AI PC

インテルが語るAI PCのこれからの可能性
インテルは3月5日、Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)を搭載したAI PCやvProプラットフォームの販売促進への取り組みを示すイベント「Intel Commercial Client 内覧会」を都内で開催した。パートナー企業に語られたAI PCおよびvProプラットフォームの価値を見ていこう。

AI PCは販売単価の向上につながる
PC業界全体の大きな成長に貢献

インテルは3月5日、PCメーカーやISV、チャネルなどのパートナーを対象にCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)を搭載したAI PCやvProプラットフォームの販売促進への取り組みを示すイベント「Intel Commercial Client 内覧会」を都内で開催した。会場ではAI PCおよびvProプラットフォームを顧客に提案する際に役立つ情報が提供された。

会場ではPCメーカー各社によるインテル製プロセッサーが搭載されたAI PCが出展されていた。

1台でも多く、1円でも高く
PCを売るための方策を検討

「Intel Commercial Client 内覧会」を開催した理由についてインテル 執行役員 マーケティング本部長 上野晶子氏は「2025年はWindows 10のサポート終了という大きなテーマに加えてAIへの関心が高まっており、これからの大きなビジネスチャンスを獲得するための方策について全ての解答をインテルだけでは持ち合わせていません。パートナーの皆さまと情報を共有して今後どのような取り組みを進めていくべきかを話し合う機会にしたいと考えています」とあいさつした。

 そしてWindows 10 EOS(サポート終了)に伴うビジネスチャンスに向けて「この機会にPCを1台でも多く、1円でも高く売りたいと考えていると思います。昨今、PCのコモディティ化が進み、価格が安いことだけで選定されがちでした。しかし現在、AI PCが注目を集めており、AI PCを販売することで単価を上げ、PC業界全体が大きく成長できると考えています」とAI PCへの期待を語った。

 またAIそのものにもビジネスチャンスがあると強調した。AIはデータ活用の手段の一つであるが、これまではデータを分析できる仕組みを持つクラウド事業者や大企業など特定の企業がメリットを享受して成長を遂げてきた。しかしAIは特定の企業だけにメリットをもたらすビジネス構造にしてはいけないと強調する。

 上野氏は「AI PCによってローカルでAI処理ができるようになる、データを分析するなど活用できるようになることで誰もがAIの恩恵を受けられます」とAI PCがもたらすメリットを説明する。

 上野氏はデータを示しながらAI PC市場はグローバルで急速に成長していると説明し、「AI PCを中小規模のお客さまに販売する際は価格が課題になるケースがあります。しかし次のリプレース時期となる3年から5年先を見据えると、そのころにはAI活用が必須となっているとみられ、今AI PCを導入するメリットがあります。このメリットを理解してもらうことが重要です」と訴えた。

インテル 執行役員 マーケティング本部長 上野晶子氏は「AI PCを販売することで単価を上げられ、PC業界全体が大きく成長できる」と訴えた。
インテル IA技術本部 部長 太田仁彦氏はCore Ultra(シリーズ2)を搭載するAI PCの三つの強みをアピールした。
vProプラットフォームの導入事例として広島県尾道市のカタオカでの成果が紹介された。登壇したのは同社でITを担当する総務部 情報システム課 大﨑一樹氏。
インテル マーケティング本部 コマーシャル・キャンペーン・マネージャー 安永真理子氏はCore Ultra(シリーズ2)搭載AI PCおよびvProプラットフォームの事例紹介の拡大とツールやプログラムの増強によって販売を支援すると説明した。

AI PCのビジネス利用に
vProプラットフォームを提案

 続いてインテル IA技術本部 部長 太田仁彦氏が登壇し、インテルプロセッサーを搭載する最新ビジネスPCについて情報発信を行った。インテルではAI PCを、AI処理性能に優れていることに加えて、PCとしても高性能であることを要件としており、Core Ultra(シリーズ2)を搭載するAI PCの三つの強みをアピールした。

