今月のテーマは……
機能強化で管理性が向上!
ノーコードアプリ開発ツール「 AppSheet 」

2024年8月号の本連載で、ノーコードアプリ開発ツールの「 AppSheet 」について取り上げたことを覚えていますでしょうか。生成AI機能を実装し「 Gemini in AppSheet 」として自由自在に革新的なアプリ開発が行えることをお伝えしました。そんな AppSheet に関して、あれから半年の間に、大きな進展がありましたので今号では、その進化をいくつか紹介していきます。

庄司大助(Dandy)
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。

身近になった Gemini in AppSheet

 まずは「 Gemini in AppSheet 」について簡単におさらいしましょう。 Gemini in AppSheet は、「 AppSheet 」の標準機能として提供されます。そのため AppSheet を起動させるだけで、誰でもすぐに生成AI「 Gemini 」の機能を利用できます。正確に言うと、「 AppSheet Publisher Pro 」「 AppSheet Starter 」
「 AppSheet Core 」「 AppSheet Enterprise Plus 」をご利用の個人アカウント、ならびにAppSheet Core および AppSheet Enterprise Plus をご利用の Google Workspace のお客さまを含む、全ての AppSheet 有料アカウントに提供されるということです。

▲AppSheet に搭載された Gemini 機能。「Start with Gemini」をクリックすると利用できる。Geminiのサポートを受けながら、ノーコードによるアプリの開発が進められる。

Google Chat アプリ不要で利用可能

 従来、Gemini を利用するには 「Google Chat 」アプリと連携する Gemini in AppSheet アプリが必要でした。Gemini in AppSheet アプリは「 Google Workspace Marketplace 」からインストールしなければなりません。組織によっては、マーケットプレイスからアプリの入手を禁止している場合もあり、利用できないお客さまもいらっしゃいました。

 しかし、現在は AppSheet アプリの中に、Gemini in AppSheet が完全に組み込まれ、アドオンアプリが不要となりました。誰でも AppSheet の画面から直接 Gemini のサポートを受けられます。ノーコードによるアプリ開発を Gemini でさらにスムーズに実現できるようになったのです。実際の Gemini in AppSheet によるアプリ作成画面を確認したい方は、2024年8月号の記事を参照してください。

▲AppSheet 管理コンソールの画面。概要が表示されており、人気のアプリとその所有者を確認できる。グラフ表示によって見やすく、分析もしやすい。

管理性の向上でさらに便利に

 AppSheet は従来、Google Workspace とは独立した別製品でしたが、より多くのお客さまに使ってもらうため、2023年7月から Google Workspace のライセンスをお持ちのほぼ全てのお客さまがご利用いただけるようになりました。

 AppSheet はIT部門のようなITスキルの高い人たちよりも、現場で働く人々が「簡単にITの恩恵を受けられるようにする」という強い想いが込められた製品です。現場のデジタル化が進むのは良いことですが、企業内において、業務データを含むアプリをIT部門の知らないところで使われるのは、ITガバナンス上、不安や懸念もあります。

 AppSheet は、そういった不安を払拭する「AppSheet管理コンソール」という機能を備えています。作られたアプリが、組織内のしかるべきユーザーでのみ利用できるようにアクセスを制限したり、AppSheet の利活用の状況を把握したりしたいといったIT管理者のニーズに応えます。

 前述の通り、AppSheet と Google Workspace は別製品であったため、今まではGoogle Workspace の管理者が AppSheet を一気通貫で管理することはできませんでした。しかし現在は AppSheet のサービス権限を持つ全ての Google Workspace 管理者が AppSheet 管理コンソールにアクセスできるようになったため、管理性が高まりました。

 2024年12月の機能アップデートでは、AppSheet 管理コンソールを通じて、組織内の AppSheet の使用状況を監視、管理できるようになりました。具体的に管理者は以下のことが行えます。


・最も人気のあるアプリと作成者を把握
・各ユーザーアカウントで所有および使用されているアプリの数を把握
・組織の全てのアプリ利用者を表示
・AppSheet ライセンスの購入、割り当て、使用状況の把握
・アカウント、ユーザー、アプリ、ライセンスのリストをエクスポート


 ユーザーの AppSheet 活用状況を把握することで、人気のないアプリは改善していくなど利用促進のための対応も可能になります。セキュリティやガバナンス以外の観点からもAppSheet の管理は重要といえるでしょう。

 いかがでしたでしょうか? 現場の AppSheet ユーザーは、セキュリティやガバナンスといった管理や利活用状況のモニターは、IT部門にお任せしてアプリの開発と利用にフォーカスすることが可能です。一方、IT部門は、シャドウITになりかねない現場に必要なIT 環境を自分たちの定めるポリシーの範囲内で制御したり、有償ライセンスの適切な配布ができるようになったりするなど、管理性がより高まりました。まさに、現場のユーザーとIT管理者のWin-Winの関係ができたといっても過言ではないでしょう。

 Gemini in AppSheet でさらに便利になった AppSheet は、セキュリティやガバナンスの面でも安心であるということを、多くのお客さまに自信を持ってご提案ください!

▲アプリ利用状況の画面では、利用者数推移の状況を視覚的に把握できる。そのほかにもアプリに関するさまざまな情報を可視化することが可能だ。

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