ワーキング革命 - 第54回

Web会議を快適にする最新ツールの選び方


ニューノーマル時代のワーキングスタイルは、テレワークが主流になりつつある。大手企業の中にも、2021年の春までに出社率を50%にする目標を掲げているケースもある。こうした状況にあって、Web会議を快適かつ効率よく実施するための最新ツールは、今後の大きな商材となる。

文/田中亘


この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売)からの転載です。

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臨場感と集中力、「音」へのこだわり

 Web会議とリアルな会議の違いは、「場」の臨場感や参加者の集中力にある。会議室という閉ざされた空間での議論では、参加者が議題に集中し、互いに意見を積極的に交換できる。それに対して、Web会議では自宅からアクセスするケースが多く、周辺の環境に影響されて集中力が途切れがちになる。

 その理由の一つが「音」にある。会議室とは違い、家の中には生活音が溢れている。自分は書斎にこもっていても、リビングからテレビの音が漏れてきたり、子どもや家族の笑い声や会話が伝わってくることもある。仮に、ワンルームの一人暮らしだとしても、窓の外から電車や車の音が響いてくるかもしれない。こうした生活音を切り離してWeb会議に集中するためには、高性能なヘッドセットの活用がお薦めだ。

 最新のヘッドセットは、高級オーディオ機器のような高音質と密閉性を提供してくれる。また、高性能なマイクも付属しているので、日常会話に近い感覚で話しかけられる。離れた位置にあるノートPCのマイクでは、どうしても大きな声で話してしまいがちだが、ヘッドセットのマイクは口元にくるので、会話が楽になる。マイクを使って自分の声をクリアに伝えることができれば、Web会議での発言にも自信が得られる。

 さらに、身内の会議だけではなく、Web会議を活用したプレゼンテーションなどにおいても、相手に伝えるチカラを増大させられる。何よりも、口元にマイクがあると、スポーツ実況のアナウンサーのようで、カッコよく映るかもしれない。コロナ禍で、客先への訪問機会が減っている営業職にとってヘッドセットの採用は、提案力を強化できる頼れる道具になるはずだ。

「魅」せるチカラを加速するWebカメラ

 音と並んでWeb会議で重視されるのが、眼にあたるWebカメラの性能だ。多くのテレワーカーは、ノートPCに付属しているカメラでWeb会議に参加している。参加者が誰かを判別する上では、ノートPCのカメラでも実用十分と言える。しかし、こちらからの意欲や提案を積極的に伝えたいと考えているのであれば、より高性能なWebカメラの活用を推奨したい。

 特に、PCの画面だけではなく、実際の製品や実演などを交えた情報をWeb会議で発信するなら、自由なアングルで被写体を映せるWebカメラは必須になる。Webカメラがあると、意図したアングルで自分の顔や製品を相手に見てもらえるだけではなく、単調な画面に変化を加えられる。

 Web会議が日常になっているテレワーカーにとって、ノートPCのカメラの画像は見慣れている。そのため、Web会議越しにプレゼンテーションを行っても、こちらへの注目度は低い。そこで、高性能なWebカメラでいつもと違う映り方を演出できれば、「魅」せるチカラが大きく変わる。

 ただし、Webカメラでの画像配信では、一つだけ注意する点がある。それは、通信回線の速度だ。家庭で利用している通信回線の速度が遅いと、高精細なWebカメラの動画とPCの画面を同時に配信するのが困難になる。場合によっては、音声が途切れてしまったり、画面共有が正しく機能しないことがある。そのため、高性能なWebカメラの利用では、事前にテストして回線の性能を確認しておく必要がある。

カジュアルなWeb会議に便利な専用デバイス

 集中力や提案力が求められるWeb会議がある一方で、テレワークで失われてしまったコミュニケーションを補うためのカジュアルなWeb会議もある。それは、休憩室での雑談のような感覚で、テレワーク時間の隙間を縫って開催されるWeb会議だ。

 こうしたWeb会議を実践している会社では、ランチタイムやアフターファイブを活用して、ランチミーティングやWeb飲み会を開催している。そこまで積極的ではなくても、PCで企画書や見積書を作っている合間に、隣の席の同僚と会話するような感覚で、親しいスタッフに話しかけられたら、と思うことはある。

 そうした手軽さを実現してくれる最新ツールが、Web会議専用デバイスだ。専用デバイスは、特定のWeb会議アプリ専用に設計されているので、PCやスマートフォンがなくても、簡単にアクセスできる。デバイスによっては、IP電話としての機能も装備しているので、テレワーカー同士の内線電話のような感覚で利用できる。利用者によっては、出社するような感覚で朝一番にWeb会議専用デバイスをオンにして、常に誰かと手軽にコミュニケーションできる環境を整えている。

 Web会議に参加しながら、ほかの作業も並行したいテレワーカーには、スピーカーの活用がお薦めだ。ヘッドセットやイヤホンは、Web会議の音に集中できるメリットはあるが、集中し過ぎると、PCでの作業がおろそかになる心配がある。Web会議によっては、そこまで集中しなくていい議題もある。そんなときに、会話をスピーカーから流しておくことで、「ながら作業」が楽になる。

 スマートフォンやタブレットで参加しているテレワーカーにとっても、Bluetooth対応のスピーカーがあると、会話が聞き取りやすくなる。スピーカーの中には、iPhoneを差し込むと充電と音の再生が可能になる製品もある。こうしたスピーカーを使うと、iPhoneをWeb会議デバイスのように活用できる。

(PC-Webzine2020年9月号掲載記事)

筆者プロフィール:田中亘

東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系まで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』『できる Word』全シリーズ、『できる Word&Excel 2010』など。

この記事は、ICTサプライヤーのためのビジネスチャンス発見マガジン「月刊PC-Webzine」(毎月25日発売/価格480円)からの転載です。

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