企業が抱えるさまざまなデータ資産を保存するにあたって、従業員どうしで共有できるNAS(Network Attached Storage)を活用している企業も多いはず。しかし、たとえ冗長化されているNASであっても災害やランサムウェアによる攻撃などによって大切なデータが消失してしまう可能性は否めません。
企業資産の消失を防ぐべくバックアップを行うべきですが、バックアップ先として活用されているのがクラウドストレージです。ただ、バックアップする容量によっては高コストになりかねず、NASもクラウドサービスも管理する煩雑さは、企業にとって負担になってしまいます。
そうしたなかで、バッファローが販売するNAS「TeraStation」には、「キキNavi」というクラウド型の機器管理サービスが無償で提供されていますが、さらにキキNaviを利用した有償バックアップサービス「キキNavi クラウドバックアップ」も昨年より提供。NASもクラウドサービスも一元管理でき、サブスクリプションサービスとして低コストで運用できます。
そんなキキNaviクラウドバックアップサービスの特徴について、バッファローのお二人にお話を伺いました。
中小企業が抱える課題を解決するキキNaviクラウドバックアップ
山田磨さん(以下、山田) 「今回ご紹介したいのは、NASのデータを守るキキNaviクラウドバックアップです。2022年2月にリリースしまして、BCP対策やランサムウェア対策として活用いただけるのですが、これらのキーワードはご存じでしょうか」
池澤あやか(以下、池澤) 「何度かこの連載で扱っています」
山田 「それは話がはやいですね。弊社で扱っているNAS(Network Attached Storage)というネットワークに直接つながるストレージ製品『TeraStation』があるのですが、キキ Navi クラウドバックアップは、このTeraStationを利用されている企業さまが対象になります」
池澤 「御社のNASと組み合わせて利用するサービスなんですね」
山田 「NASは、ネットワークにつながったさまざまな機器からアクセスできるので、ファイルを共有したり、サーバーやパソコンのバックアップ先として使われたりするのですが、なぜキキNavi クラウドバックアップが必要なのかと言いますと、やはりデータが消失してしまった時のリスクを回避したいこと。それからBCP対策とランサムウェア対策の3つが挙げられます」
池澤 「さきほどのキーワードが絡んでくるわけですね」
山田 「そのとおりです。まずはデータ消失のリスクの回避ですが、万が一NASが壊れてしまった場合に、データを逃がしておかないと復旧できません。クラウドではなくHDDへバックアップするというお客さまも多くいらっしゃいますが、クラウドへバックアップする利点として、バックアップ先の機器の管理やリプレースが不要となり、また、バックアップに関わるサポートは弊社が行うため、お客さまの運用管理が楽になります」
池澤 「別途HDDへのバックアップだと、それが壊れたら……となるので、その点はクラウドのほうが安心ですよね」
山田 「次にBCP対策ですが、2011年の東日本大震災以降、お客さまからのお声としてクラウドへのNASのデータのバックアップのご要望を多くいただきます。地震だけでなく水害も多い日本ですから、データを別の拠点へバックアップすることが重要だという認識が高まっています。しかし、実際に対策しているお客さまは3割程度にとどまっているというデータもあります。特に中小企業のお客さまですと複数の拠点がないので、データを分散させられず、クラウドへのバックアップが求められているという背景があります。」
池澤 「複数拠点があっても1つの地域に集中していたら、全拠点が災害にあってしまう可能性があるので心もとないですよね」
山田 「最後にランサムウェアですが、感染するとデータを暗号化されて読み出せなくなるといった被害のニュースをよく耳にすると思います。ランサムウェアの被害は年々増えてきており、大企業に限らず中小企業もターゲットになることもあるため、ランサムウェアへの対策が必要となっています。キキNavi クラウドバックアップでは、バックアップしたデータは過去にさかのぼって復元できますので、ランサムウェアに感染する前のデータに戻すことで復旧できます」
池澤 「クラウド上にバックアップすべき利点はわかりましたが、それでも中小企業が導入するのに課題はないのでしょうか?」
山田 「課題はあります。料金体系とサポート体制、セキュリティの3つです。まず最大の導入障壁となるのが料金で、ほとんどのクラウドサービスは従量課金制だということです。法人のお客さまは見積りを取ったり、予算を立てたりすると思いますが、従量課金制だと見通しをつけるのが難しくなります。個人であれば、使ったぶんだけクレジットカードで支払うというのは一般的ですが、法人のお客さまだと、見積りしづらかったり予算化しにくいことが、かえって課題になってしまうのです」
