戸田覚の週刊「ジバラ」-自分働き方改革のススメ【第38回】
PDFの資料をしっかり読み込む(2)
「自分働き方改革(ジバラ)」を促進するのが目的の連載。今回は、PDFファイルをじっくり読み込む方法を紹介する2回目だ。前回は、Wordを利用してPDFファイルを読む方法を紹介したが、今回はiPadでPDFファイルを読み込む。
文/戸田 覚
iPadの専用アプリの画期的な機能でPDFを読み込む
iPadは、言うまでもなくタブレットなので、書類を読む際の距離感がとてもいい。テーブルや机、膝の上などに置いて紙の資料のようなスタイルで読んでいける。
また、Apple Pencilを使うことで、紙+ペンと同じ感覚で読み込む作業ができる。さらに、専用のアプリをApp Storeでダウンロードして使うことで画期的な機能を利用できるのが見逃せない。
なお、37,800円(税別)から購入できる「iPad」でもApple Pencilが使えるようになった。書類を読む機会が多いなら、そのためにiPadを手に入れても元が取れるはずだ。
やや使い勝手は落ちるが、iPhoneでも今回紹介するアプリは利用可能だ。
クラウドストレージを使ってPDFを読み込む
iPadにPDFファイルを読み込む方法はいくつかある。自分宛のメールに添付してもいいし、ケーブルでパソコンとつなぐ方法もある。だが、最も手軽なのはクラウドストレージの利用だ。OneDrive、Dropboxなどを利用すれば、パソコンに保存しているファイルを簡単に読み込める。
Microsoft OfficeファイルをiPadで使いたい方も、同じ方法がおすすめだ。パソコンで作成したMicrosoft OfficeファイルをOneDriveなどに保存しておけば、iPadで読み込んで編集しても、自動で保存できる。再びパソコンで開いても、iPadの編集が反映される。つまり、どこのファイルを保存して編集したかなど、考えなくてもよくなるのだ。
もちろん、iPhoneでも同じように作業できる。
LiquidTextでテキストを抜き出す
「LiquidText」は、PDFファイルから必要な部分を抜き出して、情報を組み合わせて思考するのに向くアプリだ。利用は無料だが、全機能を使うためにはPro版(3,600円)への課金が必要になる。とはいえ、無料版でも基本機能は利用できるので、使ってみて向いていると思ったら課金すればいいだろう。
アプリの機能は、紙に置き換えて考えるとわかりやすい。紙の資料を切り抜いてノートなどにどんどん貼り付けて、自分なりの書類を作る――こんなことが画面上でできるのだ。
使い方は簡単で、Apple Pencilで抜き出したいテキストを選択する。ラインが引かれたら、画面の右側にドラッグするように動かす。これで、吹き出しのような形でテキストが抜き出せる。
抜き出したテキストは自由に順番を入れ替えて並べ直し、内容を検討できる。さらに、テキスト同士を近づけるとチャートのようにくっつくので、文章をつなげて読んでいける。
画面を「HighlightView」に切り替えると、PDFファイルの該当箇所だけを表示できる。
抜き出したテキストをとりまとめた、新しいPDFファイルを作成することもできるので、自分なりに読解した資料を作ることも可能だ。手書きでコメントを追加するなど、さまざまな機能はPro版へのアップグレードが必要になる。利用機会が多いなら、3,600円でも決して高くはないはずだ。
MarginNoteで抜き出して考える
もう一本、オススメのアプリが「MarginNote」だ。こちらもiPad+Apple Pencilで使うのがおすすめだが、iPhoneでもそれなりに利用できるので、試してみるなら十分だ。アプリは無料で利用できるが、ノート数などに制限があり、960円のPro版に切り替えるとフル活用できるようになる。
PDFファイルは、いったんiCloudに転送しておき、そこから読み込めばいい。
PDFファイルのテキストをペンでなぞるように選択するか、ブロック単位で囲むと自動的に抜き出してくれる。このあたりは、LiquidTextと近いコンセプトだ。抜き出したテキストやブロックは、フローチャートのパーツになるので、自由に接続したり位置を入れ替えて内容を考えていける。抜き出した内容を好きな順番に並べたり、子フォルダのような階層を考えて子ノートにしていける。
どちらのアプリも、英語版なのでやや使いづらいのだが、慣れればとても強力な「読み込みツール」になるだろう。両方を使う必要はないので、自分にとって向いた方を選択して欲しい。
これまでのPDFファイルや紙の書類は読み込んで終わりにしているケースがほとんどだった。ラインマーカーで線を引いてもそれで終了していた。ところが、これらのアプリを使うと、ラインマーカーで線を引くなどして注目したポイントを自動で抜き出し、それを改めて読んで検討したり並べ替えて考えることができる。新しくとても役立つ書類の読み方なのだ。
筆者プロフィール:戸田 覚
1963年生まれ。IT・ビジネス書作家として30年以上のキャリアを持ち、「あのヒット商品のナマ企画書が見たい」(ダイヤモンド社)など著作は150冊を超え、IT系、ビジネス系を中心に月間40本以上の連載を抱えている。テレビ・ラジオ出演、講演なども多数行っている。