Future of Work

企業の成長の促進と従業員が充実感を得るための取り組み
日本HPが実施した2025年度事業説明会をリポートする。記事では、日本HPが掲げる2025年度事業方針「Future of Work」を推進するために、重点的に取り組む四つの項目を紹介する。

日本HPが2025年度の事業方針を発表
Future of Workを推進するための取り組み

1月16日、日本HPは2025年度事業説明会を実施した。日本HPは2025年度の事業方針として、「Future of Work」を掲げている。AIによってデバイスの管理や生産性を高める「AIを活用したITプラットフォーム」、AI PCを活用した「スマートテクノロジーとパーソナライズ体験」、Polyの技術をAI PCに盛り込むことによる「高いコラボレーション体験」を柱に、Future of Workを推進していくという。具体的にはどのような取り組みを行っていくのだろうか。今回はその内容を見ていこう。

優れたコンパニオンになるために
ハードとソフトでAIの技術を活用

 米HPが行った従業員と仕事との関係性を分析する調査「HPワークリレーションシップ・インデックス 2024」によると、仕事と健全な関係性を築けているナレッジワーカーの割合は28%と、2023年の結果とほぼ横ばいの低い結果が続いている。日本HPでは、ナレッジワーカーと仕事の関係を良好にするとともに、企業の成長を促すために、2025年度の事業方針として「Future of Work」を掲げた。Future of Workを日本で推進していくに当たり、四つの項目を重点的に取り組んでいく。

 一つ目が、AI PCだ。まずは法人向けAI PCとして、14インチノートPC「HP EliteBook X G1i 14 AI PC」と14インチノートPC「HP EliteBook X G1a 14 AI PC」が紹介された。HP EliteBook X G1i 14 AI PCは48TOPSのNPU性能を持つ「インテル Core Ultra プロセッサー(シリーズ2)」を、HP EliteBook X G1a 14 AI PCは55TOPSのNPU性能を持つ「AMD Ryzen PROプロセッサー」を搭載しており、高いAI処理性能を備えている。Web会議中の背景ぼかしやオートフレームといった処理にNPUを利用することで、CPUのパフォーマンスを確保でき、快適なWeb会議を実現可能だ。さらに高性能なWebカメラ「Poly Camera Pro」と豊富な補正機能を持つ「Poly Camera Proアプリ」を活用すれば、Web会議の相手に奇麗な映像を届けられる。

 また両モデルには、独自のAIアシスタントアプリ「HP AI Companion」と、端末のパフォーマンスをワークフローに合わせて自動で最適化するソフトウェア「HP Smart Sense」がプリインストールされている。HP AI Companionは、ChatGPT 4oのエンジンを活用した対話機能「Discover」、個人ファイルを読み込ませることで文書内容の分析やデータの比較、要約などを行える「Analyze」、PCの設定を最適化する「Perform」をワンストップで提供する。

 続いてワークステーションとして、モバイルワークステーション「HP ZBook Ultra G1a 14」とデスクトップワークステーション「HP Z2 Mini G1a」が紹介された。両モデルともにAMDの最新プロセッサー「AMD Ryzen AI MAX PROプロセッサー」を搭載しており、高いAI処理性能とグラフィック性能を備える。またHP Z2 Mini G1aは、幅約168×奥行き200×高さ86mmとコンパクトなサイズのため、設置場所を選ばないのも特長だ。

 最後に個人向けAIゲーミングPCとして16インチノートPC「OMEN MAX 16」が発表された。冷却システムの刷新によって、高負荷時でもパフォーマンスを維持する。また、最適なゲームパフォーマンスを実現するソフトウェア「OMEN AI」がプリインストールされている。ユーティリティーアプリ「OMEN Gaming Hub」に蓄積したデータと機械学習モデルにより、ゲーム内設定とFPS向上との相関関係を検出することで、最適な推奨設定をゲーム設定として保存可能だ。

 同社 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部 事業本部長 松浦 徹氏は、AI PCの今後の取り組みを以下のように語る。「AI PCは『パーソナルコンピューター』から『パーソナルコンパニオン』へと進化していきます。そうした中、一層役に立つ、一層信頼されたコンパニオンになるために、ハードウェアとソフトウェアの双方でAIを活用していきます」

日本HP
代表取締役
社長執行役員
岡戸伸樹
日本HP
執行役員
パーソナルシステムズ事業本部 事業本部長
松浦 徹
日本HP
ワークフォースソリューション事業本部
事業本部長
前田悦也
日本HP
人事総務本部
本部長
濱岡有希子

コンピューティング環境と
セキュリティの二つの領域に注力

 二つ目が、ソリューションだ。記者説明会では、日本HPが提供するソリューションのうち、「HP Workforce Experience Platform」(以下、WXP)と「HP Wolf Security」を中心としたソフトウェアの軸が紹介された。

 WXPは、クラウドベースの管理プラットフォームだ。提供開始は2025年春を予定している。PCやプリンターなどの稼働状況、パフォーマンスを可視化することで、機器の構成や入れ替えのタイミングを最適化する。

