スポーツでのデジタル活用が進んでいる。プロスポーツ選手がウェアラブルデバイスを着用し、効率の良いトレーニングや競技に生かしていることは知られているが、実は民間スポーツの間でもデジタル活用が進められている。それはセンサーデバイスを活用した身体のモニタリングではなく、デジタルを活用した新しい競技などだ。今回は民間スポーツ施設に導入されるテクノロジーにフォーカスし、スポーツ分野で伸びるデジタル活用を解説していく。

Sports×Digital
デジタルを活用したスポーツ体験施設が
幅広い世代の運動の習慣化を支援

2021年4月に、体験型のデジタルスポーツマシンを取りそろえた施設「スポーツ60&スマート」の初期フィールドが埼玉県のアリオ鷲宮で開設された。プロジェクターでスクリーンに投映した映像と、センサーデバイスによる動作検知を組み合わせた技術により、さまざまな競技を体験できる次世代型スポーツを提供している。

デジタルの運動体験で
新しい健康作り

 スポーツ60&スマートの運営や、本施設における一部シミュレーションスポーツマシンの開発を行っているのがエアデジタルだ。同社の代表取締役である前田相伯氏はオープンの経緯を次のように振り返る。

「当社では、オンラインとオフラインを融合した運動機会作りを視野に、国内外から優良なスポーツシミュレーションシステムを調達し、日本での製品化を前提としたキオスク開発やローカライズを行っています。もともと前身となる会社で開発していたデジタルの体験型野球ゲームがあったのですが、その会社が倒産してしまったため、そのコンテンツを買い取り、現在のエアデジタルで提供しています。そのほかにも市場に出していないものも含め、40種類ほどの体験型コンテンツを当社で提供しています。従来はこれらのコンテンツを遊技場で提供していましたが、体験型のコンテンツはある程度体を動かすためのスペースが必要になります。また、当社としてもデジタル空間を活用して体を動かすこれらのコンテンツは次世代のスポーツや、新しい健康づくりにつながるのではないかと考え、スポーツ60&スマートをオープンしました」

埼玉県久喜市のアリオ鷲宮にあるスポーツ60&スマート。平日は中高年層、休日はファミリー層でにぎわう店舗だ。

 スポーツ60&スマートは大きく分けて、デジタルを活用して体を動かす「デジタルスポーツフィールド」と、フィットネスマシンが用意された「トレーニングフィールド」、体験型プロジェクションマッピングと滑り台&大型のボールプールで構成されたデジタルアトラクション「お絵描きシーパラダイス」の三つのエリアが用意されている。本記事では前者の二つのエリアを紹介する。

 デジタルスポーツフィールドでは現在、体験型デジタル野球システム「レジェンド T-バッティング」、水泳や射撃、三段跳びといったオリンピック競技が楽しめる「ビッグスクリーンスポーツ」、体験型デジタルPKシミュレーター「レジェンドサッカー」、ゲームシステムにスキーシミュレーターを組み合わせた体験型デジタルスキーマシン「サウンドバディ」など、19種の運動コンテンツをデジタルで楽しめる。

 トレーニングフィールドでは背中の筋肉を鍛える「シーテッドロウ」、ヒップアップを実現する「ヒップアブダクション」といった筋力を鍛えるマシンと、サイクリングトレーニングプラットフォーム「アルティレーサー」といった有酸素運動をサポートするマシンが用意されている。

エアデジタル
前田相伯
エアデジタル
高橋佑介
エアデジタル
岡田光平

理学療法士によるサポートで
運動の習慣化を促す

 デジタルを活用したスポーツ体験ソリューションとフィットネスマシンの2種類の運動機器が用意されている背景には、スポーツ60&スマートの利用者層がある。同施設が入居しているショッピングモールは、平日と土日の利用者層に差があるのだ。平日の主な利用者は中高年層が中心となっているが、土日は子供を含めたファミリー層が中心だ。

 ファミリー層はデジタルスポーツ体験に抵抗なく楽しめる場合が多いが、特に高齢者層はこうしたデジタルスポーツに対して「使い方が分からない」といった理由で抵抗感を覚える利用者も少なくないという。そうした中高年層の運動習慣をサポートするため、フィットネスマシンの整備も行っているのだ。

