穐本恭介(あきもときょうすけ)さん

tenso株式会社Logi-link事業部マネージャー。新卒で物流業界に携わり、2016年にBEENOSに入社。tenso株式会社において国際物流企業と輸出企業をつなぐオンラインマッチングサービスの開発、運営に従事。その後、グループ内での物流関連事業にプロジェクトベースで加わりながら、新規事業開発に携わる。2023年よりtenso株式会社にて新規事業となる国際配送サービス「Logi-link」を開発。
https://www.tenso.com/

国境をまたいだネット通販

──「越境EC」に注目が集まっていますが、「越境EC」というのはどういうものですか。

穐本 国境をまたいだインターネット通販のことを「越境EC」といいます。海外の商品をインターネット経由で日本に輸入するのも「越境EC」ですし、海外のユーザーが日本のECサイトで商品を購入する、つまり日本から輸出するのも「越境EC」です。

「越境EC」は、インターネット通販が始まった1990年代からありましたが、注目されるようになったのはここ数年のことで、特に海外から日本の商品を購入するユーザーが非常に増えています。その理由は2つあり、1つはコロナ禍で日本を訪問できなくなったこと。そして、円安によって海外のユーザーからすると日本の商品が非常にお買い得になったことです。この現象は、コロナ禍が終息し、インバウンドが復活した後も続いています。むしろ、日本を訪れた方が帰国後にECサイトで日本の商品を購入したいというニーズが高まっているように思います。

日本国内のECサイトは、海外から商品を買ってもらえるので大変ありがたいわけですが、ネックになるのが海外発送業務や決済、外国語でのサポートなどが発生し、日本国内だけで販売するよりも難しいことです。

例えば、発送業務を例に取ると、国際輸送に耐えうる梱包作業、インボイスなどの輸出書類の作成、輸送中の追跡確認などの作業が発生します。

こうした国際販売・輸送に伴うさまざまな課題を解決するサービスを提供しているのが我々tenso株式会社です。

tenso株式会社のホームページ。
海外のユーザーが日本の商品を購入する「越境EC」をさまざまな方法でサポートするtenso株式会社のホームページ。

海外転送サービスからスタート

──穐本さんが所属するtenso株式会社はBEENOS株式会社のグループ企業ということですが、概要をお話しいただけますか。

穐本 BEENOS株式会社は1999年に創業したEC(Eコマース、インターネット通販)の会社ですが、現在はホールディングス企業となっており、グループの中に8つの企業を持っています。その中に私が所属するtenso株式会社があり、「越境EC」黎明期の2008年に創業し、商品の海外転送サービス「転送コム」を開始しました。

その後、決済手続きもサポートする「Buyee(バイイー)」というサービスも開始し、この「転送コム」と「Buyee」がtenso株式会社のメイン事業となっています。

「転送コム」は、海外のユーザーが「転送コム」に会員登録し、付与される日本国内の住所(「転送コム」の倉庫の住所で「私書箱」のようなもの)を利用し、日本国内のECサイトで購入した商品をこの住所宛に送ると、「転送コム」が必要な梱包を行い、輸出書類を作成し、海外のユーザー宅に発送するというサービスです。海外のユーザーは、海外発送に対応していない日本のECサイトでも商品を購入することができます。また、日本国内のECサイトは「転送コム」のバナーをサイト内に設置するだけなので、即日海外販売に対応できるようになります。

「転送コム」の概念図
「転送コム」では、海外ユーザーは日本国内のECサイトで購入した商品を「転送コム」の倉庫に送り、それを「転送コム」が海外のユーザーに転送する(画像提供:tenso)。

穐本 一方「Buyee」は、商品の注文、決済、海外発送のすべてをサポートするサービスです。「Buyee」では各ECサイトの海外向けページを「Buyee」内に設けることで、「Buyee」が海外ユーザーのインターフェイスになり、バックヤードで各ECサイトの企業と連携するイメージです。また、「Buyee Connect」というサービスを使うことで、自社のECサイトを越境対応にすることも可能です。「Buyee」が商品情報の翻訳(18言語対応)、購入手続き、海外発送、カスタマーサポートなどを行い、各ECサイトは「Buyee」の倉庫に注文された商品を送るだけで商品の販売が完結します。

