MADE IN JAPAN腕時計「Knot」直営店は、購買体験もブランディング

「iPadで会計をし、指でサインをする。そういう購買体験を取り入れたかった」

文/牧野武文


Maker's Watch Knot(ノット)

[URL]http://knot-designs.com
[住所]横浜元町店/神奈川県横浜市中区元町 3-136
[TEL]0800-555-7010
[営業]11:00〜20:00
[PRICE]本体1万4000円〜
[インタビュー]代表取締役 遠藤弘満

横浜元町店のレジシステム構成

  • iPad Air ×4
  • Airレジ
  • Safari
  • Wi-Fi
  • キャッシュドロア
  • Instagram
  • Square

iPadの店舗活用の成果

☆支払いも購入体験の1つ
☆いつでもどこからでも店舗の様子がわかる
☆レジカウンターではサイネージとしても活用
☆混雑時には、iPadを総動員

「腕時計の購買体験」を再定義

 ノットは今話題の腕時計製造・小売を手がけるメーカー。ネットショップのほか、吉祥寺、横浜元町、心斎橋にあるギャラリーショップと、金沢にあるコンセプトショップ、海外では台湾・台北に店舗を展開している。週末は開店前から行列ができ、入場制限まで行う人気ぶりだ。その秘密は今までになかった腕時計の購買体験にある。ノットの腕時計は本体とベルトが別々に用意され、7000とおりから好きなものを組み合わせられる。しかも本体、ベルトは自由に触れることができ、自分のコーディネートを試着できる。これが楽しい。

「多くのお客様が1時間ほど店内で楽しんでいかれ、9割の方が購入していただけます」

 ノットでは「腕時計をコーディネートし、購入する」体験がもう1つの大きな“商品”になっている。そのため、店内のレイアウト、ディスプレイ、ショーテーブルなどあらゆるものが同社代表取締役の遠藤弘満氏によって厳しく吟味されている。iPadを導入したのも、良質な購買体験を支えるためだ。

「電子レジを置いたら雰囲気が壊れてしまいます。iPadで会計をし、指でサイン。そういう購買体験を取り入れたかったのです」

データと皮膚感覚の融合

 POSレジアプリ・Airレジを導入してみて、今はその分析機能を最大限活用しているという。多忙の遠藤氏は、もはや1つの店舗にとどまっているわけにはいかないが、外出先からiPhoneでAirレジのデータを見るだけで、店舗の様子が手に取るようにわかるのだという。

「たとえば、その日の平均客単価がどうも普段より低い。高価格帯である機械式時計が欠品しているのではないかと思って、店舗スタッフに確認するとやはりそのとおりなのです。すぐに在庫を補充し、並べるように指示をします」

 遠藤氏は難しい分析をしているわけではない。吉祥寺店をオープンしたときは自ら店員となって運営してきた。その経験があるので、店舗の動きのモデルが頭の中にできている。それとレジの動きに違いが発生したとき、遠藤氏には何が原因かまでが想像がつくのだ。

「週末の朝、自宅でiPhoneからAirレジを見ると、開店は11時なのにレジが10時半から動き始めていることがあります。うれしいですね。開店前の行列が長くなったために、時間を繰り上げてオープンしたということですから」

 さらに、Airレジ分析は生産計画にまでいい影響を与えている。時計やベルトは各職人に発注をしてから納品まで4カ月以上かかる。従来は月末に棚卸しをして在庫数を確認し、それから発注をするという手順だった。しかし、Airレジでは現時点の在庫数がほぼ正確に読める。突然、ある商品が売れ出したなどという事態にも対応ができる。棚卸しはあくまでも正確な在庫数の確認作業になった。

 個店店主は、店の動きを頭の中で把握している。だからAirレジのデータを見るだけで、店で何が起きているかがわかる。データと皮膚感覚をうまく融合して、遠藤氏は複数店舗を展開している。

Maker's Watch Knotに学ぶiPadの店舗業務活用の成果

支払いも購入体験の1つ

すっきりとしたカウンターには基本的にはiPadのみ。キャッシュドロアはカウンター内に隠されている。スタッフが購入商品を入力し、iPadを回転させて、お客様に合計金額を見せる。在庫はすべて、カウンター背後の引き出しに分類されているので、商品手渡しまでカウンター内で済む。カウンター前のスペースには余裕があり、混雑時でもゆったりできる。このスペースは、小さなワークショップの開催などにも利用されている。

ECサイトとリアルの融合

ノットの腕時計はオンラインストアでも購入ができ、本体とベルトの組み合わせをいろいろ試してみることができる。オンラインストアでお気に入りのコーディネートを見つけてから、店舗を訪れて実物の質感を確かめて購入する。この実体験があると、またサイトを見て、別の組み合わせを試してみてもう1つ欲しくなるという、同じ消費者がリアルとネットの両方で購入する現象が起こっている。

レジカウンターではサイネージとしても活用

レジカウンターにはAirレジ用iPadとは別に、お客様側に見えるようにiPadが置かれている。ここには現在、ノットのインスタグラムなどが表示されているが、これも近い将来活用する予定だ。腕時計を買うときは保証の内容や修理案内、お手入れの方法など説明をしなければならない内容が意外に多い。これをコンテンツ化して、支払い作業の間にお客様に見ていただくという方法を開発中だ。

混雑時には、iPadを総動員

ノ ット横浜元町店では現在4台のiPad Air 2が稼働している。基本、Airレジとして使っているのは1台のみで、残りの3台は店内のデジタルサイネージとして使っている。ところが、混在時にはこの3台のiPadもAirレジとして活用される。Airレジアプリを起動して同じアカウントとパスワードでログインするだけなので、レジカウンターで2組、テーブルやソファなどでもう2組の支払い対応ができる。

Airレジ・大宮英紀氏に聞きました!ワンポイントアドバイス

 Airレジはクラウドアプリなので、いつでもどこでもどのデバイス(iOS)からでもアカウントを入れるだけでレジデータが閲覧できます。複数店舗を持つ、出張が多いなどの理由で店舗にいられない忙しい経営者にとっては、どこにいても「今のお店の状況」が把握できることになります。従業員の配置にもレジデータは活用できます。レジ件数が多いということはお店が忙しいということですから、時間帯、曜日などで見てそこのシフトを厚くする。あるいは突発的にレジ件数が増えたときは、他店から応援の従業員指示を出すといったことも。さらに営業時間、定休日を再考する手がかりにもなるでしょう。

また、AirレジはPCブラウザでログインもできるので、レジデータをCSVに書き出し、さらに高度な経営分析をすることも可能です。また、商品メニューの一括変更なども可能になっています。オフィスではパソコン、出先ではiPhone、店舗ではiPadという使い分けをすることで、経営者はどこにいても、店の状況が把握でき、的確な対応を指示することができるようになります。