日本各地にイノベーションの連鎖をつくる!!・・・QUM BLOCS @KANDAI Me RISE レポート

2018年11月21日、関西大学梅田キャンパス KANDAI Me RISEにて、地域での起業チャンスを夢見る起業家や学生、地域の課題に取り組む自治体、そして新規事業開発のアイデアや人材を探している企業などが参加する「QUM BLOCS」が開催された。

文/中尾真二


地方・フロンティア市場のキーマンが集まるイベント

スタートアップというと東京や首都圏でのビジネスと思いがちだが、課題やニーズがあるところには必ずビジネスチャンスは潜んでいる。そんな地域の課題をうまくビジネスにつなげて解決したり、東京にはないフロンティア市場を開拓した先人、キープレーヤーを集めて行われたQUM BLOCS @KANDAI Me RISE 。

プログラムは4本のパネルセッションで構成された。招へいされたキーパーソンがセミナーや講演をするありがちなカンファレンスと違い、各セッションとも5、6名のパネリストがリアルに議論を展開するという、非常に臨場感のあるイベントだった。

パネルセッションの終了後は、登壇者と参加者による交流会も開催された。立食形式の交流会では、登壇者への質問、名刺交換も自由で、参加者同士の情報交換や議論も活発に行われていた。起業を考えている人も、人材や事業を考えている企業や自治体も、お互いのネットワークを広げるよい機会として盛り上がっていた。

オープニングセッションでは、主催であるフィラメント CEOの角勝氏が「人口動態による未来予測は悲観的なものになりがちだが、悲観は人が介在することで希望に変えることができる。本日は、これから大人になる子どもたちのための議論になればいいと思っている」と語り、最初のセッションへとつないだ。

各セッションは、最初に登壇者の簡単な自己紹介があり、あとはモデレーターが設定したいくつかの質問(お題)に対してそれぞれが意見を述べ合う形式で進められた。

セッション1:地域×サービス

セッション1のテーマは地域とサービス。これについて、パネリストになぜそこを選んだのか、キーマンは必要か、などの質問がだされた。登壇者は以下のとおり。

パネリスト

長井伸晃氏:神戸市企画調整局産学連携課担当係長

下村祐貴子氏:フェイスブックジャパン株式会社 執行役員 広報統括

勝瀬博則氏:handy Japan株式会社 CEO

近藤洋祐氏:株式会社電脳交通 代表取締役

田村慎吾氏:関西電力株式会社 経営企画室 イノベーション推進G マネジャー


モデレーター

角勝氏(株式会社フィラメント CEO)

パネリストのうちフェイスブックの下村氏以外はすべて東京以外の地方でなんらかのビジネスを展開している。

長井氏は、フェイスブックとしてはおそらく世界初になる自治体との連携を実現させた。もともとは、神戸市がインスタグラムを市のPRに活用しており、インスタグラムのCEOが取り組みに興味を持ち、連携が始まったという。現在、市役所関連のフェイスブックのページが80以上にもなっている。

勝瀬氏は、Booking.comの日本統括マネジャーを務めたこともある。handy Japanは無料スマートフォンの会社で、前職の経験を活かし、古民家再生の事業も行っている。父親の認知症を契機に母親に始めさせたという古民家の民泊を豊田市で成功させている。

この民泊施設は、おもてなしをしないことがポイントだという。宿泊者には部屋の掃除とフロの掃除だけお願いし、あとは接客もなければ鍵もない。とにかく手間をかけないことを優先させているが、外国人にはむしろ評判がいい。

デジタルネイティブ世代の近藤氏は、徳島県でタクシー配車のプラットフォームサービスを提供している。最初は、ビジネスそのものが理解されなかった。地方には、課題意識があってもどこか他人事で、解決する意識が低いという。資金調達にしても、地元の金融機関は「お金を借りてください」という認識で事業を一緒に育てるという視点がなく、ビジョンが共有できない。そんなとき、都会のベンチャーキャピタルや企業からアドバイスを受けることで、モデルの不備など気づきを得られたそうだ。現在は、そういった企業から出資も受け、県内タクシー業界の50%のシェアを占めるまでになった。

