良い音を聞きながら仕事をしたいと思う人は多いはずだ。しかし現実のオフィスでは、ヘッドホンやカナル型のイヤホンをしたまま自分の仕事に集中するのは難しい。なぜなら業務の多くは、他者とのコミュニケーションが重要になるからだ。かといって自分のデスクにスピーカーを置いて音楽をかけていたら、周囲に迷惑がかかってしまう。そこで、良い音と仕事をしたい人にとって良きパートナーとなるヘッドホンが、オーディオテクニカのワイヤレス軟骨伝導ヘッドホン「ATH-CC500BT2」だ。
text by 森村恵一

オーディオテクニカ
ATH-CC500BT2

従来モデルから重量バランスの見直しなどを行い、長時間着けていても疲れにくいデザインに仕上げている。

従来製品から進化した魅力とは

 オーディオテクニカのワイヤレス軟骨伝導ヘッドホン「ATH-CC500BT2」は、2022年に同社がリリースした「ATH-CC500BT」の後継機に当たるモデルだ。

 ATH-CC500BT2は従来モデルに比べて音質が改善し、最大音量が約25%アップした。また、後頭部へのネックバンドの膨らみを抑え、最適な重量バランスを図ることで軽量化を行い、従来モデルでは約35gだった本体重量が約32gとなった。加えて、Web会議や通話の際に話し手の声のみを抽出し、相手にはその声を自然な音質でクリアに届けるintelliGoの技術「AIノイズリダクション」を搭載することで、通話機能も改善したのだ。これにより、外出時の通話やオフィスでのWeb会議がより快適に行えるようになった。オーディオテクニカの担当者によれば、国道沿いのロードノイズが気になる場所でも、通話相手に音声をしっかり聞き取ってもらえたという。また、部屋の中で掃除機をかけていたり、キーボードを強くたたいたりしても、通話相手に掃除機音や打鍵音といったノイズが伝わることはない。

 バッテリーは最大で約20時間の音楽再生に対応しているので、一日中使っても電池が切れてしまう心配がない。通話も最大約10時間可能なため、通話途中にバッテリー不足で音声が途切れてしまう可能性が少ないのだ。さらにATH-CC500BT2は、約10分の充電で約120分間の連続再生ができる急速充電に対応している。充電を忘れてしまった場合でも、別の用事を終わらせている間にATH-CC500BT2の充電を済ませられる。

軟骨伝導ならではのオーディオ体験

 耳をふさがないイヤホンとしては、耳周辺の骨を振動させて音を届ける「骨伝導」方式が有名だ。しかし骨を振動させるため、一般的なイヤホンと比べると左右の耳による音の聞き分けが難しくなり、ステレオ感が薄くなる課題があった。それに対して、耳軟骨に音声情報を含む振動を与えることで内耳に音声情報を伝える「軟骨伝導」は、伝えられた振動が鼓膜を揺らして音を楽しめるので、自分の耳がスピーカー代わりになる。外部の音を聞きながら音楽も十分に楽しめるので、不思議な開放感があった。

 オーディオテクニカが提供する、同社製品をより便利に使うための専用アプリ「Connect」をインストールすれば、音の設定を音漏れ抑制が行える「オリジナル」、人の声が聞きやすくなる「クリアボイス」、低音と高音を強調したメリハリのあるサウンドが楽しめる「ダイナミック」の3種類から選択できるようになる。この設定はアプリを介して変更するため、スマートフォンでもPCでも同じ設定で使用可能だ。試しにクリアボイスに設定して講座の動画を視聴してみたが、動画内で話している人物の声が明瞭に聞こえてきた。

 さらにはリラックス効果の高い自然のサウンドや、集中力を高めるマスキングノイズ、リフレッシュや瞑想に適したヒーリングサウンドなどが再生可能な「サウンドスケープ」機能も搭載する。サウンドスケープ機能で海や暖炉の音を流せば、自宅やオフィスにいながら大自然の中で仕事をしている気分になれるのだ。

約10分の充電で約120分の再生が可能な急速充電に対応。充電を忘れていてもすぐにヘッドホンを準備できるのだ。

インカムとしても活用可能

 ATH-CC500BT2は両耳にかけて装着するため、多少の動きでも外れる心配がない。加えてヘッドホンの音声を聞きながら外部の音も聞けるので、周囲とのコミュニケーションも取りやすいのだ。こうした点が評価されて、介護施設にて従業員同士でやりとりするためのインカムとして使われているそうだ。音漏れ抑制も行えるので、利用者にATH-CC500BT2から流れる音声を聞かれる心配もない。

 ほかにも、SNSやビジネスチャットの通話機能を利用して、ATH-CC500BT2をインカムとして使っているケースもある。既存のインカムはヘッドセットに付いているブームマイクが飛び出しているため、狭い場所で作業をする際に邪魔になってしまうことがある。しかしATH-CC500BT2であれば顔の周りがすっきりするため、狭い場所を移動する際もスムーズに作業が行えるという。慌ただしいイベント現場でも快適に動けるので、作業の効率化につながる。

 介護現場やイベント現場に限らず、耳をふさがずに良い音を楽しんだり快適な通話ができたりするATH-CC500BT2には、さまざまなビジネスの現場で活躍可能な可能性がある。Bluetoothでスマートフォンと連動するので、トランシーバーのような機器を別途用意することなく、安価に効率が良いコミュニケーションを実現できるのだ。今後軟骨伝導というオーディオ体験の魅力が広がっていけば、さらに多くのコミュニケーション用途でATH-CC500BT2が活躍するだろう。