 まずAI処理性能とPCとしての性能、そして電力効率の高さがもたらすメリットを説明した。次にクラウドや周辺機器を利用する際に重要なWi-Fi 7およびThunderbolt、Bluetooth 5.4への対応や、AIアプリケーションの互換性など「接続性能」における優位性をアピールした。

 さらにAI PCのビジネス利用での優位性についてはvProプラットフォームをアピールした。vProプラットフォーム対応PCおよびサービスの販売も、パートナーの販売単価の押し上げにつながる。

 vProプラットフォームは約20年にわたって販売が続けられており、大企業では導入が進んでいる。さらに中小企業への販売にも注力しており、マーケティング活動を展開した結果、この2年間で中小企業の顧客におけるvProプラットフォーム対応PCの販売比率が10%以上伸びているという。

 そしてvProプラットフォーム対応PCおよびサービスを中小企業へ提案する際に参考となる事例が紹介された。

中小企業での導入成果を事例で紹介
事例の拡大などでパートナーを支援

 広島県尾道市に本社を置くカタオカでITを担当する総務部 情報システム課 大﨑一樹氏が登壇し、社内でのPCのトラブル対応について説明した。同社は海産物食品の加工、卸売業を営む企業で、主力製品にカタクチイワシの稚魚を原料としたちりめんがある。

 従来、工場で使用しているPCにトラブルが発生すると総務部に連絡があり、従来は状況を聞いてもユーザーは説明できず、大﨑氏はPCのある工場に赴いて対応していた。

 総務部のある建物から工場への移動に時間がかかるほか、同社の工場は「FSSC 22000」と呼ばれる食品安全マネジメントシステムに関する国際規格を取得しており、工場内に入るには白衣に着替え、体調やけが、持ち込む物のチェック、手洗い、アルコール消毒、エアシャワーなどが必要で時間がかかる。そして工場内に入って実際にPCを操作して原因を特定し、修復する。

 小さなトラブルでもPCを復旧するまでに30分は必要で、タイミングによってはPCが使えない間はラインが停止することもあり、生産量が10%ほど減少するという。

 セキュリティ対策にも課題があり、Windowsアップデートの管理を手動で行っていることや、Windowsアップデートを実行するタイミングを間違えると完了するまでPCが使えず業務が停止してしまうことなどを挙げた。

 こうした課題に対して同社はvProプラットフォーム対応PCとサービスを導入し、総務部のオフィスから工場に移動、入ることなく工場内のPCをリモートで管理できるようになった。さらにAI PCのメリットについても、リモート会議での画質や音質の向上に加えて、バッテリー駆動時間が大幅に伸びたことでACアダプターを持ち歩かなくてもPCを長時間使えるようになったことなどを紹介した。

 さらにvProプラットフォームおよびインテル EMA(エンドポイント・マネジメント・アシスタント)を用いたソリューションを提供するNSWが、これらのソリューションのメリットについて解説した。

 最後にインテル マーケティング本部 コマーシャル・キャンペーン・マネージャー 安永真理子氏が登壇し、Core Ultra(シリーズ2)搭載AI PCおよびvProプラットフォームの販売促進に向けたパートナーへの支援について説明した。

 パートナーがCore Ultra(シリーズ2)搭載AI PCおよびvProプラットフォームを顧客に提案する際に使われるキーワードや活用されるツールの実態を調査し、その結果を踏まえて事例紹介の拡大とツールやプログラムの増強を図ることを、具体的な内容を示して計画を説明した。

Mobile&Creative

スマートフォンで使える「Adobe Photoshop」モバイル版の特長とは
アドビは2月26日に、同社が提供する「Adobe Photoshop」のモバイル版を発表した。記事ではスマートフォンでの利用に適した機能や、モバイル版リリースの理由などについて紹介する。

生成AIを活用した画像編集も可能
スマートフォンで使えるPhotoshopが登場

2025年2月26日、アドビは写真の編集、加工を行うソフトウェア「Adobe Photoshop」のモバイル版の提供開始を発表した。今までPCでの利用が中心だったAdobe Photoshopが、スマートフォンで使えることにより、ユーザーにどのような利便性をもたらすのか。本記事では記者説明会で語られたスマートフォンに最適化したAdobe Photoshop モバイル版の特長や機能、Web版との連携についてレポートしていく。

