生成AIがスマートワーカーのスキルと生産性をレベルアップした
オフィスや自宅、外出先など場所や時間を問わず、いつでも仕事を効率よくこなすスマートワーカーたちのスキルが、この一年間で飛躍的にレベルアップしている。例えば膨大なデータから仕事に有効なデータを抽出したり、仕事を有利に進めるヒントを見出したりするなど、通常ならば何時間もかかるような作業を、わずか数分、場合によっては秒単位でこなす、スーパースマートワーカーが増加中なのだ。
このスーパースマートワーカーたちはどのようにしてスーパーなスキルアップを図ったのだろうか。その答えは簡単だ。今や誰もが利用できる生成AIを積極的に活用しているのだ。
従来の優秀なスマートワーカーは自身のスキルを発揮するとともに、仕事の相棒であるノートPCのパフォーマンスにこだわってきた。なぜなら仕事を成果に結び付けるにはPCでの作業が不可欠であるため、PCの性能が高いほどより早く成果が得られるためだ。しかし、いくらPCが高性能であっても、一人のユーザーがこなせる作業には限界がある。その限界を打ち破ったのがChatGPTをはじめとした生成AIだ。
ChatGPTが一般にサービス提供を始めたのは約1年前の2022年11月だ。生成AIにしてもらいたいことを日本語の自然な言葉遣いでテキスト入力するだけで、回答やアドバイス、欲しい情報が返ってくる。生成AIへの命令文はプロンプトと呼ばれ、このプロンプトの書き方や、命令の仕方にコツは必要だが、難しい操作は不要で誰でも使えることから、世界中で瞬く間に普及したことは記憶に新しい。
生成AIを活用すれば仕事に必要な情報が瞬時に得られたり、必要な文章や文書が短時間で自動的に作成できたり、さらにはユーザーが習得していないスキル、例えば外国語や専門分野の知識なども生成AIを使えば使いこなすことができる。
ChatGPTが出現して1年後の現在、生成AIは回答の精度向上や対応するデータの種類を増やすマルチモーダル化などの進歩が加速しており、ビジネスにおける生産性や創造性の向上を目的に、業務に取り入れる企業が増加している。
AIはクラウドからエッジに広がり、ハイブリッド化していく
スマートワーカーのスキルと生産性のレベルアップに使われている生成AIの知識は非常に大規模な言語モデル「LLM(Large Language Models)」に蓄えられており、クラウドで処理されている。リソースに制限のないクラウドだからこそ大規模な知識を構築でき、高速に処理できるのだ。
ただし広く利用されている生成AIは「汎用型」と呼ばれる種類で、地球上の知を網羅する勢いで知識を蓄積している。その一方で、例えばユーザー個人のことや特定の企業の組織内のことは知らない。つまりプライベートは守られているというわけだ。
しかし、例えばユーザーの仕事の達成目標に対して、現在の進捗とスケジュールの状況からどのように進めれば効率がよくなるのか、成果を最大化するにはどのような進め方がよいのかといったアドバイスを生成AIから得るには、生成AIの知識である言語モデルに個人情報を組み合わせる必要がある。
仕事に限らず、例えばゲームでより高いスコアを実現するためのアドバイスを得るには、これまでの履歴を分析する必要がある。つまり個人、企業や組織といったプライバシーが保護されているデータを生成AIの言語モデルと組み合わせることで、生成AIの活用範囲が広がり、得られる成果も大きくなる。
けれどもユーザーの手元のPCにあるデータ、あるいは企業や組織の中にあるサーバーのデータを外には出したくない。すると、どういうことが起こるのか。手元のPCで生成AIのエンジンを動かしてプライベートなデータを処理しつつ、クラウド上の生成AIと連携して回答を得るという仕組みが必要となる。この仕組みならばプライベートなデータを保護しつつ、生成AIを活用できる。
こうした要望に加えて、クラウド上の生成AIを活用する際に生じる通信の遅延や不具合といった課題をはじめ、通信にかかるコスト負担やプライバシーやセキュリティのリスク管理などの課題もある。これらのことから生成AIはクラウドからユーザーのPCや企業および組織のエッジに拡大することが予想できる。
