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第2回 サブスクリプション
ソフトウェア使用はサブスクリプションの時代に
さまざまなサービスや商品のサブスクリプション提供(サブスク化)が進んでいます。特にIT系では、非常に多くのソフトウェアやサービスがサブスク化しています。急速にサブスク化が進んだ背景には、インターネット環境の充実と、ユーザー、ベンダー双方にメリットが大きいことが挙げられます。
文/狐塚淳
サブスクリプションとは定額制サービス
日本語で「サブスク」と4文字の省略形で呼ばれるようになるほど、サブスクリプションモデルのサービスが一般に浸透してきました。サブスクリプション(subscription)は定額制のサービスを指すもので、実は新しいビジネスモデルではありません。雑誌などの定期購読、通勤や通学に使用される定期券、日本の飲み放題や食べ放題サービスもサブスクリプションの1つです(ちなみに、飲み放題、食べ放題は日本固有のサービス)。ある金額を支払うことで、決まったサービスが一定期間提供されるのが「サブスクリプション」なのです。
では、なぜいま、「サブスクリプション」に注目が集まっているのでしょうか。それは、音楽配信や動画配信など、従来は1コンテンツごとに料金が発生していたサービスが、楽曲を何曲聴いても映画を何本見ても同一の料金になったことで、市場に大きなインパクトを与えたことです。このビジネスモデルの変化が世界中で衝撃を持って迎えられたのです。
サブスクリプションとその他のサービスの違いは
それでは、サブスクリプションモデルと従来の販売モデルとの違いは何でしょうか。
一般的な販売モデルには、多くの店舗などでいまも行われているように、単体の商品やサービスごとにその都度料金が発生するものと、スマートフォンの通話や電気ガス水道料金のように、使った分だけ支払いが発生する従量課金モデルがあります。前者は「プロダクト販売モデル」、後者は「リカーリングモデル」(Recurring=くり返すこと)と呼ばれ、数や量が増えるとそれに比例して料金が増えるというわかりやすい販売モデルです。
また、サブスクリプションと似た“料金が一定のもの”としては、「リース」があります。カーリースやコピー機などの事務機器リースが一般的ですが、数年単位の利用期間の縛りがあり、その間は、毎月定額の使用料を支払うものです。リースでは所有権がリース会社にあり、ユーザーは自動車やコピー機の使用権に対し、料金を支払っています。この使用権に対し料金を払うという点がサブスクリプションと同じですが、大きな違いは、比較的長い利用期間に縛りがあることで、一方のサブスクリプションではいつでも解約できるものがほとんどです。
では、なぜ、短期間で解約できてしまうようなサブスクリプションサービスが可能となったのでしょう。大きな理由は、音楽やビデオがデジタル化したことで、パッケージや輸送にかかるコストがほとんどゼロになり、コンテンツの使用権だけをユーザーに使わせることが容易になったことです。従来のCDやDVDなどのメディアを使う場合、パッケージ、運搬、販売、貸与、返却などにコストがかかるため、所有権を移動するほうが確実でした。デジタルになったことで所有権は希薄になり、使用権の貸与だけで収益を上げることが可能になったのです。音楽を定額制で聴き放題にできるSpotifyやAmazon Music Unlimited、Apple Music、映像ならNetflixやU-NEXT、Amazon Primeなどが活況を呈しました。
こうしたサブスクリプションのビジネスモデルに注目が集まると、音楽やビデオだけでなく、生活の多方面で、サブスク化が進行しました。
衣食住で考えてみても、洋服の定額制レンタルサービス(air Closet 、MECHAKARI )などが登場。最近ではサブスクリプションサービスで飲み放題を提供するサードウェーブコーヒー店(coffee mafiaなど)もあります。住居に関しても、敷金礼金なしの賃貸はサブスクリプションといってもいいでしょう。衣食住以外でも、テレワークで注目されるオフィス用家具のサブスクリプションサービスや、自動車のサブスクリプションサービス(KINTO など)も関心を集めています。サブスクリプションだけで生きていくのは難しいかもしれませんが、非常にたくさんのサービスが定額制で受けられる状況になってきています。
消費者の意識は「所有から利用へ」移行することを当たり前ととらえるようになってきているといえるでしょう。
ソフトウェアもサブスクリプションサービスに
音楽やビデオなどのコンテンツサービスと並んで、サブスクリプションサービスの代表といえるのがPC用のソフトウェア(アプリケーション)です。PC用アプリケーションは、昔はパソコンショップや家電量販店でパッケージとして販売されていましたが、現在ではその多くがサブスクリプションに移行しています。
昔の販売モデルでは、PCで新しいソフトウェアを使いたければ、分厚いマニュアルとCD-ROM(それ以前はフロッピーディスク)が入った箱を買ってきて、PCにソフトウェアをインストールするところから始まりました。大多数の人は、パッケージを買うこととソフトウェアを買うことが一緒だと思っていました。
しかし、実は当時から、売られていたのはソフトウェア自体ではなく、ソフトウェアの使用権だったのです。マニュアルにはそのことが明記されていました。ただ、ソフトウェアの使用権を獲得して実際に使えるようにする方法が、ショップでパッケージを購入するという方法以外なかったのです。
ところが、インターネットの普及でダウンロード販売が可能となり、クラウドが当たり前になったことで、ソフトウェアをサーバー上で使用することができるようになり、使用権自体の販売、ユーザーとベンダーの直接契約が可能になりました。
ユーザーにもベンダーにもメリットのあるサブスクリプション
企業がソフトウェアを購入した場合、パッケージに管理番号のテプラを貼って保管するといった光景もかつては見られましたが、今やそんな必要はありません。PCで契約IDの管理をしていれば事足ります。企業は、ソフトウェアを所有していないので資産として管理する必要がないため、税務的な計上も必要ありません。
一方、ソフトウェアベンダーも、サブスクリプションなら定期的に収入が見込めるため、予算が立てやすくなります。数年ぶりのバージョンアップのときだけ売り上げが上がるのではなく契約に対応して毎月収入があるのです。しかも、以前はバグなどの不都合が見つかると修正プログラムを入れたCD-ROMを送ったり、ダウンロードしてインストールするように通知していましたが、ソフトウェアがクラウドで提供されていればユーザーは常に最新バージョンを利用できます。ユーザーが支払うのはまさに利用料金です。以前に比べるとパッケージ代や流通コストなどがかからないため、料金も低めに設定されています。
SaaS(サース/サーズ)などでは、ひと月単位の契約解除が可能なものもありますが、パッケージ時代から使われてきたMicrosoft OfficeやAdobe製品などの代表的なソフトウェアの多くは年間契約です。ソフトウェアの選択も複数の組み合わせが可能だったり、お得なセットがあったりと、仕事にあわせて選べます。豊富な選択肢や、利用上の簡便さを考えると、もはやソフトウェアの利用はサブスクリプションが基本になっているといえるでしょう。
サブスクリプションも利用するソフトウェアが増えてくると管理の負担は増してきます。そんなときにはサブスクリプション管理ポータル「iKAZUCHI(雷)」がお薦めです!
筆者プロフィール:狐塚淳
スマートワーク総研編集長。コンピュータ系出版社の雑誌・書籍編集長を経て、フリーランスに。インプレス等の雑誌記事を執筆しながら、キャリア系の週刊メールマガジン編集、外資ベンダーのプレスリリース作成、ホワイトペーパーやオウンドメディアなど幅広くICT系のコンテンツ作成に携わる。現在の中心テーマは、スマートワーク、AI、ロボティクス、IoT、クラウド、データセンターなど。