AI
AI機能の拡張にフォーカスしたServiceNowの最新プラットフォーム

ServiceNow Japanは9月25日、同社のプラットフォーム「Now Platform」の最新版である「Xanadu」のリリースに関する記者会見を実施した。過去で最もAIにフォーカスしたリリースであると語られたXanaduリリースではどのような機能の拡張、強化が行われたのだろうか。今回はNow Platformに組み込まれた三つの技術的要素と共に、信頼されるAIの実現に向けたServiceNowの取り組みを紹介していく。

組み込まれたAIがさらなる業務改善を実現

ServiceNow Japanが実施した記者会見では、同社が提供するプラットフォームのAI機能を中心としたアップデート内容や、AIの信頼性を確保するための取り組みについて語られた。

三つの技術的要素を組み込むことで
ユーザーは意識せずにAIを活用可能

 ユーザーが意識することなくAIの恩恵を受けられるように、今回の発表ではNow Platformに対して三つの技術的な要素を組み込むことが発表された。

 一つ目がデータだ。Now Platformのデータベースとして、ServiceNowが提供するデータベース「RaptorDB」を採用した。RaptorDBは、日々の業務に関わる処理からAIやプロセスマイニングといった高負荷な処理まで柔軟に行える。こうしたデータベースをNow Platform上に構築することで、外部のデータレイクや外部のプロセスマイニングエンジンにデータを出力する必要なく、データの運用と分析を単一のプラットフォームで実施できるのだ。さらに大型のワークロードを求める顧客には、「RaptorDB Pro」を提供する。RaptorDB Proはリポート・分析・リストビューにかかる時間を27倍高速化させ、ワークフロー全体のトランザクションスループットを3倍に向上させている。ユーザーはより高負荷な作業にも対応できるようになるのだ。

 二つ目がAIだ。ServiceNowではNVIDIAと共同開発した大規模言語モデル(LLM)「ServiceNowLLM」を提供している。ServiceNowLLMは業務のユースケースに合わせて構築された用途特化型モデルとなっており、顧客はモデルの調整などを行うことなく、即座に利用を開始できる。さらにServiceNowでは、OpenAIやMicrosoft、Google Cloudなどが提供する汎用型のLLMをカスタマイズできる「カスタムエクスペリエンス」のサービスも提供している。汎用型のLLMを活用して業務に特化したアプリケーションサービスをNow Platform上に構築したい場合や、ユーザー自身が作成したモデルに対してAPIを提供している。ServiceNowLLMとカスタムエクスペリエンスを並行して提供することで、幅広いユースケースへの対応をServiceNow Japanは実現しているのだ。

ServiceNow Japan
常務執行役員
COO
原 智宏
ServiceNow Japan
マーケティング本部
プロダクトマーケティング部
部長
古谷隆一

業務の流れにAIを導入し
生産性の向上に寄与

 三つ目がアクションだ。Now Platformに組み込まれた生成AI機能「Now Assist」の機能拡充、強化が行われた。Now Assistでは、インシデントやチャットの要約、コードの生成、ナレッジ記事の新規作成などのさまざまな機能「スキル」が搭載されている。ユーザーは各スキルを活用することで、生成AIの機能を業務に即座に適用できるのだ。

 まずは今回発表された機能拡充から見ていこう。複数インシデントからナレッジ記事を作成可能となったことが紹介された。類似したインシデント・問い合わせをグループ化し、複数のソースからナレッジ記事を自動で作成する。この機能により、正確で質の高い内容の記事を作成できるのに加え、重複記事の作成を防ぐことも可能だ。

 また新たなスキルとして、推奨アクションとカスタムスキルの構築、そしてチャットと電子メールの返信内容の自動生成が今回発表された。推奨アクションは、インシデント対応中のエージェントに対して、インシデント解決のためにエージェントが取るべき次の行動を提示することで、迅速なインシデントの解決やサービス品質の向上を図れるスキルとなっている。カスタムスキルの構築は、Now Assistで提供されているスキルに加え、ユーザーによるスキルの開発を可能にするスキルだ。ユーザーが開発したスキルはNow Platform上に構築されるため、Now Platform上のデータとシームレスに連携し、コンテキストと精度を向上可能だ。チャットと電子メールの返信内容の自動生成は、問い合わせの内容や対応の履歴を基に、Now Assistが文脈に基づいた返信内容を作成するスキルだ。「当スキルを活用することで、多くのインシデントやケースの処理に追われているエージェントは、お客さまへの返信を作成することに時間を費やしません。応答時間を短縮することによって、お客さま満足度の向上につなげられます」と、ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 部長 古谷隆一氏は語る。

