電車の移動時や公園での休憩など、Wi-Fi利用が難しい場面でも使えるのはLTEの強み。これが20GB分使えると生活はどう変わるのか。まず、ドラマ1本を画質「自動」で視聴してみた。
視聴後すぐに確認したところ、1時間のドラマは実質45分+CMで310MBを消費した。CMまで見る必要はないという意見もあるだろうが、TVerは早送りをした場合にCMが挿入される仕様で、録画したビデオのようにCM飛ばしが許されない仕組みなのだ。さらに、CMを見ないと先に進まないため、適宜早送りして時間と容量を節約することが難しい。CMのときは別のことをしてみたりしたが、動画自体は再生しっぱなしになってしまう。
ということで、1時間のドラマを見た後は3~400MBが消費される。ドラマ2本を毎週見たとして、350MB×2本×4週=2800MB。つまり約3GB、全体の7分の1を消費する計算となる。3GBから20GBへアップグレードした場合、このくらいの動画視聴なら余裕でいけそうだ。仕事の合間の息抜きも捗るだろう。
なお、仮にこの調子で毎日使うと9GB弱まで膨れ上がるが、実際のところスマホ単体での動画鑑賞時は、パケットよりもスマートフォンのバッテリー残量を気にすべきだ。通常のスマホでは(充電環境がなければ)そもそも1時間程度の流しっぱなしが限界。BYODにもかかわらず休憩でバッテリーを使い尽しては意味がない。
動画といえば忘れちゃいけないビデオチャット
動画の視聴は比較的余裕でいけそうで、これで空き時間も安心して楽しめることがわかったが、じつは容量的に安心できないものがある。それはビデオチャットだ。たとえば、お手軽ビデオチャットの代名詞「appear.in」の消費量は見逃すことができないほど多めなのだ。
試しに2時間、1対1でビデオチャットをつけっぱなしにしてみたが、なんと1GBを消費した。もちろん映すものや人数、通信状況によっても異なるが、スマートフォンでどこでも会議できる……などと浮かれていると、すぐに20GB消費してしまう。テザリングでPCを接続するなどすれば、さらにひとまわり大きな消費が行われる。
結局、appear.inなど手軽なビデオチャットを活用し、いちいち会社に戻らずモバイル会議を週に1回1時間やったと仮定すると、毎月2~3GBくらいからの消費となる。これなら月間20GBあればなんとかなりそうだ。
その他のコンテンツは誤差の範囲!?
そのほかに消費が多そうなものとしてはテザリングが挙げられる。テザリングは使い方で大きく変わるとしか言いようがないが、近くにWi-Fi環境がなく、モバイルルーターも持っていないときの非常用という程度なら1ヵ月に500MBほどに収まる。
反対にWi-Fi環境を頼らず、外出先で使いまくった場合は青天井だ。20GBの大半を消費するどころか、30GBに達することもあるだろう。
テザリングを別とすると、あとはアプリやOSのアップデートが頭に浮かぶが、これらは更新をWi-Fi接続時のみに設定すれば、ほとんどゼロに近づく。その他消費が大きなものと言えば、ChromeやSafariなどのWebブラウザで、最近の画面の大きなスマートフォンでPC向けページばかりたくさん閲覧するとやっかいだ。これを1日200MBとしても月間で6GBも消費してしまう。
なお、個別のセキュリティが施されていない公衆Wi-Fiを使いたくないという人は、動画を少し抑えてPCのテザリングを積極的に使ってみよう。
結局、1ヵ月で何GB消費するのか?
