経営に問われる“顧客体験”重視マーケティング戦略 今の10倍のコンテンツを10倍の効率で作れるか?
アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 佐分利ユージン 氏
アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 佐分利ユージン 氏
コンテンツ制作の効率化が課題
編集部■企業が製品やサービスを差別化して競争力を強化するには、顧客体験が重要だと言われています。
佐分利氏(以下、敬称略)■優れた顧客体験には「魅力的なコンテンツ」と「パーソナル(顧客に適した情報の提供)」、「利便性」、「モバイル(あらゆる場所で提供)」の4つの要素が求められます。
企業は伝えるべき人に魅力的な「コンテンツ」を提供する必要があります。ソーシャルメディアやスマートフォンの普及によって顧客との接点が増え、企業はこれまで把握できなかった消費者のさまざまな情報を大量のデータとして得ることができ、ビジネスチャンスが広がっています。
10倍のコンテンツが必要
佐分利■ビジネスチャンスが拡大する反面、消費者の期待に対応するため、これまでにない量のコンテンツ制作が求められることになります。その原因の一つがマルチスクリーンです。
当社の調査によると71%の企業が、わずか2-3年前の10倍以上ものコンテンツを制作しています。しかしクリエーターの人口は変わっていません。ですから、制作に関する業務を大幅に効率化するしかありません。
モバイルとクラウドを連携
佐分利■スマホやタブレットの性能はPCに迫るレベルになっていますから、アプリさえあればスマホやタブレットで写真の加工をしたりレイアウトをしたりすることができます。
そして高解像度の画面で緻密な作業をしたり、デザインの仕上げをしたりするときはデスクトップに移動して行えば、場所も時間も有効に利用できます。そこでCreative Cloudではモバイルアプリと連携して効率的に業務が進められる機能も提供しています。
10倍の業務効率化を実現
佐分利■2016年6月22日にCreative Cloudに含まれるツールとサービスをアップデートした最新リリースの提供を開始しています。最新版ではCreative Cloudの主力アプリに新機能を追加したほか、全体的なパフォーマンスの向上などによってユーザーの作業時間短縮とデザインの品質向上に貢献します。
特にストックフォトサービスの「Adobe Stock」ではロイヤルティフリーの写真などの高品質な素材が5,500万点以上利用でき、Creative Cloudのアプリとの連携が強化されたことで、他のストックフォトサービスと比較して効率性が最大10倍高まることがPfeiffer Consultingの調査によってわかっています。
クリエーター以外にも訴求
佐分利■ Creative Cloudでは業務を効率化したりデザインの品質を容易な操作で高めたりする機能も適宜提供しています。こうした新しい機能を利用するために、従来のCreative Suiteではバージョンアップに伴って購入するお客様が大勢いました。
Creative Cloudはクラウドサービスで提供しているので、常に最新の機能をお客様に提供できるメリットもあります。
またCreative Cloudを利用するお客様はクリエーターだけではなく、多様化しています。Creative CloudのメリットをITなどの部門にも伝えるために、情報提供を強化しています。
デジタル化を推進
編集部■これからのビジネス展開についてグローバルではデジタルマーケティングに注力しています。
佐分利■日本のサービスレベルは世界一です。日本の強みである“おもてなし”をビジネスに活かしてグローバルで展開するには、マーケティングをデジタル化する必要があります。デジタルには国境がありませんから。
アドビは「Creative Cloud」、「Document Cloud」、「Marketing Cloud」の3つのクラウドプラットフォームによる「3クラウド戦略」を展開しています。
デジタルマーケティングを担うMarketing Cloudは2012年のサービス提供開始以来、米フォーチュン誌が選ぶグローバルトップ50の企業の約7割で導入されており、年間平均成長率25%を維持しています。
日本においても注目が高まっており、2015会計年度下半期の契約金額は前年同期比83%の成長を記録しています。
コンテンツの収益化に貢献
佐分利■デジタルマーケティングは顧客体験を魅力的にする取り組みです。Marketing Cloudは市場や顧客を分析、ターゲティング、測定することで、魅力的なコンテンツを顧客に適した形で提供し、収益化に貢献します。
Creative Cloudを導入いただいているお客様が制作した魅力的なコンテンツの収益化を、Marketing Cloudで支援していきたいと考えています。
契約・承認業務もデジタル化
佐分利■多くの日本企業ではいまだに契約・承認業務が紙ベースで行われています。モビリティとクラウドの連携によって、企業の意思決定の迅速化をサポートする余地はたくさんあると考えています。
そこでパートナー様と連携して経営層にドキュメントワークフローの改善を啓発し、電子サインの「Adobe Sign」などDocument Cloudのサービス利用を促進していきます。
コンテンツの需要拡大が続く
佐分利■東京オリンピック・パラリンピックに向けて国内におけるデジタル化の普及はさらに拡大するでしょう。訪日外国客が過去最高となる中、観光客向けのデジタルサイネージなど、2020年に向けてコンテンツ制作やデジタルマーケティングへのニーズはさらに高まります。
Creative Cloudによる魅力的なコンテンツ制作からMarketing Cloudによるコンテンツ展開の最適化に至るまで、デジタルトランスフォーメーションを実現するソリューションを提供してビジネスを成長させたいですね。