 ServiceNow Japan 常務執行役員 COO 原 智宏氏は、Now Assistによって、業務の流れが大きく効率化できると話す。「例えば、エージェントが従業員から何か問い合わせを受けたというシナリオを想定してみます。エージェントは、問い合わせを受けた内容について検索またはチャットボットに質問を投げかけ、検索した内容やチャットボットからの返答の精査を行い、問い合わせをした従業員に返答を実施します。そして問題が解決した後、解決メモやナレッジ記事を生成することで類似した問い合わせを抑止していきます。こういった一連の流れを、従来は人ベースで行っていました。Now Assistの各スキルを導入することで、AIがチャットボットの返答を要約し、従業員に返信を行い、解決メモやナレッジ記事を自動生成できます。エージェントはAIが生成した内容を修正するだけで、問い合わせ対応を完了することが可能です。このように人が行っていた作業をAIがサポートすることで、ユーザーとユーザーからの問い合わせに対応するエージェント両方の生産性を常に引き上げられます」

安心してAIを利用可能にするための
四つのコンセプト

 さらにServiceNowでは、マイクロソフトとの戦略的なパートナーシップに基づく機能拡張を行っている。Xanaduリリースにおける機能拡充として、Now AssistとマイクロソフトのCopilotとの連携が発表された。例えば、Copilotに「利用しているPCが経年劣化のため交換したい」と依頼すると、CopilotからNow Assistに対してリクエストが引き継がれ、以降の対応をNow Assistがサポートしてくれるのだ。

 AIの導入、活用が進むにつれて、懸念されているのがAIの信頼性だ。ServiceNowでは、ヒューマンセントリック、多様性やバイアスの検証、透明性、アカウンタビリティの四つのコンセプトを基にAIを提供している。これらのコンセプトを実現するために、ServiceNowは自社開発のLLMであるServiceNowLLMを、自社のデータセンターから提供することで、エンドツーエンドでAIの処理をコントロールしているのだ。さらにアウトプットデータに対してさまざまなフィルタリングを行い、誤った情報やバイアスのかかった情報がエンドユーザーに届かないようにもしている。そして、AIをどの業務に適用していけば良いのかという課題を抱えた顧客には、生成AIのガバナンス承認ワークフローを提供し、AIの活用状況が知りたいという課題を抱えた顧客には管理者向けのコントロールセンターを提供している。原氏は「こういった機能を提供することで、お客さまは安心してNow Platform上のAI機能を活用できます。お客さまが安心してAIを利用できることは、AIの機能強化と同じまたはそれ以上に重要なことだと考えていますので、今後もこの取り組みを継続していきます」と意気込みを語った。

表示されるポップアップウィンドウにNow Assistが生成したメールの返信内容が表示される。問い合わせの内容や対応の履歴を基に文脈に基づいた返信内容が生成されるため、内容の確認にかかる手間は最小限で済む。

Digital Employee Experience
従業員のデジタル経験を最適化し生産性を向上させるプラットフォームを提供

2023年11月、VMwareがBroadcomに買収された。買収の後、VMwareの仮想デスクトップインフラや統合エンドポイント管理ツールなどを提供していたエンドユーザーコンピューティング(EUC)部門は、グローバル投資会社であるKKRの傘下に入り、新会社Omnissaとして独立した。そうした経歴を持つOmnissaは9月26日、フラッグシップイベント「Omnissa ONE」を開催した。今回は本イベントで語られたOmnissaの事業展開について紹介しよう。

デジタル体験を向上させるプラットフォーム

VMwareのEUC部門が独立したOmnissaによるイベント「Omnissa ONE」をリポートする。記事では、Omnissaの事業展開やスマート、シームレス、セキュアな従業員エクスペリエンスを提供する同社のプラットフォームについて紹介していく。

三つの領域に投資を進め
さらなる成長を目指す

 Omnissaは、年間経常収益が15億ドル、都度取引による売り上げが40億ドル、世界各地の顧客が2万6,000社以上と、盤石なビジネス基盤をすでに築き上げているソフトウェア企業だ。Omnissaのミッションは「スマート、シームレス、セキュアな従業員エクスペリエンスの提供により、働く人々が勤務場所を問わず最高の仕事ができるように支援する」とVMware時代から変わらない方向性となっており、このミッションを実現する製品が「Omnissa プラットフォーム」だ。

