マイクロソフトが考える
アダプティブクラウドアプローチ
Azure Arcの本質を理解

今回のMicrosoft Azureから始めるAIとクラウドの未来では、「Azure Arc」について説明します。ハイブリッドクラウドの社会への浸透はシステム運用に柔軟性をもたらしましたが、一方でITインフラ環境自体のサイロ化も懸念される状況です。過去号でもAzure Arcを提案していますが、システム統合をサポートするAzure Arcの新たなクラウドへのアプローチをご紹介します。


日本マイクロソフト
パートナー事業本部
コーポレートソリューション統括本部
パートナーソリューション本部
パートナーソリューションマネージャー
大北崇人 氏

サイロ化するインフラ環境を接続

「Azure Arc」は、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境でのリソース管理を簡素化するためのマイクロソフトのソリューションです。Azure Arcを使用すると、オンプレミス、エッジ、複数のクラウドにわたるリソースを一元的に管理し、Azureのサービスや管理機能をどこでも利用できるようになります。

　最近の企業さまのITインフラには、ハイブリッド、マルチクラウド、IoT、分散配置などがあり、各システムをそれぞれ構築すると無秩序になり、サイロ化する懸念があります。中長期的に見ると生産性の低下につながる可能性もあり、ITコストの高止まりの懸念も挙げられます。それらの課題解決を実現するために、Azureではさまざまなアプローチを用意しています。その中でサーバーサイドとしてのアダプティブクラウドアプローチを行えるのがAzure Arcです。

　すでに企業で利用されているサーバーやコンテナ、SQL、IoTといった資産をAzure Arcにオンボーディングすることで、一元的に監視や管理、セキュリティを運用する考え方で、その中には先月紹介したクラウド更新管理サービスの「Azure Update Manager」も含まれています。プラットフォーム、IT選択の自由はそのままに、中心となる一点に接続することで複数拠点、分散システム、バラバラなチームのプロセスを統合します。これにより、ハイブリッドクラウドから“アダプティブクラウド”へのアプローチに進化させ、企業のビジネス推進の後押しを実現します。

更新管理やセキュリティをサポート

　では、具体的にどのようなことが実現できるのでしょうか。Azure Arcは、オンプレミスやほかのクラウド環境にあるリソースをAzureの一部として管理できるサービスですので、ハイブリッド環境やマルチクラウド環境での一元管理が可能になります。リモート管理や更新管理の機能を実装しており、Windows Server 2012やWindows Server 2012 R2の拡張セキュリティ更新プログラム（Extended Security Updates：ESU）を提供できます。そして、従来のボリュームライセンス購入では年単位契約だったライセンス形態が、Azure Arc経由では月額でESUの有効化が可能となり、結果的にコスト削減につながります。

　次に、管理の一元化とセキュリティもサポートします。ESU適用状況をAzure Portalで管理することが可能となり、さらにAzure Arc対応のセキュリティ、管理、ガバナンス機能を併用することでオンプレミスサーバーの機能の向上にもつなげられます。

　また、クラウド監視ツールである「Azure Monitor」を活用することも有効です。

　Azure VMやAzure Storageといった各サービスのパフォーマンスやログ管理、アラート検知機能を活用できます。Azure Arc対応サーバーでは、Azure Monitorのさまざまな機能を利用して多角的に監視および分析が可能です。

　最後に、変更追跡とインベントリ管理機能です。Azure Arc対応サーバー上のOSのプロセスや構成ファイル情報を収集することで構成管理アイテムとして目録化できます。さらにコンフィグファイルなどの変更を管理するCMDB(構成管理データベース)の要素も持ち合わせております。詳細についてはページ下のQRコードからご確認ください。

システム運用をより省力化

　これらを実現することで、パートナーさまやお客さまに多くのメリットが生まれます。まずは、セキュリティとガバナンスの強化です。異なる環境に同じポリシーとガバナンスのルールを適用することにより、コンプライアンスの維持を容易化します。また、運用面の効率化も実現します。DevOpsプラクティスを活用して、アプリケーションのデプロイメントやシステム更新などの管理作業を自動化できるのです。さらには、これらによりコスト削減にもつながります。Azure Arcは、既存のITインフラ環境に上手く組み込むことでIT運用の効率化とコスト削減をもたらし、企業がデジタル変革を加速するためのキーツールとなるのです。

　今回はAzure ArcでのアプローチによってITインフラ環境にもたらすメリットを解説しました。オンプレミス、エッジ、マルチクラウド環境にわたるリソースは、一つのインターフェースからの管理に切り替えましょう。そしてポリシーの一元化や運用の自動化を実現することで、ITチームの負担を軽減し、運用効率を向上させます。本稿を踏まえ、アダプティブクラウドアプローチを検討してもらい、企業さまのインフラ環境整備にAzure Arcをご活用ください。

　今回の記事を読み、ビジネスに活用したいという場合は、ぜひ下のQRコードから、Azure Arcの全般的な機能や利用ステップ、活用事例などを参照してみてください。併せて、この機会に無償版をお試しください。最大30日間お試しいただき、事前にAzure Arcを体験することでお客さまや販売店さまにとってのメリットを体感した上で導入に進められるでしょう。

Azure Monitorによる監視および分析UI。

text：日本マイクロソフト 大北崇人 氏