アプリは基本無料で提供され
代表的なPhotoshop機能を使える

 2025年2月26日、アドビが提供する「Adobe Photoshop」(以下、Photoshop)のモバイルアプリ版として、iPhone版がリリースされた。Android版のモバイルアプリは2025年内の公開を予定している。本アプリケーションは無料で提供され、月額1,300円、もしくは年額1万1,000円で有料プラン「Adobe Photoshop モバイル版&Web版プラン」へのアップグレードが行える。なお、デスクトップ版を利用中のユーザーであれば、別途有料プランを契約せずともAdobe Photoshop モバイル版&Web版プランを利用可能だ。

 無料提供されるアプリケーションでは、選択ツール、レイヤー、マスクといったPhotoshopの代表的な機能のほか、オブジェクトをワンタッチで選択できる「タップ選択ツール」、細かい箇所のレタッチが行える「スポット修復ブラシ」、同社の生成AI「Adobe Firefly」(以下、Firefly)による生成塗りつぶし・生成拡張といった機能が使える。そして、同社が提供する商用利用可能なストックフォトサービス「Adobe Stock」内の数十万点の素材も使えるのだ。

 ほとんどの機能を無料のアプリケーションで使えるが、有料のAdobe Photoshop モバイル版&Web版プランでは、加えてPhotoshop Web版との作業の同期・保存ができる。これにより、スマートフォンからPCへのシームレスな作業の再開が行えるのだ。

 ほかにもAdobe Photoshop モバイル版&Web版プランでは、不要なオブジェクトをなぞって消せる「削除ツール」、画像の一部をコピーして複製が可能な「コピースタンプツール」、AIが周辺の画像データから不足部分を補足する「コンテンツに応じた塗りつぶし」、画像を明るくする「覆い焼きツール」、画像を暗くする「焼き込みツール」といった高度な編集機能が利用可能だ。加えて、対象オブジェクトの形で選択範囲を作成する「オブジェクト選択ツール」、選択した色で画像を切り抜く「自動選択ツール」などの高度な選択機能も使える。

 さらには同社のフォント提供サービス「Adobe Fonts」内にある2万種類以上のフォントへのアクセス、TIF/JPG/PNGといったファイル形式への対応、Fireflyによるテキストでの画像生成も、Adobe Photoshop モバイル版&Web版プランでは利用できるのだ。

Photoshop モバイル版の特長を説明するアドビ マーケティングマネージャー 岩本 崇氏。
アドビ Creative Cloud エバンジェリスト 仲尾 毅氏は、Photoshop モバイル版のデモを披露した。

スマートフォンに適したUIを備え
Web版と連携した利用も可能

 アドビ マーケティングマネージャー 岩本 崇氏は、モバイル版のPhotoshopのメリットについて次のように語る。「Photoshopの名前を掲げている通り、Photoshop モバイル版は簡単な編集から高度な編集まで、自由自在なクリエイティビティを実現可能です。新世代のクリエイターは、若い人を中心にスマートフォンで全ての作業を行う方が出てきています。こういった方々をはじめ、当社の製品を使っている経験豊富なプロの方々も、外出先で作業が可能になるのです。まさに、手のひらの中でPhotoshopを使える環境が整っています」

 モバイル版のPhotoshopは、デスクトップ版のPhotoshopがただスマートフォンで使えるようになっただけではない。岩本氏は、モバイル版ならではの特長をこうアピールする。「スマートフォンに最適化された、使いやすく直観的なUIを備えています。スマートフォンはどうしても、画面が狭いという課題があります。ですがモバイル版のPhotoshopは、狭い画面の中にギュッと機能を詰め込んでいます。ここからPhotoshopを始める方にとって、ちょうど良いスタイルになっているでしょう。そして長年のPhotoshopユーザーへも、外出先でのファイルの閲覧や編集といった機能を柔軟に提供します」

