いますぐ読みたい「働き方ブック」レビュー - 第10回

魔法のように上司や得意先からOKが出る資料の作り方教えます



『実例で見る! ストレスゼロの超速資料作成術』西脇資哲・著

「いつまで経っても上司からOKが出ない」「何度トライしてもコンペで負ける」――それはあなたの資料の作り方に問題があるのかも!? 効率良く働くためには素早く、コスパの高い資料作成が必須。読まれる資料の作成術なら本書が鉄板です!

文/成田全


資料作成が苦手な人への“福音書”

 企画書、報告書、提案書、日報、議事録、見積書、稟議書、プレスリリース、会議資料、お礼状、始末書、詫び状(できれば最後の2つとは無縁でいたいものだ)など、仕事を進めるためには様々な「資料の作成」が必要だ。

 しかし上司に提出した書類が何度もダメ出しを食らう、グラフやイラストを入れたら余計だと指摘される、◯◯課長はOKだったが上長の□□部長からやり直しを命じられた、やらなきゃと思いながら苦手意識があって期限ギリギリになってしまう、残業して作成したら「残業するな」と叱責される……このような「手戻り」や「無駄な作業」の発生は、書類を作成する側も、そしてチェックする側にも負担をかけ、互いの時間も無駄にしてしまう。また内部でOKが出ても取引先が渋る見積書や、提案書をいくら出しても負け続けるコンペ、そして自信があるのになぜか通らない企画書など、成果に結びつかない資料も同様だ。

 この無駄な時間や手間、労力を省くため、書類や資料作成に必要なテクニックを学んで時間を短縮、手戻りをなくし、結果も出そうというのが『実例で見る! ストレスゼロの超速資料作成術』だ。

資料は相手の行動を促し、了承を得るためのもの

 本書は4つのパートに分かれており、まずPART1「わかりやすい資料は考えるストレスを与えない」で、作成前に考えねばならない根本的な問題についての説明がある。

 そもそも資料は何のために作成するのか? 本書の著者である日本マイクロソフト業務執行役員/エバンジェリストの西脇資哲氏は「資料とは、相手の行動を促すためにある」ものであり、最終的な目標は「プロジェクトに参加してもいいという相手からの『了承』」であると定義している。

 そして資料に盛り込むべき「2つの情報」と、わかりづらい資料の特徴を列挙。「相手の立場」を考えた上で「相手の行動」を引き出し、「相手の時間」を考慮して、余計なことを考えさせずにスピーディーな判断ができる資料を作り上げよ、と説く。

 続くPART2からは、本書タイトルの「実例で見る!」の通り、悪い見本である「Before」と、それを手直しして見やすくわかりやすくなった、相手の心に確実に刺さる状態の「After」が項目ごとに見開きで掲載される。そのテクニックは、文章にせずに箇条書きにする、しかも体言止め(名詞や代名詞などで文章を終わらせること)にして、文字数はスマートフォンの1画面に収まるように調整する(リモートワークではスマホでチェックが基本だ)、逆に取引先への提案書は文章にしてストーリーを語ることが大事など、資料作成が苦手な人が気づかない、目からウロコな「基本」がわかりやすく解説されている。

相手目線で考えるにはどうしたらいいのか

 PART3では企画書や報告書、議事録、引き継ぎ資料、プレスリリース、チラシといったビジネスで必要となる資料ごとにまとめられている。資料作成ビギナーは通し読みで、経験はあるものの資料作りを苦手とする方はピンポイントでフォーマットを学習することができる。

 また本書の実例で注意してもらいたいのは、「Before」と「After」2つの資料に書かれている内容がほぼ同じであることだ。「Before」は長々と説明していたり、配置がゴチャゴチャとしていてわかりづらく、この資料が何を訴えていて、どんなことを相手に求めているのかがひと目でわからない。しかし「After」は資料を目にした人がどう視線を動かすのか、といった資料ごとに異なる書式やデザインが考えられており、提案内容を理解するためのしっかりした構造もあって、ひと目で何が必要なのかがわかる。そしてポイントが簡潔にまとまっていて、「これはどうなってるの?」と余計なことを考える必要がない。「腹落ちのスピード」がとにかく速いのだ。

 最後のPART4は、どう資料を相手に渡し、どんな説明、話し方をしたらいいのかという「相手を動かす3つの応用テクニック」が収められている。さらに本書の購入者にはネット上から「上司や取引先を即納得させるテンプレート21」がダウンロードできる。資料作成に悩むビジネスパーソンは、すぐ手に入れて欲しい。

 突き返される資料も、通らない企画書も、「あなただけが読んでわかるもの」になっていることが原因だ。資料を見せた相手が即座に理解し、これならメリットがあると提案にOKしてくれるものにならねばならない。

 それには締切ギリギリまで引っ張らず、テンプレートを参考にして早めに仕上げておくこと、◯◯課長と□□部長では好みが違うから、どちらに合わせて資料を作るか、そしてどう説明するのか事前に対策を練ること、なかなか戻ってこない資料は「パッと見て理解しづらい、読みにくいから後回しにされている」と思うようにすること、提案なのか報告なのかといったシチュエーションや相手の立場で資料の内容と見せ方を変えること――このように相手目線で考えられるようになれば、もう資料作りは怖くない。本書で各資料の雛形を習得して自分なりに応用し、無駄な労働時間とストレスを軽減して、「あの企画、どうなっているでしょうか……?」と聞く面倒やそれにまつわる人間関係の摩擦もスッキリ解消、一発OKをもらって、しっかり結果を出してもらいたい。

筆者プロフィール:成田全(ナリタタモツ)

1971年生まれ。大学卒業後、イベント制作、雑誌編集、漫画編集を経てフリー。インタビューや書評を中心に執筆。文学、漫画、映画、ドラマ、テレビ、芸能、お笑い、事件、自然科学、音楽、美術、地理、歴史、食、酒、社会、雑学など幅広いジャンルを横断した情報と知識を活かし、これまでに作家や芸能人、会社トップから一般人まで延べ1500人以上を取材。