 Omnissaは今後さらなる成長を遂げるために、三つの領域に投資を進めていくという。一つ目が「ビジネスのしやすさ」だ。価格モデルの変更、製品の購入プロセスの簡便化、カスタマーサービス部門の増強によって、顧客はOmnissaとビジネスをスムーズに行えるようになる。二つ目が「テクノロジーイノベーション」だ。VDIや企業で利用されているエンドポイントを一元的に管理する「Unified Endpoint Management」(UEM)に対し、積極的な投資を行う。また、モバイルデバイスを標的としたセキュリティ脅威に対する動的な保護を実現する「Mobile Threat Defense」(MTD)などの新領域への展開に加え、生成AIを活用した市場をリードするプロダクトの構築を目指すという。三つ目が「エコシステムの拡大」だ。マイクロソフトやApple、Googleといったプラットフォームパートナーやセキュリティパートナーとの関係を強固にする。パートナーとの連携を密にすることで、日本やアジア圏の国々への市場進出を目指していくことが語られた。

Omnissa
CEO(最高経営責任者)
シャンカー・アイヤー
Omnissa
シニアバイスプレジデント
製品担当
バラス・ランガラジャン
東日本旅客鉄道
イノベーション戦略本部
ユニットリーダー
藤澤匡章

四つのEUCソリューションを
同一のプラットフォームで提供

 Omnissaのミッションを実現するOmnissa プラットフォームとはどのような製品なのだろうか。「Omnissa プラットフォームは、『仮想デスクトップとアプリ』『UEM』『セキュリティとコンプライアンス』、従業員がデジタル技術を用いることによる好ましい体験『Digital Employee Experience』(DEX)を統合した製品です」と、Omnissa シニアバイスプレジデント 製品担当 バラス・ランガラジャン氏は語る。各ソリューションの概要について、一つずつ見ていこう。

 仮想デスクトップとアプリでは、旧VMwareのVDI製品「Horizon」が中心となる。Horizonは、デスクトップおよびアプリケーションを仮想化し、各ユーザーのデバイスに画面イメージとして転送するソリューションだ。ユーザーの場所やデバイスを問わずに作業できるワークスペースを提供するのに加え、情報の安全な保護や管理効率化、運用コストの削減を実現する。UEMでは、旧VMwareのUEM製品「Workspace ONE」が中心となる。Workspace ONEは、ユーザーごとにデジタルワークスペースを提供するのに加え、単一のコンソールからあらゆるデバイスを一元管理可能なソリューションだ。

 セキュリティとコンプライアンスでは、EDRやMTDといったセキュリティソリューションからの脅威データを統合する「Trust Network」が中心となる。Okta、Thales、CrowdStrikeといった複数のパートナーからデータを集約することで、全体的な可視化を実現する。DEXでは、従業員の生産性とヘルプデスクの業務効率を向上させるDEXソリューション「DEX Playbooks」が中心だ。DEX PlaybooksはAIを活用することで、Windowsデバイスやmac OS、モバイルデバイス、仮想デスクトップ、アプリケーションを問わず、インシデントを測定、分析、そして修復する。

 Omnissa CEO(最高経営責任者) シャンカー・アイヤー氏は、Omnissa プラットフォームの将来展望について以下のように語る。「Omnissa プラットフォームは『自律型ワークスペース』への進化を目指しています。自律型ワークスペースとは、デバイスやユーザーソリューション全体の登録を行う『Self-configuring』、脆弱性、コンプライアンス違反、設定不備の検知および修復を行う『Self-securing』、インシデント検知、隔離措置、修復を行う『Self-healing』の三つから成ります。Omnissa プラットフォームを自律型ワークスペースとすることで、さまざまなシステムの乱立やシステムのセキュリティリスクが高まる一方で、従業員のデジタルツールへの期待値も増しているといった企業の課題を解決できるでしょう」

 こうした自律型ワークスペースの実装に向けた取り組みとして、生成AIを活用した対話型アシスタント「Omni」のデモが行われた。Omniのデモでは、最近OSクラッシュが発生したか自然言語で尋ねると、グラフを含む自然言語の回答が得られた。さらに、同一の問題が発生しないように対策するためにOmniにサポートを依頼すると、OmniはOmnissaの公開ドキュメントの情報からクラッシュ発生を防止する手段を簡単に概説していた。

