いまや業務改善するには、その企業に合わせたアプリ開発が必要です。昔ならSIベンダーに開発を任せていましたが、非エンジニアでも開発が可能な「ノーコード」による開発環境が出現したことで、自社開発する企業も増えてきています。ノーコードの先駆けとしては、サイボウズの「kintone」がありますが、業務に合わせたカスタマイズをしたいときに、意外と JavaScriptでプログラミングする必要が出てきます。それをサポートするためにkintoneのプラグインなどを導入することで回避できるものの、いくつも導入するとなると、それはそれで管理などが負担になります。
そうした中で、 JavaScriptを書くことなくノーコードでアプリをカスタマイズできるサービス「gusuku Customine 」を開発したのがアールスリーインスティテュートです。 やりたいことを選択し、条件や要素を設定するだけで自動的に必要な JavaScriptを生成してくれ、アプリのカスタマイズを可能にしてくれます。
そこで、今回はアールスリーインスティテュートのお二人にお話を聞き、gusuku Customineのメリットについて語っていただきました。
kintone基本機能ではできないところをノーコードで補完
金春利幸さん(以下金春) 「我々は、アールスリーインスティテュートという、ちょっと噛んじゃいそうな名前の会社ですが、サイボウズのオフィシャルパートナーを2014年から務めており、5つのkintone関連サービスを提供しています。昨年からkintoneのパートナー評価制度がスタートし、2つの分野で2年連続、最高の三つ星評価をいただいております。今回は、そのうちの1つ「gusuku Customine(グスク カスタマイン。以下カスタマイン)」のご紹介をさせていただきます。「グスク」は沖縄の言葉で「城」という意味で、大阪の会社なのですが、沖縄でリモートワークをしているメンバーがおり、沖縄と縁が深いのでこの名称を付けています」
池澤あやか(以下池澤) 「ロゴが守礼門なので沖縄の企業なのかと思いました」
金春 「カスタマインは、普通なら JavaScriptでプログラム開発が必要になるようなkintoneのカスタマイズを、ノーコードでできるようにするためのサービスです。誰もがkintoneの力を200%引き出せるというのをスローガンにして開発しています。kintoneは、もともとシンプルですごく簡単に作れるため、業務改善も朝飯前だと思ってたくさんの方が利用されていますが、実際にはいろいろとできないことが見つかってくるんですよね」
池澤 「確かにkintone自体もノーコードで作れるのですが、開発が必要な部分も出てきますよね」
金春 「そうなんです。例えば、kintoneのアプリAで何かを更新した時に、アプリBも同時に更新したいというとき、プログラムを作る必要があります。また、生年月日が入っているデータから、実際何歳なのかを計算してほしいときに、kintoneにはそういう機能がなかったり、見積書や請求書という帳票を出したいと思っても、kintoneの基本機能では出せなかったり、といった感じです。
そのためkintoneには、プラグインや連携サービスという仕組みがあり、単機能のプラグインをいっぱい買ってきて入れたり、帳票の連携サービスを利用したりすることで、こうした問題を解決できます。ただ、こうしたプラグインや連携サービスは300種類以上あり、さまざまなベンダーさんから購入することになって、支払い方法の違いから管理も大変なことになります。
とはいえ自分たちで作るとなると、お金と時間が相当かかることになります。こうした問題を解消するためにカスタマインを開発しました。kintoneのカスタマイズで、よくやりたくなる8割以上をカバーできます」
池澤 「それはすごいですね。ほとんどのプラグインや連携サービスが不要になるという」
金春 「どうやって実現しているのかというと、カスタマインには大きく2つの機能があり、kintoneアプリのカスタマイズというのが、操作をきっかけに処理が実行されるような、 JavaScriptを書く必要があるタイプが1つ。もう1つが、Job Runner(ジョブランナー)と我々は呼んでいるんですが、バッチ処理の仕組みで設定した時刻や外部からのWebhookをきっかけに実行するタイプになります。またExcel やPDFへ出力する機能もあり、kintoneの画面からでも、バッチ処理の方からでも、帳票出力などが簡単にできるようになっています」
池澤 「こうした機能は、どのように設定していくのでしょう」
