ジャイアン鈴木の「仕事が捗るガジェット」 - 第44回

EIZO初の37.5型曲面ウルトラワイドディスプレー「FlexScan EV3895」


EIZO「FlexScan EV3895」

デュアルディスプレーで仕事をしている方は多いと思いますが、つぎのステップアップとして狙いたいのが「曲面ウルトラワイドディスプレー」。包み込まれるような没入感、シームレスにウィンドウを配置できる操作感は本当にクセになります。今回は画質と信頼性に定評があるEIZO初の曲面ウルトラワイドディスプレーをレビューします!

文/ジャイアン鈴木


オフィスワーク向けの曲面ディスプレー、出荷前に階調調整を実施

「FlexScan EV3895」はEIZO初の曲面ウルトラワイドディスプレー。解像度はUWQHD+(3840×1600ドット)で、フルHD(1920×1080ドット)の約3倍の情報量を表示可能です。

パネルはIPS液晶(アンチグレア)、バックライトはLEDを採用。表示色は約1677万色、視野角は水平・垂直178度、輝度は300cd/平方メートル、コントラスト比は1000:1、色域はsRGBカバー率100%・DCI-P3カバー率94%、応答速度は5ms(中間階調域、Gray to Gray)を実現。スペック的にはオフィスワーク向けですね。もちろんFlexScanシリーズなので100%自社開発・自社生産。また国内工場で1台1台出荷前に階調調整が実施されています。

本体サイズは893.9×411~603.7×240mm、重量は約13.2kg

チルトは上35度・下5度、スウィーベルは70度の調整が可能。縦回転には対応していません

昇降範囲は192.7mmです

インターフェイスは充実しています。映像入力端子はUSB Type-C(DisplayPort Alt Mode、HDCP 1.3)×1、DisplayPort(HDCP 1.3)×1、HDMI(HDCP 2.2/1.4)×2。USB端子はアップストリームがUSB Type-C 3.1 Gen1(DisplayPort Alt Mode、最大85W給電Power Delivery)、USB Type-B 3.1 Gen1×2、ダウンストリームがUSB Type-A 3.1 Gen1×4が用意され、1000BASE-T対応の有線LAN端子(RJ-45)も装備しています。

たとえばノートPCをUSB Type-Cケーブルで接続するだけで、映像・音声出力、ノートPCへの給電、USBハブ機能、有線LANを利用可能になります。もちろんキーボード、マウス、ストレージを「FlexScan EV3895」に接続しておけば、ノートPCをUSB Type-Cケーブル1本で接続すれば、すぐにモバイルワークからオフィスワークへと変化できます。ドッキングステーションなどを用意せずに、シンプル&スマートなPC環境を構築できるわけですね。

背面右内側にはHDMI×2、DisplayPort、USB Type-C、USB Type-B×2、有線LAN端子を配置

背面右外側にはUSB Type-C×4、3.5mmヘッドフォン端子を用意

背面左内側には電源端子と電源スイッチを装備

製品にはUSB Type-Cケーブル、DisplayPortケーブル、HDMIケーブル、USBケーブル×2、電源ケーブル(二芯アダプター付き)、VESAマウント取り付け用ネジ、コネクターカバー、説明書類が付属

本製品は、DisplayPort Alt Mode、最大85W給電Power Delivery対応のUSB Type-C 3.1 Gen1端子を搭載。対応ノートPCならUSB Type-Cケーブル1本で映像出力しながら、給電可能。また、キーボード、マウス、外付けストレージ、有線LANネットワークもまとめて接続できます

画質に不満なし、Paperモードで目の疲れを軽減

さて実際に「FlexScan EV3895」を使ってみた感想ですが、画質については大満足。発色は自然で、階調は豊か。アンチグレア(非光沢)処理のおかげで、照明などの映り込みはほとんど気になりません。

実は最初、デフォルト設定ではちょっと暗いかなと思ったのですが、本製品には周囲の明るさに応じて画面の輝度を自動調整する「Auto EcoView」機能が搭載されていました。Auto EcoViewをオンにしたまましばらく使い続けていたら、むしろ隣に置いていたセカンドディスプレーが眩しすぎるように感じました。

もちろん輝度は300cd/平方メートルまで上げられますが、まずはデフォルトの設定をお試しください。目に優しいですよ。

Auto EcoViewは「EcoView設定」からオン/オフ可能。デフォルトでは有効になっています

さらに「FlexScan EV3895」には、AutoEcoViewと併用することでブルーライトを約80%カットする「Paperモード」や、低輝度調整時に発生しやすい画面のちらつきをカットする「EyeCare調光方式」が採用されています。ウェブ用コンテンツの色を確認するために「sRGBモード」が用意されていますが、普段はPaperモードを常用していれば目の疲れを大幅に軽減できます。

