最近は、1つのサービスプロバイダーに絞るのではなく、用途に合わせて複数のサービスプロバイダーを活用するマルチクラウドの時代に突入しています。そういったなか、AWSやAzure、GCPといったメジャーなクラウドストレージサービスに続き、第二勢力の波が押し寄せてきています。Wasabi Hotクラウドストレージもその1つで、サービス開始からまだ7年足らずでありながら、低価格でかつ高性能とAmazon S3互換を武器にシェアを大幅に伸ばしてきています。
今回は、日本にも進出して注目を集めているWasabi Hotクラウドストレージについて、WasabiのマーケティングマネージャーAPACの元叡芝(ウォン・イェジ)さんにお話を伺いました。
Wasabi Hotクラウドストレージの特徴
元叡芝さん(以下元) 「Wasabi Hotクラウドストレージは、アメリカ発の低価格、高性能で安全、大容量のオブジェクトストレージを提供しています。メジャーなクラウドサービスプロバイダーであるAWSやAzure、GCPなどが第1世代クラウドサービスプロバイダーとするなら、Wasabiは第2世代にあたります。
サーバーの性能がアップしておりAWSやGoogleにも匹敵するサービスとパフォーマンスを提供しております。2022年2月時点でグローバルで契約している企業数は、公共、エンタープライズ、SMB含めて約3万5000社にのぼり、右肩上がりで伸びています」
池澤あやかさん(以下池澤) 「最初Wasabiという名前を聞いたとき、日本の企業かと思っていました」
元 「もっとも多い質問です。本社はアメリカのマサチューセッツ州ボストンにあります。なぜWasabiなのかというと、クラウドストレージにはコールドストレージとホットストレージの2種類があります。コールドストレージとは、データを入れたまま保存しておくだけのストレージであり、ホットストレージは頻繁にデータをダウンロードしたりアップロードしたりするストレージを言います。
コールドストレージは置きっぱなしなので価格が安いのですが、Wasabiはそのコールドストレージの価格でホットストレージのサービスを提供しています。その“ホット”というところから、スパイシーをイメージした言葉が“ワサビ”だそうです」
池澤 「日本だとそういうイメージはないですよね(笑)」
元 「そんなWasabiなんですが、Price、Performance、Protectionの3つのPを柱にしています。Priceは、なんといっても破格な価格で提供しているところです。他のクラウドストレージより80%ほど安くなっています」
池澤 「80%安いってすごすぎですね」
元 「実際には、そこにサポート費用などがかかるので、50%ぐらいかなと思いますが、それでもかなり安いと思います。ただ、APIリクエスト費用やデータをダウンロードする(Egress=イグレス)ときに追加で発生する費用がないため、運用コストを抑えられるのもWasabiの特徴です。
例えば、1PB(ペタバイト)のストレージを年間30%の比率でデータをダウンロードするときに、Wasabiの場合は9万4000ドルなのですが、他社の場合は50万ドル以上かかります。つまり5分の1程度のコスト削減ができます」
池澤 「かなりのコスト削減になりますね」
元 「2つ目のPerformanceは、競合他社より高速で処理でき、ほぼ同じスピードでデータのダウンロード、アップロードができるところです。
3つ目のProtectionの面では、データセンターの調整も含め、ハイパースケーラーのクラウドベンダーが提供している同じレベルの99.999999999%(イレブンナイン)のデータ耐久性を備え、データのやりとりはすべて暗号化しているため、ランサムウェアなど悪意を持った行為に対しても守られるようになっています」
池澤 「性能面もセキュリティ面もほかと引けを取らないのに価格が抑えられているって、何かほかと違いはないのでしょうか」
元 「価格が安いので性能の面で何か足りない部分がないかと思われるのですが、独自の技術を活用した高速のスピードファイルシステムをベースに最新のサーバーと組み合わせることでパフォーマンスを上げております。トランザクションも高速でやりとりができるため、こうした技術により大幅なコスト削減を実現しています。
また、メジャーなプロバイダーさんの場合、ストレージを階層化していて、隠れた階層が多いと複雑な料金設定になる場合があります。ストレージのサービス費用だけでなく、ダウンロードやアップロードするときに、別途費用が発生したりするのですが、Wasabiの場合は隠れた階層がないので非常にシンプルな料金体系になります。これは、お客様にとっても予算の管理がしやすいことを意味します」