 また、デジタルに抵抗感のある利用者層へのサポートも行っている。エアデジタルでは理学療法士を採用しており、スポーツ60&スマートにおける運動の習慣化を実現するための指導も行っている。

 エアデジタル 理学療法士の高橋佑介氏は「スポーツ60&スマートでは休日にイベントを行うケースもあり、その流れで高齢者の方にもデジタルスポーツを体験してもらっています。これからの健康づくりにはデジタルスポーツの活用が有効であり、いわゆる加齢に伴って心身が衰える『フレイル』(虚弱)を予防する効果も期待できるでしょう。例えばスポーツ60&スマートでは、スキーやアーチェリーなど普段しない運動をデジタルスポーツで体験できます。こうした中強度の運動を習慣化することで、フレイルの予防が期待できるでしょう」と語る。

スポーツ60&スマートでは、プロジェクターとセンサーを活用したさまざまな種目の競技を体験できる。楽しみながら日常的に運動する習慣が身に付けられるのが魅力だ。

運動の習慣化を促し
地域コミュニティを醸成

 実際にスポーツ60&スマートでの運動の習慣化はどの程度実現できるのだろうか。前田氏は「ファミリー層は、利用者の半分ほどがリピーターです。半面、中高年層は毎週来る利用者もいますが、習慣化できている利用者のボリュームは少ない印象です。施設としてデジタルスポーツが中心となっていることがハードルになっている側面もあり、今後フィットネスマシンを中心とした整備を増やしてフィットネスに印象を寄せていくような取り組みも検討しています。高齢者層がリピーターとなることで、地域コミュニティとしての役割も期待できます」と話す。

 エアデジタルのデジタルスポーツ製品は、ほかの施設への導入がされているものもあるが、スポーツ60&スマートのような体験型施設の形態で展開している店舗はほかにない。一方で、地方のショッピングセンターなどからの引き合いは増えており、今後スポーツ60&スマートの形態をほかの施設に横展開していくことも検討している。エアデジタルの理学療法士 岡田光平氏は「高齢者のフレイル予防における運動は体操のようなコンテンツが多く、それ故に運動継続に至らないケースも少なくありません。エアデジタルが展開するデジタル運動習慣化施設ではそうした運動を継続させる楽しいコンテンツがそろっています。一方で、デジタルの優位性である運動中のセンシングデータ取得はしていないため、今後は運動中の脈拍数や血中酸素飽和濃度をモニタリングしながら運動できるようになる仕組みもづくり、既存のスポーツクラブとの差別化を図っていきます」と展望を語った。

Golf×Digital
没入感の高いシミュレーションゴルフには
投映するプロジェクターの質が重要に

センサーやプロジェクターを活用して、屋内でゴルフ練習を行うシミュレーションゴルフ。ゴルファーの増加に伴い需要が増えている一方で、ある問題から没入感が薄れてしまう施設も少なくなかった。そうした場合に見直したいのが、プロジェクターだ。

シミュレーション映像を
正しく投映するプロジェクター

(左)GTRealiser 土屋源人
(右)ベンキュージャパン 八代啓孝

 ゴルフの練習施設として、インドアゴルフ施設が増加傾向にある。船井総研の市場調査によると、インドアゴルフ施設は2019年から2023年にかけて476施設増加したという。半面、アウトドアゴルフ施設は同期間で121施設の減少傾向にある。こうした背景には、新規ゴルファーが増加している一方で、アウトドア練習場は維持費用が負担となることがある。一方で、コロナ禍により空きテナントが増加したことで、インドアゴルフ練習場が出店しやすい環境となったようだ。

 そうしたインドアゴルフ練習場への導入が進んでいるのが、シミュレーションゴルフだ。プロジェクターで投映されたインパクトスクリーンに向かって、ゴルフボールを打つシミュレーションゴルフは、天候に左右されず屋内で練習できることはもちろん、データによる可視化が行えるため利便性が高い。

