Microsoft Japan
Digital Days Report
~デジタル化を推進・体験・振り返る~
政府による「デジタル庁」が9月1日に発足し、同時に10月10~11日に「デジタルの日」が計画された。これを受け、日本マイクロソフトは、デジタルイベント「Microsoft Japan Digital Days」を10月11日~14日まで開催。前デジタル大臣や現デジタル庁参事官らを招き、マイクロソフト製品やDXに向けた施設、導入事例が多数紹介された本イベントの様子をリポートする。
オープニング公演・基調講演
平井卓也氏によるオープニング講演
アクセシビリティーを重視したデジタル化
本イベント開幕に先立ち、オープニング講演日の「Day ZERO」に登壇した前デジタル大臣の平井卓也氏。Microsoft Japan Digital Daysのきっかけとなったデジタルの日設立の背景を次のように説明する。
「デジタルの日とは、日本のデジタル化推進に向け、国民がデジタルについて定期的に『振り返り』『体験し』『見直す』機会としてデジタル庁が創設した記念日です。『デジタル社会形成基本法』制定にあたりワーキンググループのメンバーの一人、落合陽一氏からの『デジタル化を祝祭の中で国民に共有する』という提案を契機に制定しました。デジタルの日のロゴは公募・投票の結果、聴覚に障がいを持つグラフィックデザイナーの岩田直樹氏にロゴマークのデザインをお願いしました。同時に今後とも誰一人取り残さない、アクセシビリティーを守るというデジタル庁のポリシーのアドバイザーとしてご協力いただいています」
平井氏は今後のデジタル庁の方向性として、「国内で保有しているインフラ技術、人材や企業などの強みをデジタル化によって高め、徹底した国民目線でのサービス改革の実現につなげていきたいと思います」と示した。
“Revitalize Japan”日本社会の再活性化に
向けたデジタルトランスフォーメーション
DXソリューションで国内再活性化
日本マイクロソフト 代表取締役 社長を務める吉田仁志氏は、「日本社会を再活性化するため、『Revitalize Japan』と銘打ち全社を挙げてDXを支援します」と同社の目標を掲げる。吉田氏は自身の履いている靴を指してこう説明する。「実は本日アシックスさまのハンドボールシューズを履いています。このシューズにはセンサーが埋め込まれており、計測した歩数や位置などのデータはクラウドプラットフォームのMicrosoft Azure上に収集されて動線を効率的に分析できます。このシステムはアシックスさま、神戸デジタル・ラボさまが開発した『TUNEGRID』というサービスです。プロのスポーツチームの運動データ解析や工場内の動線の分析などに活用でき、予測不能な状況や課題に対してレジリエンシーを持った組織、ビジネスモデルを作れます」
吉田氏は、今後日本企業が活性化していくために必要な取り組みとマイクロソフトが行っていくDX支援に関して次のように提言する。「日本企業の再活性化を再優先課題として取り組んでいくには大企業、中堅中小企業、公共分野、個人、各分野の変革が不可欠です。当社は、産業における成功事例を作り業界全体のDXの推進の活性化につなげます」
デジタル庁のデジタル トランス
フォーメーション戦略や今後の展望について
クラウド連携で既存システムを刷新
初日のDay ZEROでは、日本マイクロソフトの木村 靖氏が進行役となり、デジタル庁の取り組みなどについてデジタル庁参事官の吉田宏平氏に話を聞いた。デジタル庁創設にあたって注力する三つの分野としては、一つ目に行政、二つ目に医療・教育・防災など産業社会全体、三つ目が誰でも恩恵を享受できるデジタル化を掲げている。
吉田氏は、3分野の具体的な取り組みを次のように説明する。「デジタル庁が注力する取り組みの第一段階として、国と地方のシステムの標準化・共通化を進め、三つの分野の集約に取り組みます。産業分野に視野を広げると、従来取り組みが遅れていた医療・教育・防災分野に対して有識者やIT企業さまとともにデジタル化を推進します」