BEENOSグループ全体での国内企業の「越境EC」支援実績は累計6,000件以上になり、配送対象国は約120ヶ国/地域となっています。海外のユーザーからは、配送手段、決済手段が多様であることや、複数のサイトで購入した商品が同梱できることなど、高いサービスレベルが評価され、ユーザー数は550万人以上となっています。

「Buyee」の概念図
「Buyee」では、海外ユーザーは「Buyee」サイトで商品を購入する。その後、各ECサイトは「Buyee」の倉庫に商品を送り、「Buyee」が商品を海外のユーザーに発送する(画像提供:tenso)。
tenso株式会社の穐本さん。
「海外に商品を発送するには、国際輸送に耐えうる梱包作業、インボイスなどの輸出書類の作成、輸送中の追跡確認などの作業が発生します。これらの作業をサポートするのが我々の仕事です」と語る穐本さん。

──海外のユーザーが購入する商品は、どのようなものが多いのでしょうか。

穐本 人気が高いのはアニメ関連のグッズやトレーディングカード、フィギュア等です。また、バッグや靴、時計、ジュエリーなどのハイブランドの商品も人気です。日本のものはセカンドユース(中古)でも品質がよいということが世界的にも知れ渡っています。このため、世界中から多くの注文をいただいています。この分野は円安の影響が非常に大きく、今、注文が急増しています(「越境ECヒットランキング2024」)。

セカンドユースや有名作家が作った工芸品などは「1点もの」になるわけですが、弊社のサービスを利用した場合は、保険に入ることができますので、輸送中の事故や行方不明などの場合も保証されるというメリットがあります。

海外物流の課題を解決する「Logi-link」

──穐本さんが担当している「Logi-link」というのは、どのようなサービスでしょうか。

穐本 「Logi-link」は、tenso株式会社が2023年から新規事業としてスタートした国際配送サービスです。「転送コム」や「Buyee」では、ユーザーがECサイトで購入したアイテムをユーザー個人に届けるというBtoCのサービスですが、「Logi-link」ではBtoCだけではなく、BtoBにも対応するサービスになります。

具体的には、商品の保管、注文処理、発送などの国際物流の業務部分をアウトソーシングできるソリューションを提供するもので、手数料は1パッケージあたり450円からというリーズナブルな価格でご提供します。個人で作品を販売している方や、「越境EC」を強化したい企業、海外の支社に商品を送りたい企業など、さまざまな方にご利用いただけるソリューションです。

「logi-link」の概念図
「Logi-link」は、国際物流の業務部分をアウトソーシングできるソリューション(画像提供:tenso)。

穐本 tenso株式会社は、「転送コム」や「Buyee」でさまざまな国際配送業者さんとお付き合いしていることから、年間の取扱数量は一般の会社に比べかなりの数になりますし、輸出相手国も多岐にわたります。このスケールメリットを活用して、最適の価格、最適の配送方法をご提案できるのが「Logi-link」です。

また、従量課金制を取っているため、従来であれば商品が弊社に届いてから送料の見積りを提出して、ご了解いただいてから発送という手順を踏んでいましたが、これらの手順が不要で、重さによって送料を決められるため、結果的に時短にもなり、担当者・購入者の手間も減らすことができます。

さらにイニシャルコストがかからないので、これまで「手間と人手がかかるからできない」と言っていた企業さんにも気軽に「越境EC」に挑戦していただけます。円安効果もあり、海外で日本への感心が高まっている時なので、今は海外に販売するチャンスだと思います。

──最後に「越境EC」のこれからの可能性や課題についてお話しいただけますか。

穐本 訪日インバウンドが非常に増えていて、日本を訪れた人たちが日本のファンになり、日本のものがほしいというニーズは確実に増えています。加えて、円安という追い風があるので海外ユーザーが海外にいながら、インターネット経由で直接日本のものを購入するという環境はすでにできあがっています。そういう中で、これからは「越境EC」が標準化され、あたり前のことになっていくのは確実で、その可能性は非常に高いと思います。

ただ、日本は島国であるということで、物流に関してはヨーロッパなどと比べると、少し難しいところがあります。さらに販売する側の言語対応などの課題もあります。そこに我々の会社が間に入り、国際物流の部分をスムーズに行えるようにすることで、「越境EC」をますます活性化できるのではないかと思っています。

「tensoが提供するさまざまなサポートで、多くの企業が『越境EC』に挑戦できるようになります」。