農業従事者111.4万人の内、約70%が65歳以上となっており、高齢化が深刻だ。さらに猛暑を原因とする高温障害によって、作物の品質低下や収穫量の減少といった被害が増加している。こうした課題を解決するために政府は、「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」の施行をはじめとしたスマート農業の取り組みを本格化させている。盛り上がりを見せるスマート農業の基本を、今回紹介する3冊を読んで学んでいこう。
図解よくわかる 実践!スマート農業
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2,420円(税込)
日刊工業新聞社
本書では、稲作や野菜作、果樹栽培、施設園芸、畜産・酪農といったそれぞれの場面で活用されるデジタル技術を解説している。第3章から第6章にかけてモニタリング用ドローンや収穫予測シミュレーション、畜産用センサーといった多岐にわたるデジタル技術が27個紹介されている。それぞれのデジタル技術について、導入のメリットはもちろん、導入する際の注意点も解説しているため、導入を検討する際の手助けとなるだろう。また第8章では、スマート農業の始め方を解説している。スマート農業向けのデジタル技術を導入する際には、具体的な目標の設定や作業スケジュール、資金計画などの策定が重要だと著者は語る。さらに、実証段階のものを先行販売しているケースが多いため、導入するスマート農機やアプリが市販品としての水準に達しているかどうかを、TRL(技術成熟度レベル)やBRL(ビジネス成熟度レベル)を参照して確認することも必要だと指摘する。さまざまなスマート農業向けのデジタル技術について網羅的に紹介されているため、これからスマート農業を始めていきたい人にお薦めの一冊だ。
スマート農業
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2,200円(税込)
創元社
本書は、図版や写真、イラストを用いつつ、スマート農業の基本的な内容について平易な文章で解説している。Chapter1では日本の食糧生産における現状として、宅地への転用や荒廃農地の発生に伴い、農地が減少しているといった食料生産における現状の課題について解説。Chapter3では、トマトの収穫ロボット、アスパラガス・ブロッコリーの収穫ロボットといったAIやロボティクスを利用した事例を紹介している。さらにChapter5では日本の農業に変革を起こすために、農業教育機関、普及機関、研究機関が連携して農業を進化させるオランダのシステム「EER triptych」を参考にすると良いと著者は述べる。スマート農業に関する知識を網羅的に身に付けられる一冊だ。
スマート農業
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2,420円(税込)
成山堂書店
本書は、農業・食品産業技術総合研究機構の情報を中心にまとめられた、スマート農業の入門書だ。第4章ではスマート農業推進の課題として、IT人材の不足について取り上げている。農業従事者の高齢化が進んでいることもあり、ITに対して苦手意識を抱えている人が多いのだ。こうした課題を解決するための取り組みとして、スマート農業の体験学習といった農林水産省が行っている教育に関する施策を紹介している。第5章では、今後のスマート農業におけるビジネスモデルとして、スマート農業技術のシェアリングサービスについて解説。コストが高額なスマート農業技術を導入する際の負担を軽減するとともに、BCP対策としても効果的だと著者は述べる。スマート農業の現状を把握するのに役立つ一冊だ。