吉田氏は、新たな目標を打ち出す中で従来のITへの取り組みについて振り返り、今後の方向性をこう示す。「2000年の『IT基本法』発足から20年、IT事業を行ってきました。しかし、コロナ禍の状況把握に際してExcel入力作業などで時間をとり、情報に目詰まりを起こすなどの事態が生じました。散在していたシステムの集約をクラウドなどで行うことで、停滞していたDXを推進していきます」
最後に木村氏は、クラウドサービス事業者に期待することやデジタルに対して活用意向を質問した。吉田氏は、その意向を次のように話す。「政府内でのクラウドへの理解や取り組みは進んでいるものの、政府と自治体間のシステムにおいては完全にクラウド化が浸透していない部分もあり、自治体のセキュリティに関する考え方などもアップデートしていく必要があります。そうした状況に対して、クラウドを前提としたシステムをデジタル庁とほかの関係省庁、そして地方と手を携えて検討していきます。特に推進していきたい部分が、クラウドテクノロジーを活用する中での人材育成です。例えば、Azureのトレーニングイベント『Microsoft Virtual Training Days』や『Azure認定資格トレーニング』などを活用して政府のデジタル化を進めていきます」
吉田氏の説明を受けた木村氏は「従来の組織風土的な考え方や習慣がある中で組織全体のデジタル政策を浸透させていくためには、ユーザーのリテラシー習得が欠かせません。当社でも、組織全体のスキリングやデジタル人材に対しての育成を多方面で進めていますので、そうしたデジタル対応力を上げるサービスを積極的に活用してほしいですね」と育成サービスの活用を促した。
吉田氏は、デジタル庁の高度なデジタル化に向けて今後の展望を次のように語る。「開発する側はもちろんですが、ユーザーもデジタルを使いこなせる能力が重要です。今あるものを前提として考えてしまい新しいテクノロジーを取り入れる必要性が見いだせないユーザーが多いことも事実です。そうしたユーザーの負担も考慮して、なるべくストレスなく使えるUIで使い勝手の良い仕組みを考えていくべきでしょう。実際にデジタル化に取り組んでみると、従来は限界だと思っていたことが克服でき、テクノロジーやツールの力を実感できます。そうした発見をユーザー側にも伝えられるシステムの仕組みを検討し、新しい働き方を推進することで霞が関全体の変革に寄与していきます」
パートナーセッション
ハイブリッドワークを支える、
Windowsエコシステム
Windows 11
Windows 11の特性を生かした製品を提供
ハイブリッドワークに最適なデバイスとクラウドソリューションを紹介する本セッションでは、日本マイクロソフト 橋本美英氏と日本マイクロソフトのパートナー企業からDynabook 中村憲政氏、日本HP 九嶋俊一氏、レノボ・ジャパン 安田 稔氏の3名が登壇。3社は Windows 11の特性から注力分野を添え、日本HPの13.3インチモバイルPC「HP Elite Dragonfly」、レノボ・ジャパンのWeb会議用端末「ThinkSmart Hub」、Dynabookのクラウドソリューション「dynaTeams JobCanvas」などを紹介した。最後に橋本氏は「引き続きパートナー企業さまとハイブリッドワークを支える革新的なデバイスとクラウドソリューションを提供します」と語った。
2022年度 パートナービジネス戦略方針
人材開発や基盤整備を進めるMSの戦略
日本マイクロソフトの檜山太郎氏は、同社の事業戦略展開について説明した。「2022年度のパートナー事業本部注力領域として、『新たなビジネス創造の実現』『SMB市場におけるクラウド/DX Growth planの加速』『JDA発足をトリガーにした新たなパートナー協業によるGovernment DXの実現』の三つを推進します」
この三つの注力領域をカバーする二つの基盤について、育成支援プログラム『Microsoft Learn』で各製品の技術情報から開発手法、ビジネス部門向けのローコード、開発のポイントまでDXに必要な多岐にわたるトレーニングコースを無料で提供します。また、パートナー関連の情報ポータルで、従来分散していた情報を統合しました。今後も、当社製品を導入しやすい状況を追求します」と紹介した。