表面処理はアンチグレア(非光沢)ですが、それを前提に設計されているのか、発色は実に自然です

前面ボタンはタッチ式で、電源ボタンの左に6つのタッチボタンが用意されています。カラーモードも用途に応じてプリセットから素早く選択可能です

ベゼルを気にせず中央にウィンドウを開ける自由度の高さが◎

今回は「FlexScan EV3895」をWindows 10とMacで合計1週間ほど常用してみました。曲面ウルトラワイドディスプレーを長期間試用したのは今回が初めてなのですが、デュアルディスプレーと違って中央にベゼルがないのがとにかく開放的ですね。最初は左右ウィンドウを開いて使っていましたが、途中からウィンドウを縦に3分割するスタイルに落ち着きました。ベゼルを気にせず中央にウィンドウを開けるのは、デュアルディスプレーではできない曲面ウルトラワイドディスプレーならではのアドバンテージです。

ただ、Windows 10にはウィンドウを縦に三分割して配置するための機能が用意されていないんですよね。ウィンドウをひとつずつ分割配置できるフリーソフト「ClickSnap」を、「FlexScan EV3895」試用中に便利に活用させていただきましたが、ぜひWindows 10の標準機能としても実装してほしいところ。ちなみにMac用には「Magnet」(500円)というウィンドウ分割アプリがリリースされています。

※2/26 20:36追記 執筆時点では対応していませんでしたが、Windows OS専用のモニターコントロールユーティリティ「Screen InStyle」がバージョンアップし、現在はウィンドウ三分割に対応しています。

最初は左右にウィンドウを開いて使っていましたが……。

最終的には、真ん中にWord、左に資料、右に素材というスタイルに落ち着きました。

また「PbyP(Picture-by-Picture)」もウルトラワイドディスプレーを活かした機能。2画面、3画面をさまざまなレイアウトで表示可能で、画面を素早く切り替える「Main Window Swap」機能や、本製品に装着したひと組のキーボートとマウスを3台のPCで共有、切り替える「PC切り替え機能」も用意されています。

この例では、主画面の右に副画面をふたつ表示していますが、左右逆にしたり、縦画面を横に3つ並べて配置することも可能です

クリエイティブ系アプリケーションはウルトラワイドディスプレーのほうが断然使いやすいですね。たとえばPremiereならチュートリアルを表示したままでも邪魔になりませんし、タイムラインの前後の見通しもよくなります。もちろん映像、音声トラックの数が増えれば縦が足りなくなりますが、その場合はレイアウトを変更すればよいでしょう。

Premiereの操作に習熟しているなら、チュートリアルではなくほかのウィンドウを表示すれば、作業効率がさらにアップします

スマートワーク総研的にはちょっと脱線しますが、仕事の合間にはゲームで気分転換してはいかがでしょう? アスペクト比24:10の曲面ウルトラワイドディスプレーを仕事だけに使うにはもったいなさすぎます。曲面ディスプレーならではの包み込まれるような没入感をぜひ最新3Dゲームでお試しください。

本製品のリフレッシュレートは最大60Hz。120Hz以上のゲーミングディスプレーのようなヌルヌル感は味わえませんが、広い視野角によりゲームへの没入感は遜色ありません

画質や機能性には大満足な「FlexScan EV3895」ですが、スピーカーの音はかなり貧弱に感じました。ビデオ会議などなら我慢できますが、コンテンツ鑑賞には正直厳しいですね。動画、音楽鑑賞、チェック用途には外付けスピーカーやヘッドフォンは必須です。

スピーカー開口部を前面に配置することで、正面音圧がアップし、背面の音漏れを抑えているとのことですが、音質は相当な割り切りが必要です

画質、品質、保証を踏まえれば、「FlexScan EV3895」の費用対効果は高い!

正直かなり高価な「FlexScan EV3895」ですが、購入から6ヵ月以内に画面に輝点があれば無償で液晶パネルを交換してくれるうえ、5年間は修理に関する費用は無償(使用時間3万時間以内)。さらに保証期間を問わず修理期間中は貸出機を無償で貸し出してくれるなど(保証期間外の貸出機の送料は有償)、充実のサポートが用意されています。画質、品質、そして手厚すぎる保証を踏まえれば、「FlexScan EV3895」の費用対効果は高いと言えます。

ジャイアン鈴木

筆者プロフィール:ジャイアン鈴木

EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで編集兼ライターとして勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始しました。