 HP Wolf Securityは、エンドポイントのセキュリティを確保する製品ブランドだ。同社 ワークフォースソリューション事業本部 事業本部長 前田悦也氏は、HP Wolf Securityの提供形態についてこう語る。「大企業・自治体向けのセキュリティソリューション『HP Wolf Enterprise Security』と中堅・中小規模企業向けの次世代アンチウイルス対策ソフト『HP Wolf Pro Security』。そして電源オフ、または通信がオフラインでも端末のロックやデータの消去が可能なMDMソリューション『HP Protect and Trace with Wolf Connect』の三つをラインアップしています。これらをお客さまの形態に合わせた形で提供しています」

 HP Wolf Enterprise Securityでは、小規模仮想マシンを用いてマルウェアといった脅威を封じ込める「HP Sure Click Enterprise」とHP Protect and Trace with Wolf Connectを提供している。さらに2025年春から、リモートアクセスを脅威から保護する「HP Sure Access Enterprise」とサプライチェーンセキュリティを提供する「HP Enterprise Security Edition」の提供開始を予定している。

 HP Wolf Pro Securityは、AIを活用したマルウェア検知機能と小規模仮想マシンを用いた隔離機能によって、エンドポイントの保護を実現する。国際的な第三者評価機関「AV TEST」によるテストで、高い認証基準を満たしていることを示す「TOP PRODUCT認証」を取得しており、高い信頼性を備えたソリューションだ。

 三つ目が、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。日本HPが持つデジタル印刷や3Dプリンターの技術を活用することで、印刷業界や製造業のDXを支援する。

 記者説明会ではデジタル印刷の活用事例として、KADOKAWAが紹介された。必要な本を、必要な人に、必要な時に届けることを目指した「出版製造流通DXプロジェクト」の推進を支援するために、KADOKAWAの所沢市拠点「ところざわサクラタウン」にデジタル印刷機を8台導入。それにより、100部からの小ロット印刷や、最短1日での短納期製造および配送を実現した。結果、販売機会の損失を減らし、返本率を10%削減。さらに廃棄の減少によって、利益率が向上しただけでなく、地球環境の保全にもつながっているという。

記者説明会にて発表された新製品。それぞれ、OMEN MAX 16(左)、HP ZBook Ultra G1a 14(中央)、HP EliteBook X G1i 14 Ai PC(右)。

従業員のキャリア支援やリスキルなど
日本HP社内における取り組みも推進

 四つ目が、日本HP社内におけるFuture of workの推進だ。自身がFuture of workの見本となれるように、社内の人事戦略を変革していくという。具体的な取り組みとして、従業員のキャリア支援、個を尊重する働き方の実現、リスキルを行っている。

 従業員のキャリア支援の取り組みとして、キャリア支援AIツール「キャリアハブ」を全社に導入した。キャリアハブは、これまでのキャリアを登録すると、それを踏まえた複数の社内のキャリアパスを提示するものだ。また個を尊重する働き方の実現に向けた取り組みとして、ハイブリッドワークの導入やワーケーションの利用を促進している。そしてリスキルとして、全社員を対象にしたAI基礎研修やリーダー研修を実施。そして製品やサービスについて高い知識と技術力を持つ「日本HPエバンジェリスト」制度を開始することで、専門性が高い人材がさらに活躍できる場を創設している。

 同社 人事総務本部 本部長 濱岡有希子氏は「こうした取り組みの基盤として、社員一人ひとりを尊重し、主体性を大切にする企業文化『HP Way』があります。今年、そして来年以降の事業戦略を力強く推進するために、創業から調整してきた企業文化の下で、これらの取り組みを高いレベルで推進していきます」と展望を語る。

 最後に同社 代表取締役 社長執行役員 岡戸伸樹氏は「昨今は経済環境の不透明性が高い一方で、AIやGIGA2.0など多くのビジネスチャンスがあります。今年は巳年です。蛇のように脱皮をして、一回りも二回りも大きくなれるように、果敢にリスクを取って、ビジネスチャンスを獲得していきます」と力強く語った。

AI&Hybrid Cloud

AI活用に向けたHPEの戦略と最新ソリューション
日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)が開催した年次イベント「HPE Discover More AI東京 2025」をリポートする。HPEのAI戦略を語る基調講演のほか、本イベントのプラチナスポンサーによるセッション、HPEの最新ソリューションを発表した記者説明会の様子を紹介する。

AI活用が市場競争力を決める時代での
HPEのビジネス戦略とソリューションとは

1月28日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は年次イベント「HPE Discover More AI東京 2025」を開催した。本イベントではHPEやパートナー企業による講演・展示を通して、各社のAI活用に向けた戦略と最新ソリューションが示された。本記事では基調講演の内容と共に、本イベント内で行われた記者説明会「ハイブリッドクラウド向けHPEソリューションに関する説明会」にて発表された生成AIの実装を支援するHPEのソリューションについて紹介していく。