田村氏は、京都府精華町で関西電力保有の電柱に設置する、宅配ボックスのビジネスを展開している。ビジネスの課題は、地域の受容性だったという。宅配ボックスの便利さは理解しても、自分の近所の電柱に設置されるとなると反対も多かった。地方創生では、地元のキーマンを活用するスキームが有効とされるが、田村氏の場合、地元が受け入れなければあてにできないとした。最終的にはマンション専用の宅配ボックスにすることで活路を切り開いた。

キーマンについては、勝瀬氏が非常に興味深い意見を述べた。勝瀬氏によれば、新しい事業を盛り上げるのに人に頼ってはダメだという。ある動画を見せ、事業を始める場合のヒントを説く。その動画は、公園で上半身裸の男性が踊っているもの。周辺は興味を示すもののほぼ無反応。しかし、そのうち別の男性がいっしょに踊り始める。しばらく2人で踊っていると、3人、4人と輪に加わる人がでてくる。10人ちかくになると、ひとつのムーブメントとなり、集団がとくに意味もなくそれぞれ踊りだすというもの。よくあるフラッシュモブではなく、自然発生的に生じた現象だ。

なお、勝瀬氏はこの現象を会場で実演すべく、テレビ番組のキャラクターを模した衣装で登壇して、壇上で踊り始めた。handy Japanの社員の協力もあり、会場のスタッフなどを踊りに参加させることに成功させた。

勝瀬氏は、この現象で重要なのは、最初に踊り始めた人ではなく、まったく関係ない第三者ながら2人目として踊りに加わった人だという。なにかを始めるとき、盛り上げるとき、キーになるのは、最初に始めた人に共感し、自分でも参加する人の存在がポイントだという。しかし、この2人目は仕込んでもうまくいかない。自分が最初に踊るのでなければ、2人目になるかどうかを考えるべきだと述べた。

さらに、交通や通信などのテクノロジーによって社会が変わる時代、地方創生は無理だという。明治時代に8万あったという町村、現在、地方自治体の数は1700あまり。移動やコミュニケーションが簡単になれば、地域や地方というより個人の時代となる。あなたがどのコミュニティでなにをやりたいか、が事業の起点となりうる時代だとした。

セッション2:ローカルブロック経済

セッション2は、地域経済の話として、地域通貨やキャッシュレスへの対応、クラウドファンディングによる資金調達についての議論が行われた。

パネリスト

境真良氏:国際大学グローバルコミュニケーション研究所客員研究員

秋山瞬氏:株式会社ネットプロテクションズ 執行役員

坊垣佳奈氏:株式会社マクアケ 取締役

古里圭史氏:飛騨信用組合 常務理事 総務部長


モデレーター

クロサカ タツヤ氏:株式会社企(くわだて) 代表取締役

境氏は、地方の企業とキャッシュレス社会をつくる研究を国際大学グローバルコミュニケーション研究所で行っている。

秋山氏の会社は、「NP後払い」というECで使える後払い決算のサービスを18年ほど続けている。18年というとネット通販が国内でも始まったころからのサービスだ。当初は事業化は無理といわれたが、商品を受け取ってから支払いができる安心感、カード情報をショップサイトや決済サービスに入力する必要がないことから、女性を中心に利用者が多い。ボリュームゾーンは50代女性だそうだ。地域経済へのコミットは、NP後払いのしくみをB2Bで展開できれば可能ではないかと述べた。

坊垣氏のマクアケは国内クラウドファンディングの大手のひとつだ。関市の刃物会社の新製品開発や祇園祭、映画の資金調達などで知る人も多い。東京での利用は活発だが、地方での活用はこれからなので伸びしろがあるという。寄付文化が根付いていない日本で、クラウドファンディングを成功させたのは、国内の事情、文化、法律などを研究し、寄付や金融商品ではなく、モノを買うという感覚を前面に押し出したからだと説明した。