 続けて岩本氏は、有料プランでPhotoshop モバイル版との連携が可能になるPhotoshop Web版についてもその特長を語る。「PhotoshopのWeb版は今現在大きく進化しており、デスクトップ版に迫るぐらいの機能を数多く保有しています。アプリケーションをダウンロードしなくても、主要なWebブラウザーからすぐアクセスできる点が一番大きな特長です。さらにAdobe Stockのライブラリーと直接統合しているので、数千のアセットを無料で使えます。Adobe Stockのアセットは、多くのクリエイターに使ってもらうために、商用利用が可能な点も特長の一つです。この商用利用可能という特長は、Fireflyにも当てはまります。Web版にもFireflyは搭載されており、生成塗りつぶしや画像のバリエーションを作成できる『類似を生成』、既存の画像を参照してコンテンツを生成可能な『スタイル参照』といった機能を利用できます」

 岩本氏は「スマートフォンの狭い画面で作業をした後、オフィスに戻ってWeb版で作業を続けるのはどうでしょうか」とPhotoshop モバイル版とPhotoshop Web版の活用方法を提案する。

モバイル版はスマートフォンから利用することを考慮し、新規作成で「カメラロールの画像から開始」が選択できる。
Fireflyでテキストを基に画像を生成し、生成した画像を作成中のプロジェクトに合成していくことも可能だ。
作成した画像はSNSの投稿に適したサイズへトリミングできる。画像サイズが不足している場合は、Fireflyによる画像拡張も行える。

SNSに合わせたプリセットを用意
画像生成や拡張で生成AIを活用

 記者会見内では、アドビ Creative Cloud エバンジェリスト 仲尾 毅氏によるPhotoshop iPhone版のデモも行われた。仲尾氏は「スマートフォンでPhotoshopの利用を開始すると、恐らく大半のユーザーはカメラロールからプロジェクトを作成すると思います。そのためPhotoshop iPhone版では、新規作成に当たって『カメラロールから開始』のショートカットを用意しています」とアピールする。

 続けて「新規作成の『新しいカンバスを作成』を選択すれば、Instagram(ポスト/ストーリー)、Facebook、X(旧Twitter)、TikTok、YouTubeといった、スマートフォンでの利用が多いアプリケーションの画像サイズに合わせた各プリセットも用意しています。ほかにも、Fireflyで生成した画像からプロジェクトを作成するショートカットや、Adobe Stockからプロジェクトを作成するショートカットもあります」とiPhone版の特長を話す。

 そうした特長を踏まえ、仲尾氏はカメラロールから画像を読み込み、人物の切り抜きや画像の合成を実践した。仲尾氏はデモ操作を行いつつ「Photoshop モバイル版ならではのタップ選択ツールは、ユーザーが何を選択するか先読みして、操作画面の下部にオブジェクト切り抜き後のイメージを複数表示してくれます。加えて被写体というボタンもあるので、直観的に選択範囲を作っていくことができます」とiPhone版の使用感を語る。

 仲尾氏は次に、Instagramに投稿する画像の作成デモを開始した。このデモでは、Adobe StockやFireflyも活用して画像の作成が行われた。Adobe Stock内の素材をプロジェクトに合成したほか、テキストを入力してFireflyで生成した画像を合成したり、Fireflyを使って作成後の画像を拡張したりといったことを披露した。

 そして仲尾氏は、Photoshop モバイル版の説明やデモを踏まえて、ユーザーに対するメッセージをこう語った。「これからPhotoshopを使って仕事をしていこうという方の中にも、まだPCに触ったことがない人が結構います。Photoshop モバイル版は、そうしたスマートフォンがデバイス利用の入口になっている新世代を意識して作っています。当社のデザインツール『Adobe Express』が誰でも簡単にデザインができることを目指す一方、本製品はあくまでもPhotoshopであることに力を入れて作っています」

Extended Reality

現実・仮想・AIを融合するXRグラスとソリューション
Dynabookが実施したソリューション事業戦略発表会をリポートする。記事では、新たに発売する透過型XRグラス「dynaEdge XR1」や専用のXRコントローラー「dynaEdge C1」、それに付随するビジネスソリューションを紹介する。

