高等学校でも1人1台端末整備が急務に
Educational ICT
児童生徒1人につき1台の端末と高速大容量な通信環境を一体的に整備して教育現場をICT化し、オンライン環境での学習活動を推進する「GIGAスクール構想」が2019年12月に文部科学省から打ち出された。当初、五カ年計画で推進していく予定だったGIGAスクール構想。しかし、コロナ禍の児童生徒の学びを保証する観点で、急速なICT環境の整備が必要になった。こうした状況を受け、本構想は2020年度中に端末・ネットワーク整備を進める方針で早期実現に向かうこととなった。
現在、国内の国・公・私立小中学校および特別支援学校への端末整備に伴い、公立高等学校に対する学習用端末の整備も各自治体で実施され始めている。MM総研は、そうした公立高等学校の1人1台端末やネットワーク構築、クラウド活用などICT環境の整備の進捗状況に関する調査を実施した。
同調査の中で、校内に生徒用端末を整備済みもしくは整備予定があると回答している都道府県の教育委員会は47団体中37団体で、予定を含む整備端末台数は67万8,829台、端末整備率は43.7%となっている。配備率が低くなっている理由には、自治体が端末の整備予算を確保できないことが挙げられる。
そもそも、令和2年度のGIGAスクール構想では、小中学校に対して国が公的な予算を設けていたが、公立高等学校などに対しては端末整備の予算を確保していなかった。
現在は2020年12月15日に発表された「2020年度第3次補正予算案」で、国公私立の高等学校段階の低所得世帯等の生徒が使用するPC端末整備に対して161億円が計上されるなど、一部支援の動きも出てきている。しかし、公立高等学校全体では端末配備の予算が確保されていないのが現状だ。そうした中、一部の自治体では独自の予算を確保することで、先行して公立高等学校の1人1台端末環境の整備を進めている。
中学校で1人1台端末の授業を経験した生徒の高等学校入学以降の学習計画を考慮すると、高等学校においても継続性のあるICT環境整備が必要だ。2022年度は、各都道府県の教育委員会が早急な対応を進めていく必要があると提言している。
文教市場のニーズに即した提案を
公立高等学校で導入された生徒用PC端末のメーカーについても調査している。主要メーカーに日本マイクロソフトやNEC、Apple、デル・テクノロジーズが挙げられている。その中でも首位を獲得したのは日本マイクロソフトで、シェアは22%だ。その背景として同社がGIGAスクール構想以前から文教向けの取り組みを実施している点を指摘し、その効果が出た結果となった。一方、予算の問題などから端末導入までに到達できておらず「OS未定」と「OS確定かつメーカー未定」と回答した割合は合計で32%となっている。現状の端末配備率が43.7%であることも踏まえ、今後の提案活動とユーザー評価によってメーカー別の台数シェアが変動する可能性があるとMM総研は指摘している。今後は、生徒と教員の端末活用の支援に加え、クラウド活用、セキュリティ対策といった学校現場ニーズに即したソリューションの提案が重要となるだろう。
労務管理市場はSaaSに追い風
Personal Management
労働や社会保険に関する行政手続きの電子申請の義務化や、参入ベンダーの増加などにより、法律や就業規則に基づく申請や承認を行う機能を備える労務管理製品の市場が拡大している。そうした状況の中、アイ・ティ・アールは、国内の労務管理市場を調査した。
2019年度の労務管理市場の売上金額は27億8,000万円で、前年度比68.5%増と大きく伸長した。背景には、主要ベンダー各社の積極的なマーケティング活動により、労務管理製品が従業員の労働環境をサポートし、企業の生産性向上への貢献が期待され、市場認知度が急速に高まっている点がある。2020年4月より相互会社や投資法人など特定の法人において社会保険・労働保険の電子申請が義務化されたことも追い風となり、市場参入ベンダーが増加しているという。同市場の2019~2024年度の年平均成長率は41.6%、2024年度には160億円規模にまで拡大する見込みだ。
労務管理市場では、主要ベンダーがSaaSでの提供に注力していることを理由に、2020年度にSaaS製品が市場全体の約9割を占める見込みだ。今後もこの傾向が続くと見られ、パッケージ市場の2019~2024年度内の年平均成長率は0.4%とほぼ横ばいの状況に対し、SaaS市場は同46.3%を予測している。
同社のプリンシパル・アナリストである浅利浩一氏は、労務管理市場の現状と将来展望を次のように推測する。「多様化する働き方やリモートワークにも柔軟に対応できることに加えて、採用予定者にもサービスの提供が可能なことから、SaaSが圧倒的優位な市場となっています」
アプリケーション開発の民主化に期待
Low Code/No Code Development
従来、複雑なコーディング作業が必要だったアプリケーション開発において、昨今はドラッグ&ドロップの直感的な操作で容易にアプリケーションを構築できるローコード/ノーコードプラットフォームの利用が増えてきている。IDC Japanは、そうしたローコード/ノーコードプラットフォームの国内の市場動向に関する調査を実施した。
同調査によると、ローコード/ノーコードプラットフォームを導入してアプリケーション開発に利用している企業は8.5%、導入に向けてテスト/検証を実施している企業は12.4%となっており、まだ本格的な普及には至っていない段階だという。しかし、導入の計画/検討をしている企業は23.9%で、今後増加が期待される。
ローコード/ノーコードプラットフォームを導入している企業の中の45.1%は、導入理由に「開発スピードの向上」を挙げている。開発スピード向上が求められている背景には、現在、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している点がある。例えばIT部門は、DXを推し進めている業務部門から、従来以上に速いスピードでのアプリケーションやシステムの開発、変更が要求され、負担が増えている。そういった迅速な開発への要求に応えるソリューションとしてローコード/ノーコードプラットフォームは期待されている。
一方で、ローコード/ノーコード開発ではコーディング作業を減らせるためIT部門以外の従業員でもアプリケーション開発が行える可能性を示唆しており、同社はこれを「開発の民主化」と定義付ける。IDC Japanでソフトウェア&セキュリティのグループマネージャーを務める入谷光浩氏は同市場の将来動向を「2024年までに従業員1,000人以上の企業において、従業員の30%がローコード/ノーコードプラットフォームを活用してアプリケーションの開発や業務の自動化を担うようになると予測している」と説明した。