ここまでで、テザリングがない場合、多めに使ったとして動画9GB、Webブラウザ6GB、ビデオチャット2GBで合計17GB、その他に3GB使える計算となる。
SNSアプリは使い方にもよるが、社会人なら500~600MBに収まるだろう。朝から晩までSNSで友人の動向を気にしているというのなら話は別だが、1日10回ほどタイムラインを確認、通知設定も必要なものだけ設定し、動画は自動再生オフという想定なら月間でも1GBに達しない。
注意するとすれば、写真などのデータバックアップ系だが、これらは初期設定でWi-Fi利用時に制限されているものがほとんど。メールもスマホでは添付をDLしない(もしくは個別DL)設定にすれば50~60MB程度で済む。
結局、動画鑑賞を楽み、PC用ページを中心にWebブラウズしても、20GBには収まるわけだ。
想定した社会人の行動パターン
●平日
未明~朝:スマホが自動でアプリの更新などを始めるが、自宅Wi-Fi経由なのでLTEの容量消費はゼロ。
朝:通勤時間帯はニュースのチェックなど。感度の似た友人がSNSのタイムラインにニュースをシェアしてくれることもあるので、それもチェック。Webブラウザへのジャンプも多いので、SNS以上にWebブラウザをデータ消費し、計100MB程度。SNSアプリ自体はあまり消費しない。
昼:昼休みは動画視聴。外食時はそれほど視聴できないが、自席や休憩室でお弁当なら1時間がっつり視聴。動画を見た場合で500MB。
夕方:業務時間中はメッセンジャーなどで連絡が来たり、外出時に地図サービスを使うこともあるが、アプリで利用していれば消費はそれほど大きくない。Google Mapsとにらめっこしながら5分ほど歩いても10MB程度なのだ。計50MB。
夜:帰宅後、Wi-Fiが届かない風呂に入りながらSNSチェックやショッピングサイト閲覧など。動画の製品紹介も少々で200MB。
夜中:自宅Wi-Fi経由なので、何をやっても消費ゼロ。
ここまで合計850MB。実際は毎日昼休みに動画を見るわけでもないので、その分のパケットは業務中のビデオチャットに含んで計算しておく。もちろん多い日の想定なので、風呂でスマホを使わない、風呂にもWi-Fiが届くなら消費量はぐっと落ちる。
●休日
休日の消費はじつにさまざまだ。丸一日家に居れば消費はほぼゼロ。疲れて寝込んでいても同様だ。外出したとしても、地図サービスや遊びに行く先の専用アプリ、電車でゲームに興じる程度だろう。出先で動画を見るという使い方をしなければ、消費は少なめだ。
未明~朝:平日と同様に消費ゼロ。
午前中:家から出て駅に着く。経路や時刻検索で30MB、さらにランチのお店を詳細に調べて合計100MB。
昼:ショッピングセンターに到着。専用アプリで特典があることを知り、その場でダウンロードして設定。さらに情報検索して50MB。
夜:楽しい食事中につき、スマートフォンは触らず。たまのメールチェックなどで消費はわずか、10MB。
上記の場合、休日は意外に少なく160MBとなる。もちろん、もっと多いこともあるだろうが、ゆったり過ごせばこの程度。休日は位置情報ゲーム、例えばポケモンGOに興じることもあるかもしれないが、スマホゲームは意外にも消費が少なく、多くても数百MB/月に留まる。パケットよりも、CPUやメモリーなどスマホ自体の性能がゲームの仕様に足りているか、特にポケモンGOならジャイロセンサーが付いているかを先に心配すべきだろう。
この状況がきれいに1ヵ月間続くとは思えないが、平日が21日間、休日が9日間とすれば1ヵ月合計で19.29GB。20GBに収まった!
安くなったこの機を逃さず、積極的に使ってみる価値はある
ビデオチャットやスマートフォン向け動画配信サービスが次々登場するなかで、最も対応が遅れていたのが通信容量だったと言っても過言ではない。各社の20GBプランは、絶対的に安いわけではないが、これまでと比べたらはるかに安く使える。
動画コンテンツもテザリングも使わず容量を節約して従来のままのプランという選択肢もあるが、便利なものをたくさん使って割安な料金という選択肢も悪くない。この機会にプラン変更を考えてみるのも一興だろう。
筆者プロフィール:正田拓也
PCとの関わりは8ビット機やBASIC全盛の時代から。Windowsとの深い関わりは小規模企業の兼任システム管理者時代から。その後、インプレスWatch記者などを経て、フリーライターへ。得意分野はPC全般からハンダゴテを使った自作系、通信系まで。