AIでの解析が可能なXRグラス&ソリューション
現実・仮想を融合して業務効率化

3月10日、Dynabookはソリューション事業戦略発表会を実施した。透過型XRグラス「dynaEdge XR1」や専用のXRコントローラー「dynaEdge C1」発売に際しての説明のほか、今後のAR体験についての展望が語られた。AIとARを組み合わせた新デバイスとXRソリューションのビジネスへの可能性を探っていこう。

AIとARで業務プロセスを改善
多様なワークスペースを拡張

 AIが急速に進む中、安心安全に生成AIが活用できる快適なオフィス、現場環境が求められている。Dynabook 代表取締役社長 兼 CEO 覚道清文氏は本説明会冒頭、こう話を切り出した。「当社は、外に持ち運べるPCをコンセプトとした世界初のノートPC『Dynabook』を世に送り出してから、昨年で記念すべき35周年を迎えることができました。今後は、ハードウェアのみならず、当社独自の生成AIソリューションで、これまで以上にお客さまの価値向上に貢献すべく、未来を見据えた革新的な提案を続けていきます」

 Dynabookのソリューション事業戦略の基本方針については、同社 執行役員 ソリューション事業本部長の熊谷 明氏がこう続けた。「当社は、お客さま、企業の皆さまに安心して安全に生成AIを活用できる環境を提供します。今日は三つほどサービスを紹介します。一つ目は、生成AIと連携可能なXRグラスとPCを一緒に使うことで、目の前の空間にワークスペースを創出するという新しいPCの活用方法です。本日の主題である『dynaEdge XR1』をPCとセットで利用することで目の前の空間をワークスペースにできます。PCのディスプレイ、デスクトップの画面を、最大三つ表示可能です。新幹線やカフェでタスクを処理する際など多様な働き方に貢献します。二つ目は、オンプレミス環境での開発においてAIを活用する提案です。生成AIの導入や活用に当たっては、情報漏えいやランニングコスト、導入の難しさ、定着の難しさなどさまざまな課題がお客さまとのヒアリングを通じて見えてきました。当社はこの課題に対して、AIアプリケーションをオンプレミスサーバーの中でローコードで開発できる環境を提供します。アプリケーションの開発を支援する研修プログラムも用意し、お客さまに寄り添いながら、企業の中の生成AI活用を広げていきたいと考えております。三つ目は、AIによるPCのライフサイクルマネジメントとしてLCMサービスを提供していることです。LCMサービスを契約すると、PCの台帳管理、棚卸しといった作業を自動化するクラウドサービス『PCアセットモニタリングサービス』を活用できます。AI分析によって、PC故障の有無、バッテリーの劣化リスクのある端末のモニタリングやレポートが可能です。企業のITの管理者が、PC運用に関する依頼や進捗状況を容易に確認できる『LCM運用ポータル』も提供しています。そのほか、dynaEdge XR1の現場DX安全運転支援、ピッキング支援、そして遠隔作業支援などの領域にも展開し、AIと人とをつなぐ先進デバイスと共にビジネス拡大を図ります」

Dynabook
代表取締役社長 兼 CEO
覚道清文
Dynabook
執行役員
ソリューション事業本部長
熊谷 明
Dynabook
ニューコンセプトコンピューティング統括部
NCC ソリューション戦略部
部長
小川岳弘

AI機能で視覚情報を有効活用
スムーズなコミュニケーションを支援

 今回の目玉となるdynaEdge XR1とdynaEdge C1の概要については、同社 ニューコンセプトコンピューティング統括部 NCC ソリューション戦略部 部長 小川岳弘氏がデモを交えて紹介してくれた。「透過型のXRグラスであるdynaEdge XR1は、同時に発表した専用のXRコントローラーのdynaEdge C1と組み合わせてAIとARの新たな映像体験を実現します。透過によって現実空間を視認しながら情報を大型画面で表示するdynaEdge C1で『AIアシスト』機能を呼び出せます。dynaEdge XR1の中央に備えたカメラ機能によってセンシングして、そのデータをdynaEdge C1を通じてAIが解釈することで、さまざまなアシストを受けられる仕組みです。会話のアシスト機能では、dynaEdge XR1を通して相手の顔を視認しながら、画面下に映画の字幕のように相手との会話を文字に起こせます。翻訳を表示したり会話のログを遡ったりとスムーズな会話をサポートします」