金春 「画面の方でポチポチとボタンを押して設定していくと、裏で自動的にJavaScriptのプログラムを生成して、それがkintoneへ自動的にセットされる仕組みになっています。バッチ処理の方も、同様にボタンを押して設定していくと、我々のサーバの方にプログラムが生成されて、サーバ上で実行する仕組みになっています。
ノーコードなので簡単ではあるのですが、ある程度の学習は必要ですので、まずはフリープランで試してもらい、慣れてきたら検証プランへ移行して2ヵ月間制限なしで使っていただきます。もしこれで業務改善できるとなったら、年額プラン へ移行していただくことになります」
池澤 「学習するためのサポートは何か用意されているのでしょうか」
金春 「定期的にオンラインの体験会を行っていて、我々のメンバーと一緒にカスタマインを使ってみましょう、というイベントになっています。さらにサポートサイトにTIPS記事を150種類以上載せていて、チャットでのサポートも行っています。エンジニアがきちんと回答するのでわからないことがあっても解決すると思います」
項目を選択していくだけでアプリをカスタマイズ
金春 「実際にカスタマインの画面を見ていただきます。使い方は簡単で、メニューからやりたいことを選んで、必要な要素を選んだり無効にしたりと選んで設定していくだけですね。条件を追加することで、業務に合わせたカスタマイズができる仕組みになっています。全くコードを書く必要がなく作業を進められます。
また、他のアクションの実行が完了した時に実行することもできるので、次々と作業をつないでいけます。基本的には選ぶだけなので、 JavaScriptで書くより圧倒的に簡単にアプリを作れます」
池澤 「こうした作業内容や条件・要素などを設定すると、裏で自動的に JavaScriptを生成しているというわけですね」
金春 「そうですね。「kintoneアプリで登録」を押すと、 JavaScriptのプログラムが作られます。一覧表示されるデータに対して色を付けて状態を知らせるというようなカスタマイズが簡単にできます。kintoneの基本機能では検索を使うことになりますが、どの項目で絞るか条件を考える必要があり、結構手間なんです。それを簡単に視覚化できるのがカスタマインのいいところです。
あと例えば、kintoneは入力が必須の項目を選べるのですが、1度必須をチェックすると、 とにかく常に必須になってしまいます。実際の業務の場合、別の項目内容によって必須ではなくなるケースもあります。そういった場合も、カスタマインならプログラムを書くことなく設定できます」
池澤 「痒いところに手が届く感じですね」
金春 「お客さまからご要望をいただいて、隔週でアップデートしている状態です。そのため、凄まじく機能が増えていて、電話をかける仕組みと連携したり、Googleマップの地図を表示したりと、あったら便利な機能をたくさん用意しています」
池澤 「kintoneは、私も使ったことあるんですけど、足りないところは自分でプログラムを組んでいました。でも、エンジニアではない人からすれば、痒いところに手が届かないと思うことは結構ありました」
金春 「そうですね。問題になりやすいのが、例えばある会社さんでたまたま JavaScriptを書ける人がいました。その方がkintoneでゴリゴリにプログラミングしてカスタマイズしたあと、その方がいなくなったら誰もわからない状態になってしまいます。実際、プログラミングはできるけど引き継げないという問題が発生するため、カスタマインを導入しているお客さまもいます」
池澤 「そういう問題ありそうですね。エンジニア的な考え方だと、ソースコードをGitHub(ギットハブ)で管理したいと思うんですけど、編集履歴を管理するというような機能ってあるのでしょうか?」
金春 「編集した履歴はちゃんと残ります。今後、バージョン管理ができる予定で、そうなれば元のバージョンに戻すというようなことも可能になります。履歴をファイルに書き出すこともできるので、自分たちのファイルサーバーなどに保存したり、バッチ処理で定期的にkintoneアプリに添付ファイルとして吐き出したりもできます」
池澤 「やっぱりそういう要望はあるんですね」
金春 「あと最近増えているのは、元々kintoneのカスタマイズをビジネスとしてやっているSIベンダーさんが、 JavaScriptを書くのやめて、カスタマインを一緒に販売して、これで設定することでお金をいただくっていうビジネスも出てきています。
これって何がいいのかと言うと、ものすごく早く提供できるので、そのぶん早く業務改善が行え、変更も容易になります。お客さまの要望を聞きながら、どんどん改修もできるため、いわゆるアジャイル開発の猛烈に早いものをkintoneとカスタマインでできてしまうんです。そういったお客さまも今増えてきています」