池澤 「月にどのぐらい使うのかというのは、実際使ってみないとなかなか予測がつかないですよね」
山田 「そうなんです。コスト感が見えづらいと、なかなか導入に踏み切れない企業さまが多いのが実情です。そこで、料金体系に関しては、買い切りタイプのライセンスパックや月額課金、年額課金という定額制を導入しているのがキキNavi クラウドバックアップの特徴です」
池澤 「定額制なら、予算も確保しやすいですね」
山田 「続いてサポート体制ですが、NASを利用しつつ、別のメーカーさまのクラウドサービスを使っていると、例えばバックアップ時にエラーが発生した場合、NASとクラウドサービスのどちらに原因があるのかわからないため、問い合わせ先がわからず解決までに時間がかかってしまったり、解析できずに解決できなくなってしまうということがあります。キキNavi クラウドバックアップでは、NASもクラウドストレージも弊社が提供していますので、迷わず弊社に問い合わせいただければ対応いたします」
池澤 「管理者からすれば、原因追求に手間がかからずに済むというわけですね」
山田 「3つ目のセキュリティとは情報漏えいの懸念です。クラウドはインターネットを経由してクラウド事業者が管理するクラウドストレージにバックアップを取るため、データを盗み取られるのではないかという懸念を抱くお客さまが多くいらっしゃいます」
池澤 「社内だけの閉鎖的な環境に比べれば、確かに危険性があるかもしれませんが」
山田 「キキNavi クラウドバックアップではパスフレーズというものをお客さまに設定していただき、それをもとにこのパスフレーズでデータを暗号化してバックアップします。このパスフレーズはクラウドストレージ側で保持しませんので、弊社でもデータの内容はわかりません。そのため安心してご利用いただけるポイントとなっています」
吉田高之さん 「パスフレーズに関してですが、バッファロー側も把握できないため、お客さまの方でしっかり管理・把握していただく必要があります。これを忘れてしまうと、2度と復号化できなくなるので注意が必要です」
池澤 「それだけセキュリティ的には高いということですよね」
山田 「また、その他の特徴として、NASの設定もバックアップできます。NASは利用するユーザーを登録し、各フォルダーへアクセス権限を設定するなど、多くの設定をして運用します。キキNavi クラウドバックアップではNASのデータだけでなく、フォルダーへのアクセス権限などの設定もバックアップでき、もちろん設定も含めて復元できることが大きな特徴です。あとは、大量のファイルを扱うNASだからこそ、弊社では5テラバイトで625万という大量ファイルのバックアップで安定動作することを確認しています。通常のクラウドサービスですと、大体10万、20万ファイルぐらいが動作保証なので、他社と比べてファイルの上限数が非常に多くなっています」
池澤 「他のサービスの場合、バックアップするための設定をしなければならないですよね」
山田 「その通りです。各社NASにログインすると表示される管理用設定画面にバックアップ用の設定ツールを用意していますが、キキNavi クラウドバックアップの場合はキキNaviから各NASを選択してバックアップタスクを作成するだけなので、リモートからバックアップ設定でき、かつ複数のNASをお持ちの場合でも個々のNASにログインして設定する必要がないので、使い勝手は非常によくなっています」
クラウド型機器管理「キキNavi」と一元管理できる
山田 「キキNavi クラウドバックアップの母体となるキキNaviについて紹介させていただきます。弊社の法人向けのNASや無線アクセスポイント、ビジネススイッチ、ルータをリモート管理サービスであるキキNaviで管理いただくことで、登録された機器の健康状態確認や障害通知、さらに過去に発生した障害の履歴などの情報を閲覧できます。また、再起動やシャットダウン、ファームウェアアップデートなどの簡易操作もリモートから実施できるので、機器の障害発生の迅速な状況確認や対応に役立ちます。企業さまですと、社内のネットワーク環境は、実際に管理しているのは別の会社さまというケースが多く、社内に常駐しているわけではありませんので、リモートで管理できるキキNaviは迅速な障害対応に加えて、大きな手間の削減になりますので、非常に多くのお客さまにご利用いただいています。
