〈後編〉ワークフロー総研×スマートワーク総研 所長対談
勝負強い会社に変わるにはワークフロー改善が近道
今注目の「業務プロセスの効率化」を進めるべく立ち上がったワークフロー総研 岡本所長と、新しい働き方を追い続けるスマートワーク総研 まつもと所長の対談記事・後編。なにかとハードルが高いソリューション導入方法の上手い進め方を岡本所長が伝授。なお、まつもと所長の提案をまとめた対談記事もワークフロー総研で掲載中!
文/編集部
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ワークフローの革命手段、X-pointとAgileWorks
まつもと そうしたワークフローを実現するためのソリューションがX-pointとAgile Worksになるわけですね。概要について教えていただけますか?
岡本 X-pointのウリは、今まで「手書きして上司の机に持参してハンコを押してもらい……」というような紙ベースでのアクションを、ウェブサイト上で再現している点です。申請書なども紙の時代と同じ見た目で表示するので、利用者は新しいテンプレートを覚える必要がありません。変更点は手書きからデジタル入力に切り替わるのみですから、移行しやすいと評判です。
そしてルート設定が日本文化に即していることもポイントです。「金額が100万円以上はこのルートだけど、1000万円を超えると別ルートになる」みたいな条件分岐も楽にできます。また、ルート的には「総務→営業」となっているものの、実際には並行して承認を得る必要があるような場合でも、総務なら総務課長から総務部長、営業なら営業課長から営業部長のルートを同時に進んで、お互いの承認が通ったらすぐ役員に回るような仕組みも作れます。もちろん、差し戻しなどにも対応していますよ。
まつもと 日本の企業の体質にあわせたソリューション、ですか。
岡本 紙だとわかりにくい「今、どこまで承認が通っているんだろう?」を可視化できますし、途中に長期出張や休暇中の人がいても、そこで止まらず代理承認につながるんです。
まつもと 日本文化といえばハンコというイメージもありますが、その機能もあるのですか? 紙を再現している以上、押印が欲しい、という人は出てきそうです。
岡本 一昔前は「ハンコはないと困る」という要望が強かったこともあり、印影機能はあります。ただ最近は、そこまでこだわる会社は減っている印象ですね。まあ、ハンコが押してあると「誰が見たのか?」が直感的にわかるというメリットはあります。
まつもと X-pointは、紙をそのままデジタル化した「とっつきやすさ」と、先ほどの図でいうと「業務プロセス」のアプローチが特徴なのですね。
岡本 一方、AgileWorksは大企業向けのワークフローシステムです。ベースはX-pointでして、企業規模で分けているかたちです。従業員300人前後のお客様ならX-point、500人を超える規模であればAgileWorksをおすすめしています。大企業の組織変更時に求められる組織の先付けメンテや退職・人事異動の引き継ぎなどにも対応できますよ。また、システム連携が必要になってくるケースも多いので、Slerさんが手を入れられるように、Brickletというアドオンプログラムをワークフロー上のイベントで実行できるようにしてあります。
いきなり「ペーパーレス」では伝わらない
まつもと ワークフローのソリューションについて、導入がすんなりいかないケースもあると思います。スマートワーク総研が知るケースですと、岡本所長の定義するワークフローの、もっと手前の話が多いんですよ。
たとえば先日、「ペーパーレス」をテーマにコラムを書いたら、ほかのメディアさんから取材させてくれという声があったくらい反響があったのですが、それはペーパーレス化による利便性の高さ云々だけではなく、「紙から変えたくないという企業、人たちの抵抗が思いのほか激しいから」という理由が大きいのです。
新型コロナウイルス周りの話題でも、日本のDX(=デジタル・トランスフォーメーション。ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念)が、どれだけ遅れているかということが如実に示されている現状があるにもかかわらず、です。
ですからX-pointを営業する過程においても、反対あるいは懐疑的な見方を示されることがあるのではないかと。それらの意見をどのように打破したのでしょうか?
岡本 我々もペーパーレスという軸でPRしていた時期はありましたが、「紙をなくそう」と言ってもなかなか伝わりません。いきなりペーパーレスを推すと、今ある大量の紙をどうするんだ、と。
まつもと 机の上に書類がいっぱい積み上がっていることが仕事をしている証明、なんて文化もありますしね。
岡本 まあ、ペーパーレスは、誰かの仕事を取っていくという話にもつながる面もありますし。コロナ禍の情勢下では、拠点間の問題を示すと伝わりやすいですね。たとえば、店舗がたくさんある企業のコミュニケーションや書類の移動は、郵送費のほか紛失のリスクもあります。ですからまずそこから電子化・ペーパーレスに移行しましょう、と。意思決定の稟議が大変だという人たちには、「コストや時間がかかる箇所から電子化を進めましょう」と言ったほうが伝わりやすいんですよ。それが結果として、ペーパーレスにつながります。
まつもと 書類をデータに変えた結果として、ペーパーレスというものが後から付いてくると。
岡本 データ化の効果が徐々に見えてくると、ペーパーレスへの支持も高まってくるんです。ワークフローも実際にやってみて初めて、「こんなに大きな効果があるのか!」とわかるわけです。
まつもと 紙のように扱えるとか、ハンコが押せますよとか、そういったアプローチから、DXが確実に進展していく仕掛けになっているのですね。実際によくなったという事例も紹介していただけますか?