 デモンストレーションは、dynaEdgeのAIアシスト機能のうち、「ビューサーチ」機能などが実演された。「dynaEdge XR1で見えている風景全体からオブジェクトを抽出して、AIが風景と物体の解説を表示してくれます。dynaEdge XR1が搭載しているスピーカーを使って、AIによって解析された解説内容を読み上げることも可能です。また、『ドキュメント要約』機能も搭載しています。dynaEdgeXR1越しにドキュメントをAIが認識すると英語の文章が表示され、日本語への翻訳も即座に行えます。スマートフォンの連携も可能で、dynaEdge C1と連携させておくことで、スマートフォンに届いた通知情報を目の前の空間に表示できます。dynaEdge XR1は、AIアシスト機能によってAR映像が空間上に溶け込むため、さまざまなシーンで皆さまの業務と生活をサポートします」

AIと連携して拡張現実を投影できるdynaEdge XR1とdynaEdge XR1の専用コントローラー、dynaEdge C1。
画面などに映した対象物の特定が可能なビューサーチ機能。

生活に溶け込むAR映像
現場DXを飛躍的に推進

 dynaEdge XR1に関する今後の未来展望とXRソリューションについて、小川氏はこう締めくくる。「従来は、単眼型のスマートグラス『dynaEdge DE100』などを現場DXソリューションとして展開してきました。今回、dynaEdge XR1・dynaEdge C1をラインアップに加え、さらなる現場DX領域の拡大を目指すとともに、従来の単眼のARでは実現できなかったさまざまなビジネス領域に対しても、端末とソリューションを広げます。また、さまざまなパートナーの皆さまと連携・共創し、dynaEdge XR1をはじめ現場DXソリューションの拡大、また新たなXRユースケースの創出を進めていきます」

 本説明会の後方の展示ブースにて、dynaEdge XR1・dDynaEdge C1のほかXRを活用したソリューションの展示例も見学できた。製造業や物流業の物品の入出庫作業に活用可能な東芝システムテクノロジーのフィッティング支援ソリューションだ。棚に画像認識のコードを貼ることで作業すべき棚をdynaEdge XR1で認識して、入出庫の作業を効率化するものだ。動画を分析するAIによってシステムの作業の手順を動画から簡単に作成できるエピソテックのXRソリューションも展示されていた。XRで目の前に手順書情報を順次表示される様子が確認できた。

 Dynabookが展開するXRグラスのAR体験や業務改善サービスの創出に今後も期待できそうだ。

dynaEdge XR1で映したテキストを翻訳可能なビジュアル翻訳機能。日本語に即座に翻訳された(右画像)。

Voice Recognition

聴覚障害者への情報保障を実現する音声認識技術
今年、「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」(略称:東京2025デフリンピック)が開催されることに伴い、さまざまなシーンで音声認識技術の導入が進んでいる。聴覚障害者への情報保障の観点から見る音声認識技術の可能性について、アドバンスト・メディアと日本聴導犬推進協会が行ったプレスセミナーから解説していく。

音声認識技術の普及が実現する
ろう者・難聴者への情報保障とは

2025年2月27日、アドバンスト・メディアは日本聴導犬推進協会と共に「ろう者・難聴者の情報保障の手段としての音声認識〜日常生活における音声認識を活用した情報取得の重要性について〜」と題したプレスセミナーを実施した。情報保障の観点から普及が求められる音声認識技術について、本セミナーの内容を踏まえて紹介していこう。

