ワーキング革命 - 第41回
基幹業務ソフトのクラウド提案が働き方改革の大きな商機に―PCA クラウド―
働き方改革を推進できる社内業務には、大きく二つのカテゴリーがある。一つは、営業を中心とした機動性を発揮する部門。もう一つは、財務や総務など基幹業務を担う部門。これまでの働き方改革では社外で活動する部門の機動性を加速するITを数多く提案してきた。一方で、まだ遅れているのが基幹業務のテレワーク化にある。そこで提案したいのが、基幹業務ソフトのクラウド化だ。
文/田中亘
中小企業を中心に大きな潜在需要
ITを活用した働き方改革の成功例は数多くある。その中でも、大手企業を中心に成果を上げている一つが、基幹業務に関連するLOB(ラインオブビジネス)の仮想化だ。これまで、セキュリティや社内ネットワークという閉じられたシステムの関係から、オフィスに在席しなければ操作できなかった基幹業務は多い。その基幹システムをテレワークで利用できる環境に整えることで、金融機関や大手企業では柔軟な働き方を実現してきた。
しかし、社内システムの仮想化には、それなりの投資とシステムインテグレーションが必要になる。10年前よりも仮想化システムの構築は容易になってきたものの、運用規模に合わせたサーバーのサイジングやネットワーク設計には、専門的な知識と技術力が求められる。そのため、社内にIT部門を擁していない中小企業の多くは、基幹システムの仮想化に着手していない。
また、財務や給与、販売管理などの基幹業務ソフトも、スタンドアロンのPCかクライアント/サーバー環境で利用するパッケージ製品を導入しているケースが多い。数人規模の財務や総務部門なら、手の届く範囲にシステムがあれば十分だと考えられている現状がある。その結果、求められる柔軟な働き方を実現できないままだ。
こうした課題を一気に解決し、仮想化などの複雑なシステムを構築しなくても、テレワークのような柔軟な働き方を実現するソリューションが「PCAクラウド」になる。
パッケージからの乗り換えを
PCAクラウドは10年以上の運用実績があり、これまでに1万2000を超える法人に利用されている。ところが、これだけの実績を誇りながら、PCAのパッケージ製品の販売実数と比較すると、まだ1割にも満たないという。つまり、冒頭で触れているように、日本の中小企業の多くはサーバーやデスクトップPC向けのパッケージ製品を導入して基幹業務を処理している。そう考えると、働き方改革をテーマとした基幹業務ソフトのクラウド化は、大きなポテンシャルがある。
PCAクラウドを採用する企業の傾向としては、すでにPCAのパッケージ製品を導入していて、サーバーやOSなどの更新をきっかけにクラウドへの切り替えを検討する例が典型的なものとなる。また、安価で小規模なクラウド系基幹サービスを利用していて、事業規模の拡大やIPO(株式公開)などを目的に、セキュリティや監査にも耐えられるPCAクラウドへ乗り換える例もあるという。そして、今後の市場の拡大が期待できる分野が、働き方改革をきっかけとした基幹システムのクラウド化提案だ。
PCAクラウドには、会計業務の「PCA会計DX」、給与管理の「PCA給与DX」、人事向けの「PCA人事管理DX」、販売管理の「PCA商魂DX」などがある。これらの代表的なクラウドサービスは、多くの企業の基幹業務を担う。そのため、まとめて導入することも、必要な部門から採用していくことも可能だ。本格的なクラウド化を推進しようとする企業であれば、会計から採用するケースもある。
一方で、会計や販売管理といったビジネスと財務に直結する基幹業務のクラウド化には慎重な企業もある。そうした顧客に対しては、人事や総務といった部門から移行する方法もある。そうした部門から、業務システムのクラウド化による利便性や効果を実感してもらい、最終的には会計や販売管理といった基幹システムのPCAクラウドによる統一が可能になる。
PCAクラウドにはWeb-APIという外部サービスと連携するアーキテクチャも用意されている。PCAクラウドWeb-APIは、ワークフローシステムと連携して、PCA会計DXクラウドへの伝票の申請や承認などの電子認証を可能にする。また、SFAと連携して、PCA商魂DXクラウドに受注や売上のデータを転送して伝票として入力するなど、各種業務の自動化や省力化を実現する。
こうしたインテグレーションにはある程度のIT構築スキルが求められるが、そこまで本格的な運用でなければ、PCAによる技術支援を得て担当者による基本的な設定だけで実現できる連携も多い。
初期費用を一括で支払うプランも用意
PCAクラウドには、二つの料金プランが用意されている。一つは、「イニシャル“0”プラン」という初期費用が0円のプラン。ソフトとサーバーの利用ライセンス料を月額で支払うプランになる。もう一つの「プリペイドプラン」は、その名の通りに利用期間に応じた費用を一括で支払う。一括支払いによる割引もあるので、法人契約の多くはプリペイドプランが選ばれる傾向にあるという。PCAクラウドを取り扱う販売パートナーにとっても、まとまった売上になるメリットがある。
こうした料金体系から、最初にどれか一つのPCAクラウドを提案し、導入が成功したあとから、他の業務システムの追加提案も容易だ。実際に、導入企業の中には、特定の部門で導入して効果を測定してから、会計のような全ての業務に及ぶ基幹業務のクラウド化へ踏み出した例もある。
日本企業は、海外の先進国に比べて社内システムのクラウド化が遅れている。最近では、Office 365のような情報系システムのクラウド化は広がっているが、基幹系システムにおいては、特に中堅・中小企業でのクラウド化が遅れている。それだけに、PCAクラウドという商材は、働き方改革を推進したい多くの企業にとって、魅力ある提案となるはずだ。
(PC-Webzine2019年8月号掲載記事)
筆者プロフィール:田中亘
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。