多くのお客さまがキキNaviで機器を管理いただいている中なので、キキNavi クラウドバックアップは、ライセンスをご登録いただき、キキNaviで管理されているNASから対象のNASを選択してバックアップタスクを組んでいただくというシンプルな流れで設定できるようにしました。例えば、毎日、毎週何曜日の何時なのかなど設定してタスクを作成すると、それに従ってNASからクラウドへバックアップが取られます。また、機器の管理と同様にバックアップエラーのような障害発生時には、キキNaviに障害内容が通知されますので、機器と合わせてクラウドストレージもキキNaviから管理できます。
補足ですが、この障害通知にはメモ機能が備わっており、例えば、何月何日、誰がこの障害に対して訪問対応予定などとメモに書いているお客さまが多く、同じ企業の担当者さまが訪問日を確認するといった使い方をしています。メールだと埋もれがちなので、意外とキキNaviのメモ機能が非常に便利と言っていただくお客さまもいらっしゃいます」
池澤 「日本の商習慣に合わせているところがいいですね。結構クラウドにバックアップしようとすると、頻繁にUIが変わるし、設定も複雑だったりするので、かなりシンプルですよね」
山田 「NASとクラウドストレージを別々のメーカーを組み合わせてバックアップ環境を構築しようとすると、両者で用語が違ってわかりづらかったり、連携させるための手順や設定が多かったり、機能の差異による障壁があったりするのですが、NASもバックアップサービスも同じメーカーなら、そういったこともなく、シンプルでわかりやすく管理しやすくなります。管理しているNASが1台ならまだしも、何十台になってくるとより作業効率がよくなることは想像いただけると思います」
池澤 「確かに、使い勝手って大事ですよね。復元するときも簡単にできるんですか?」
山田 「バックアップと同様に復元のタスクを組むだけなので、簡単に復元設定できます。また、復元に失敗したといった障害が出たら、キキNaviの管理画面上に表示されますので、機器とクラウドストレージを一括で管理でき、お客さまにも好評です」
池澤 「1つの管理画面でどちらも確認・設定できるのは、やはり便利ですよね。このサービスのメインターゲットは中小企業なんでしょうか」
山田 「はいそのとおりです。情シスのご担当者さまがおらず、ネットワーク機器の管理は別の会社さまにお願いしているケースや、情シスさまがいらっしゃるケースでも特に最近は人員が減ってしまい1人情シスという言葉もあるくらいなので、いかに機器管理を楽にするのかを考えてサービスを提供しています」
池澤 「1人情シスなんてヤバイですよね。NAS自体の需要というのはあるのでしょうか」
山田 「はい。10数年前からクラウドサービスへの移行が言われていますが、需要が減っている傾向は見受けられません。特に最近はペーパーレス化のためデータが増えてきたり、電子帳簿保存法が施行されることで、データの保存先としてNASをご活用いただいています」
池澤 「クラウドに置きたくないというデータは、NASに保存するというニーズもありそうですね」
山田 「それもあります。クラウドの場合はランニングコストがかかるので、アーカイブしているだけなのに月々すごい金額を払うことになり、データの重要性を踏まえて、クラウドとローカルを使い分けているお客さまも多いです。このクラウドバックアップのサービスは昨年から始めたのですが、ライセンスパックで年額固定料金というのは、お客さまに喜ばれているものの、月額などのスモールスタートで始めたい、運用したいというお声を多くいただきました。そこで、DISさんにご協力いただき、サブスクリプションに対応しました」
池澤 「一括で払うよりサブスクのほうが楽ですし管理しやすいですよね」
山田 「1月からサブスクを開始したところ、中小企業のお客さまに好評です。この企業さま向けのサブスクの仕組みはメーカーでは構築できないため、DISさんには大変助かっています」
池澤 「バッファローのNASを導入している企業さんだったら、このキキNaviクラウドバックアップを使わないという選択肢は、ほとんどないのではと感じました。楽に管理できるという観点からも、UIは必要な項目に絞って、迷わず管理できそうなところも、中小企業にとってはいいことなのではと思います」
バッファローのNAS「TeraStation」に特化したクラウドバックアップサービスです。1TBから最大5TBまで、月額・年額で利用可能で、お客さまの大切なデータをバッファローが守ります。DR(Disaster Recovery)対策といても有効で、TeraStation本体・クラウドサービスともに問い合わせ先はすべてバッファローで完結します。
「iKAZUCHI(雷)/いかづち」はサブスクリプション管理ポータルです。DISの販売パートナーは、「iKAZUCHI(雷)」をご利用いただくことで、多様化するサブスクリプション型のクラウドサービスの注文工数が削減され、月額や年額の継続型ストックビジネスの契約やご契約者さまの一元管理が可能になります。