デフリンピック開催に伴い
音声認識技術への関心が高まる

 2025年11月15日から26日にかけて、ろう者・難聴者のための国際スポーツ大会「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」(略称:東京2025デフリンピック)が開催される。このデフリンピックの開催や、2025年9月13日から21日に開催される「東京 2025 世界陸上競技選手権大会」(略称:東京2025世界陸上」の開催を契機に、東京都は都庁の総合案内をはじめとした38施設に、音声認識を活用した字幕システムを導入した。会話をリアルタイムに文字に変換して透明ディスプレイに表示することで、聴覚障害者の理解を助けるだけでなく、多国語での表示に対応するため、海外から訪れた観客などの日本語理解も助けてくれるツールだ。

 こうした国際イベントの開催に伴って、現在ろう者や難聴者の情報保障の手段として、音声認識技術への関心が高まっている。今回のプレスセミナーもこうした背景を踏まえて実施されたもので、音声認識がろう者や難聴者の情報保障にどのように貢献しているかが紹介された。

 音声認識技術について、アドバンスト・メディアの取締役 事業本部長 大柳伸也氏は「AIが音声、特に人間の音声を認識してデータ化する技術を指します。身近な利用シーンとしてはスマートスピーカーやスマートフォンに話しかける音声検索にこの技術が活用されています。ビジネスシーンにおいては議事録の作成や、コンタクトセンターでの通話記録などで利用されることが多いですね」と語る。

 こうした音声認識技術は、ろう者や難聴者のサポートにも活用されている。例えば冒頭に紹介したような、透明ディスプレイへの字幕表示だ。市役所や鉄道の窓口に設置され、職員の発話をテキスト表示することでコミュニケーションをサポートする。透明なディスプレイにより、相手の表情や口の動きを読むことが可能になる。

 また音声文字変換アプリとして「UDトーク」や「こえとら」といったアプリも登場している。UDトークにはアドバンスト・メディアの音声認識エンジンが採用されており、日常会話のサポートなどに利用されている。そのほか、テレビなどの字幕や、会議での会話をリアルタイムに表示するような場面など、実にさまざまなシーンで音声認識が活用されているのだ。

アドバンスト・メディアの取締役 事業本部長 大柳伸也氏は同社の音声認識技術と、その技術が聴覚障害者への情報保障にどう活用されているのかを解説した。会場では実際に音声認識技術によって音声のテキスト化がされていた。

10人に1人が聞こえに課題
必要な情報をどう届ける?

 こうした音声認識について、ろう者や難聴者はどのような点に利便性を感じているのだろうか。本セミナーに登壇した日本聴導犬推進協会 事務局長 兼 常任理事を務める水越みゆき氏は「一つ目に、音声で発音したことがすぐに文字として表示されるため、リアルタイムに情報取得ができる点があります。筆記で説明されるケースもありますが、書く時間を要するため発話によるコミュニケーションよりも時間がかかります。また読みにくい字であったり、書くことをお願いする手間や罪悪感も軽減できます。二つ目に、手話を利用できない人に対してもスムーズなコミュニケーションが行える点があります。三つ目に、スマートフォンのアプリなどを利用すれば使える手軽さがあります。説明内容などの文字情報を保存して振り返りができる点もメリットといえるでしょう」と語る。

 水越氏が所属する日本聴導犬推進協会は、聴覚障害者に必要な音(情報)を知らせる補助犬である「聴導犬」の育成や普及に取り組んでおり、良質な聴導犬を育成し、聴覚障害者の自立と社会参加を支援する活動を行っている。それらの経験から、ろう者や難聴者の現状を次のように説明した。

「厚生労働省によると聴覚や言語障害のある人(身体障害者手帳所持者)の数は約37万9,000人とされています。またこの障害者手帳を所持していない人も含めた聞こえにくさを持つ人は、日本補聴器工業会の『JapanTrak2022』調査報告によると約1,260万人。10人に1人の割合で聞こえにくさを感じていると言われています。この聞こえにくさを持つ人は、例えば片耳だけ聞こえないとか、老人性難聴といわれるような人たちが含まれています」と水越氏は語る。

 こうした聞こえにくさを抱える人々の聞こえ方は多様だ。それ故にコミュニケーション方法も、聞こえ方や特性に応じて異なっている。例えば「補聴器」に加え、「手話・手話通訳」「筆談・要約筆記」「スマホ・タブレット端末」「読話」「人工内耳」などが挙げられる。読話は唇の動きから発話内容を読み取るものだ。

