今年2025年はWindows 10のサポート終了を10月14日に迎えるとともに、ビジネスでのAI活用が本格化する新たな節目を迎えることになりそうだ。ビジネスでのAI活用をさらに加速する、エッジデバイス上でのローカル生成AI処理に最適化された新しいクラスのPC「Copilot+ PC」のビジネスユース向けモデルが各メーカーから続々と投入され始めているからだ。
さらに2月3日にはビジネス向けCopilot+ PCを一堂に集めたイベント「Copilot+ PC Day」が開催され、会場では発表されたばかりの各社のCopilot+ PCに触れられる。イベントに先立ちCopilot+ PCでAIアプリケーションを活用すると、PCの使い方や付き合い方がどのように変わるのかについて紹介する。
AI活用は公共のAIから組織のAIへ
そして個人のAIが本格化する
現在広く利用されている生成AIサービスは、インターネット上に公開されている情報を利用してユーザーに知識を提供する「公共のAI」として機能している。この生成AIのメリットをビジネスに生かすために、企業では組織内の情報を利用したAI活用、すなわち「組織のAI」の構築、活用を推進しており、すでに数多くの事例が公表されている。さらに今後、AI活用は社員一人ひとりに特化した利用形態へと広がっていく。それが「個人のAI」という世界だ。
会社で使っている個人のPCには、個人に特化した仕事に必要な情報が蓄積されている。しかし仕事に必要なファイルを探し出すのに時間がかかったり、見つけられなかったり、そもそも情報が存在することを忘れていたりするなど、せっかく保存されている情報を有効活用するのは難しいのだ。
そこで個人のPCに保管されている情報をAIで有効活用してユーザーの仕事の生産性や効率を高めようというのが、個人のAIの世界観となる。この世界を実現するのが「Copilot+ PC」と、搭載されるWindows 11上で稼働するAIアプリケーションだ。
Copilot+ PCとはPCでAI処理を高速に実行できる、マイクロソフトが提唱するPCの新しいクラスだ。すでにCopilot+ PCの要件を満たした製品が個人向けに発売されているが、このほどビジネス利用に適したビジネスユース向けのCopilot+ PCが、世界中のPCメーカーから一斉に発売されたのだ。
Copilot+ PCを使えば、例えばWindows 11のデスクトップ画面をスナップショット画像として保存し、その画像をAIで解析することで過去の情報を検索できるAIアプリケーションの「リコール」(執筆時はプレビュー版)が標準で使えるようになる。これは以前に見たWebページや編集した文書ファイル、コピーしたファイルや過去に見た動画など、なんとなく覚えているものの、はっきりとしたタイトルが分からない情報を検索できる便利な機能だ。
AIアプリ「Windows Search」が
PCの使い方を大きく変える
AIアプリケーションの利便性を言葉で説明しても、そのメリットを実感できないというのが正直な感想だろう。しかしこれから紹介する新しいAIアプリケーションは、言葉による説明でもその価値が伝わるのではないだろうか。それでは日本マイクロソフトの仲西和彦氏に紹介していただこう。
「昨年11月のMicrosoft Ignite 2024で発表されたセマンティック検索に対応した『Windows Search』がいよいよ利用できるようになります。PCに保存されているデータを検索する際、ファイル名で探していますよね。Windows Searchでは生成AIのマルチモーダル機能を利用して、さまざまな種類のファイルの内容をテキストに生成します。ユーザーは音声やテキストの自然言語で目的のファイルを探し出せるのです」(仲西氏)
Windows Searchを日常的に利用するようになるとPCの使い方が変わる。仲西氏は「PCでファイルを管理する場合、ファイルの種類や日付などで分類してフォルダーにまとめることで、ファイルを探しやすくしていますよね。Windows Searchが使えるようになれば、フォルダーを整理してファイルの保管場所を考えるといった面倒な作業から解放され、PCの中にある全ての情報から必要な情報を即座に見つけ出して使えるようになります。例えばPowerPointで資料を作る際に、必要な情報を集めるのにどれくらいの時間を費やしているでしょう。これから作ろうとしている資料に必要となりそうな情報を、Windows SearchでAIにまとめて収集させれば、検索という作業が不要になります。その後の資料作成もPCに搭載されているAIにやらせて、ユーザーは仕上がりに応じてAIに指示を出すだけでいいのです。これからはPCが単なるツールから、個人の要望に忠実に働いてくれる唯一無二のパートナーになります」と説明する。
ちなみにリコールは記録されたユーザーの操作から情報を探し出すのに対して、Windows SearchではPCに保管されている全ての情報が対象となる点が異なる。
個人のAI活用にCopilot+ PCが必須
AI処理性能と低消費電力を両立
仲西氏が説明したWindows Searchの活用例で着目したいのは、ユーザーの指示に対してAIがリアルタイムで実行して結果を提示する点だ。Copilot+ PCではユーザーの専属となるAIをPCに搭載することで、PCの中にある情報を一切外部に出すことなく、安全に活用できるメリットがある。さらにCopilot+ PCで定義されているAI処理性能を満たすNPUが搭載されていることと、最新のCPUやGPUも搭載されていることで、リアルタイムを含む高速なAI処理を低消費電力で実行できるメリットもある。
仲西氏は「AI処理はユーザーが命令したり操作したりすると実行されるものだと理解されがちですが、AI処理はユーザーがPCを操作していない間も実行されています。例えばリコールではユーザーの全ての操作をリアルタイムで記録しますので、常にPCの動作をモニターしています。このようにPCでのAI活用では、AI処理性能と電力効率を高いレベルで両立しなければならないのです。それを実現しているのがCopilot+ PCです」と説明する。
ユーザーを助けてくれるAIは一人だけではない。前述の通りAIはクラウドの公共のAIから企業の組織のAI、そして個人のAI、さらにIoTのセンサーなど、さまざまなデバイスへと広がっていく。そして公共のAIと組織のAI、個人のAIが連携して、より賢く便利に進化していくのだ。
日本マイクロソフトの宮本依里子氏は「ユーザーの視点から説明すると、PCに搭載されるAIだけで答えや情報が見つからなければ、企業が運用しているAIやクラウド上のAIと会話して、より有効な回答や精度の高い回答を生成する世界が間もなく実現されます。こうした仕組みはユーザーや組織があらかじめ設定したポリシーに従って行われるため、セキュリティを担保して実現されるので安全です」と説明する。
日本マイクロソフト株式会社主催
ビジネスユース向け Copilot+ PC 発表イベント
「Copilot+ PC Day 2025 ~未来に触れる1日。~」
2025年2月3日(月)東京国際フォーラムで開催!
入場無料で事前登録制です。
詳細と参加登録は、イベントサイト でご確認ください。