 一方で、シミュレーションゴルフを導入したインドアゴルフ練習場では、ある課題を抱えているケースも少なくない。シミュレーションゴルフ向けのゴルフプロジェクターを提供しているベンキュージャパン ビジネス&マーケティング本部 営業部 部長 八代啓孝氏は、既存のゴルフプロジェクターの課題を次のように語る。「シミュレーションゴルフは、PCが内蔵されている計測機器と、それにインストールされているシミュレーション用ソフトウェア、カメラ(センサー)、プロジェクターとインパクトスクリーンといった機器で構成されています。一般的なシネマ用のスクリーンは16:9、16:10など基本的に横長です。一方でインドアゴルフのインパクトスクリーンは、4:3や5:4、10:9など縦長の設計であるケースが多いのです。縦横比が合わないスクリーンに対して、既存のプロジェクターで投映を行うと、幅に合わせて表示するため、映像の上下が正しく表示されません。またスペースにもよりますが、シミュレーションゴルフを行うインドアゴルフ施設は、プロジェクターの焦点距離を確保するための距離を確保することが難しいケースもあります」

没入感のあるゴルフ体験に
施設の設計からこだわる

 そうした課題を解消するのがベンキューのゴルフプロジェクターだ。同社ではシミュレーションゴルフ向けの短焦点プロジェクターを合計で4種類提供しているが、その中でも最もハイエンドなモデルが「LK936ST」だ。4K解像度と5,100lmの高い輝度により、没入感の高いシミュレーションゴルフを実現する。

 LK936STを導入し、シミュレーションゴルフに活用している施設の一つに「golfGT&Relaxsh」がある。golfGT&Relaxshは2023年4月に神田にオープンしたシミュレーションゴルフとパーソナルストレッチの複合施設だ。「当店はシミュレーションゴルフの1ブースの広さが魅力です。設計にもこだわっており、プロジェクターで投映した映像が白飛びしないようブースを黒く設計しています。一方で、オープン当初に施工業者から提案され、導入したプロジェクターでは映像の上下が切れてしまっていた状態でした。例えば空に向けて打ち上げても、上が黒く切れてしまっていると打った感覚と見えた風景にズレが生じてしまいます。リアリティのあるシミュレーションゴルフを実現する上では、プロジェクターで投映した映像の没入感が非常に重要であり、どうしても全画面で投映したいという思いがありました」と語るのは、golfGT&Relaxshを運営するGTRealiser 代表取締役社長 土屋源人氏。

 そうした中で土屋氏が知ったのがベンキュージャパンのゴルフプロジェクターの存在だ。同社では製品の無償貸し出しサービスを実施しており、最大2週間ユーザーに貸し出すことで、設置イメージを掴んでもらった上で導入することが可能だ。土屋氏も本貸し出しサービスを利用した上で、前述したような上下の映像の切れが発生しないことを確認した上、導入を決めた。

東京都千代田区の神田にあるgolfGT&Relaxshは24時間営業のインドアゴルフ練習場だ。広い空間で没入感の高いシミュレーションゴルフが楽しめる。その没入感を実現しているのが、ベンキューのハイエンドゴルフプロジェクターのLK936STだ。

色再現性の調整機能の高さで
ゴルフコースを施設に再現

golfGT&Relaxshではゴルフシミュレーション機器に「GOLF ZON」を採用。カメラセンサーによって実際の球質を可能な限り再現することに加え、AI診断によりレベルに応じた練習を可能にしている。ベンキューのゴルフプロジェクターであればGOLFZONが表示しているシミュレーション映像も、上下の切れなく表示可能だ。

「短焦点性能の高い当社のゴルフプロジェクターは、投映距離が短くても画角ぴったりに映像の投映が可能です。省スペースで設置が可能なことに加え、プレイヤーの影が映り込みにくい点も魅力です。また、プロジェクターには3LDC(液晶)方式とDLP方式の2種類がありますが、当社のプロジェクターはDLP方式を採用しています。DLP方式はパネルの経年劣化に強く、耐久性が高いのが特長です。golfGT&Relaxshは24時間営業ですので、3DLC方式のプロジェクターを使う場合は1年半ほどで黄ばみが出てくるでしょう。また、DLP方式は色再現性も高く、ゴルフ場の緑や空の青などを忠実に再現してくれます」と八代氏は同社ゴルフプロジェクターの魅力を語る。