独自の立場のAIパートナーとして
顧客のビジネス変革を支援

日本ヒューレット・パッカード
代表執行役員社長
望月弘一

 昨今のビジネス環境において、AIは必要不可欠なものになってきている。しかしまだ十分に活用できている企業は少ない。そうした中でAIのメリットを真に実現するために、包括的なAI戦略の探究を目指して開催されたものが、HPEの年次イベント「HPE Discover More AI東京 2025」だ。

 本イベントのあいさつにて、HPE 代表執行役員社長 望月弘一氏は、HPEのAI戦略をこう話す。「AIを使っていかに戦略を洗練させるかによって、市場における競争力が決まる時代が来ています。AIをより効果的に使い、その成果を最大化するためには、ハイブリッド環境に存在するデータをどう管理するかがとても重要です。当社はオンプレミスの価値を生かしながら、そこにクラウドの利便性も取り込んだ第三のプラットフォーム『HPE GreenLake』をどんどん紹介していきます。これによってお客さまのビジネス変革を少しでも支援し、さらにはITの側面から持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています」

ヒューレット・パッカードエンタープライズ
グローバルセールス
HPC&AI GTM
シニアバイスプレジデント
兼 ジェネラルマネージャー
スレッシュ・バブー

 望月氏に続いて、ヒューレット・パッカードエンタープライズ グローバルセールス HPC&AI GTM シニアバイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャー スレッシュ・バブー氏が登壇した。バブー氏は、ビジネスでのAI活用を支援するHPEの取り組みを次のように語る。「HPEはデータ効率、ソフトウェア効率、機器効率、エネルギー効率、リソース効率の包括的なアプローチで、AI戦略をサステナブルに加速しています。これら全てをまとめて提供できる企業は、おそらくHPE以外ないでしょう。当社はAIパートナーとして独自の立ち位置にいます。エッジでも、プライベートクラウドでも、ハイブリッドクラウドでも、お客さまがどんな道筋をたどろうと、当社はAIパートナーとしてサポートを提供可能です」

生成AIが活躍する中で打ち出す
プラチナスポンサーの戦略

 基調講演内では、プラチナスポンサーによるセッションも行われた。まず登壇したのは、エヌビディア エンタープライズ事業本部 事業本部長 井﨑武士氏だ。井﨑氏は、生成AIが活躍する時代のエヌビディアの取り組みを次のように話した。「当社とHPEさまで共同開発した生成AIプラットフォーム『HPE Private Cloud AI』を展開しています。こちらは生成AIを開発する方に向けて、Time to Valueを提供するサービスになっています。今後はAIが仕事を奪うのではなく、AIを使いこなす人間に仕事を奪われる時代になるでしょう。そこでHPE Private Cloud AIを使い、皆さまはAIを使いこなす側に立ってください」

 次はキオクシア SSD応用技術技師長 福田浩一氏が登壇した。福田氏は、生成AI市場の発展に伴うSSDの役割についてこう語る。「高価なGPUの稼働率を最大化し、省電力・省スペース・大容量を両立するために、高速SSDや大容量SSDが求められています。当社はさらに市場が拡大していく推論やRAGソリューションの発展に向けて、SSDを活用したソフトウェア技術『KIOXIA AiSAQ』を発表しました。今後も生成AI市場で求められる高速・大容量SSDの開発を続け、生成AI市場全体の発展をサポートしていきます」

 プラチナスポンサーセッションの最後に登壇したのは、インテル 技術本部 本部長 町田奈穂氏だ。町田氏は、インテルのAI戦略を次のように説明した。「当社は“AI Everywhere”という戦略に取り組んでいます。エッジからデータセンターに至るまで、全ての製品にAI処理機能を実装しているのです。例えばAI PCでは、AIを処理するためにNPUを搭載したプロセッサー『インテル Core Ultra プロセッサー』を発表しています。ノートPC向けにもデスクトップPC向けにも提供しており、今後は法人向け製品にも展開するため、ぜひご期待ください」

 基調講演の最後では、望月氏と産業技術総合研究所 執行役員 兼 情報・人間工学領域長 田中良夫氏の対談が行われた。大規模AIクラウド計算システム「ABCI 3.0」の構築に際したHPEの技術支援について語り、田中氏は「ABCI 3.0の調達に当たり、産業技術総合研究所では性能、ファシリティ、導入スケジュールに関する要件を提示しました。HPEさまは特に性能で当社の要件を超える提案をしたため、そこを高く評価しています。導入スケジュールについても、大規模なシステムを短期間で運用開始まで持っていけたのは、HPEさまのエンジニアリングチームが持つ高い技術力のおかげだと思っています」とHPEを評価した。

日本ヒューレット・パッカード
執行役員
ハイブリッドソリューションズ事業統括本部長
吉岡智司
日本ヒューレット・パッカード
ハイブリッドソリューションズ事業統括本部
GreenLakeソリューションビジネス本部
ビジネス開発部
シニアカテゴリーマネージャー
寺倉貴浩
日本ヒューレット・パッカード
ハイブリッドソリューションズ事業統括本部
GreenLakeソリューションビジネス本部
ビジネス開発部
部長
小川大地

