ジャイアン鈴木の「仕事が捗るガジェット」 - 第37回
新移動通信システム「5G」によってスマートワークがどのように変わるのか?
発売された5Gスマホを使ってみた
ドコモは3月25日、auは3月26日、ソフトバンクは3月27日に5Gの商用サービスを開始、対応端末を発売しました。しかし現時点で5Gスマホを購入した方は少数派、そして実際に5Gで通信した人はさらに少ないと思います。今回の記事ではそもそも5Gとはなんなのか、スマートワークという領域で5Gがどのように役立つのか解説していきましょう。
文/ジャイアン鈴木
そもそも5Gとはなにか?
「5G」は「5th Generation」の略で移動通信システムの世代を指しています。たとえばドコモでは、1979年に音声をアナログ電波で送る「1G」、1993年にデジタル方式を採用した「2G」、2001年にW-CDMA方式を採用した「3G」、2010年にLTEを採用した「3.9G」、2015年に下り最大225Mbpsを実現した「4G」という具合に進化してきました。
ざっくりとこれまでの歴史を振り返ると、2Gでデータ通信が可能となり、2G以降は通信速度の高速化によって用途がさまざまに広がっていったと言えるでしょう。
5Gには、高速・大容量、低遅延、多数端末接続という特徴があります。わかりやすいところで通信速度にスポットを当てると、5Gサービス開始時点でドコモは下り最大3.4Gbps/上り最大182Mbps、auは下り最大3.4Gbps/上り最大183Mbps、ソフトバンクは下り最大2.0Gbps/上り最大103Mbpsの通信速度(いずれも理論値)を謳っています。 ただし、より高速な通信が可能となる「ミリ波」に対応した端末がドコモ、auから5月下旬以降に発売され、ドコモは下り最大4.1Gbps/上り最大480Mbps、auは下り最大4.1Gbps/上り最大481Mbpsに通信速度が引き上げられる予定です。また、将来的に目指す要求条件としては、下り最大20Gbps、上り最大10Gbpsが定められています。
5Gでなにが変わる?
前述の通り、5Gには高速・大容量、低遅延、多数端末接続という特徴があります。高速・大容量でわかりやすい恩恵は、高解像度な360度映像やマルチアングル映像などのストリーミング再生が可能になることです。VRデバイスは将来的には実際の光景を見ているように錯覚するほどの高解像度ディスプレイを搭載するでしょう。当然そのときの360度映像のデータ量は膨大なものとなります。超高解像度360度映像を、5Gならワイヤレスで鑑賞できるわけです。
低遅延は、無線区間は無線の最小送信単位を短くすることで、有線区間はより基地局に近い場所にサーバーを設置することで実現しています。この低遅延という特性を活かした用途が遠隔地での機器制御。近い将来、熟練した医師がロボットを操作して遠隔医療を行なう未来が現実するはずです。
多数端末接続については段階的に同時接続数を増やすことが予定されていますが、最終的には100万端末/平方キロメートルが目標とされています。現代のIoTデバイスはWi-Fi経由で接続されるのが一般的ですが、5G時代にはデジタル家電、白物家電、センサーそれぞれに5G通信機能が搭載されるかもしれません。
ビジネス分野での5Gに対する期待
ビジネス、特にリモートワークにおける5G最大の恩恵はやはり通信速度です。単純なところでは、ダウンロードやアップロードが飛躍的に高速化されるので、大きなデータのやり取りがスムーズに行なえるようになります。自宅から社内ネットワークシステムを利用する際にも、体感速度が大幅に向上するはずです。機密性を確保するため、クライアントPCにはいっさいデータを保存しないという「シンクライアント」が主流になるかもしれません。
もうひとつの恩恵が、利用可能データ量の拡大です。現在ドコモでは毎月の利用可能データ量が100GBのところ、キャンペーン期間中は無制限での利用が可能となっています。もちろん4Gエリアでもデータ量無制限は適用されます。外出先でモバイルデータ通信を無制限に利用できるというのはインパクトがありますよね。
そして、これはいまのご時世だからこそのメリットかもしれませんが、現在、筆者宅の光回線は夜になると下り通信速度が10Mbpsを切ってしまうこともしばしば。このため、ウェブブラウジングにも支障をきたしていますが、ドコモのモバイルデータ通信なら4G接続であっても安定して通信できています。
多くの方々が新型コロナウイルス感染症に伴う不要不急の外出を自粛しているため、各家庭の光回線が混雑しているのでしょう。筆者宅では5Gの電波はつかめませんが、光回線があまりにも遅すぎるときには、スマホのテザリング経由でWi-Fi機器を利用しています。
現時点の5Gの使い勝手は?
私は現在ドコモの5G契約のSIMカードを入れた「AQUOS R5G」と、auの5G契約のSIMカードを入れた「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」を使っていますが、不要不急の外出を避けなければならない現在、5G通信をほとんど試せていません。
たとえばドコモを例に挙げると、埼玉県で4月末時点に5Gを利用可能になる施設・スポットは、ドコモショップのd stairs南浦和店、さいたまスーパーアリーナ、埼玉スタジアムのみ。最寄りの交通機関などで利用できない以上、通信速度を計測するためだけに外出するわけにもいきません。
もちろんエリアの狭さはわかっていて検証のために購入したのですが、この状態で「いよいよ始動」(ドコモ)とか「5Gを未来とか言ったのは誰だ。」(au)とか「5G始動。」(ソフトバンク)などと言ってもいいのかなあというのが率直な感想です。すべての駅とは言いませんが、複数の路線が乗り入れる主要駅には5G基地局を配備してほしかったところです。
とは言え、ドコモの「5Gギガホ」は料金が500円上がりますが当面はデータ量無制限で利用でき、auとソフトバンクは料金が1000円上がりますが、キャンペーンでauは2年間、ソフトバンクは25ヵ月間割り引かれます。さらに、今後5G対応の格安SIMが登場すると思いますが、その時どのような料金体系になるのかも注目したいところです。
まだまだ5Gを利用できるエリアは限定的で、新型コロナウイルス感染症の影響により5Gエリアの拡大スピードが鈍化する可能性はありますが、スマートフォン自体は着実に性能が向上しています。早急な導入は必要ないと思いますが、買い換え期なのであれば、5Gスマホであることを理由に機種変更をためらう必要はないと言えるでしょう。
筆者プロフィール:ジャイアン鈴木
EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで編集兼ライターとして勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始しました。