地方・中小企業のテレワーク普及に向けた「テレワーク導入推進コンソーシアム」設立
~導入ハードルを低減する「スマートテレワークパッケージ」を提供開始
テレワークの導入は都心、大企業が先行して進んでいる。地方・中小企業でのテレワーク普及を目指す「テレワーク導入推進コンソーシアム」が提供する「スマートテレワークパッケージ」は、初めてテレワークに取り組む企業でも必要なツールを簡単に選択でき、テレワーク環境の構築を支援してくれる。
文/狐塚淳
地方・中小企業のテレワーク普及はなぜ遅れているのか?
2019年5月28日、「テレワーク導入推進コンソーシアム」が設立された。同コンソーシアムの構成員は「テレワーク推進フォーラム」に属する企業及び団体だが、「テレワーク推進フォーラム」は、テレワークの一層の普及促進を図ることを目的に2005年に設立された産官学連携の団体で、テレワーク関係4省(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)の呼びかけで、日本テレワーク協会、日本テレワーク学会、民間企業等が参加している。
テレワーク導入推進コンソーシアムは、「地域の中小企業」を主対象にテレワークのさらなる普及を図っていくことが目的だ。テレワーク導入推進コンソーシアムが設立された背景には、国内のテレワーク導入状況が、都心、大企業で先行している現状がある。
総務省が5月に発表した「平成30年通信利用動向調査の結果」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000622194.pdf)によると、テレワークを導入している企業は19.1%で、平成23年の倍近くに増加している。
しかし、資本金規模別で見ると、10億円以上の企業の伸び率が高く、導入率は約50%となっているのに対し、5000万円未満では10%を少し超えるくらいで、大きな差がある。平成29年と比べると伸び率は高くなっているが、中小企業のテレワークはまだ普及がそれほど進んでいないと言える。こうした企業を支援し、テレワークの導入を推進するのが、同コンソーシアムの狙いだ。
地方の中小企業の場合、都市部とはテレワークの導入動機が異なる。職住近接しており、通勤ラッシュの負担軽減は大きな動機とはなりえない場合が多い。だが、独自の課題はあって、募集をかけても応募が少ないという人手不足解消などに取り組む必要があり、テレワークの導入でより柔軟な働き方を提供するというアプローチは魅力的だ。育児や介護などの理由で離職しなければならない従業員にも、テレワークで柔軟な働き方の選択肢を提示できる。
コンソーシアムの具体的な活動としては、中小企業経営者向けセミナーやコンサルティング、テレワークツールの提供を実施していく予定だ。テレワークのセミナー自体はこれまで「テレワーク推進フォーラム」も実施してきたが、より中小企業経営者にフォーカスする形になるのだろう。今回の施策の中で、最も期待されるのがテレワークに必要なツールの選択を簡単に行える「スマートテレワークパッケージ」だ。
初めてのテレワークでも必要なツールが選択できる「スマートテレワークパッケージ」
地方の中小企業ではテレワークに取り組みたいと考えても、テレワークの専任担当を置くことが難しいケースも多い。このため、何から手を付けていいのかもよくわからない。この課題を解決するのが、ツールを選択していくだけでテレワークを始める環境を整えることができる「スマートテレワークパッケージ」だ。
「スマートテレワークパッケージ」に含まれるのは、ノートPCとWeb会議システム、勤怠管理システムの3種。この3種のツールはテレワークのための基本だ。テレワークを導入する際に大きな課題となるのが、データセキュリティの問題とコミュニケーションの問題、そして労務管理の問題で、これらのツールはそれぞれの課題解決に対応する。どのツールも複数の選択肢が提供されており、企業の事情に合わせ自由な組み合わせで導入することができる。
まずノートPCについて、選択できるのは日本HPのProBook 430 G6とElitebook 830 G5の2モデルと、レノボジャパンThinkPad X1 CarbonとThinkPad X280の2モデル。どのモデルにもWindows10と、共同作業可能なドキュメント作成のスタンダードアプリであるOffice365を搭載している。モバイルワーク時などに画面の覗き見を防ぐプライバシーフィルターは、レノボの2モデルでは付属、HP Elitebook 830 G5ではソフト的に実現している。HP ProBook 430 G6はWi-Fiモデルだが、他の3製品はLTE対応で、外出時にも高速な通信を利用できる。画面サイズはHPは両モデル13.3インチ、レノボはX1 Carbonが14インチ、X280が12.5インチで、企業の利用目的によって選択できる。
どのモデルも東京海上日動が提供する「テレワーク保険」が1年分付属しているため、テレワーク時にPCに保存しているデータの損失・漏えい、PCへの不正アクセスなどが発生した時の、損害賠償金や各種対応費用が補償されるが、社内ネットワークに起因して発生した不正アクセスなどは補償対象外となっている。
テレワークのコミュニケーション課題を解決するWeb会議システムの選択肢は、日本マイクロソフトではOffice365とのスムーズな連携が可能な「Microsoft Teams」、テレビ会議システムで長い歴史を持つシスコシステムズは「Cisco Webex(Teams+Meetings)」と、それに会議室用端末「Cisco Webex(Room Kit)」を加えた2つの形から選択できる。
在宅ワークなどでタイムカードが使えず問題になる労務管理については、勤怠管理システムはネオキャリアの「Jinjer勤怠」とテレワークマネジメントの「F-Chair+」から選択が可能。「Jinjer勤怠」がクラウドサービスで利用するのに対し、「F-Chair+」はPCにプリインストールされている状態で利用するため、企業の運用方針に合わせて選択できる。
もちろん地方ばかりでなく、都内の中小企業でも「スマートテレワークパッケージ」の利用は可能だ。「スマートテレワークパッケージ」の一部は、東京都が実施する「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」(https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/telework.html)のモバイル端末等整備費用の対象機器であり、補助金が利用できる。
「スマートテレワークパッケージ」は「テレワーク導入推進コンソーシアム」設立メンバーの1社であるダイワボウ情報システムから提供され、コンソーシアムの以下のページから申し込むことができる。
また、このページでは、ツールの選択に先立って確認したいテレワーク実施に必要なガイドラインの情報や、テレワークモデルや先進事例も紹介されている。自社でどんなテレワークを実現していくか考えるためにも、ぜひ参照してほしい。
筆者プロフィール:狐塚淳
スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。