「現場」の働き方を改革するモバイルアプリ作成ツール「Platio」
デジタルを活用した働き方改革はあらゆる企業と業種に求められている。しかしコロナ禍を経て現実的な働き方改革を実現できた業務は、PCを利用するデスクワークやナレッジワークが中心となってきた。現在ではテレワークとオフィスワークのいいとこ取りを目指したハイブリッドな働き方を推奨する企業も増えているが、こうした流れから「現場」は取り残されがちだ。倉庫や工場、店舗などフィールドワークが中心となる現場では、まだまだデジタル化が遅れている。そうした現場の課題を解決して新しいワークスタイルを実現するクラウドサービスが、アステリアのモバイルアプリ作成ツール「Platio(プラティオ)」である。
ビジネスは現場で起きている
販売や保守、建設、工事、倉庫管理、物流など、暮らしを支えるビジネスの多くはフィールドワークによって支えられている。こうしたフィールドワークの現場では日々の業務を正確に記録し伝えるために、伝票や日報を活用してきた。今でも情報を記載し共有するための手段として、まだ多くの現場では紙とペンに頼っている。もちろん、タブレットやバーコードスキャナーなどを活用して、フィールドワークの業務改革に取り組んでいる事例も数多くあるが、大規模な利用が見込めないと、予算面からデジタル化に踏み切れない現場も多い。
こうした課題に応えるクラウドサービスが、現場の業務に合ったモバイルアプリを簡単に作成し、クラウドを活用してデータを共有できる「Platio」だ。スマートフォンなどのモバイルデバイスを活用し、クラウドサービスと組み合わせて現場で利用できる業務アプリを作成するPlatioは、これまでデジタル化が難しいと思われてきた業務でも、短期間でのデジタルトラスフォーメーション(DX)推進を可能にする。
現場のDX化が遅れている理由の一つは、開発者と実際の業務に携わっている人たちの乖離にある。アプリを開発するエンジニアたちは、収集したいデータの形式に合わせてアプリの入力フィールドを設計しがちだ。しかし業務に携わっている人たちは、できるだけ日々の作業と違和感のないアプリの使い勝手を求める。例えば、いつも決まって入力する項目は前日の内容がコピーされているとか、地図などの位置情報は自動的に取得するといった、作業の手順を楽にする工夫が現場での利用を促進する。またアプリの開発そのものもエンジニア任せではなく、業務を知っている現場に近い人たちが主導した方が実務に即した運用を実現できる。
Platioはアプリの開発から運用までを現場が主導できるように、ノーコードによる業務アプリ開発を実現している。具体的な開発画面では、Excelのワークシートのようなイメージが表示される。登録したい項目が表示されているワークシートの列を移動したり、追加したりするだけで、モバイルデバイス側の仮想画面もリアルタイムで変化するので、プログラム開発の経験がない人でも画面を確認しながらモバイルアプリを開発できる。
初めてアプリを開発する人のために、Platioでは100種類以上のテンプレートを用意している。イチオシテンプレートとして紹介されているアプリには、「アルコール検査記録」「倉庫棚卸」「工場日報」「遺失物管理」などがある。そのほかにも、「検温レポート」「訪問介護管理」「山野生育調査」「車両位置管理」など、数多くのフィールドワークに適したテンプレートがそろっている。テンプレートを活用すればアプリを実行するスマートフォンの特長を生かして、位置情報やカメラ画像などを保存できる日報、報告書が短期間で簡単に開発できる。
アステリアによれば、業務の現場に求められる開発スキルはExcelを使えるレベルで十分だという。
管理業務を最大で550時間効率化
Platioを活用した事例の中には、忘れ物の管理アプリを3日間で開発して、最大で550時間/月の管理業務を効率化したフィットネス企業がある。開発したアプリは、忘れ物の登録、忘れ物の検索、引き渡しの署名、一覧の管理の四つだ。店舗ごとに毎月10~20件の忘れ物対応をDX化したことで、問い合わせや引き渡しにかかる業務を効率化し、全社で約550時間の削減につながったという。また日常点検や各種指数の管理をPlatioでアプリ化して、年間400時間の業務効率を実現した工場もある。これまで紙とペンに頼ってきたフィールドワークの多くがPlatioでデジタル化されると、業務時間の短縮や正確なデータ収集が可能になる。
Platioのモバイルアプリは入力されたデータを端末に保持するので、通信状況が悪い現場でも運用できる。開発したアプリはPlatioのミニアプリとして実行されるので、新たなアプリをApp StoreやGoogle Playストアに登録する必要はない。社内の閉じた業務アプリとしてセキュリティも確保される。そしてデータの入力形式は、日時やテキスト、数値に加えリスト選択、スイッチ、スライダーも設定できる。さらに、写真や手書きの画像、動画、音声、位置情報、署名、QRコードといったモバイルデバイスの機能を活用した入力形式も設定可能だ。現場のユーザーは一般的なスマートフォンの使い方さえ知っていれば、ほぼ迷うことなく開発されたミニアプリを使いこなせるだろう。
基幹システムとのデータ連携も可能
アステリアは、Platioのミニアプリで収集したクラウド内のデータを自社の基幹システムなどと連携するサービス「Platio Connect」も提供している。Platio Connectを活用すると、Platioで収集したデータを自動的に基幹システムに転送したり、既存の業務システムのデータをミニアプリにコピーしたりしてモバイル端末に送信する、といった連携がノーコードで開発できる。約400名の配送員を抱える宅配事業者では、Platio Connectを活用して紙の配送伝票をミニアプリ化した。その結果、ペーパーレス化と配送後の伝票処理を8割以上削減し、年間で約5万6,000時間の業務時間の効率化につなげられた。
もちろんPlatio Connectを利用しなくても、Platioでクラウドに保管されているデータはCSV形式などでダウンロードできるので、Excelを活用したデータ分析や蓄積されたデータの検索、整理などにも利用可能だ。Platioは現場主導でミニアプリを開発してDX化を推進できるので、運用が軌道に乗ってきた段階で、蓄積されたデータの連携や自動化を検討しても良いだろう。いずれにしても、紙とペンに頼っているフィールドワークの現場であれば、Platioによるワークスタイル変革を提案できる。ミニアプリの開発には、高度なITスキルは求められないので、現場の課題をヒアリングするだけで、簡単に提案用のサンプルも設計可能なはずだ。