 また、設置する際の調整機能の高さもポイントだという。golfGT&Relaxshが導入したLK936STには「レンズシフト」機能が搭載されており、垂直方向に最大60%、水平方向に最大23%シフトして取り付け位置を固定できる。「ゴルフの場合、プレイヤーが立つ位置の関係で右側にプロジェクターを設置することが多いのですが、その場合プロジェクターを中心からずらして設置することになります。レンズシフト機能を使えば取り付け位置を固定したまま、投映位置を適切に調整できるのです」と八代氏。また「角合わせ」機能も搭載し、台形補正機能では取り除ききれなかったゆがみも修整可能だ。

 土屋氏は店舗オーナーとしてうれしいポイントの一つとして、防塵設計を挙げる。ベンキュージャパンのレーザー光源プロジェクターは、密閉型のレーザーモジュールと密閉型高額エンジンを採用しており、内部への埃の侵入を防止している。これにより、長く使えることはもちろん、フィルターの定期メンテナンスも不要になっているという。「ベンキュージャパンのゴルフプロジェクターのほか、他社製のプロジェクターも使っているのですが、こちらは月に1回の清掃が必要です。しかしベンキューのプロジェクターは清掃の必要がありません。当店のようなインドア施設にとって、非常にメリットが大きいポイントです。今後、当店のゴルフプロジェクターは、全てベンキューの製品に統一していく予定です」と土屋氏は展望を語った。

AR×Sports
エナジーボールを撃ち合って対戦する
ARを活用した次世代スポーツ「HADO」

既存のフィジカルスポーツと最新のAR技術を組み合わせた新しいスポーツジャンル「テクノスポーツ」を提案しているmeleap。同社が提案しているその次世代スポーツが、ARを活用した「HADO」だ。

HMDとアームセンサーで
攻撃と防御を行う

 HADOは頭にヘッドマウントディスプレイ(HMD)、腕にアームセンサーを装着して、エナジーボールを撃ち合うスポーツだ。既存のスポーツで例えると、ドッジボールのようなイメージといえる。HMDとアームセンサーはいずれもiPhoneを使用しており、アームセンサーのiPhoneに内蔵されているジャイロを利用して、腕を突き出すとエナジーボールと呼ばれる玉を撃てるほか、下から上に腕を振り上げるとシールドを張ることができ、相手が打ち出したエナジーボールを防御できる仕組みだ。

 HADOが誕生したきっかけは、同社の代表取締役である福田浩士氏が子供の頃から抱いていた「(マンガのドラゴンボールに登場する)かめはめ波を撃ちたい」という夢だ。その夢を最新の技術で形にしたのがHADOであり、魔法が飛び交うアニメやゲームの世界のような空間を、ARで再現している。

「HADOは3人対3人で対戦するチームスポーツです。現在、日本を中心に世界40カ国に展開しており、『HADO WORLD CUP』という公式世界大会も実施されています。もともとはエナジーボールでモンスターを倒すゲームとして、遊園地などの施設に導入されていましたが、プレイヤーが横並びになって攻撃のアクションをしていると、待機中のプレイヤー同士でエナジーボールを撃ち合って遊び出してしまうケースがよくありました。そういった活用シーンから、プレイヤー同士でエナジーボールを撃ち合う仕組みをスポーツ化したのが、HADOです」と語るのは、HADOを展開するmeleapのLBE Japan Div. 事業部長 濱村智博氏。

東京都港区台場のアクアシティお台場内にあるHADO ARENA お台場店は、HADO ARENAのグローバル旗艦店だ。

パラメーターの調整で
性別や年齢を問わずに遊べる

HADOではHMDとアームセンサーを取り付け、エナジーボールやバリアをAR上で使いながら対戦する。

 HADOとこれまでのスポーツの最大の違いはARを活用している点にあるだろう。CGによるエナジーボールを撃ち合うため、物理的な接触がないのだ。ボールが当たったり、プレイヤー同士で身体的に接触したりがないため安全性が高い。また、プレイヤーは腕を動かしてエナジーボールを放ったり、シールドを張ったりするが、筋力量で攻撃力や防御力が変わることがないため、性別や年齢を問わないだけでなく、運動が苦手な人でも楽しめるのだという。

