企業向けソフトウェアは業務システムの需要増加

Software Business

 富士キメラ総研は、企業向けソフトウェアの国内市場を調査した。本調査では、業務システム18品目、顧客接点/CX10品目、アナリティクス3品目、コミュニケーション/コラボレーション11品目、ミドルウェア10品目の計52品目に大分し、SaaS/PaaSとパッケージの提供形態別でも現状を明らかにした。

 2024年度は、業務システムの伸びがけん引し、同市場は拡大するとみられる。背景として、基幹系システムのリプレースを契機とした業務システム領域全体の刷新案件の増加がある。また、業務効率化を目的とした製品、インボイス制度や働き方改革関連法などの法改正に伴ってデジタル化・ペーパレス化に対応した製品の需要が高まったことも市場拡大を後押ししている。法改正の需要ピークは過ぎるものの、基幹系システムのリプレースを契機とした需要も引き続き増加している。これにより、2028年度の同市場は、2023年度比45.8%増が予測される。

 業務システムは、システムの老朽化やソフトウェアのサポート期間終了を契機としたリプレースに加え、労務管理や請求書受領管理など、バックオフィス業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を目的とした製品の需要が増加している。また、働き方改革関連法への対応や電子契約、契約書審査など、法務関連業務の効率化ニーズが高い。

 顧客接点/CXは、多様化する顧客接点への対応や高度な顧客理解、関係性の強化を目的とした「Marketing Suite」や「Marketing Automation」(MA)などの需要が伸び、市場拡大した。

 提供形態別では、パッケージはカスタマイズニーズやセキュリティ面から需要が継続している。その一方で、低コストかつ短期間でシステム構築が可能なことや運用負荷が軽減されることのほか、多様な働き方への対応や最新機能へ迅速にアップデートができることから、SaaSが市場の主体となっている。

大手/中小企業の新規導入進む見込み

 Webデータベース/ノーコード開発などのミドルウェア市場を見てみよう。2023年度の同市場は、IT人材不足でもDX推進や業務効率化が実現できる製品としてミドルウェア認知度が高まり、大手企業から中小企業まで新規導入が進んだことから市場が拡大した結果となった。

 2025年度以降は、IT人材不足の深刻化を背景に、システム内製化やDXに向けた投資が進み、同市場の需要が増加するとみられる。

ソフトウェア52品目の国内市場
出所:富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2024年版」

デジタルツインは複雑な製品やOT機械が対象

Digital Twin

 IDC Japanは、国内におけるデジタルツインに関する企業ユーザー調査結果を発表した。デジタルツインとは、物理環境をリアルタイムでサイバー空間に再現することを意味する。近年、IoT技術の発展や3Dデータ、AI、AR/VRなどデジタル技術の活用によって、物理環境のデジタルツインの構築が可能となっている。

 本調査では、デジタルツインは広く認知されており、活用を検討している企業が多いと分析している。産業領域のデジタル化に取り組む企業の69.1%が「デジタルツイン」をすでに導入している、または導入を検討していると回答した。

 さらに、物理的なシステムや設備を最適に動かすための制御・運用技術である「Operational Technology」(OT)関連の物理環境のデジタルツインをすでに導入、または導入を検討している企業に、デジタルツイン構築の対象となる物理環境も調査した。最も多かった回答は「複雑な製品や機械」(37.5%)で、次いで「工場のライン、作業員の動作など」(33.3%)だった。また、3位は同率で「ビル、施設など」「人流、交通流など」(26.4%)となった。

 IDC Japan Software & Services リサーチマネージャーの小野陽子氏は「デジタルツインは、対象となる物理環境が複雑で運用や制御に人手やコストがかかっている分野、より高いレベルの最適化が求められる分野、顧客満足度や品質、安全性の向上が期待されている分野などで導入が検討されるケースが多く、調査結果はそのような企業の意識が反映されています」と述べている。

デジタルツイン構築の対象となる物理環境
出所:IDC Japan

音声認識市場は活用用途が多様化

Voice Recognition

 アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、国内の音声認識市場の市場予測を発表した。

 本同調査によると、音声認識市場の2023年度の売上金額は、前年度比21%増の150億円となった。音声認識市場は、医療現場やコンタクトセンターでの利用増に加え、会議の議事録作成やオンラインでの営業活動支援など、活用用途の多様化が進んでいる。2024年度も同様の傾向が続いていることから、同18%増と引き続き高い伸びを予測した。

 近年の音声認識技術の進歩と用途の拡大により、同市場は中長期的にも高い成長が期待される。上記を踏まえ、同市場の2023〜2028年度の年平均成長率は16.9%で、2028年度には300億円を超える予測だ。

 ITRのプリンシパル・アナリストである三浦竜樹氏は、こうコメントしている。「音声認識市場が活況を呈している最大の要因は、深層学習やニューラルネットワークといったAI技術の進展によって音声認識の精度が飛躍的に向上していることにあります。また、コンシューマー市場ではスマートフォンなどにオンデバイスAI(端末上で直接AI処理を実行する技術)による音声認識が登場していることから、今後エンタープライズ市場においてもハイブリッドAI(大規模言語モデルと小型モデルを組み合わせた技術)の音声認識サービスが台頭すると予想されます。さらに、SFA/CRMにおける音声での日報入力や、顧客との対話内容の解析結果の自動入力など、音声認識と業務システムとの連携・統合が進んでいます。これらの動きにより、同市場は今後も高い成長率が維持されるとみられます」

音声認識市場規模推移および予測(2022〜2028年度予測)
出所:ITR「ITR Market View:画像・音声認識市場2024」