労働市場の流動性においては賛否両論あるが、企業としては社員を定着させ企業存続に努めたい。社員の離職を防ぎ長期の勤続を図るためには、組織側で社員の「ウェルビーイング」ーー身体的、精神的に健康な状態であるだけでなく、社会的、経済的に良好で満たされている状態を、労働に組み込むことが望ましい。そこで今回は、ウェルビーイングなHR運用をサポートする書籍を読んでいこう。
人的資本経営時代の持続可能な働き方
「持続可能な働き方」とは、自らが持てる強みによって自然な形で組織や社会に貢献し、不必要な無理を強いられずに適度なパフォーマンスを発揮し続けられる状況だ。本書は、社員自身のスキルをもって、持続可能な働き方のための基本的な考え方と具体的な解決策を提示する。特定のソリューションに着目すると、パフォーマンス管理のためのentomoのプラットフォーム「entomo」やAI「Watson」を駆使したIBMの学習プラットフォーム「Your Learning」などを挙げている。前者は、チーム内の取り組みの参加や個人・チームの目標達成に必要な具体的なアクションの促進が期待できる。後者は、スキル開発・修得・その仕組みづくりを浸透させ、企業のケイパビリティ(組織能力)可視化につながるだろう。entomoの次項の「ウェルビーイング戦略の成熟モデル」は「健康管理に関する福利厚生」「個の状態の改善」「業績向上」「社会的利益」と目的をステップアップで紹介。離職防止や職務上の無駄な時間の削減、地域社会への貢献など、価値となる指標を確認しながら施策策定の参考にできそうだ。
最強の組織は幸せな社員がつくる
社会全体の働き方の変化が激しい中では、従業員のエンゲージメントなどを高めて新たなビジネス創出を促したい。働く上での幸福感は人間関係によるところが大きいことを根底に置き、「幸せの形」を可視化する幸福度アンケートや上司と部下の間に信頼関係をつくるWeekly 1on1といった七つのトピックを解説。12項目で幸福度・精神的健康状態を測る手段「Well-being Company Survey」やPHONE APPLIのコミュニケーションポータル「PHONE APPLI PEOPLE」など、自己開示しやすく心理的安全性を高める仕組みは組織の強度を強めるだろう。
幸せに働くための30の習慣
著者の指摘によると、働き方改革、人的資本経営、従業員エンゲージメント、ダイバーシティー&インクルージョンなどさまざまな施策は、従業員の満足度が向上すれば成功する。また、幸せは事象の結果というだけでなく、原因にもなり得る。本書では、個人が幸せに生活するためのコツ、個人が幸せに働くためのコツ、チームで幸せに働くためのコツ各10個を厳選。他者の主張を受け入れつつ自分の意見を主張する「アサーティブ」なコミュニケーション、人の言動を四つのスタイルに分ける「ソーシャルスタイル」の分析など、働く中で幸福を導くための気付きを促せそうだ。