池澤 「すごい状況ですね」
金春 「SIベンダーさんは、作り終わった後にそのままお客さまへ渡せ、お客さま自身が直すケースも最近は出てきています。これがプログラムで書かれているとお客さまは対応できないので、改修するにもまたお金がかかってしまいます」
池澤 「お客さまが直すケースってどういう方がやられているのでしょう」
金春 「情報システム部門の方が触るケースが多いのですが、非エンジニアの方が触るケースも多く見られます。そのため、チャットサポートに結構すごい質問が来るケースもあります」
池澤 「サポートが充実しているから、誰でもこなせてしまうのかもしれませんね」
金春 「kintoneは簡単だというイメージがあるため、エンジニアではなく人事部や総務の担当にkintoneでアプリを作らせるケースがよくあります。でも、実際には基本機能だけではできないことも多く、困る人が続出するわけです。カスタマインはそういった人たちを救うサービスであると考えています」
池澤 「そういう人たちのためのサポートでもあるんですね」
金春 「とはいえ、例えばGoogleマップを出す機能を使おうとしたら、Google側でAPIを使う設定が必要で、権限なども設定する必要があり、エンジニアでないとハードルが高いケースもあります。そこまでのサポートは我々も無理なので、そこは自力でやっていただく必要があります」
池澤 「どのくらいの企業が導入されているのでしょう」
金春 「kintoneが現在2万9000 社ぐらい導入されていますが、カスタマインは1000社を超えたところです」
定期的な作業を自動的に処理してくれるバッチ処理
池澤 「バッチ処理だとどんな使い方があるのでしょう」
金春 「例えば、営業さんが今月1000万の売り上げ目標に対して、今日の時点でいくらまで達成しているかとか、売り上げのデータを積み上げていく計算だとか、そういうことによく使われます。定期実行タスクの場合はスケジュールの設定をするだけで、自動的に実行してくれます。お客さまからご要望をたくさんいただくので隔週で更新されていて、企業で行うような作業はほとんどできると思います」
池澤 「更新作業って、kintoneもカスタマインも連携しているアプリもあるので、きちんと知っていないと結構大変そう」
金春 「そうですね。kintoneのことをよく知らないのに、すぐカスタマインを導入しようというお客さまがたまにいらっしゃいますが、それは止めています。我々はkintoneの研修サービスも提供しているので、まずkintoneの基本機能で何ができるかを把握していないと、我々が提供するものはプラスアルファなものなので意味がありません。kintoneの不足機能をサポートするものですから」
池澤 「そうなると、どのように営業はカスタマインを売り込むのでしょう」
金春 「語弊があるかもしれませんが、我々はあまり売ろうとしていなくて、とにかく認知だけを広げようとしています。kintoneで困ったことがあったら、カスタマインというのがあるよと」
池澤 「駆け込み寺みたいな感じですね」
金春 「なのでフリープランの登録が来れば、セールスチームが手厚く電話しますが、資料請求しただけの方にガンガン電話するといったことは一切していません。そのため、kintone活用コラムという記事を弊社ホームページにたくさん出しているので、kintoneで検索したらコラム記事が引っかかるよう努力しています。そういう経路でカスタマインというサービスがあるということを知っていただければ、我々はそれでいいと思っています。また、キャラクターを作ったりして、サイボウズさんのイベントに合わせて電車広告を出したりしています」
池澤 「そうなんですね。kintoneもきとみちゃんのような少女漫画調の冊子を作って、販促活動していますよね。カスタマインの販促もそれに合わせたという形なのでしょうか?」
池上緑さん(以下、どりぃ ) 「私たちがこのキャラクターを作ったのが2年ぐらい前なんですけど、その時に考えたのは、サイボウズさんが70〜80年代の画風なので、逆に現代風のJKでいこうと。kintoneのユーザー層を意識せず、純粋に私たちが好きで楽しめるような作風の漫画にしようっていうので、三角関係な展開の話になっています」
池澤 「この女の子を巡って、2人がバチバチになる展開?」
どりぃ 「一応、漫画の内容としては、カスタマインをアピールしたものなのですが、弊社の女性メンバーが、三角関係の妄想を語り合ってストーリーを広げています」
池澤 「これはどこで読めるんですか?」
