働き方改革のキーワード - 第10回

「メールじゃダメなの?」――チャットツールの勘所を知る



メールに即時性と円滑なコミュニケーションをプラス

「目当てのメールが見つからない」「複数のスレッドにまたがってしまうので特定のやり取りを追いかけづらい」「そもそも届くメールが多過ぎて読み切れない」――ここ数年聞こえてくるメール限界説。その代替または一部機能を肩代わりするとして急速に浮上したのがチャットツールです。いったい何をどう改善してくれるのか、簡単にまとめました。

文/まつもとあつし


チャットとメールの良いトコ取りでビジネスを高効率化

 働き方改革/スマートワークを語るときに欠かせないのが「チャットツール」です。チャットツールとは、テキストや画像・文書などを即座に相手に伝えることができ、グループ内でのやり取りも行なえる、バーチャルな会話ツールを指します。日本では月間アクティブユーザー数が7300万人を超えるLINEをはじめ、ユーザー数が引き続き増加傾向にあるFacebookが提供するFacebookメッセンジャーが頻繁に利用されています。

 このチャットツールが、ビジネスシーンでも利用が拡がりつつあります。代表的なところでは、チャットワーク、サイボウズ、Slack、Yammerなどが挙げられます。

 チャットツール大手のSlackが、テレビコマーシャルを放送したことも話題になりました。けれども「なんだか話題だけど、メールと何が違うの?」という読者もまだまだ多いはずです。

 チャットツールの原点は1980年代に生まれた「IRC」というオープンな枠組みです。そこから発展を重ねることで様々なチャットツールが生まれました。しかし主に個人間のちょっとした会話に利用シーンは限定されており、その用途が本格的にビジネス領域にまで広がったのは、ここ数年のことです。

 チャットツールはちょっとした会話には便利です。相手がメッセージを目にしていれば、すぐに返事をくれる可能性も比較的高いツールです。しかし、その内容を後から検索したり、話題が移り変わったときに経緯を追うのは困難でした。そういった目的にはメールを用いる、というのがこれまでの常識であった、と言えるかもしれません。

 たしかにメールは検索が可能で、「件名」である程度の分類が行なえます。けれども「メールを送ったけれど返事が無い」「大事なメールがメールボックスの中に埋もれてしまっていた」という事故は日常茶飯事です。即時性や確実性が求められるビジネスの世界にあって、メールも必ずしも最適解ではなかったのです。

 いま注目を集めているビジネス向けのチャットツールは、従来のチャットツールの即時性やカジュアルさといった利点と、メールが備えていた検索性・分類機能を併せ持つことを目指して進化が続いています。これらのビジネスチャットツールをうまく導入できれば、従来よりもコミュニケーションが円滑になり、生産性が向上することが期待されています。

チャットツールの隆盛は、ビジネスに必要な即時性と検索性を併せ持つことにある。画面はYammer。

チャットツール選びのポイントとは?

 多くのビジネスチャットツールに共通するのは、SNSのような即時性を備えながら、トピックごとに投稿内容を分類できるという点です。具体的にはグループを用意し、それぞれのグループに投稿できるメンバーを登録することで、トピックが入り交じることを防げます。

 ツールによっては、グループ内で話題をひとまとめにする(スレッド化)ことができたり、メッセージを知らせたい人を指定して投稿できるものもあります。これらのグループの数に上限を設け、解除するには有料オプションの購入が必要となるツールも存在します。

 会社のメッセージ全体を検索したり、個別のグループごとに検索を行えるのはほとんどのチャットツールに共通した機能です。ただし、検索対象となるメッセージ数に上限が設けられており、その制限を解除するには別途有料オプションの購入が必要なツールもあります。

 また、メールサービスなどと同様、企業向けの管理ツールの提供は有料となっているものがほとんどです。

 導入検討にあたっては、これらの有料オプションの料金体系は必ず確認したいところです。また、試験導入時にいずれかの部署でじっくり使ってもらい、全社利用時に回数制限などに達するか否か検証しておくことも大切です。

 チャットツールの進化が著しいなか、「高度な機能が使える」のはたしかに魅力的ですが、一方で高機能・多機能なツールは、これまでメールを中心に使ってきたユーザーからすると、敷居が高く感じられてしまうのも事実です。日々のコミュニケーションを担うツールですから、トライアル版を用いての試験導入では、最終的にすべてのスタッフが無理なく使うことができるか見極めることも重要だと言えるでしょう。

スマートワーク総研では実績があるチャットツールを紹介中!

 チャットツールの選択肢は豊富ですが、スマートワーク総研のソリューションファインダーならば、企業導入実績を持ち、導入支援が行き届いたものをチョイスすることができます。グループウェアに付属するチャットツールの使い勝手など、疑問・質問も担当への問い合わせが可能です。まずはお試しください。

筆者プロフィール:まつもとあつし

スマートワーク総研所長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ASCII.jp・ITmedia・ダ・ヴィンチニュースなどに寄稿。著書に『知的生産の技術とセンス』(マイナビ新書/堀正岳との共著)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『コンテンツビジネス・デジタルシフト』(NTT出版)など。