池澤 「AWSやAzure、GCPなどの場合、あまりアクセスしないデータだと、例えばコールドストレージへ移動する仕組みになっているところを、Wasabiでは一括でホットストレージとして管理しているイメージですよね」
元 「そのとおりです。セキュリティ面もコンプライアンスをクリアするために、さまざまな認証をクリアしています。現在はメディカル業界や教育、公共系などアメリカでの認証がほとんどなのですが、日本のほうでも準備をしておりますので、今後対応していくと思います」
池澤 「企業にとってコンプライアンスは重要ですからね」
元 「Wasabiは現在、世界中に拡大することを目指しており、世界に9カ所のデータセンターを構えております。日本にも東京と大阪の2カ所あり、もうすぐカナダやドイツで運用開始されるほか、オーストラリア、シンガポールでも今年中に稼働いたします」
池澤 「どんどん世界中に拡大していますね」
Amazon S3互換なので移行もラク
元 「Wasabiのサービスで重要なポイントが、Amazon S3互換APIを完全にサポートしていることです。お客さまから、AWSで使っていた既存のS3アプリケーションはWasabiでも動きますか、という質問をよく受けております」
池澤 「これまで使っていた構成を変えたくないと」
元 「そのとおりです。その質問に対して、弊社はすべて『はい、できます』と、お答えしています。中身がAWSなのかWasabiか分からないほど、同じ作りになっております。そのため、Amazon S3で使用していたアプリケーションを変更する必要もなく、サードパーティーのS3互換アプリケーションをそのままWasabiでも使えます」
池澤 「AWSだと結構いろんなサービスがAWSの中にあって、その連携が楽だったりします」
元 「現在350社以上のS3互換アプリケーションがそのまま使えるのを確認しているのですが、連携に関してはWasabiにまだ足りない部分かもしれません。ですので、弊社もS3互換のアプリケーションをどんどん増やしていくことに力を入れています。
アジアでもデジタルトランスフォーメーションの一環で、クラウドがどんどん取り入れられているので、クラウドビジネスは右肩上がりだと思います。それに合わせていろんなアプリケーションとの連携や検証を迅速に行なっていくことが課題だと思います」
池澤 「逆に、何かこういうときはS3使ったほうがいいみたいなところってあるんですか?」
元 「ビジネスの規模や会社の規模によりますが、SMBの小規模なお客さまだと、Wasabiだけの運用もあると思います。ただ、エンタープライズ規模のお客さまですと、既にクラウドを導入していて、それを完全にWasabiへ移行することは非常に難しいですね。そのためメインはAmazon S3で運用し、バックアップとアーカイブとしてWasabiを使うというハイブリッド運用のお客さまがもっとも多くなっています」
池澤 「用途に合わせてコストの削減につながるサービスプロバイダーを選ぶことが重要というわけですね」
元 「Wasabiを導入いただいたお客さまが、これからデータ量がどんどん増えて、明らかにコスト削減が図れ、性能の面でも運用の面でも、Amazon S3と比べてまったく変わりがないということを確認できれば、いずれはWasabiへすべて移行することもあるかもしれません」
池澤 「大企業だと既存のサービスプロバイダーから一気に移行するのはリスクがありますよね。ただ、いまから構成を考えて、データを保存しようと考えた場合、全部Wasabiで運用しても問題ないですよね?」
元 「製品自体の価格やパフォーマンスでは他社に引けを取りませんし、AWS とS3互換のAPI構成ですし、問題ないと自負しております。強いていえば、まだ日本で始まったばかりですので、知名度が低くお客さまから見て安心して使えるかという不安はあるかもしれません」
池澤 「日本でのデータセンターはどこを使われているのですか?」
元 「日本ではNTTコミュニケーションズさんのデータセンターを活用しております。東京のデータセンターは2~3年前から、大阪のほうは昨年運用を開始しています」
池澤 「海外の安いデータセンターを使っているというわけでもなく、それでいて他のサービスプロバイダーより80%のコストを削減しているって、どうしてそんなことができるのかが気になります」
元 「第1世代のAWSやGCPがクラウドサービスを始めたときよりも、第2世代のいまはハードウェアの費用が安くなったことです。同じ容量のストレージを確保するにも、昔と今ではかなり安く上がります。またソフトウェア面による高速ファイル処理により、ハードウェアの性能に依存せず高いパフォーマンスを提供できるところが、価格を抑えられているポイントになっています。