 水越氏は「この中でも活用者の多い『手話』はろう者コミュニティにおける母語や文化的なアイデンティティの側面を持ち、言語としてろう者に根付いています。一方で言語であるために、取得には時間を要します」と語る。そのため、ろう者と手話が使えない人をつなぐ手話通訳士の存在が求められている一方で、高齢化による担い手不足や、処遇改善が課題となっている。

日本聴導犬推進協会 事務局長 兼 常任理事の水越みゆき氏は聴導犬に関する概要と、音声認識が実際に聴覚障害者にどう受け入れられているかを解説。実際に聴導犬がスマートフォンの着信に気が付き、人に知らせるデモも実施された。日本聴導犬推進協会では利用者の社会参加を促すべく、中型犬から大型犬を聴導犬として育成する取り組みを実践している。現在の利用者は50名だが、待機者も6名いるといい、その需要の高さがうかがえる。

多様性や社会課題に対して
音声認識技術を活用しよう

 こういった多様性や社会的な課題に対して期待されているのが、音声認識技術だ。前述した手話通訳士の不足に対しては、音声認識技術を導入することで会話をテキスト化し、内容理解をサポートできる。リアルタイム文字起こしによって、スムーズなコミュニケーションも支援する。また、手話を使えない人や、補聴器が効果的でない人でも会話が理解しやすいメリットもある。さまざまなデバイスで利用できるため、ユーザーのライフスタイルに合わせた活用が可能だ。

「例えば会議や教育現場などのシーンにおけるコミュニケーションの補助、駅や病院のアナウンスなどをテキスト化することによる情報アクセスの拡大や利便性の向上といった活用メリットが期待できます。他者と平等に情報にアクセスすることを可能にし、意見を表明する可能性を広げるため、社会インクルージョンの促進も期待できるでしょう」と大柳氏は語る。

 音声認識活用のメリットについて、利用者の視点から水越は「当協会ではイベントを行う際に、手話通訳と音声情報の両方を情報書証の手段として提供しています。手軽で安価に利用できる音声認識は利用頻度が非常に高まっています。また手話と文字を併用できる点から、コミュニケーションの選択肢も広がります」と語る。

 聴覚障害者へのサポートとして、アドバンスト・メディアの音声認識技術が採用された事例は数多い。例えば茨城県の取手市役所では、障がい福祉課において同社の音声認識偽実と透明ディスプレイを組み合わせ、聴覚障害のある人や高齢者としっかりコミュニケーションを行える体制づくりを実現している。

 聴導犬使用者も、これらの音声認識技術を活用しているという。水越氏は「職場や外出先で使用されています。当協会の利用者に大学の先生をされている方がいらっしゃいますが、ゼミなどで学生とのやりとりを行う場合に音声認識技術を利用されているそうです。また、聴導犬は『聴導犬』のケープを着用しているため、利用者は他者から聴覚に障害があることを分かってもらいやすく、コミュニケーションを行う際に最初から音声認識技術を利用してやりとりを行っていると言います」と語る。日本聴導犬推進協会においても、聴導犬との暮らしを希望する相談者に対して、相談内容の振り返りや情報のすりあわせを行う際に、音声認識技術によるテキスト化を活用しているそうだ。

 聴覚障害者のサポートに積極的に活用されている音声認識技術だが、課題もある。話し方や話し方によっては認識できない言葉や誤変換される言葉もあるため、認識精度の向上が期待されている。「電子音の認識にも対応してほしいですね。聴導犬は音が鳴っていることを知らせることはできますが、実際にそれが鳴っているのかろう者や難聴者は確認できません。電子音に応じてテキストが表示されれば、生活の質の向上につながるでしょう」と水越氏は語った。

 アドバンスト・メディアでは今後、これらの課題に対して音声認識の精度や速度の向上や、対雑音性の強化を進めると同時に、利用者の声を生かしたサービス改善を進めていく方針だ。