Omniのデモの様子。OSクラッシュが最近あったかどうかを尋ねたところ、グラフを含む自然言語で回答してくれていた。

Workspace ONEを活用し
10万台を超えるデバイスを管理

 本イベントでは、Workspace ONEを活用する国内事例として、JR東日本の事例も紹介された。

 JR東日本は鉄道関係を中心とした輸送サービス、SuicaをはじめとしたITサービス、そしてホテルなどの生活サービスの三つのサービスを提供している企業だ。同社ではDXの推進に当たり、PC、タブレット、スマートフォンなどを使い分けて仕事ができる環境を構築している。こうした環境を構築したことで、ペーパーレス化などのメリットを享受できる一方、課題も生じていた。東日本旅客鉄道 イノベーション戦略本部 ユニットリーダー 藤澤匡章氏はデバイス運用の課題についてこう語る。「課題は三つありました。一つ目が、管理するデバイスの数や種類の多さです。10万台を超えるデバイスを管理する必要があるのに加え、4万人を超える従業員が業務に合わせた異なるデバイスを所有しているため、デバイスの管理に煩雑な手間がかかります。二つ目が、従業員の人事異動が多いことです。所属箇所によってアクセスする情報が異なることから、人事異動のたびに所属箇所にひも付くポリシー適用が必要となります。三つ目が、アプリ配信の手間です。駅員や乗務員といった従業員ごとに必要なアプリは異なります。こうしたアプリの配信を手動で行う必要があり、大きな負担となっていました」

 こうした課題を受けJR東日本は、Workspace ONEを導入した。Workspace ONEを導入したことで、各デバイスと社員情報がひも付いて管理できるようになり、管理者の運用負担の削減につながった。さらにActive Directoryとの連携により、ポリシー適用といった人事異動処理や人事異動に伴う端末台帳更新がリアルタイム化され、端末の棚卸しにかかる手間も削減されている。またアプリカタログを活用することで、ホワイトリストに基づいたアプリの自動配信が可能となり、人事異動のたびに行っていたアプリ配信の負担を和らげることに成功している。

 最後に藤澤氏は「DXの推進にはPC、タブレット、スマートフォンなどのデバイスが必要不可欠です。そうしたデバイスにかかる端末管理者の負担や利用者からのニーズに対応していくために、Workspace ONEは欠かせないツールとなっています。今後もWorkspace ONEを活用してデバイスの管理負担を和らげながら、DXの推進を進めていきます」と展望を語った。

AI Verification
AIソリューション実践や検証ができる拠点
「AI Innovation Lab」をデル大手町本社に開設

2024年9月25日、デル・テクノロジーズは大手町本社に、企業ユーザーがAIソリューションの実践や検証ができる施設「Solution Center AI Innovation Lab」(以下、AI Innovation Lab)を開設した。AI Innovation Labは、企業ユーザーがAIやエッジ、マルチクラウド、データマネジメントにおける国内企業のイノベーションを促進できる共創と学びの場だ。同日に行われた開所式と、そこで説明された本施設開設の背景を見ていこう。

デル大手町本社に「AI Innovation Lab」がオープン

ユーザー企業がAIやエッジ、マルチクラウドを用いてイノベーションを起こすためには、それらを検証したり、先行事例(ユースケース)を知ったりすることが重要となる。デル・テクノロジーズは大手町に構える本社オフィスの一角に、そうしたAIにまつわるイノベーション促進を実現する共創の場としてAI Innovation Labをオープンした。開所当日の説明会と開所式の様子をリポートする。

生成AIのビジネス実装に向けて
ユースケースやデータが不足

 2022年11月にOpenAIが対話型生成AI「ChatGPT」をリリースしたことで、生成AIへの注目度は急速に高まった。それから約2年がたとうとしている現在、ビジネスシーンでの生成AI活用はどのように進んでいるのだろうか。

 デル・テクノロジーズがITおよびビジネスの意思決定者を対象に全世界で実施した「Innovation Catalyst」調査によれば、多くの企業組織は、生成AI実装の初期段階にあり、今後本格実装を迎えるべく現在さまざまな試みを進めていることが分かったという。中でも日本の大手企業の79%が「生成AIによって自社の業界は大きく変わる」と考えていることが明らかになった。

 また、生成AIのビジネス活用として考えているユースケースは、業務の変革や、自社サービス/ビジネスモデルの差別化を合わせると56%となり、生成AIによるイノベーションへの期待が強いことが分かった。一方で、自社の生成AIの成熟度はどの段階にあるかを尋ねた調査では「独自モデル/汎用モデルを活用している」と回答したのが61%であり、生成AIを活用するに当たって独自モデル(業務特化/自社特化)の活用が必要かという問いに対しては「独自モデルが必要」と回答した企業が91%に上った。