古里氏は、ひだしんイノベーションパートナーズ株式会社の代表取締役も務める。信用組合は、株式会社ではないので、地域の経済圏(11万人ほど)でしか営業ができず、人が減れば組合も消滅する。その中、地域経済発展と組合存続のため、「さるぼぼコイン」という地域通貨を立ち上げた。店舗のQRコードを読み取って決済をする電子通貨だが、現在800店舗が対応し、地域店舗の15%を占める。成功事例として各自治体からの視察も多いという。

地域経済で重要なのは、地元に価値や富を残す循環型であることだと古里氏はいう。

誰もが成功しないとみていた地域通貨だが、店舗の負担を軽くするため、金額など細かい入力はユーザー側に負担させた。ローカルなシステムが草の根的に地元店舗に浸透していった。スマホ操作が必要だが、利用者は主に50代、60代の女性だという。

導入当初は、地元からも批判や否定があったというが、外部から取り組みが評価されるにつれ、地元の意識も変わってきたそうだ。現在、さるぼぼコインは、飛騨経済の3%ほどの流通量だが、古里氏は手応えを感じているという。地域通貨として、キャッシュレスにはこだわっていないが、テクノロジーでお金がデザインできる時代だと思うので、自分ごとの経済圏という視点で取り組みたいとした。

セッション3:地方の魅力発掘

セッション3は、各地で地域の特色を生かしたビジネスを手掛けている起業家たちのパネルだ。ゲストハウスやツーリズムビジネスが多い中、異彩を放っていたのは和歌山でモビリティメーカーを立ち上げた鳴海氏だ。

パネリスト

鳴海禎造氏:glafit株式会社 代表取締役

豊原弘恵氏:古都理(ことり) 代表

森平和歌子氏:株式会社農業の未来研究所 General Manager

安彦剛志氏:株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ インタラクティブソリューションカンパニー 舞台めぐり担当


モデレーター

藤田功博氏:株式会社のぞみ 代表取締役

glafitの鳴海氏は、マクアケを利用して電動バイクを作った会社の社長だ。2012年にホンダのようなモビリティメーカーを作りたいと、この事業を始めた。もともと自動車アフターマーケットで仕事をしていた鳴海氏は、EVや電動化のブームに、電動車ならメーカーを一からスタートできると考えた。ホンダは自転車にエンジンを取り付けることでバイクを始めた。ならば自分は自転車にモーターを取り付けることで、ホンダのようなメーカーになることが目標だ。

豊原氏は和歌山と三重でゲストハウスを運営し、旅館やホテルにないおもてなしを追求している。事業のきっかけは、クルマの輸出業を営んでいたとき、タイ人の社員が帰国の際に大量の地元の桃を持って帰っていたことからだという。地元の桃は母国で評判がよいらしい。しかし桃の輸出は面倒なので、タイ人を呼んでしまえばいい、とゲストハウスを始めた。事業の秘訣は、アウトソースや外部の力を使うことによって、なるべく会社を大きくしないことだという。

安彦氏は、大洗、沼津、弘前など多くの地域をコンテンツの力で活性化させている。もともとは武田信玄が好きで山梨に通っているうちに、地域の魅力、コンテンツツーリズムに傾注するようになった。例えば、キャラクターのマンホールを作り、それをARのマーカーとして楽しめることでファンを誘致するといった具合だ。大洗のあんこう祭りは、アニメの舞台として地元の協力を得て、ここ数年、人口1万6千人の街に祭りだけで14万5千人もの集客を続けている。

安彦氏はソニーの名前を背負っているが、コンテンツツーリズムの事業は、会社の予算で行っているわけではない。首都圏では人はコストだが、地方では人で経済が回るという。コンテンツのファンを見つけることが重要だが、自治体の観光課や商工会へのアプローチでは見つからないことも多いという。行政との連携はハコモノやワンタイムで終わる危険性も指摘した。逆にいえば、ファンがいて、コンテンツがあれば、日本中どこでも観光地、聖地にできるというのが安彦氏の考えだ。