より簡単なAI開発をサポートする
HPEの新ソリューション

 HPE Discover More AI東京 2025内では、講演や展示に加えて「ハイブリッドクラウド向けHPEソリューションに関する説明会」が開催された。本説明会では、HPE Private Cloud AIとVMwareベースの仮想化環境の統合・移行に対応する「HPE VM Essentials Software」の提供を日本市場で開始することが発表された。HPE 執行役員 ハイブリッドソリューションズ事業統括本部長 吉岡智司氏は、これらの製品を提供する趣旨を以下のように説明する。「HPEは、ハイブリッドクラウド環境をいかに簡単に活用できるかをテーマに製品開発をしてきました。AIはハイブリッドクラウドを前提にした環境でないと開発が進みません。そのため、これまで推進してきたハイブリッドクラウドをそのまま生かし、お客さまがより簡単にAI開発に突き進める環境を用意することが今回の趣旨です」

 HPE Private Cloud AIは、ターンキー型のAIソリューションだ。AIアプリケーションの容易な導入を支援し、価値実現までの時間短縮に寄与する。HPE ハイブリッドソリューションズ事業統括本部 GreenLakeソリューションビジネス本部 ビジネス開発部 シニアカテゴリーマネージャー 寺倉貴浩氏は「商用AIサービスで生成AIを本番業務に適用しようとすると、セキュリティ懸念や利用拡大時のコスト増加といった課題が発生します。一方オンプレ型で適用しようとすると、高度な技術力を持つエンジニアが必要になります。そこで、エンタープライズでAIを活用するに当たってクラウドの利便性とオンプレITの制御性の両立が必要と考え、NVIDIAとの共同開発に至りました」と開発の背景を語る。

 HPE VM Essentials Softwareは、単一のインターフェースからKVMベースとVMwareベース両方の仮想マシンを、プロビジョニングおよび管理可能な仮想化ソフトウェアソリューションだ。仮想化環境の管理を簡素化し、コストの削減に貢献する。HPE ハイブリッドソリューションズ事業統括本部 GreenLakeソリューションビジネス本部 ビジネス開発部 部長 小川大地氏は「本製品は『多くのお客さまが必要十分とされる機能を、満足される価格で』をキーコンセプトに日本のお客さまへ届けていきます」と意気込みを語った。

本イベントでは、HPEやパートナー企業のAIソリューションを紹介する展示コーナーも設けられた。

AI Assistant

「Acrobat AIアシスタント」の日本語版が登場
アドビは2月12日から、同社の「Adobe Acrobat」などに搭載する生成AI機能「Acrobat AIアシスタント」の日本語版の一般提供をスタートした。「情報が多すぎる」現代のビジネスパーソンの業務をサポートする、その機能を紹介していく。

知的労働者の約80%が「情報が多すぎる」と回答
Acrobat AIアシスタントがその業務をサポート

アドビは、同社が提供するPDF作成、編集ツール「Adobe Acrobat」(以下、Acrobat)などに搭載する生成AI機能「Acrobat AIアシスタント」の日本語版を開発し、2月12日から一般提供をスタートした。それに先駆けて、報道関係者向けにオンラインによる記者説明会が開催された。本記事ではその説明会の様子をリポートするとともに、情報資産が増大する中での生成AI活用のメリットを紹介していく。

膨大なPDFファイルを
迅速に解析し要約

アドビ
Document Cloud
シニアプロダクトマーケティングマネージャー
立川太郎

 アドビが提供するAcrobat AIアシスタントは、ドキュメントに関する要約や質問への回答などが行える生成AIアシスタントだ。同社が提供しているAcrobatおよびPDF閲覧ツール「Adobe Acrobat Reader」(以下、Reader)のデスクトップ版、Webアプリ版、モバイル版アプリ、Webブラウザー拡張機能で利用できる。

 AIアシスタントの必要性について、アドビ Document Cloud シニアプロダクトマーケティングマネージャー 立川太郎氏は「世界中の知的労働者の80%は『情報が多すぎる』と感じています。特定の情報や専門知識の探索に費やす平均時間は1週間のうち8.2時間と、非常に多くの時間をかけているそうです。一方で、これらの悩みに対して約85%の方が『デジタル技術によって、作業の高速化やスマート化を実現させたい』と回答しています。これらの結果から見ても分かるように、デジタル技術によってより業務を効率化したいというニーズが顕在化しています」と語る。

 こうしたニーズに応えるAcrobat AIアシスタントは、文書を素早く解析して要約を生成したり、チャット形式で文書に質問しながら回答を得られたりする機能だ。説明会では実際にデモも行われた。

 Acrobat AIアシスタントはAcrobatの右上部分に表示される「AIアシスタント」のボタンから起動できる。PDFを開いた状態でこのAIアシスタントボタンを押すと、Acrobat AIアシスタントが起動して文書の処理を行う。デモでは立川氏がチョコレート業界のビジネスレポートをAcrobat AIアシスタントに読み込ませてその内容を要約したり、「生成要約」という機能を用いて、より具体的なセクションごとに分かれた細かい要約を出せたりすることを紹介した。もちろん要約だけでなく、文書の内容をQ&A方式で回答してくれる。

