人材の育成と地域の発展に向けたAI活用
社会課題解決へのテクノロジーの役立て方
「インテル パブリック・セクター・サミット東京 2024」レポート

今年の「Intel Connection」では、公共分野でのAI活用を紹介する「インテル パブリック・セクター・サミット東京 2024」と、エネルギー変革に向けたAI活用を紹介する「インテル エネルギー・フォーラム 2024」も同時開催された。AIをはじめとするテクノロジーはビジネスだけではなく、将来を担う子供たちの教育や地域の発展にも効果が期待されている。
ここではAIなどのテクノロジーが学校や自治体でどのように役立っているのか、今後どのように活用すべきなのかについて、公共分野でのAI活用を紹介する「インテル パブリック・セクター・サミット東京 2024」で行われた講演をレポートする。

日本人はAIの力を必要としている
AI活用の促進に企業と学校への支援が必要

ダイワボウ情報システム
販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部
部長
塚本 小都

 企業や社会に広くAIの活用が浸透する中で、将来の変化に向けて急務となっているのがAIを活用できる人材の育成だ。人材の育成は企業だけではなく、学校での子供たちの教育にも取り入れる必要がある。そうした観点からAIに関してICT製品を通じてビジネスと学校教育の両方に携わるダイワボウ情報システム(DIS)が、インテル パブリック・セクター・サミット東京 2024の分科会で講演を行った。

 DISでAIを含めたクラウドビジネスを推進する販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部 部長 塚本小都氏は講演の中で「日本人はAIの力を必要としている」と指摘した。塚本氏は国立社会保障・人口問題研究所の統計調査を引用し、2015年から2030年までに日本の人口は6%、約800万人減少すると指摘した。この人数は人口の少ない県順に10県分の人口に相当し、現在の47都道府県が37に減ることを意味すると説明した。さらにその後の15年間(2030年から2045年)で1,270万人が減り、さらに10県が減って日本は27都道府県相当になると説明した。

 塚本氏は「今年生まれた人数が20年後の社会人です。ですからこの先の20年間は社会に出てくる人の数が確定しています。今後、人口は減少し続けますので、最も人材が多いのは今年ということになります」と指摘した上で、「人手不足に対してAIを活用してスキルの差を埋めて生産性を高めること、人の代わりにAIに仕事をさせることが必要です。手を打つのは今です」と強調した。

 そして仕事でAIを活用するメリットについて、実演を交えて説明した。塚本氏は「サーチエンジンではキーワードに対して関連するリンクが羅列され、そこから解答を探すスキルが必要でした。またオフィスでは何か分からないことを知るには、担当者に聞いたり、関係する複数の人に聞いたりする手間がかかります。生成AIを使えば直接解答が提示され、圧倒的な時短が図れます」と強調する。

 そして「AIが仕事を奪うという人がいますが、AIを使いこなす人が仕事を奪う時代がやってきます。今は生成AIを使うと怠けていると思われることもありますが、今後は生成AIを使って誰よりも優れた成果が求められるようになります。生成AIに単純に質問したり命令したりする使い方ではその要求に応えられません。今後は生成AIを使いこなせる人材の育成が課題になります」と指摘する。

 企業におけるAI人材の育成について「個人で使う場合」と「組織で使う場合」の二つのテーマがあるとし、個人に対しては効果的なカリキュラムを開発することに加えて、生成AIに触れる機会を増やすことが重要だとアドバイスする。また組織では社内システムにAIを組み込むこと、対外的なサービスやサポートなどビジネスにAIを組み込むことを挙げる。

 塚本氏は「生成AIは固有機能ではなく、できる社員、できるシステムを作るテクノロジーです。マニュアルを見て使い方を覚えるのではなく、使い続けて覚えていくものです。分からないことがあれば人に聞くのではなく、生成AIに聞く習慣を付けるべきです。それには生成AIを活用できる環境を整えることが第一歩となります。AI PCの導入やマイクロソフトのCopilotの活用がお勧めです」とアドバイスする。