ちなみに、アメリカでは日本より安い価格設定になっています。これは、データセンターが砂漠とか草原といった安い土地にあるので、運用コストがより抑えられているためです」
池澤 「日本の企業だと、データを保管するサーバーがどこにあるのかすごく気にしますもんね。国内のデータセンターを利用するということは重要だと思います」
元 「日本に限らずアジア諸国でサービスを始めるには、自国にデータセンターがあることが必須条件になりますね。アクセス速度も上がりますし」
池澤 「地域によってデータ保護の法律も違いますもんね」
これからIoTやAIで肥大化するデータをWasabiで保管・活用
池澤 「どんなお客さまにオススメですか?」
元 「Wasabiでは、いままでテープやメディア媒体で保存していたデータをどんどんクラウドに移行していこうという市場に対して、バックアップ用のクラウドとしても提案しています。クラウドへ移行すれば、これまで使っていたNAS費用などを削減するとともに、メンテナンス料金も削減できるので、全体的に見てコスト削減につながります。
最近ではアメリカで監視カメラのデータの保管にWasabiでバックアップするという活用が広がっています。監視カメラのデータは膨大になるため、AWSで使うには費用が非常に高くなります。これに、IoTやAIに関してもデータの肥大化が進んでいるため、その保管先にWasabiを選択いただいております。
日本市場での現実的な話をしますと、やっぱりエンタープライズやSMBの一般企業です。最近では、公官庁などでもクラウドを取り入れはじめていて、今後そういった市場が大きくなると思いますが、日本向けの認証でまだ取得していない部分もあるので、しばらくはSMB、エンタープライズ、一般企業向けに、業種を問わずお使いいただければと思っております」
池澤 「結構アーカイブに利用するケースが多いようですが、アーカイブならコールドストレージでもいいのではと思ってしまいます。ホットストレージがアーカイブで活きるメリットはあるのでしょうか?」
元 「用途にもよりますが、単に保管しておくだけであれば、コールドストレージでも十分でしょう。ただ、Wasabiはコールドストレージの価格でホットストレージが利用できるわけで、アーカイブだけでなく将来的にデータを活用するといったときに、そのまま利用できるのがメリットだと思います」
池澤 「確かに、ホットストレージでもコールドストレージ並に安ければ、ホットストレージを使ったほうがお得感高いですよね。サービスを運用している企業にとって、データどこに置くかは絶対考える必要があります。そこにどれだけ経費を掛けられるのかですよね」
元 「SMB規模のお客さまはWasabiを初めてのクラウドとして選択していただくケースが増えています。またAIのアプリケーション開発しているお客さまの場合、いままでオンプレに置いてあったデータをクラウドへ移行するために、コスト削減の面でWasabiを選択するケースが増えています。
Wasabiはとても安価でシンプルな料金体系になっているので、予算も立てやすくなっています」
池澤 「他のサービスプロバイダーだと、掛かった費用を計算する式が複雑なんですよね」
元 「Wasabiは、使用する容量に対して幾らです、とすごくシンプルです」
池澤 「明朗会計ですね」
元 「価格はパートナーさんとの契約にもよりますが、本当に使った分だけ払うだけです。今月は10TBでしたので幾らですというパターンもありますし、プリペイド式であらかじめ50TBとか100TBなどと箱を買っておき、それを1年とか3年、5年契約で利用するというパターンもあります」
池澤 「とにかく安いという印象が強くて、今後仕事とかで何かストレージを選択しなければならないといったときのために、絶対記憶に留めておこうと思いました(笑)」
元 「価格面だけでなく、最近は世界的にランサムウェアの攻撃がとても増えていて、セキュリティ面でも強いWasabiを使うことは、データを守るために有用だと考えています。今後もさまざまなパートナー企業とつながり、お客さまへの認知度を高めつつ、日本市場で拡大していきたいと思います」
Wasabiの画期的な料金、優れたパフォーマンスと世界最高峰のプロテクション技術により企業のクラウド選択が容易になります。複雑な階層のない単一料金、ほかのクラウド事業者より優れたパフォーマンス、隠れた料金がありません。データバックアップでランサムウェア攻撃からデータを保護。すべてのデータのニーズに対応しているのがWasabi Hotクラウドストレージです。
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