 デモでは立川氏が「『五つの重要なポイントの箇条書きを作成』と入力すれば、読み込ませたPDFデータの中から五つのポイントを紹介してくれます。また、回答された内容はAcrobat AIアシスタントが読み込んだPDFを基にしているので、回答の横にある数字をクリックすると、どこを参照して答えた内容かという情報ソースを示してくれます」と実際にAcrobat上でAcrobat AI アシスタントを操作し、PDFデータとAcrobat AI アシスタントとのシームレスな連携を紹介した。

Acrobat AIアシスタントはAcrobatの右上にあるボタンを押すと起動し、PDFファイルを解析して内容を要約したりしてくれる。画面は説明会でのデモの様子。

複数ファイルを参照し
より精度の高い回答を生成

 Acrobat AIアシスタントが読み込めるのは一つのPDFファイルだけではない。複数のPDFファイルを選択して読み込ませれば、それらのデータも参照した回答をしてくれる。「例えばプロジェクトでは、複数の資料を参照する必要があるケースもあります。Acrobat AIアシスタントは最大10ファイルまでをアップロードできるため、複数ファイルから情報を参照して対話形式で内容を教えてくれます。PDFファイルだけでなく、Wordファイルやテキストファイル、PowerPointファイルなどさまざまなデータ形式に対応しているため、逐次PDFファイルに変換するような手間は必要ありません」と語る。実際に複数のファイルを読み込ませた状態でAcrobat AIアシスタントに質問してみると、追加でアップロードしたデータも踏まえた内容で回答がされ、引用元も正しく示されていた。

 この複数のファイルを読み込む機能を活用すれば、契約書などの書類の差分比較をすることも可能だ。立川氏は広告出演の契約書を二つ読み込ませ、その内容の差異をAcrobat AIアシスタントに指摘させた。前述したように引用元も示してくれるため、実施の契約書を確認して本当に差異があるのか、人間の目で確認することも可能だ。「最終的にユーザー自身の目で抜け漏れがないかを確認したり、情報が正しいかを確認したりする必要はありますが、かなりの作業をAcrobat AIアシスタントが担ってくれるようになりますので、契約書の差分確認のような作業は大幅に時間短縮できるでしょう」と語った。

 Acrobat AIアシスタントはアドビが独自に自社開発しており、ドキュメントに特化したアプローチをとっている。そのため、立川氏が紹介したような引用元の表示や、PDFの構造を理解した上で回答を出すことが可能だ。

Acrobatのスマホアプリ上で表示されるAcrobat AIアシスタントのアイコンをクリックすると、PDFデータの要約が表示される。
PDFから重要なポイントを解析して教えてくれる。
モバイル版では音声での応答にも対応する。
音声読み上げの機能も搭載する。

ビジネス利用に適した
セキュリティも担保

 Acrobat AIアシスタントはAcrobatやReaderの中で動くため、別途ほかのAIアシスタントのアプリを動かす必要がない点も利点として大きい。資料とAcrobat AIアシスタントをシームレスに行き来して該当箇所の確認が可能になるのだ。

 セキュリティも配慮されている。Acrobat AIアシスタントを使ってアップロードされた文章は、このAIアシスタントの学習に使われることはない。そのためビジネス文書なども安心してAcrobat AIアシスタントを利用することが可能だ。

 Acrobat AIアシスタントは既存のAdobe製品とは別の料金体系となっており、月々プランで980円/月(税込)、年間プラン(月々払い)で680円/月(税込)、年間プラン(一括払い)で8,080円/年(税込)だ。製品内で無料のお試しの機能も提供する。

 同社のAcrobat AIアシスタントについて立川氏は「このAcrobat AIアシスタントは基本的にサードパーティ製の大規模言語モデル(LLM)を中立的に採用しています。最適なLLMを厳選して統合しているだけでなく、協業ベンダーにはアドビの顧客データを使ったLLMのトレーニングを禁止しています。またLLMのみに頼っているわけではなく、その上にアドビのAI技術がレイヤーとして乗っています。例えば先ほど紹介したような引用表示機能や、ドキュメントの構文を読み解くものといった、アドビならではの技術がLLMのレイヤーの上に乗っています。さらにその上のレイヤーとして、誹謗中傷や有害なコンテンツをフィルタリングするためのチェック機能ももうけているほか、当社のセキュリティとプライバシーのポリシーに基づき、これらの文書の文字情報が外部に漏れないためのセキュリティを担保しています」と同社独自のAIに対するアプローチを紹介した。

 今後アドビでは、文章の要約のみならず、文章生成やレビュー作業のAI支援など、デジタルドキュメント変革に向けて、AIアシスタントの活躍の場を広げていく方針だ。

Data Center

日本のクラウドインフラをはじめとした継続投資方針を発表
アマゾン ウェブ サービス ジャパンは1月31日に、日本のクラウドインフラへの継続投資方針と新たな取り組みについての発表を行った。2026年の稼働を目指し、国内に新たなデータセンターを建設しているという。持続可能性も重視した同社の取り組みを見ていこう。