教員のテクノロジーの活用も重要な課題
新たな研修カリキュラムの提供を発表

ダイワボウ情報システム
販売推進本部 戦略ビジネス推進部
部長
岡本 哲也

 DISで教育ICTの利活用促進に携わる販売推進本部 戦略ビジネス推進部 部長 岡本哲也氏は「これからのビジネスでAIの活用が必須となる中で、これから社会に巣立つ子供たちの学びにも変革が必要です」と指摘する。

 DISではGIGAスクール構想のはるか以前、2010年より学校でのICT利活用を支援してきた。総務省のフューチャー・スクールプロジェクトやDIS独自の取り組みなどを通じて、児童生徒1人1台PCの環境整備・利活用推進にインテルと協力して取り組み、2020年のGIGAスクール構想(第一期)でのデバイスの導入支援、近年ではインテルSTEAM Lab実証研究プロジェクトやDIS独自のDIS STEAMゼミに取り組んでいる。さらにDXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)やGIGAスクール構想(第二期)への取り組みおよび準備も進めている。

 岡本氏は「学校での教育においてAIやICTなどのテクノロジーを生かせる将来の人材育成とともに、教員のテクノロジーの活用も重要な課題です。教員はテクノロジーを活用して、より効果的な授業を実施するだけではなく、教員の仕事は人が果たす役割が大きく、AIで校務を効率化して児童生徒と向き合う時間を増やすことも重要です」と指摘する。

 こうした観点からDISは教員向けの研修カリキュラムも提供している。提供中の研修カリキュラムにはGIGAスクール向け、プロジェクト型学習(PBL)向け、STEAM教育向けがあり、全てアクティブ・ラーニング型で実施している。

 インテル Skills for Innovation(以下、SFI)とPBLを組み合わせた研修カリキュラムも新たに提供する。SFIをベースに国内教育現場に最適化する形で、インテルとDISが共同で開発したものだ。2025年1月に受付を開始して2025年4月より実施する予定だ。

DISの新しい教員向け研修プログラムについて、詳細はこちらをご確認ください
ダイワボウ情報システム、小中高など初等中等教育機関向け教員研修プログラムを刷新

インテルとエコシステムパートナーが支援する
戸田市のSTEAM教育と千葉市のスマートシティ

戸田市教育委員会
教育長
戸ヶ㟢 勤

 早くから積極的に学校でのICT利活用を推進してきた戸田市の教育委員会 教育長 戸ヶ﨑 勤氏が登壇し、同市のICT教育への取り組みと、その推進におけるインテルとの連携などについて講演した。その中でSTEAM教育の視点を取り入れたPBLへの取り組みを紹介し、インテルのSTEAM LabやIntel Teach プログラム、SFIの活用について説明した。

 戸ヶ﨑氏は「Intel Teach プログラムは小学校の教員を中心に活用していますが、今後は中学校の教員を中心にSFIを活用していきます。約20名の中学校教員にSFIファシリテーション研修を受講していただき、受講した教員が講師となって市内各校で研修を実施します。そしてSFIアンバサダー認定を取得していく計画です」と話した。

千葉市
市長
神谷 俊一

 千葉市は今年3月にインテルとテクノロジーを活用した持続可能なまちづくりに向けた包括的な連携に関する協定を締結した。千葉市 市長 神谷俊一氏は「自治体としてどのような仕事の進め方が次の時代に求められるのか、そのような視点で仕事を進めることで優秀な意欲のある職員の採用につながり、地域のために仕事をしていただくことができます。
 またテクノロジーをうまく活用した持続可能なまちづくりの実践にもつながります」と期待を語った。そしてインテルとの連携事項の中で人材育成の重要性を強調し、インテルのデジタルラボ構想を活用した人材育成への取り組みを紹介した。

千葉市 市長 神谷 俊一氏の講演に続き、インテル 代表取締役会長 鈴木 国正氏との対談も行われた。
展示会場のダイワボウ情報システム(DIS)のブースでは学校へのSTEAM教育の普及に向けて、STEAM教室に必要な機器やDISの支援サービスなどが紹介された。
インテルはインテル Core Ultra シリーズ2に加えて、ビジネスPC向けプラットフォームである「インテル vPro プラットフォーム」もアピールした。