ハコモノに関しては、豊原氏も、行政による初期投資がふくらみ失敗するパターンが多いと指摘した。

森平氏は、ホテルオークラでの7年の勤務経験を活かし、東京ディズニーランドホテルの立上げにも従事した。その後アパレルブランドのフルーツ事業を経て、現在は北海道で農産物のバイヤーとして活躍している。地方での事業の魅力は、都会とちがって通勤など移動のロスが少なく、事業に専念できること。お金の問題はあるが、地方では人との信頼やつながりを重視するので、労働力や能力の物々交換が機能するという。都会からくると壁を作られるが、信頼が得られれば商取引以上の関係が築ける。

鳴海氏の経歴は振るっている。起業は15歳のとき。大阪日本橋で自作パソコンのショップを立ち上げた。豊原氏らは、会社を大きくしない方針だが、鳴海氏は、地元での起業は雇用を作りたいからとし、事業は大きくしていく戦略だ。和歌山は、日本でいちばん県外就職が多いそうだ。鳴海氏はこの現状を変えるつもりだ。

電動バイクの資金はクラウドファンディングで集めたという。それまでの事業では、いわゆる街金融の無人ATM機を利用して資金調達するほどだったという。地方なので、資金調達の方法も知らなかったからだ。その後、さまざまな調達方法があることを学び、クラウドファンディングの存在を知る。

クラウドファンディング活用にあたっては、動画コンテンツにこだわり購入希望者を集めるようにした。理由は、「いいね」はいくら押されても金にならない。その先のコミットを得るために、いかに欲しくなるような電動バイクかをアピールする動画に注力したという。鳴海氏いわく「共感するなら金をくれ」だそうだ。

組織づくりも破天荒だ。電動バイクを開発した2名は、自動車販売をしていたころの納品先の従業員だった。その会社が倒産し、車両代金の回収ができなくなったので、その2名に自分のところで働かせることにしたという。鳴海氏は社長だが、決裁権は5万円しかないといい、従業員にもよく怒られるという。しかし、当時の社員含めて人が辞めない会社としても有名だとモデレーターが証言する。

地方での事業は、仕事外での付き合いや活動も重要だと鳴海氏はいう。地方は生活圏と仕事場が近いか重なっているので、消費者・顧客と生産者の距離も近く境界があいまいだ。必然的に仕事以外のことが仕事に結びついてくる。だからこそ地元のメーカーを大きくすることにこだわるのだろう。

他のパネリストの意見も、地方では、都会的な合理的思考よりウェットな関係に入り込めるかがポイントのようだ。

セッション4:自走する地域

課題先進国日本の中でも先端をいくのが地方。その地方をどう自律、自走させていくかを議論するセッション。集まったパネリストは以下だ。

パネリスト

小紫雅史氏:奈良県生駒市長

古山隆幸氏:一般社団法人イトナブ石巻 代表理事

木村篤信氏:日本電信電話株式会社 NTTサービスエボリューション研究所

木継則幸氏:株式会社インフォバーン 一般社団法人サイクル・リビングラボ 理事


モデレーター

村上臣氏:株式会社フィラメントCSO

小紫氏は現役の生駒市長。まさに自走する地方を実践している首長だ。市長以下職員が地域にでて積極的に市民とかかわりコミュニケーションをとっている。浴衣のイベントを企画し、市内の浴衣需要を喚起する取り組みも行った。

古山氏は、東日本大震災をきっかけに故郷石巻と都心を往復する中、母校で地域の人たちにプログラミングやITを教えている。ハッカソンを企画したり、若者中心で石巻を新しい街にすべく活動中だ。

木村氏は、サービス開発のプロセス、UX、社会課題解決の方法論などを研究する中で、リビングラボの研究も行っている。大牟田市では認知症や高齢者の問題に介護サービスや施設と違ったシェアハウスなどの実験を行っている。これらのサービスは、現実的に行政では追いつかないので、住民や企業がともに支援やビジネスの枠組みを作る必要があるとしている。

