LGBTQとは

LGBTQは、セクシャルマイノリティを表す英語の頭文字を取った造語です。もともとは「LGBT」という呼び方で、2006年の暴力や差別を告発するモントリオール宣言をきっかけに世界的に広まりました。現在では、Qをプラスした「LGBTQ」が多く使われています。

セクシャリティには、「生物学的な性別」「性自認」「性的指向」「性表現」の4つの要素があります。「生物学的な性別」は、出生時に医学的な判断で割り当てられた性です。「性自認」は、自分自身が認識している性のことです。「性的指向」は、男性と女性のどちらが恋愛対象であるかを意味します。「性表現」は、見た目や服装、言動などによって社会に表現される性を指します。

【LGBTQの意味】

L=レズビアン(Lesbian)
性自認が女性であり、性的指向も女性である人を指します。出生時の性別が男性でも、性自認が女性であり、性的指向が女性であればレズビアンに当てはまります。

G=ゲイ(Gay)
性自認が男性であり、性的指向も男性である人を指します。出生時の性別が女性であっても、性自認が男性であり、性的指向が男性であればゲイに当てはまります。

B=バイセクシャル(Bisexual)
性的指向が男性と女性のどちらでもある人を指します。本人の性自認や生物学的な性別は関係しません。

T=トランスジェンダー(Transgender)
出生時の性別と、性自認の性別が一致していない人を指します。この場合、性的指向は特に言及されません。トランスジェンダーなかには、外科的手術を受けて、体の性と心の性を一致させることを望む人(トランスセクシャル)もいます。

Q=クエスチョニング(Questioning)
特定の性的指向に属さず、性自認が定まっていない人を指します。自分の性自認や性的指向が男性・女性のどちらであるかで迷っている、または自分の性を決めていない人が該当します。性のあり方にとらわれたくない人も「Q」に含まれます。また、セクシャルマイノリティを包括的に意味する言葉の「クィア(Queer)」の意味も含まれると説明されることもあります。より多くのセクシャルマイノリティを含めた表現として「クィア」が使われています。

他にも、他者に性的に惹かれない「アセクシャル(Asexual)」、他人に恋愛感情を抱かない「アロマンティック(Aromantic)」などの、多様なセクシャリティを表す「+(プラス)」を加え、「LGBTQ+」と表現されることもあります。

セクシャルマイノリティに対して、出生時の性別と性自認が一致している人を「シスジェンダー」、性的指向が異性に向く人を「ヘテロセクシャル」と呼びます。

LGBTQを取り巻く問題

日本以外のG7諸国では、セクシャルマイノリティの差別禁止法、婚姻の平等、トランスジェンダーの人権の保護など、さまざまな法整備が進んでいます。一方、日本では、LGBTQに対する理解や支援が進んでいないのが実情です。人々への認知が広がってきているとはいえ、LGBTQを取り巻く問題は根強く残っています。

特に問題なのは、セクシャルマイノリティの人たちが抱える問題が、当事者以外には見えにくいことです。LGBTQ当事者の多くは、家族を含め、周囲に自身の性的指向や性自認を明かしていません。そのため、悩みを誰にも相談できず、自分一人で問題を抱えこんでしまいます。当事者の困難が表面化しないため、企業による取り組みも進まないと言われています。

2020年に厚生労働省が実施した「職場におけるカミングアウトの実態」の調査では、職場でカミングアウトしている割合はレズビアン、ゲイ、バイセクシャルを合わせて7.3%、トランスジェンダーは15.8%でした。誰にもカミングアウトしていない人は6〜7割に上り、その理由は、「職場の人と接しづらくなる」「人事評価や配置転換、異動等で不利な扱いを受ける可能性がある」「差別的な言動をする人がいるかもしれない」などで、偏見や差別を恐れていることがうかがえます。このように、セクシャルマイノリティが抱える精神的負担は小さくありません。当事者が安心してカミングアウトできる環境作りが急務なのです。

誰もが自分らしく生きられる社会に

国連で採択されたSDGsが求めるジェンダー平等やダイバーシティ&インクルージョンの推進においては、LGBTQへの理解が不可欠とされています。LGBTQというだけで、生きづらさを感じないよう、行政や企業がさまざまな取り組みを実施しています。

日本では2020年に実施されたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)で、企業や自治体における「性的指向や性自認に関わるハラスメント」や「アウティング」への対応が義務づけられました。アウティングとは、本人の了解を得ずに、性的指向や性自認を第三者が公に暴露する行為です。

セクシャルマイノリティに対して友好的な人や差別をしない「アライ(Ally)」と呼ばれる人たちも増えてきています。アライはセクシャルマイノリティの当事者である必要はありません。自身では動きにくい当事者の声を代弁し、寄り添うことで、セクシャルマイノリティの人たちが生きやすい社会を作ることに貢献しています。

LGBTQのカップルを夫婦と同等の関係と認める「パートナーシップ宣誓制度」を導入する自治体は全国で300を超えています(2023年調べ)。同性婚の法制化についても議論されていますが、根強い反対論があり、実現にはまだ時間がかかりそうです。

2023年には、セクシャルマイノリティに対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」が施行されました。社会全体で理解を深める端緒となり、一歩前進と評価される一方で、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」との内容が盛り込まれたことに対し、当事者や支援団体から「差別する側に配慮している」という批判の声が挙がっています。法律が及ぼす影響を確認・検証する仕組み作りも必要かもしれません。

セクシャルマイノリティは、法務省によると人口の3〜5%と推定されています。私たちの身近にも確かに存在していますが、それほど多いように実感されません。彼らは偏見や差別を恐れ、カミングアウトできずにいるのかもしれません。まずセクシャルマイノリティを正しく理解することが、多様性を認め、誰もが自分らしく生きることができる社会を実現させる一歩かもしれません。