ナラティブ
ナラティブ(narrative)は、物語や話術、語りという意味を持つ。もともと文学作品の解釈に使われていたが、現在では医療や臨床心理、教育現場など、様々な分野で活用されている。ビジネスシーンでは「ナラティブマーケティング」「ナラティブアプローチ」といった用語で使われ、消費者や生活者の考え方や価値観を重視し、問題解決に役立てるアプローチのことを指す。
ナラティブに似た言葉に「ストーリー」がある。ナラティブは語り手自身が主人公で、物語に終わりが存在しない。一方、ストーリーは物語の筋書きや内容を示す言葉で、起承転結があり、ナラティブのような語り手や聞き手が介在しない。
ビジネスシーンにおけるナラティブの活用として、ナラティブマーケティングが挙げられる。ナラティブマーケティングとは、消費者それぞれの物語にアプローチしたマーケティング手法のこと。
従来のマーケティングは、企業が商品やサービスを一方的に勧め、ユーザーが購入するかどうかを判断していた。現在では、消費者の価値観が多様化し、企業から勧められただけでは購買行動に至らなくなった。一方通行のマーケティングでは、消費者の心は動かない。消費者の自発的な体験や思いに基づいた物語にアプローチすることが重要だ。
ナラティブマーケティングは、消費者を主人公としたナラティブな視点で、価値観に合った商品やサービスを勧めることで、消費者の共感・信頼を得られやすくなる。企業は消費者の声に耳を傾け、消費者のニーズを把握することで、より満足度の高い商品やサービスが生み出せる。結果として売り上げはアップし、リピート率の向上にもつながる。
ナラティブには「ナラティブアプローチ」という手法もある。例えば、上司と部下、従業員と企業のカウンセラーといった関係で使用される。相手(部下、相談者、顧客など)と対話し、その物語や思いを重視することで、問題解決に役立てる。ナラティブアプローチによって自分自身と向き合い、やりがいや生きがいを見出すことで、ウェルビーイング向上につながる可能性もある。