 ビジネスシーンでのAI活用需要が急速に活用している一方で、実際にビジネスでAIを活用するためには、ユースケースの明確化やデータの質と量、リテラシーやスキル不足といった課題が挙げられており、これらがイノベーション推進の妨げになっているという。

AI Innovation Labの開所式では、デル・テクノロジーズの関係者のほか、KDDI、ソフトバンクといったパートナー企業も参加し、テープカットが実施された。
AI Innovation Labには、シーンに特化した製品のユースケースやPoC環境を無償で利用できる「AI Factory Lab」が用意されている。

Dell AI Factory具体化のため
三つの柱で課題解決を推進

 こうした企業の課題を解決するため、米国のデル・テクノロジーズは2024年5月から「Dell AI Factory」構想を展開している。これは企業AIの迅速な導入や展開に必要なデータ、サービス、オープン・エコシステム、インフラストラクチャ、ユースケースを提供することで、企業へのAI導入を促進させていくものだ。今回開設されたAI Innovation Labは、このDell AI Factoryを具体化するためのものであり、三つの柱でAIの課題解決に向けて展開を行っていく。

 一つ目は「実証」だ。AI Innovation Labでは、世界中のユースケースを産業別に集め、目的に応じて事例の紹介や実証実験、デモを行える。例えば業界別の先進的なユースケースを共有したり、最先端サーバーやストレージ、ネットワーク機器を活用した具体的なユースケースやワークロードの検証を行ったりできる。

 二つ目は「共創」だ。AIを活用したい企業とAIサービスを提供する企業をマッチングするプログラム「Dell de AI“デル邂逅(であい)”」や、大学と企業が協力し、革新的なプロジェクトやイニシアティブを共同で実現するプラットフォーム「中堅企業向けDXプログラム(DXイノベーションコネクト)」に加え、さまざまなプログラムを通してAIエコシステムパートナー各社にAI Innovation Labに参加してもらうことで、イノベーションの実現を図る。国内外の先進テクノロジー企業同士の連携や、産業別のプログラムの展開も進めていく。

 三つ目は「教育」だ。ITの基礎からAI技術、データサイエンスに至るまで、キャリア形成に必要なスキルや知識の構築を支援する。デル・テクノロジーズ 代表取締役社長 大塚俊彦氏は「教育は学びと言い換えたほうが良いかも知れません。AI活用を推進していく上では、さまざまなAIに関するスキルの習得が不可欠です。一方で、お客さまにとって人材育成は大きな課題でもあります。AIにかかわらずさまざまな先端テクノロジーのノウハウを身に付ける人材育成の支援を、AI Innovation Labで提供していきます」と語る。

「Smart Manufacturing」コーナーでは、工場における検品などをAIカメラで行うソリューションが紹介されていた。部品をカメラの前に置くと、サイズなど分析し、正しい組み合わせか否かを判定したり、工場ラインで商品に不備がないかを検知したりできる。

グローバルの拠点と連携し
新たなAI製品を世界に発信

 デル・テクノロジーズはグローバルにおいてすでに米国のニューヨークとランドロック、アイルランドのリムリック、そしてシンガポールにInnovation Labを展開している。東京拠点のAI Innovation LabはこれらグローバルのInnovation Labと連携し、事例やリファレンスの共有を進めていく予定だ。「東京拠点のAI Innovation Labはグローバルで初めて、AIに特化した施設です。このAI Innovation Labで生まれたAI製品のデモンストレーションを、どんどん世界に発信していけるように、パートナーさまとの取り組みを強化していきます」と大塚氏。

 AI Innovation Lab開設に当たって、インテル、日本AMD、野村総合研究所、三菱電機、レッドハット、シュナイダーエレクトリック、UneeQ、デジタルヒューマンよりエンドースコメントも寄せられた。三菱電機はAI Innovation Labの「Smart Cities」のコーナーに、AI技術を活用した映像解析ソリューション「kizkia」を展示しており、エンドースコメントではAI Innovation Labの開設を祝うとともに「デル・テクノロジーズさまの用途ごとに最適化、高効率化され、かつ高セキュアなサーバー環境と、弊社独自のコンパクトAI技術を活用した映像解析ソリューション『kizkia』や、高い認識精度と大量処理を可能とするエンジンを搭載した顔認証などの画像解析ソリューションとの組み合わせで、お客さまへ提供する価値の最大化を共に目指してまいります」と述べた。

Smart CitiesのコーナーではAI技術を活用した映像解析ソリューションkizkiaによる白杖検知のデモンストレーションが実施された。高い映像解析技術によって、誤検知の多い白杖とビニール傘を精度高く見分けることが可能だという。