木継氏が所属するインフォバーンはメディア企業として認知されているが、社会課題への取り組みも行っている。地域と連携したリビングラボを各地で立ち上げる支援を行っている。サイクリストのためのサイクル・リビングラボを立ち上げた。

自走するといっても、その方法や活動は地域によってさまざまだ。パネリストたちはどのようにして地域を巻き込んでいるのか。

生駒市では、シビックプライドと行動力で活動を広げているという。市民の持つ地域愛や誇りに思う心を、行政の行動力によって刺激し、市民力を高めると小紫氏はいう。役所も庁舎で待っているだけが仕事ではないとし、市長や職員が積極的に地域に出て行っての活動を増やしている。

このような活動の中で、市民の中にもリーダー的な資質を発揮する市民が現れるという。あるマルシェでは、当初お客さんとしてやってきたある主婦が、自分もやりたいとブースを出し始めた。そのうち他のブースのプロデューサーのような存在となり、他の市民を巻き込みだしたそうだ。

生駒市は住宅都市であり、京都市・奈良市のような観光資源をあまり持たない。しかし、市民が、地元ならではのストーリーを作って、英語版のパンフレットを配布する。旅館や空き家の活用につなげるといった活動を行っている。外国人観光客には、住民目線のガイドやストーリーが、京都市・奈良市の名所とはちがったものに映るようだ。

古山氏は、人を巻き込むにはだれかがチャレンジする背中を見せよという。生駒市の例のように身近に活動する人がいれば、周辺が刺激される。地方にはそういう人は少ないかもしれないが、偉い人や名士である必要はない。むしろ、若者を動かしたいのであれば、年齢の離れた世代より、若い人の活動や挑戦を見せることが重要だとした。

木村氏は介護や福祉に関係しているが、福祉という言葉がネガティブなイメージになっていることがおかしいという。行政も産業も縦割りになっていると楽しさが阻害される。テクノロジーも縦割りだと、枠に縛ることになる。リハビリに行くというと、どこか義務感ややらなければならない、といった自発性が感じられない行為になってしまう。散歩にいく、誰かに会いに行く、趣味など別のモチベーションを与えること、QOLを考えた提案にすれば、リハビリも楽しくなる。

周囲を巻き込むには、楽しさやモチベーションの置き方、内在する動機と課題をリンクさせることがポイントだとした。

大牟田市は、認知症が多い地域だそうだ。高齢者が骨折などで入院すると一気に認知症が進むことが多い。このとき、通常は施設に入所することになるが、大牟田市には、認知症患者同士をいっしょにシェアハウスで生活させるNPOが存在するという。これは、あるソーシャルワーカーのアイデアで始まったものだという。

木継氏は、外部の人間が地域に入ってきて巻き込むということに違和感を感じるという。価値の源泉はその地域にあるものなので、地域の活動に必要なのは、その価値を編集の力で引き出すこと。お金も必要だが、そこにビジョンとストーリーがあることが必要だし、引き出す作業には経験が必要となる。

魅力を引き出す編集作業については、対象と関係ないもの、遠いところの存在と結びつけるという方法を紹介して、セッションを終えた。

QUM BLOCSは、半日のイベントだが、これだけの人材が集まるビジネスカンファレンスは、東京でも珍しい。4つセッションがすべてパネルセッションというのも、スライドの講演を聴講するだけのセミナーより、現場に近い声、先人たちの本音も聞けただろう。

さらに、メインプログラム同様に盛り上がったのは最後の交流会だ。ビッグネームのくるカンファレンスやセミナーでも、登壇者は講演が終わるとたいていいなくなる。しかしQUM BLOCSでは、パネリスト、モデレーターのほとんどが交流会に参加していた。参加者、登壇者、スタッフ全員にとって、お互いネットワークを広げ、ビジネスを広げる格好の場だったにちがいない。

筆者プロフィール:中尾 真二(なかおしんじ)

フリーランスのライター、エディター。アスキーの書籍編集から始まり、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは当時は言わなかったが)はUUCP(Unix to Unix Copy Protocol)の頃から使っている。