どりぃ 「サイボウズさんのイベントで配布しています。老若男女を問わず、結構手に取っていただけており、いろいろとノベルティも作ってお配りするようになりました。コーヒーのノベルティもあるのですが、ちゃんとテイスティングして美味しいものをチョイスし、かなりこだわっています」
池澤 「マーケティング戦略がすごい」
金春 「サイボウズさんと一緒に楽しく認知を広げていければと思っています。なんかいろいろと面白いことをやる会社だという認識はされているようで、この戦略は価値があると思っています」
カスタマイズするアプリの個数で価格が決まる
池澤 「このサービスは、基本的に既存のアプリをカスタマイズする感じなんですか。それともアプリを0から作って、足りない機能をカスタマインで補完する感じなんですか?」
金春 「kintoneアプリを作っていただき、それをカスタマイズする感じです。基本的なアプリの7割ぐらい完成したら、そこから足りないところを、これでカスタマイズしましょうとお客さまに伝えています」
池澤 「料金プランはどのようになっているのでしょう」
金春 「プランとしては月額プランと年額プランがありますが、iKAZUCHI(雷)で扱っているのは年額プランだけです。年額プランだと21万6000円からなので、月額換算で1万8000円になります。あとはkintoneアプリを何個カスタマイズするかによって料金が変わっていきます。
カスタマイズできるアプリ数が、4個、10個、1000個で、kintoneは1000アプリまで作れるので、1000個だと実質使いたい放題になります。間の100個はないんですかってよく聞かれますが、1000個だけ異様に安くしています。10個が64万8000円、1000個が120万円で、利用できるアプリ数が100倍になっているのに、価格は2倍以下という値付けになっています」
池澤 「1000個もアプリを使っている企業は想像つかない」
金春 「実際、100個使っている企業もほとんどありません。我々が把握している中でいちばん多いのが600個ぐらいです」
池澤 「600個も管理するだけで至難の業です」
金春 「我々としては、個数を気にせずに使っていただきたいので、できるだけ無制限となる価格を安くするようにしています」
池澤 「どのプランがいちばん多いのですか?」
金春 「やはり4個がいちばん多く、次に1000個ですね。10個は1個あたりの単価が高いので少ないです。年間120万円って月換算すると10万円 なんです。例えば外部のSIベンダーさんに依頼してカスタマイズしてもらったら10万円では済まないので、そう考えれば安いと思います」
池澤 「どういった企業・業種が導入されているのでしょう」
金春 「代表的なお客さまで言うと、日清食品ホールディングスさんや星野リゾートさんですが、意外と幅広くてkintoneを5人で使っている企業もあれば、日清食品さんの ような何千人単位で使っている企業もあります。特に明確な業種・業態の人にオススメという打ち出し方はしておらず、大企業から中小企業まで導入いただいております」
池澤 「今後のサービスについて考えていることはありますか?」
金春 「お客さまのご要望に合わせて作るものもあれば、お客さまが気づいていないものもたくさんあり、今後も粛々と機能を追加していくことになります。将来的には、ノーコードで JavaScriptを生成する技術を身に付けているので、その技術を別のところでも応用できればと考えています。また、kintoneアプリを作る事業も行っているので、我々にまかせていただければ、カスタマインで作ってそのままお客さまに引き継いだり、お客さまがご自身でアプリを作るサポートをするサービスも行っています。
我々はkintoneに関する知見は凄まじくもっているので、こういうことをしたいと言われたら、こうすればいいですよとか、それはやめたほうがいいといったアドバイスができます。実は、できることはネットで検索すれば出てくるのですが、できないことはあまり情報として出てきません。我々はできないことは無理ですと正確に回答できるので、そこに価値を見出していただいているお客さまも多くいらっしゃいます」
池澤 「最初お話を聞いた時は、ノーコードのノーコードってどういうことって感じだったんですが、確かに痒いところに手が届く感じで、非エンジニアでも作れるし、エンジニアであっても、特に定型処理などでは楽な側面もあるので、迅速に物事を進めたいときに、かなり便利に使えるという印象をもちました」
kintoneシステムの開発時間を大幅短縮できるノーコード業務改善ツールです。グスク カスタマインでは、できることが360 種類以上あり、画面のカスタマイズやバッチ処理 、帳票出力が行えます。有人によるチャットのサポート体制を整えており、安心して利用できます。