ストックビジネスとフロービジネス
ストックビジネスはサービスの継続利用によって収益を得るビジネスモデルです。顧客が一度契約すれば、解約しない限り安定した収入が得られ、時間経過とともに資産が蓄積(ストック)されていく仕組みです。不動産の賃貸収入やガス代・電気代のインフラ事業、会員制のフィットネスクラブなどがストックビジネスに該当します。例えば、不動産の賃貸の場合、2年契約をすれば、その間賃料が毎月支払われます。2年後に契約を更新することで、さらに継続的な収入が見込めます。定額制で商品やサービスを一定期間利用できる「サブスクリプションサービス(サブスク)」もストックビジネスの一つです。
フロービジネスは需要に応じて、一度きり、商品やサービスを提供して収益を得るビジネスモデルです。取引は1回で完了するため即金性が高く、短期間で収益を最大化できる「売り切り型」のビジネスモデルです。顧客との関係性は流動的(フロー)で、小売業や飲食業がフロービジネスに該当します。顧客が欲しい商品をいつでも気軽に購入できるというメリットがありますが、販売数や単価、顧客の購入頻度が収益を左右します。また、流行や競合他社など外的要因の影響を受けやすく、ストックビジネスに比べると、安定した収益を見通せません。
タイプ別ストックビジネス
ストックビジネスに、どのような種類があるのか、具体例をタイプ別に紹介します。
定期購入タイプ
サプリメントや化粧品、食料品、日用品などの消耗品を定期的に提供する。顧客は度々購入する手間がかからないので、継続率が高い。
インフラタイプ
電気・ガス・水道のライフラインや、携帯電話やインターネットプロバイダー等の電気通信サービスなど。生活に必要なものなので、需要は安定している。
賃貸タイプ
住宅や店舗の賃貸契約、ビルやマンションの管理なども含む。入居者を集めて家賃を得るまで時間がかかる。
レンタルタイプ
顧客は商品を購入せずに一定期間レンタルする。衣装やブランドバッグなどのファッション、インテリアや自動車まで幅広いジャンルの商品が用意されている。サステナブルな取り組みとしても注目される。
会員サービスタイプ
パーソナルジムやエステサロンなど、定額で複数回のサービスを利用できる仕組み。アーティストのファンクラブのように、チケットが取りやすい、オリジナルの商品が手に入るなどのサービスも。
教育タイプ
塾や家庭教師、専門学校など、講師が生徒に教えるスタイルのサービス。ゴルフ教室やヨガ教室など、習い事も含まれる。最近では、リモートでサービスを受けられるオンラインレッスンも増えている。
VODタイプ
「Video On Demand(ビデオオンデマンド)」の略称で、様々な映像コンテンツが用意され、顧客が好きなときに視聴できる「定額動画配信サービス」。コロナ禍以降、ライフスタイルの変化により、需要が高まっている。
ストックビジネスのメリットとデメリット
ストックビジネスの一番のメリットは、景気に左右されにくいことです。顧客との継続的な関係を築くことができ、サービスに対する問題点を見つけやすく、顧客ニーズを把握しやすいこともメリットの一つです。また、自動的に契約を継続することができるので、新規顧客の契約に集中できます。まとめると、以下の3点になります。
・収益が安定する
・顧客との関係を築きやすい
・効率的な営業活動ができる
一方、デメリットは軌道に乗るまでに時間がかかることです。顧客を獲得し、契約を継続してもらうための仕組みを作るまで、ある程度の時間と資金が必要になります。始めたばかりの頃はなかなか収益が上がりません。契約率が低かったり、解約率が高かったりする場合は、サービスの見直しや撤退を考える必要があります。
ストックビジネスを成功させるには
ストックビジネスは、一度軌道に乗れば成功しやすいビジネスと言えます。しかし、誰でも成功するわけではありません。最初は集客が難しく、小さな収益を積み上げていくことになり、軌道に乗るまでの経済的な体力が必要です。また、顧客が飽きないように、満足度の高い商品やサービスを開発し続けなければなりません。そのためにも、十分な運転資金を確保しておくことが重要です。そして、ビジネス開始から損益分岐点を超えるまでにかかる時間と費用をしっかりと計算し、十分な計画を立てることが成功の秘訣です。