 そうしたプレイヤーの平等性を実現しているのが、アームセンサーのパラメーターカスタマイズだ。「スピード」「サイズ」「球数」「シールド」の四つのパラメーターに最大合計で10ポイントを振分けることで、プレイヤーに合った設定で対戦できる。例えばスピードに5ポイント割り振ることで攻撃型、シールドに5ポイント割り振ることで守備型のように、戦い方に合わせた設定ができるのだ。HADOは前述したように3人1組のチームで戦い、相手のライフ(ターゲット)にエナジーボールを当てて破壊すると1ポイント獲得し、80秒の制限時間の中でより多くのポイントを獲得したチームの勝利となる。そのためプレイヤーは、チームの中でのアタッカー、ディフェンダー、テクニッカーといったような役割を決めながら、パラメーターを調整して戦略を立てることが必要になる。

meleap
濱村智博

「シールドを使うディフェンダーであればその場から動かなくても防御できるので、運動が苦手な人でもチームに貢献できます。また、HADOは基本的に反復横跳びのような左右の動作で完結するため、運動神経の良し悪しがプレイに影響することはあまりありません。実際、HADOの世界大会の優勝チームには女性もいますし、年齢も性別も問わずにプレイできる点が強みと言えます」と濱村氏。

 HADOは前述したHMDとアームセンサーに加え、ARマーカーが印字されたパネル、スピーカーマイク、サーバーPC、ルーター、観戦用カメラ、モニターといった一式が必要になる。このHADO専用コートを完備し、専用のインストラクターが常駐している「HADO ARENA」が現在国内に7店舗あるほか、HADO ARENAより小規模なHADO専用施設として「HADO FIELD」が3店舗展開されている。また、教育現場やイベントでの活用も広がりつつある。

HADOのイメージカット。球がエナジーボールで、盾にしているのがバリアだ。身体的・物理的接触がないため安全性の高さも魅力といえる。

体育の授業に取り入れることで
子供たちの潜在能力を引き出す

 教育現場では、特別授業や修学旅行のイベントで実施されるケースのほか、部活動のようなスタイルで中長期的にHADOを教育活動に取り入れているケースもある。また体育の授業内で、バレーや卓球のようにHADOを競技として取り入れて実践した事例もあるという。濱村氏は「体育の授業で行う競技は、体力や技能差が出やすいのがネックです。その競技を経験したことがある子供や、運動が得意な子は楽しめますが、そうでない子供は楽しめないのです。また昨今、体育が苦手な子供が増えているというデータもあります。しかしHADOを体育の授業に取り入れると、そうした子供に大きな変化が現れました」と語る。

 具体的には、最初の授業ではほぼ棒立ちで動けなかった子供が、最終授業では積極的に動くようになるなど、体を動かすことに前向きになったのだという。この効果はバレーボールなど、HADO以外の競技でも継続し、「体育の授業が好きになった」といううれしい声があったという。HADOの授業では対戦の前にワークシートへの記入を行いながらチームメンバーで作戦会議を行うなど、活発なコミュニケーションが実現でき、協働的な学びにもつながる。また試合の様子はモニターに表示されるため、その様子を観戦しながら分析を行ったり、振り返りで共有したりすることで、その後の試合の陣形や姿勢に変化が起こるなど、チームで考えて工夫しながら子供たちの能力を伸ばしていく姿が見られたという。

 実際に体育でHADOを体験した生徒に実施した事後アンケートでは、95%の生徒が「HADOは面白かった」と回答した。また「HADOの特に良いところは?」という問いに対して、「性別に関係なく対戦できる」「仲間と交流できる」「運動が苦手でも楽しめる」「年齢に関係なく対戦できる」といった回答が多く寄せられ、全て70%以上となった。

 企業における社内・社外交流会といったイベントでも活用が進んでいるほか、応援/観戦を楽しむコンテンツとしても現在広がりを見せているHADO。今後の展望として濱村氏は「テクノロジーを使った新しいスポーツ市場で、サッカーや野球に並ぶような世界一のスポーツにしていきたいですね。そのためには、競技場をさらに増やしていくことや、教育市場での活用をさらに増やしていきます。また現在エナジーボールをカスタマイズできるような新機能を開発しており、さらに多くの場面で活用してもらえるよう、拡張を進めていきます」と展望を語った。

HADOの活用イメージ。上はNPCに対して攻撃をしている場面だ。下は3人対3人で戦う基本的なゲームスタイルで、プレイヤーがHMDから見ているARの光景を、モニターやプロジェクターなどで投映して閲覧もできる。