岡本 公式サイトの事例集にもご登場いただいているKMバイオロジクスさんの場合、情報システム部門があって、バックオフィス業務だけれど、経営に直結するDXの影響力を出さなきゃいけないと。「攻めの情シス戦略」の第一弾として、X-pointによる稟議書の電子化を実施したんです。
まつもと 成功事例をまずは作ろうということで、稟議書に手を付けられたと。
岡本 従業員2000名、拠点も4ヵ所ほどある会社ですから、稟議書から変えれば着実に効果が出て、情シスの価値も高まるし、DXのきっかけができるんじゃないかと考えられたみたいですね。
小さなことからではなかなか変わらないので、改善したら大きな効果が出るものとして、稟議書に着目したそうです。X-pointなら紙の環境をそのまま移行できるので現場の抵抗も少ないよねと。結果、これまで1ヵ月かかっていた稟議が、3分の2まで短縮したそうです。慣れれば半分ぐらいになると思います。現在は稟議書に留まらず、ほかのDXにも取り組んでいらっしゃいます。
まつもと 「ハンコを押してもらうために会社に行く」が要らなくなるというのは、わかりやすいので現場の人にも受け入れられやすいし、事実、時間短縮にもなると。
私の経験でも、Slackの導入やペーパーレスは、メリットを感じられれば、みんな向かっていくんです。ところが、大学は一つの敷地の中で物事が完結する「閉じられた世界」なので、廊下での立ち話や書類の受け渡しがデジタルに置き換わることによるメリットを感じにくかったんですね。ただ、今回のコロナ禍で変化が訪れていると感じます。
ワークフローは企業の競争力も高めていく
まつもと 私が教えている地方の大学などでは、チャンスと危機の両方があります。ただでさえ「都市圏の大学のほうが、優秀な先生の講義を受けやすい」という状況があるにもかかわらず、都市圏の大学が遠隔授業を始めて「地方に住んでいても講義を受けられますし、卒業資格も与えますよ」となったら、地方の大学はどうするんだと。
DXは、内部の闘争に留まらない、市場の競争だと考えると、きわめてインパクトが大きい。ワークフローの改善が企業間競争にいよいよ必要になると思います。働き方改革も「競争」がキーワードになるんですよ。ライバル企業はここまでやっていますよ、御社はやらないんですか、というプレッシャーみたいなものがあるわけで。新型コロナはそれを明確にしたんです。
ここまでのお話は、業務プロセスの改善というお話だったと思いますが、次は企業間の競争で勝つために生産性を上げる手段として、ワークフローからイノベーションを起こせるのか、という未来志向のお話も伺いたいです。
岡本 意思決定スピードを早めることが、企業の競争力向上のベースになると思うんです。ワークフローはその助けになるというのが一つ。今までは、起案者がいて承認→承認→承認……で決裁、となるんですけど、これって「1」の提案が「1」にしかならないわけですよ。
ところが電子化すると、承認のハンコだけでなく、課長がリンクを付けたり、部長から提案を入力したりといろいろなことができる。現場からのアイデアに各々のノウハウを付け加えることで、決裁されたときには新しいアイデアに生まれ変わり、「1」の提案が「10」「20」の成果になる。これが、ワークフローの成すべき姿だと思います。
まつもと 従来は付箋を付ける程度ですからね。
岡本 もうひとつ、ワークフローのメリットとして、会社に戻らないと決裁できないとか、上司が怒ってないときを見計らう(笑)といったTPOに縛られないことが挙げられます。相手に依存せず、好きなタイミングでビジネスを進めることができます。
まつもと アカデミックな世界では「非同期型のコミュニケーション」と言いますね。対面はお互いがシンクロしないといけない同期型ですけれど、グループウェアは非同期なので、書いた人のタイミングと読む人のタイミングはシンクロする必要がないのです。岡本所長がおっしゃった機嫌の良し悪しでいえば、優秀な上司は、自分の機嫌が悪いときは返事を翌日に持ち越すことで拙速な判断を避けるといった、非同期型ならではのバッファー、余裕を上手く使うんです。
日高(ワークフロー総研副所長) 先日、岡本所長と話していたのですが、「ワークフローで業務が改善されるということは、イコール、プロセスもきれいになっていって、時間が空く。その時間こそが新しいイノベーションを産む場所では」と。
ワークフローはいろいろなものを改善するのだけれど、何が一番生まれてくるかと言えば「時間」だろうと。事実、研究開発をされているお客様がワークフローによって何日も時間が空き、研究開発の質が上がったとおっしゃっていました。空き時間を作れるというのが、ワークフローで得られるイノベーションの一つではと思います。
まつもと ワークフローが改善し、DX化することで、ワークの中のドライなコミュニケーションからリッチなコミュニケーションをする余地が生まれる。しかもそれが効率的に行えるので、時間も生まれる。時間はイノベーションを生む種になる、というわけですね。
この図は今回の対談のいい着地点じゃないかなと。多くの企業さんは、イノベーションがないと未来はないと感じていらっしゃる一方、ワークフローの改善がイノベーションに至る近道だとは認識していないと思うんです。今日の対談で、その理解が広がっていけばいいですね。
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