「日本のために 社会のために」をスローガンに掲げ
クラウドインフラと持続可能性、教育などに投資

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は1月31日、2024年11月に同社の代表執行役員社長に就任した白幡晶彦氏が登壇し、日本のクラウドインフラへの継続投資方針と新たな取り組みについて発表した。冒頭に白幡氏は「『日本のために 社会のために』というメッセージを、私の最初の所信表明としたい」と語り、日本への投資はデジタル化の促進への貢献だけではなく、持続可能性にも重点を置いていることをアピールした。

2026年の稼働を目指して
新たなデータセンターを建設中

 昨年1月にAWSジャパンは2027年までに東京と大阪のクラウドインフラに対して2兆2,600億円を投資する計画を発表した。当時、同社が公開したレポートの推計によると、その投資計画は日本の国内総生産(GDP)に5兆5,700億円貢献し、国内で年間平均30,500人以上の雇用を支えるとアピールした。

 そして同社は2011年から2022年にかけてすでに日本で1兆5,100億円を投資しており、国内でのクラウドインフラへの総投資額は、2027年までに約3兆7,700 億円に達する見込みだと説明した。そして今年1月31日の発表で白幡氏は「2027年までの日本のクラウドインフラへの投資計画を継続する」と強調した。

 同社は2011年に東京リージョンを、2021年には大阪リージョンを開設し、国内に二つのデータセンター群を擁している。これについて白幡氏は「日本でのクラウドインフラへの投資は日本のお客さまの声で実現したものです」と説明する。

 AWSが日本のクラウドインフラへの投資計画を継続する理由として、総務省が昨年公表した通信情報白書で示されている日本のクラウドサービスの需要が前年比25%を超える勢いで伸びていることを示し、その要因としてDXの推進が引き続き加速していることと、それに伴って生成AIの活用が拡大していることを挙げた。

 白幡氏は投資の具体的な一例として、新しいデータセンターについて説明した。ロケーションについてはセキュリティの観点から公開できないとした上で、同社は現在、2026年の稼働を目指して国内に新たなデータセンターを建設中だという。

発表会場での質疑に答えるAWSジャパン 白幡氏(右)と、AWSの最新技術動向について話をしたAWSジャパン 常務執行役員技術統括本部長 巨勢泰宏氏(左)。

低炭素型のコンクリートを使用
持続可能性を重視した取り組みを推進

 データセンターを新設することに加えて、建設材料に環境配慮型の材料が使われることも発表された。白幡氏は「(新設するデータセンターでは)低炭素型のコンクリートを使用するという建設材料への投資から、電源設備や冷却設備、再生可能エネルギーへの投資まで、データセンターの建築においてエンボディドカーボン(建物の生涯を通じて排出される全ての温室効果ガスの総和)の削減に取り組みます。ただしこの取り組みは非常に複雑であり、挑戦的なものですが、日本におけるコンクリートの脱炭素化の加速に微力ながら貢献していきたいと考えています」と説明した。

 また既存の東京リージョンおよび大阪リージョンについても「国内の二つのリージョンのデータセンターの拡充を継続するに当たり、サプライチェーン全体と連携して環境に配慮したデータセンターの設計と建設に向けた取り組みを進めていきます」と説明を続けた。

 さらにAWSが独自開発した半導体の活用も消費電力の低減に大きく貢献していると主張する。

 そして白幡氏は「データセンターに関わるあらゆる要素が持続可能性に最適化されているAWSのクラウドサービスは、お客さまのサステナビリティ目標の達成という観点においても、その実現に大きく貢献できます。AWSがアクセンチュアに依頼して行った調査によると、AWSのクラウドサービスはオンプレミスの一般的なケースと比較して最大4.1倍の効率が見込めます。またAWSで計算負荷の高いワークロードを実行した場合、ユーザーは関連する温室効果ガス(GHG)の排出量を最大99%削減することが可能だという調査結果が出ています」と強調する。

 電力効率を高めたデータセンターを建設する一方で、AWSは2020年から5年間、継続して再生可能エネルギーの購入においても世界トップの企業だとアピールする。AWSは世界中で600以上の風力や太陽光といった再生可能エネルギーによる発電プロジェクトに投資しているという。これらが生成する電力の総量は日本の一般家庭の2,100万世帯の電力需要を賄える規模に相当するという。

金融や社会インフラの重要システムの
クラウド移行が非常に増えている

「日本のために 社会のために」というメッセージを最初の所信表明としたいと語るAWSジャパン 代表執行役員社長 白幡晶彦氏。

 持続可能性への取り組みに関してAWSは事業で利用する量よりも多くの水を社会に還元する「ウォーターポジティブ」という考え方を推進しており、2030年までにウォーターポジティブを達成する取り組みをグローバルで進めている。

 この取り組みの一つとして東京リージョンのデータセンターに水を供給する水道事業者の水源地の一部である山梨県丹波山村とAmazonが協定を結び、今後10年にわたり水源涵養プロジェクトを実施することを発表した。

