IT Market Analytics 2021
アナリスト総集結!2021年度IT市場の攻めどころ
新型コロナウイルスの影響で企業環境が大きく変化した2020年に続き、コロナ禍が依然として進行している2021年。さまざまな課題が浮き彫りになる中で、企業のIT投資はどのような方向性を示していくのか。2020年の振り返りも含め、これから想定される各IT関連市場の道筋について、7名のアナリストが見解を語る。
新社会システム
コロナ禍で新たに生み出される市場
デジタルトランスフォーメーションの促進で企業システムが変わりつつある中、新型コロナウイルスはそうした変化を大幅に早めるきっかけとなりました。特に新型コロナウイルスの影響を大きく受けている分野が、「リアル店舗」「働き方改革」「医療現場」です。現在、これらの現場でシステム変革が加速しています。そこで当社は、新たに生み出される市場を新社会システム市場としてまとめました。
新社会システムを形成するのは、「リアル店舗向けソリューション市場」「リモートワーク関連市場」「テレヘルス(遠隔医療)市場」であり、この三大市場において今後3年間で形成される市場規模を約2.8兆円と算出しています。市場規模予測の内訳は、リアル店舗向けソリューション市場が4,795億円、リモートワーク関連市場が1兆7,777億円、テレヘルス(遠隔医療)市場が5,380億円になります。
テレプレゼンスも伸びる
リアル店舗向けソリューション市場は、施設内の混雑状況分析システム、来訪者の体温計測システム、非接触・非対面型の接客システム、紫外線を用いたウイルス不活性化装置などの市場を調査しました。リアル店舗は特に影響が大きく、非接触・非対面でオーダーができるセルフオーダーシステムなどの導入が増えています。不動産業では、VRのような仕組みで、ユーザーが自宅から物件の内覧を可能にするサービスを提供したり、従業員が在宅環境でファクスのやりとりをできるような環境が構築されていたりします。
三大市場の中で最も規模が大きいのはリモートワーク関連市場です。これは、企業など母数が多いのが理由です。長年テレワーク元年と言われ続けてきましたが、新型コロナウイルスによってそれが本格的に取り組まれた1年でもありました。働き方改革という側面でも以前からリモートワークは潜在的なニーズがあったのです。
テレワークのインフラやシステムそのものに加えて、サテライトオフィスの需要も拡大しています。サテライトオフィスを運営する企業や、サテライトオフィスに対してIT機器などを提供するサプライヤーの商機が増えています。
テレプレゼンスシステムも問い合わせが増えているようです。離れた場所からロボットを活用して作業する仕組みです。工場の作業や消毒など、現地で人間が作業する代わりにロボットを通じて行えるようになります。こうしたロボットの活用はこれまで何度も波が来ると言われ続けてきましたが、新型コロナウイルスの影響で導入機運が本格的に高まっています。従来ロボットを採用する場合には人間との競争になっていましたが、新型コロナウイルスで現場に人間がいなくなったために、需要が加速しているのです。
継続的なビジネスチャンスを創造
テレヘルス(遠隔医療)市場は、オンライン診療市場、遠隔診断・治療方針助言市場、健康管理デバイス・サービス市場で構成されています。オンライン診療市場は、従来の数十億円規模から数百億円規模に拡大しています。診療、電子カルテから処方箋の管理までトータルにカバーするプラットフォームの導入が増加しているのです。
テレヘルス(遠隔医療)市場で最も成長が見込まれるのは、健康管理デバイス・サービス市場です。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを利用して健康管理を行う分野です。そうしたデバイスやサービスの活用で従業員の健康を管理するニーズも増えるでしょう。
このように、以前までの状況なら、あと2~3年ほどかけて導入されていくと想定されたシステムが新型コロナウイルスの感染拡大によって、一気に進んでいます。新型コロナウイルスが沈静化したとしても、以前の状態に完全に戻ることはないでしょう。新社会システムを構成する三つの市場では、今後も継続的なビジネスチャンスが創造できるはずです。