現在の優秀なスマートワーカー、スーパースマートワーカーは生成AIを積極的に活用して自身のスキルと成果をレベルアップし、生産性も飛躍的に向上させている。同時に仕事に使うPCの性能にこだわり、作業にかかる時間も省いて効率化を図っている。これが現在地だ。
そして、さらなるスキルと成果のレベルアップと生産性向上を図るには、クラウド上の生成AIの進歩と処理速度の向上とともに、手元のPCやエッジのデータを利用するローカルAIの活用が求められるようになる。このクラウドとローカルを連携させたハイブリッドなAI環境は、非常に近い将来、現実のものとなる。
例えば、Rewind社のSuperpowerというソリューションがインテルによって紹介されている。こちらは、ローカルに保存された会議録や作業履歴をもとにパーソナルアシスタント機能を提供するアプリケーションだ。ローカルでLLaMa2ベースで処理することはもちろん、クラウドではGPT4を使って処理することもできるという。まさにハイブリッドAIを実現したサービスといえる。
そのような中、インテルは「AI Everywhere」の実現に向けてデータセンターやクラウドからクライアントおよびエッジまで、プラットフォームを問わずAIが利用できる環境の実現に向けてAI処理に最適化されたサーバー向けCPU「第五世代 インテル(R) Xeon(R) スケーラブル・プロセッサー」やPC向けCPU「インテル(R) Core(TM) Ultra プロセッサー」、「OpenVINO(TM)」などのオープンなソフトウェア開発環境、そしてセキュリティ対策を提供している。
「AI PC」を導入して備えておくことが、最も高い投資効果につながる
いまスマートワーカーが注目すべきなのは、生成AIのエッジへの普及に備えて「AI PC」を選択することである。インテルのPC向け最新CPUであるインテル(R) Core(TM) Ultra プロセッサーに内蔵されるCPU、GPU、AI動作専用のNPU(ニューラル・プロセシング・ユニット)「インテル(R) AI ブースト」の全てに対してAI処理を高速化するアクセラレーション機能を実装しており、インテル史上最も優れたAIパフォーマンスと電力効率を実現する。
このインテル(R) Core(TM) Ultra プロセッサーが搭載されたPCこそがハイブリッドAIのローカルAIを担う「AI PC」となる。AI PCはグローバルでは230機種以上が世界各地の量販店やオンラインで順次販売が開始されるほか、日本市場ではデル・テクノロジーズや日本エイサー、MSIがすでに販売を開始しており、レノボ・ジャパンやASUS Japanからも発売が予定されている。
ハイブリッドAIはユーザーの要望だけではなく、新たなビジネスを期待するエンジニアたちからも支持されている。というのも急速に市場を拡大している生成AIだが、そのビジネスはハイパースケーラーと呼ばれるグローバルプレーヤーが先導している。しかしローカル生成AIのニーズに対しては、スタートアップ企業をはじめ広くソフトウェア・ベンダーがAIビジネスに参入できる。
そこでインテルはAI PC向けのビジネスやサービスを支援する目的で、Discordコミュニティ「インテル(R) AI PC Garden」を提供しているほか、100社以上のISV(独立系ソフトウェア・ベンダー)との協働により、インテル(R) Core(TM) Ultra プロセッサーに最適化されたAIアプリケーションを拡充するなど、AI PCのメリット向上と市場拡大にも取り組んでいる。AI PC上のローカルなAI処理を活用したアプリケーション開発に興味のある方は、OpenVINO(TM) ツールキットの導入や無償トレーニングへの参加を検討すべきだろう。
インテル(R) OpenVINO(TM)
https://www.intel.co.jp/openvino-dl
このようにビジネスで活用されるAIはクラウドからPCやエッジに広がっていく。1年前にChatGPTが突如出現して瞬く間に普及したように、AIのローカル化も突如として一気に普及する可能性がある。その際にAIに最適化されていない従来のPCでは生産性が低下するだろう。Windows 10のサポート終了に伴うPCの買い替えなどを契機に、インテル(R) Core(TM) Ultra プロセッサーが搭載された「AI PC」を導入して備えておくことが最も高い投資効果につながるはずだ。