 また教育分野にも投資を続けており、2023年9月に千葉県印西市の小学校にSTEAM教育の施設「Think Big Space」を開設したほか、2024年11月には神奈川県相模原市の女子中学生を対象にした「Girls’ Tech Day」を開催した。

 さらに2025年前半に相模原市の中学校においてThink Big Spaceを新たに開設する予定だという。

 今後の日本でのビジネスへの展望について白幡氏は「銀行の勘定系システムのような、どちらかというとクラウド移行にためらいを感じていた企業や、社会インフラを支えるシステムのクラウド移行が非常に増えてきています。こうした動きはAWSのクラウドの実績が増えてきたことと、(AWSの取り組みによって)クラウドに対する理解が進んだことが安心につながった結果だと思います。今後10年間を見据えて、お客さまの大事な基幹システムを預かる責任を感じ、信頼できる会社にならなければならないと実感しています。一方で大企業病にならず、スタートアップの良さを持ち続けることもAWSとして大事だと思っています。スタートアップの皆さんとテクノロジーが大好きな人たちが、新しいテクノロジーを活用して新しいことにチャレンジできるビジネスを追求していきたいですね」と締めくくった。

GIGA2.0

GIGAスクール2.0に向けた統合パッケージを提供
レノボ・ジャパンはGIGAスクール2.0に向けた取り組みに関する記者説明会を2月6日に開催した。本説明会では同社が児童生徒1人1台用の端末として新たに提供する3機種と、それらの利活用を促す統合パッケージの紹介が行われた。

端末・教材・サポートが一体となった
GIGA2.0向けの「Lenovo GIGA School Edition」

レノボ・ジャパンは2月6日に、同社のGIGAスクール2.0に向けた取り組みに関する記者説明会を実施した。説明会ではレノボ・ジャパンのGIGAスクール構想第1期で実施した教育現場への支援が紹介された後、同社がGIGAスクール2.0(GIGA2.0)と呼ぶこれからのGIGAスクール構想第2期に向けた新しいWindows PCとChromebook、そしてこれらの端末の利活用を促進するソリューションが発表された。

GIGA1.0で得た経験と課題を
統合パッケージに反映

レノボ・ジャパン
執行役員副社長
安田 稔

 ——Smarter technology for all Students〜すべての子供たちにテクノロジーの恩恵を届ける〜。

 記者説明会で登壇したレノボ・ジャパン 執行役員副社長 安田 稔氏は上記の言葉を同社の教育へ向けたスローガンであると紹介した後、これまでの教育市場における取り組みが紹介された。

 レノボ・ジャパンでは2017年から教育市場に特化したデバイスを提供し続けると同時に、小中高に対応したプログラミング教材「みんなでプログラミング」や、不登校支援メタバース「Lenovo Metaverse School」といった教育をサポートするコンテンツの提供も行ってきた。

 安田氏は「4年前のGIGAスクール1.0では非常に多くの台数を出荷させていただき、ナンバーワンのシェアを獲得できました。一方で、それによるさまざまな経験から、もの作りへの課題も見えてきました。そこで当社ではこれらの経験を生かし、GIGA2.0に向けたデバイスとソリューションの統合パッケージ『Lenovo GIGA School Edition』に反映していきます」と語った。

 安田氏が語ったデバイスとソリューションの統合パッケージであるLenovo GIGA School Editionについて詳しく語ったのはレノボ・ジャパン 教育ビジネス開発部 部長 外山竜次氏。

 レノボ・ジャパンではGIGA2.0向けラインアップとして、デタッチャブルタイプのChromebook「Lenovo Duet GIGA School Edition」、コンバーチブルタイプのChromebook「Lenovo 500e GIGA School Edition」、コンバーチブルタイプのWindows PC「Lenovo 300w GIGA School Edition」の3モデルを提供する。

学校だからこその故障リスクを
ハード設計の見直しで防ぐ

 外山氏はこの3モデルの開発について「GIGA1.0で顕在化した課題を解決する要素を盛り込みました」と語る。その課題は三つある。

 一つ目は故障だ。外山氏は「子供が使用する端末ということで、私たちも前回想定しきれなかった故障のポイントがありました。例えば小学校の児童が鉛筆をUSBポートに差して遊んでいたケースがあるのですが、鉛筆の芯は黒鉛なので通電性があります。そのため折れて内部に入り込んでしまうと過電流が流れて、端末で発煙事故が起こってしまう、という想定できていなかったインシデントが起こりました。そこで今回ラインアップした3モデルでは、このような事故を防止する設計を実装しています」と語る。

 具体的には、「システムヒューズプロテクション」というシステム内で過電圧や過電流が発生した場合にシステムをシャットダウンする設計や、「ケーブルヒューズプロテクション」というケーブルでもシステムを保護する設計を採用している。加えて、USB端子に異物が入って異常な電流が発生したときにシステムをシャットダウンする過大電流保護の機能も搭載し、GIGA1.0で発生した事故を未然に防止する。