デジタルシフトを加速させるMicrosoft
DXを支えるプラットフォームの提供
本セッションでは、マイクロソフトが支援した企業のDX事例が紹介された。日本マイクロソフト 五十嵐 毅氏は、企業がデジタルカンパニーへ変革するには「自社の業務改革」「製品・サービス改革」「社会イノベーション創出」の三つの切り口でデータの活用が必要だと指摘する。その上で「当社はエンドツーエンドでお客さまのデータを支えるプラットフォームをご提供しています」とアピールする。DX事例としては、三菱電機がPaaSソリューション「Azure PaaS」を活用して鉄道車両メンテナンスソリューションを開発した例などを紹介した。最後に五十嵐氏は「『全方位のプラットフォーム』『パートナーさまとのエコシステム』「グローバル知見』『人財育成』の組み合わせで顧客のDXパートナーとなるべく活動を進めていきます」と語った。
Microsoft Azureを世界のコンピューターに
Microsoft Azureでアジャイル開発を提案
日本マイクロソフトの上原正太郎氏は、Microsoft Azureの提供シーンや活用事例を紹介した。上原氏はAzureの強みを次のように説明している。「パブリッククラウドで一番重要な点が複数のシステムとの連携です。よりアジャイル型の開発が求められる時代、日々のPC業務の生産性を高める『Microsoft 365』、基幹データを取り扱う『Dynamics』、ローコード/ノーコードソリューション『Power Platform』などをAzureが下支えし、セキュリティ・管理性を一元的に提供します」
活用事例では、製菓会社のカルビーの独自開発アプリ「ルビープログラム」にMicrosoft Azureを活用している例が挙げられた。本アプリは従来のキャンペーンのはがき処理作業をアプリ内で完結させるもので、AzureのAIエンジンを使うことで、集計作業の手間を省いて顧客体験を向上させた例として紹介された。
データ・セントリック・トランスフォーメーション(DcX)
データの利活用がビジネスを変える
インテル、ファウンダリー事業を拡大
インテルの土岐英秋氏は、同社の事業領域展開について紹介した。「当社では、クラウド、コネクティビティ、AI、インテリジェントエッジの四つの分野を展開しています。クラウド分野では、汎用性の高いサーバーを活用し、ハードウェアとソフトウェアの両極から最適化を行います。コネクティビティ分野では、ソフトウェアベースで5Gをサポートします。AI分野に関しては、今後当社のCPUの基盤上でのAI処理に対応しました。AI機能はインテリジェントエッジ分野にも関連しておりエッジ機器の処理もサポートします」
今後の展開としては、「垂直統合型のデバイスメーカーを意味する『IDM』を進化させた半導体生産方針『IDM 2.0』を掲げます。その取り組みの一つとして、当社以外の企業さまに対して半導体を作って納品するファウンダリー事業などにも取り組みます」とアピールした。
Azure Base から Microsoft Base へ
~過去・現在・これから~
物理拠点・Microsoft BaseでDX支援
日本マイクロソフトは、2019年12月にDXの物理拠点として「Microsoft Base」を創設している。創設の経緯と変遷を同社 竹内宏之氏はこう説明する。「国内のビジネスパーソンのDXを推進する情報発信基地という意味合いで、コワーキング利用やセミナー開催などが可能な施設を代官山のほか、各拠点をパートナーさまとともに展開しております。当初は『Azure Base』という名称でしたが、Microsoft 365(M365)、Dynamics、ノートPC『Surface』など当社の全領域の製品でDXを支援するという意図で今年7月から名称をMicrosoft Baseに変更しました」
別拠点でMicrosoft Base広島を運営し、情報活用事業を展開するデータキュービックの例も紹介。地域アーティストによるアート体験、M365を起点としたDX支援のコンサルティングソリューションなどを地域の事業者に向けて提供している。