ブラウザ検索は生成AIでどう変わったか

AIスタートアップのエクサウィザーズの2023年8月の調査によれば、業務で日常的に生成AIを活用するという人は約20%。まだ全体の5分の1ほどですが、その数は着実に増えています。生成AIサービス開発各社の改良・改善も進み、使い勝手は数カ月で格段に向上。普段使うアプリケーションにも生成AI機能が取り込まれ、誰もが簡単に、安心して生成AIを使う時代になりつつあります。

実際の活用例を見てみましょう。まずはウェブの検索。従来の検索エンジンサービスでは、自分が知りたい情報を得るために検索ワードを工夫し、結果一覧の中から情報が掲載されていると思われるサイトを開いて確認する必要がありました。それが生成AI技術を活用した対話型チャットサービスを使えば、結果はまとまった文章として表示されます。

例えば、ウェブブラウザ「Microsoft Edge」にも搭載されている「Microsoft Copilot」。Edgeのスタートページで「AIによる検索」を行うか、右上のCopilotのロゴをクリックすると表示される「Bing Chat」(ウェブ用Copilot)を使えば、生成AIによる検索が可能です。またGoogle Chromeなど、ほかのブラウザアプリからCopilotサイトにアクセスすることでも利用できます。検索結果に不明な点があれば質問を掘り下げることもでき、質問候補も提案されます。

Microsoft Copilot(Microsoft EdgeのAI検索画面)。職場や組織のアカウントでサインインして利用できる場合はチャットの内容が保存されないので、比較的安心して利用できる
結果は文章で回答。参照したウェブページへのリンクも表示され、追加質問の候補も提示される
Edgeでは表示したページの内容をウィンドウ右に開いたCopilot(Bing Chat)カラムで要約することもできる

OpenAIが提供するChatGPTでも同様です。ChatGPTはリリース当初、最新の情報が表示されないことや、正確性に欠ける情報が表示されることも多かったのですが、ウェブブラウジング機能(現時点では月額20ドルの「ChatGPT Plus」ユーザーが利用できる「GPT-4」に搭載)が組み込まれたことで、より新しく精度の高い情報が表示されるようになりました。

ただ、数カ月前と比べれば格段に精度が向上したとはいえ、生成AIが表示する情報は確実に正しいとは言い切れません。業務で利用する際には一次情報に当たるなど、自身でも内容を確認することが大切です。

WordやExcel、PowerPointで生成AIが利用可能に

生成AIはウェブブラウザだけでなく、アプリケーションにも組み込まれて活用が広がっています。Microsoft 365製品と連携して動作する生成AI機能「Microsoft 365 Copilot」(Copilot for Microsoft 365)は、WordやExcel、PowerPoint、Outlook、Teamsといったアプリケーションにも組み込まれ、シームレスに利用することが可能となります。

2023年12月1日現在、Microsoft 365 Copilotは、エンタープライズ向けのMicrosoft 365 E3またはE5ライセンスを導入済みで、300人以上の従業員を持つ組織が購入可能。今後数カ月以内でより広く展開される予定ということです。

各アプリではどのように利用できるのでしょうか。Wordでは、原稿の下書きをCopilotが生成。よりよい表現の提案や要約パートの作成、文書に含まれる内容を裏付ける追加情報の提案なども支援します。

何に関する文書を作成するか入力すると下書きが生成される(画像:Microsoftサイトより引用)
ドキュメントの要約を生成(画像:Microsoftサイトより引用)

Excelでは、Copilotがデータのグラフ化や分析を自動化。数式の提案やデータの重要な部分の強調表示、フィルタリング、並べ替えなども行います(ExcelのCopilot対応は12月1日時点では英語のみ)。

データに基づいて自動でグラフを表示(画像:Microsoftサイトより引用)
「総額」を計算する列を追加したいと入力するとCopilotが数式を提案(画像:Microsoftサイトより引用)

PowerPointでは、Word文書作成時と同様、Copilotにトピックを指示すればプレゼンテーションが生成できます。またWord文書ファイルからの資料作成も可能。プレゼンテーションの要約や整理、スライドに関連する画像の追加なども支援します。

何に関するプレゼンテーションを作成するか指示して生成(画像:Microsoftサイトより引用)
スライドの整理も自動で行う(画像:Microsoftサイトより引用)

画像・デザイン制作もブラウザやアプリの生成AIで

画像・映像やデザインの分野でも、アプリケーションに生成AI機能が取り入れられつつあります。

Adobeの画像生成AI「Adobe Firefly」は、Adobe Creative Cloudなどの既存製品への導入が進んでいるほか、ウェブサービスとしても提供されています。Fireflyの生成AIモデルはAdobe Stockの画像を学習データに使用しており、著作権や商標などの権利関係がクリアな生成画像をビジネス用途で利用することができます。

Adobe Fireflyはウェブブラウザから利用可能。毎月一定量の動作が無料で使える。有料のプレミアムプランの利用料金は月額680円
Fireflyでテキストから画像を生成。参照するスタイルや画像効果なども指定できる
アプリ版Adobe Photoshopの「生成塗りつぶし」機能を使って撮影した写真の桟橋に“海賊船”を追加したところ

またオンラインデザインツールの「Adobe Express」では、ウェブブラウザ上でグラフィックデザインが可能。デザイナーでない一般のビジネスパーソンでも、SNSや動画サイトに投稿する画像・動画やチラシ、ポスターなどのデザインを比較的簡単に美しく作成できるツールですが、このAdobe ExpressにもFireflyの生成AIが組み込まれています。

ウェブ上で画像やチラシデータなどのデザインが作れるAdobe Expressでも、テキストからの画像生成ができる
Adobe Expressに読み込んだ画像から、消したい人物部分を「生成塗りつぶし」で削除

画像生成については、Microsoft Copilot(Bing Chat)やChatGPT(GPT-4)でチャットにテキストで「○○の画像を生成して」と指示することでも可能です。これらのサービスには画像生成AIモデルのDALL-E 3が組み込まれているからです。生成した画像は、社内文書やプレゼンテーション資料のアクセントとして活用することもできるでしょう。

今後は日常業務においても、身近なアプリケーションに取り入れられた生成AI技術を活用する機会がどんどん増えていくはずです。文章や画像の生成だけでなく、データ解析・予測や作業の自動化など、毎日の仕事で生成AIの力を使って、より早く正確な意思決定や顧客サービスの充実、効率化や生産性の向上に役立てていただければと思います。