 そのほかにもGIGA用途を想定した専用のシステム設計を採用しており、米軍調達基準「MIL-STD-810H」に加えて、同社独自の教育向け製品用の堅牢性基準を満たすテスト「Lenovo DuraSpec」も実施した。Lenovo DuraSpecでは例えば76cmの高さからコンクリートやスチール板に落下させ、テスト後に全ての機能が動作し、筐体に破損がないかの検証を行った。このほかにも持ち運び時の衝撃や内部コネクタへの耐久性、LCDガラスの耐久性や曲げ耐性といった、児童生徒の活用を想定した独自の堅牢性・信頼性のテストを実施し、教育現場で使用する端末としての堅牢性を担保してる。

 二つ目は端末のスペック不足だ。「Windowsの起動の遅さなどがフォーカスされましたが、特にGIGA1.0の後半となるとChromebookも含め、マルチタスクの利用下におけるパフォーマンス低下が問題になりました」と外山氏。2027年度から全国学力調査がCBT(Computer Based Testing)に全面移行するほか、デジタル教科書の活用、持ち帰り学習なども進んでいくことが想定される。そうした幅広い用途での端末活用を行う上では、性能の高さが重視される。

 レノボ・ジャパンが今回ラインアップした3機種の内、Lenovo Duet GIGA School EditionではMediaTek Kompanio 838を、Lenovo 500e GIGA School EditionとLenovo 300w GIGA School Editionではインテル プロセッサー N100をそれぞれCPUに採用している。

 外山氏は「GIGA1.0と同様に、文部科学省は『学習者用コンピュータ最低スペック基準』を定めており、CPUについては『Intel Celeron Processor N4500と同等以上』と記載されています。今回当社がラインアップした3機種は、この基準のワンランク上のCPUを採用しています。ストレージ、メモリー、カメラ性能も充実させることで(端末更新時期となる)“5年後まで安心して使える”ことを目指しています」と語る。

活用が増えることで懸念するバッテリーの劣化に対応するため高い耐久性を持つバッテリーを採用。ユーザー(教員など)の取り外しにも対応し、劣化時の交換も行いやすくした。
今回新たにラインアップしたGIGA2.0向けの3機種。

予備機運用もサポートし
学びを止めない仕組みを作る

レノボ・ジャパン
教育ビジネス開発部
部長
外山竜次

 三つ目の課題として、利活用の格差がある。GIGA1.0においては、そもそも教員がPCに詳しくなく、使うことが難しかったり、学習者用デジタル教科書などがなく授業に生かせなかったりといった背景があった。

 その解決策としてレノボ・ジャパンでは、利活用を促進するデバイスやソリューションを提案している。具体的には、ポプラ社の電子図書館サービス「Yomokka!」(よもっか!)や新学社の教科書に対応したデジタルドリル教材「単元まとめチェック」「まなびボックス+」、みんなでプログラミングなどの複数の教材や、感染症流行による学級閉鎖のようなシーンにも使えるメタバース環境「Education Metaverse」のほか、予備機運用サービス、端末リサイクルサービスなどもバンドルされている。

 特に予備機に関しては、文部科学省の端末整備予算にも含まれている一方で、その運用管理を学校現場で行うのは難しい問題だ。「予備機を購入しても、数年放置するとバッテリーが劣化してしまい、いざというときに起動しないというトラブルも懸念されます。当社の予備機運用サービスでは今回のGIGA2.0で整備される予備機15%の内、必要な台数以外は当社が預かり、必要なときに学校から連絡を受けて回数無制限、送料無償で学校にお届けします」と外山氏はサービス内容を紹介する。レノボ・ジャパン側で預かっている期間は、定期的にバッテリーのチャージを行うなどしてバッテリーの劣化がないように運用を行うという。本サービスの統括・管理はレノボ・ジャパンのパートナーである大日本印刷が行い、配送業務を日本郵便、佐川急便が担う予定だ。

 またGIGA2.0では、タッチペンの購入が必須とされている。デジタル教科書などへの書き込みに活用する際に必要となるためだ。一方でGIGA1.0でタッチペンを整備した自治体からは、紛失などのトラブルが発生しており、高価なタッチペンでは再購入が難しいという懸念がある。またバッテリーが内蔵されていることから廃棄時の取り扱いに注意が必要となる。

 そこでレノボ・ジャパンでは、安全で低コストに使えるタッチペンとして1本あたり約600円で購入可能なハードペンシルを提供する。対応機種はLenovo 500e Chromebook Gen 4sとLenovo 300w Yoga Gen 4だ。先端が鉛筆に近い黒鉛を固めたものでできており、バッテリー不要で利用できるという。また、これら2機種の端末側には「ペンシルタッチ」機能を搭載しており、鉛筆(2B以上)でもタッチペンと同等の描画が可能になる。

 外山氏は「端末を入れて終わりではなく、活用されないと意味がありません。5年間の使用を想定した堅牢な端末を提案すると同時に、端末導入後のランニングコストを少しでも抑えられるパッケージとしてLenovo GIGA School Editionを準備しています」と語った。